【Lily】
ナプスタ君経営のかたつむり牧場を見に行って戻って来たところで、次は左側の川に挟まれている道へ進む。………ちなみにレースは負けたよ。かたつむりが緊張のあまりガチで燃え上がるとは思わなかった、うん。
「……あれ、鳥さんだ」
道の先に居る黄色い鳥を見て不思議そうにフリスクがそう言って、近付いていく。……おぉ、案外大きいな。
「やぁ、こんにちは」
私も黄色い鳥に近付いて話しかけてみると、くりくりとした黒い目でじっと私を見つめてきた。少し屈んでそっと黄色い鳥を撫でてみると、気持ちいいのか目を閉じてふわふわの羽毛の体を手に擦りつけてきた。……かわいいな。いや、一番可愛いのはうちの妹だけどさ。
そんなことを思いつつ、手を離して黄色い鳥から少し離れる。すると、フリスクが黄色い鳥に話しかけた。
「……………」
フリスクが口をパクパクと動かして、その後首を縦に振ると、黄色い鳥がフリスクが伸ばした手に飛び乗り、腕を登って頭の天辺まで登る。そこで、あぁ、対岸に移動させてもらうことにしたのか、と納得した。
パタパタ パタパタ
フリスクの頭の天辺まで登りきった黄色い鳥は、一生懸命羽を動かして、フリスクを持ち上げて飛ぼうとする。
「………おぉ」
ふわり、とフリスクの足が地面から少しづつ離れていく。少しづつ離れて、地面から5、6センチ浮いたぐらいで、危なっかしい飛び方で対岸へと飛んでいく。………こっわ。
ゆっくりと対岸へとフリスクを運ぶ黄色い鳥を水に落ちないかとひやひやしながら見守る。やっと対岸に着いたところで、危なっかしいけどゲーム通り落ちる事はなさそうだと安心して、息をついた。
すぐにまたこっち側に戻って来たフリスクと黄色い鳥を抱きしめるようにして受け止め、ゆっくりと地面に降ろす。
「どうだった? 浮いて対岸に行く気分は」
「うん、気持ち良かったよ!」
「そっかぁ。……ありがとうね、鳥さん」
ぴぃ、とフリスクの頭の天辺に乗ったままの黄色い鳥が私の言葉に答えるかのように鳴いた。そして、じっと私を見つめてくる。……もしかして……
「……私も運んでくれようとしてる?」
思い当たった事を黄色い鳥にそう訊くと、こくりと首を縦に動かした。……マジか。
「あー……私重いし、遠慮しとくよ。ありがとうね、運んでくれようとして」
そう言って撫でながら地面に黄色い鳥を降ろしてやり、フリスクから離れる。
「行こうか」
「うん!」
私の言葉にフリスクは頷くと、黄色い鳥に手を振ってから私の先を進んで行く。……あと行ってない所、彼処かぁ
―――――――――――――――――――
道なりに進んですぐに左に曲がり、ゲームだった時は左上の道を進んで行く。………次は、確かアンダインの家があったはず……
「あ、お家だ」
坂をあがると、魚の形をした家が佇んでいた。……あぁ、うん、やっぱり。
自分の原作知識が仕事をしている事に安堵し、私はドーム状の家をよく観察する。……大体ゲームで見た通りだけど、結構大きいな。
「誰の家だろ……」
「………アンダインの家だよ」
「うおっ!?……あぁ、君かぁ」
知ってるけど知らないフリをして呟くと、聞き覚えのある声が横から聞こえた。驚いて横をみると、見覚えのあるダミーが此方に背を向けて佇んでいた。……そう言えば居たな、コイツ。
「マジか。アンダインの家なのか?」
「あぁ、そうだよ」
「ふーん……ありがと、教えてくれて」
親切にも答えてくれたマッドダミー君にお礼を言って、興味津々といった様子で家を調べていたフリスクの肩を叩く。
「この家、アンダインの家だってさ」
「え……」
少し顔を青くして、家から一歩後退りするフリスク。……あー、教えなければ良かったか?
「まぁ、来る機会があるかもしれないし、覚えておいて損はないと思うよ?」
「……そうだね」
私の言葉に少し考えてからフリスクは頷き、家をじっと見つめてから視線を逸らした。
「行こう!」
「そうだね。じゃあね、マッドダミー君」
一向に此方を向かないマッドダミー君に手を振って、先を進みだしたフリスクの後を追った。