守りたいもの   作:行方不明者X

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67.Waterfall探索⑮

【Lily】

 

次のエリアは……あぁ、光るキノコの道か。テミー村にも繋がってるんだっけ?

 

「……? あれ、道がない……」

 

フリスクは困ったように辺りをキョロキョロを見渡し、右側に続いていた草の道に気付いて進んでいく。

 

「お姉ちゃん、こっちみたい!」

「だね。……これから先はどういくのかな?」

「うーん……これかなぁ?」

 

そう言ってフリスクが道の先にあるキノコを叩くと、右手に道が現れる。……おぉ、綺麗だな。

 

「凄い! こうやって進んでいくんだね!」

 

キノコが光るのが面白かったのか、笑って次のキノコに触りに行くフリスク。そのすぐ後ろから私もついていく。……ここ、確かテミーともエンカウトするんだっけ?

 

「わっ!」

「!! フリスク!!」

 

そんな事を思っていると、前を行くフリスクの驚いたような声が聞こえ、周りが白黒になっていく。すぐに入れ替わってフリスクの前に立つ。

 

Special enemy Temmie appears here to defeat you(スペシャルな敵のTemmieがあなたを倒しに来た)!!

 

やっぱ来たか……

そう思いながら後ろ手でフリスクの手を握り、回避する準備をする。……テミーの攻撃は殆ど手を伸ばしてきたり、体を使って攻撃する系だ。ナイフを使ったら確実に傷付けてしまうと判断した結果だ。

そんな事を思っていると、背後からピッという音がした。

 

*TEMMIE-RATED TEM OUTTA TEM(測テミ不能)

Loves to pet cute humans(可愛い人間をなでるのが大好き).

But you're allergic(だがあなたはアレルギーがある)!

 

測テミ不能ってなんや。思わずアナウンスにツッコミながら、テミーの動きを注視する。

 

『fhsdhjfdsfjsddshjfsd』

「ごめんなんて!?」

 

一瞬バグったか!?と焦るぐらい意味不明な言葉を並べ立てるテミー。なんて言ったんだよ……

若干動揺しながらこちらに伸ばされてくる腕をフリスクと一緒に避け続け、なんとか回避する。……えっと、見逃す条件は『話す』だったっけ?

 

*|Temmiy accidentally misspells her own name《Temmiyは突然彼女自身の名前を間違ってしまった》.

 

……そう言えば、テミーってボブを除くと全員女の子なんだっけ?

アナウンスを聞いてそう思い出した。……ボブハーレムやん。

そんな事を思っていると、フリスクが私の後ろから横に出て来て、テミーにペコリとお辞儀をした。

 

You say hello to Temmie(あなたはTemmieにこんにちはと挨拶をした).

 

『ほい!!テミーさんだよ!!!!』

 

ぶるぶると体を震わせながらテミーは律儀にフリスクにそう返答する。

その後なでようとしているのか、テミーはまた腕を伸ばしてくる。出来る限りフリスクを連れて回避しようとしてみるが、今度は速度が速くて避けきれないと判断する。………えぇいままよ!

フリスクの前に出てテミーの腕を受ける。ぽすっ、と伸ばされた手が私の頭に乗った途端、さすさすと優しく手が動かされた。……あれ?

覚悟していた痛みが来ずに、驚いてしまう。……フリスクがアレルギーだっただけか?

 

*Temmiy accidentally misspells her own name.

 

すーっと腕が元に戻され、アナウンスが流れる。……まぁ、なんにせよ、これで終わるよな。

 

YOU WON(あなたは勝利した)!

You earned 0XP and 0gold(0XPと0goldを得た).

 

フリスクが『MERCY』を押すと、そんなアナウンスが流れて背景が白黒から切り替わった。

 

「お姉ちゃん、怪我ない!?」

「無いよ、安心して。行こうか」

「……うん」

 

私を見上げるフリスクを撫でて、安心させて先に進むよう促しながら、なんとなくテミーに撫でられた事を思い出す。………誰かに撫でてもらうの、久しぶりだったなぁ。

フリスクに手を引かれながら先に進む。

 

「……あれ?」

 

最後のキノコまで辿り着き、キノコを叩いた所で道が無い事に気付いたフリスクは、困ったように私を見上げる。

 

「どうしよう、道が無い……」

「あー……あの一番最初のキノコが光ってないから、彼処に一旦戻ってもう一回叩くんじゃないかな?」

「! 成る程!」

 

私を見上げるフリスクに最初のキノコを指差しながらそう言えば、フリスクは一度キノコを見た後、納得したように頷いて来た道を戻って行く。

 

「……? あれ?」

「うお、どしたよ」

 

ふと、何かに気付いたのか突然フリスクは道の途中で立ち止まる。ぶつからなかった事に安堵しながら訊けば、何もない道の先を指差した。

 

「あっち、光ってない?」

「え? ……あ、本当だ」

 

フリスクが指差した先を見ると、どう考えても人工的な明かりが漏れだしていた。そこで、そう言えばテミー村に行けるのこの道だったかと思い出す。……どうしよっかなぁ

 

「行ってみようよ!」

「そうだね、行こうか」

 

目を輝かせて誘う妹の提案を断る訳にもいかず、笑って提案を受け入れた。

 

――――――――――――――――――――――

 

「……おぉ…」

 

道なりに進んでいくと、広い空間に出る。そのまま左を向くと、沢山のテミーが居た。……結構居るな。

 

「……お姉ちゃん、此所がテミー村だって!」

「此所が? マジか」

 

看板を読んだフリスクが顔をあげてそう言った。……まぁ、知ってたけどさ。

そんな事を思っていると、フリスクは看板の隣に集まっていたテミー達に話しかけていく。

 

「ほい!テミーさんだよ!!そしてこっちはともだちの……テミーさんだよ!!!」

「名前一緒やんけ」

 

思わず口が滑ってツッコミを入れてしまう。……そういう種族なのか…?

幸いにもテミー達には聞こえなかったのか、そのまま会話が続いていく。

 

「ほい!テミーさんだよ!!そしてこっちはともだちの……テミーさんだよ!!!」

「ほい!テミーさんだよ!!こっちのともだちも忘れないでね!」

「はい。ボブです」

「ブフッ」

 

小さい体から思っていたよりも低い声が出て思わず吹き出してしまう。……ボブ渋い声してんな……

 

「初めまして、ボブ。いい声してるね」

「初めまして、人間さん。初対面で声を褒められたのは初めてですよ……」

 

柔らかい笑顔でボブにそう言われ、対応が紳士だ……!となんか謎の感銘を受けつつ、ボブと別れる。嫌いじゃないよ、その声。

そんな事を思いつつ、光に触れてセーブを行うフリスクを近くの看板を読みながら待ち、終わった所で探索を続ける。

 

「この中テミーショップだって。行く?」

「行く!」

 

私がそう訊けばフリスクは即答で頷き、洞窟の中に入っていく。……ここで資金稼ぎ出来るかな?でも学費可哀想だしなぁ……

 

「ほい!テミーショップへ……ようこそ!!!」

 

テミーショップに入ると、『テミーショップ』と書かれた段ボールを挟んで向こう側に居る若干灰色がかった髪のテミーが出迎えてくれる。……光の辺り加減って訳じゃないみたいだな……

そんな事を思いつつ、テミーショップの中を見渡してみる。……へぇ、こんなになってんのか。

 

「……お姉ちゃん」

「ん?」

「これ、売ってもいい?」

 

私が辺りを見渡していると、フリスクが前にあげた未使用の絆創膏を取り出しながらそう声をかけてくる。………って待て。売る気か?

 

「……いや、いいけど……どうして?」

「テミーさんがね、欲しがってるの。いい?」

「……いいよ」

「本当? じゃあ売ってくるね」

 

あ、欲しがられたから売るんだと安堵しながらOKを出すと、フリスクは絆創膏を売った。

 

「行こう、お姉ちゃん」

「うん………あ、ちょっと待って」

「?」

 

それ以外には用は無かったらしく、フリスクは店を出ようとする。それにストップをかけ、私はポケットに手をリュックを前に持って来てお金を出す。

 

「テミーさん、テミーさん」

「ほい!!」

「手、出して」

「???? いいよ!!!」

 

座っていたテミーに声をかけて手を出してもらい、その上に自分が持っていたお金の大体3分の2を乗っけて握らせる。

 

「大学行きたいんだよね?これ、学費の足しにして」

 

そう言うと、テミーは驚いたように目を丸くする。

 

「え……こんなに……?」

「うん。頑張ってね」

 

呆然とお金を見つめるテミーの頭を撫でて、私はフリスクと店を出る。

 

「お金、良かったの?」

「うん。夢があるのは良いことだしね」

「ふーん……」

 

店から出ると、フリスクがそう訊いてくる。それに私は頷いて、フリスクの頭を撫でておく。……夢があるなんて、本当に素敵だと思うしな。

そんな事を思いつつ、すぐ近くに居たテミーに話しかけるフリスクの後ろに立つ。

 

「あわわわわわわあ!!!にんげん……すごく……カワイイ!!!」

「でっしょー!? 可愛いでしょ、この子」

「ちょっ、お姉ちゃん!?」

 

目をキラキラと輝かせてフリスクを見るテミーに満面の笑みでそう返す。フリスクはリアルエンジェルだ。異論は受け付けないよ?え、パピルス?あの子はリアルスターだから別物。

妹が褒められて誇らしい気持ちになりながら、顔を真っ赤にしたフリスクに手を引かれて卵を見つめるテミーに話しかけに行く。フリスクがテミーに向かって口をパクパクと動かすと、テミーは卵を見ながらフリスクに答えるように喋りだした。

 

「テミー……たまご見てる!!!たまご……かえる!!!テミー……立派な親になる!!」

「そっか……孵るといいな」

 

……それは良いんだけど……この卵、確か茹で卵じゃなかったっけ……

テミーにとって残酷な事実になるであろう事を思い出しながら、卵を観察してみる。……うん、立派な茹で卵ですわ。

私と同じように卵を調べたらしいフリスクが困ったように見つめてくるのを首を横に振って唇に人差し指を当てて『言うな』というメッセージを伝えると、フリスクは直ぐに頷いた。そして何事も無かったかのようにフリスクは次に青と水色の斑模様の笠のキノコに話しかけに行く。……あ、コイツ私がゲームだった時一番驚いた奴だ。

 

「きのこのダンス きのこのダンス なにを表すの」

 

フリスクが話しかけると、キノコのモンスターは降ろしていた腕と体を揺らしながら愉快に歌い出す。そして、次の瞬間、ばっと笠を押し上げて青い目を見せる。……うわ、ちょっと怖ぇ。

 

「それは私の菌糸に囚われた、内なる苦痛だ」

 

先程の愉快な声ではなく、低い声で普通に話し出すキノコのモンスター。

 

「除けようと足掻いても。 逃げようと足掻いても。 悲しいかな、全て虚しく終わる」

「重いわ」

 

暗い事を言い出したキノコのモンスターに思わずツッコミを入れる。私のツッコミは聞こえなかったらしく、そのまま話は途切れ、フリスクは最後のテミーに話しかけにいく。

 

「……?」

 

なんとなく視線を感じ、想像よりでかかったテミーの像の隣辺りを見てみる。すると、穴の中からテミーが此方を見つめていた。……あー、そう言えば居たね、君……

 

「……」

「……」

 

じっとしばらく見つめ合ってから私の方から目を逸らし、フリスクが話しかけたテミーを見ると、赤い出来物が顔に出来ていた。……良い医者が見つかるといいな。

 

「……これで最後かな?」

「そうみたいだね。行こうか」

「うん」

 

フリスクの手を引いて、テミー村から元の道を進みだした。


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