守りたいもの   作:行方不明者X

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Neutral route
1.幕開け


【Lily】

 

ざくり、ざくりと私の足が落ち葉と土を踏みしめる。

懐中電灯で照らされていると言えど、正直滅茶苦茶心許ない。めっちゃ怖い。今なら幽霊が出ても私信じられるよ、うん。

 

「……ここか」

 

そうして、やっと私はエボット山の麓についた。

…そういえば、私、あの穴がある場所知らんな……どうしよ……

 

 

 

……まぁ、なんとかなるか

 

 

 

私は一つ深呼吸をして、森に足を踏み入れた。

―――――――――――――――――――

「フリスクー?」

 

声をかけながら進む。ここで見つかればいいんだけどねー、まぁあり得ないだろうけどさ。

 

「居たら返事してー」

 

さく、さく

 

………うっわ無言って辛い。デカイ独り言いってるみたいで超はずい。

 

なんていう風に冷静に考えてるけど、実は凄く焦ってる。

フリスクは無事なのか?

穴にたどり着けてなかったら?

辿り着けても穴から落ちた時に怪我してないか?

そもそも、本来あんな高さから落ちて無事なのか?

 

凄く、怖い。今すぐに会いたい。早くあの可愛い笑顔がみたい。

怖い、怖い怖い怖い。

 

……――だから、行かなくちゃ

 

彼女の身を案じるなら、なおのこと。

彼女を守りたいならもっと。

 

「フリスクー!」

 

私は歩みを止めず進んだ。

―――――――――――――――――

どれくらい歩いたのだろうか。

 

歩みを進めながらふと思った。

時計がないから分かんないけど、多分小一時間ぐらい歩いたと思う。まだフリスクは見当たらない。空を見て方角を確かめようとしても葉に遮られて見つからない。

 

「こーれはまずいな……」

 

もしかしたら、私があの穴に辿り着けないかもしれない。

ちょっと考えたら分かる事のはずなのに、すっかり頭から抜け落ちていた。いくら私があの子の姉であろうと、本来私はゲームには登場しないその他大勢(extra)。穴に辿り着けなくても当然なのに、何故私も行けると過信していたのか。頭を抱え込みたくなる。

 

しかも、私は食料はおろか、水も持って来ていない。フリスクは帰れたとしても、私は最悪餓死だ。

 

こればっかりは、神頼みだな

 

そう思った私は立ち止まり、目を閉じて祈る。

 

 

……―――神様、もしいらっしゃるのなら、どうか私を愛しい妹のもとへ導いて下さい……

 

 

そう祈って目を開けた私は、また歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、祈りが通じたのか、それとも近くへ来ていたのか、見たことのある洞窟を見つけた。

もちろん、実際に見たのではなく、ゲームだった時のUndertaleのオープニングムービーでだったけど。

でも、確かにそこは、フリスクやCharaちゃん達が飛び降りた(もしくは落ちた)穴が空いている洞窟だった。

 

取り敢えず神に感謝を捧げ、洞窟内部に入った私は、予想通りあった穴の近くにフリスクが使っていたであろう懐中電灯を見つけた。……うん、孤児院の名前が書いてある。間違いないな、これは。

 

穴を覗きこんでみると、先が真っ暗になって見えなかった。ここから紐なしバンジーして怪我一つなかったってどういうことなの。……やべぇ二次創作で見かけた体がマッチョのフリスク思い出した、あれは笑う

 

すっと頭を過っていった前世の思い出で笑いそうになりながら、私は穴の縁に立つ。

 

「待っててね、フリスク。今いくよ」

 

あ、これなんかヤンデレっぽいなとか思いながら、私は重力に身を委ねて、穴に落ちた。

 

その瞬間、意識がブラックアウトした。


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