【Lily】
希少な照れ笑いをしながら、暫く『親友』と繰り返し呟いているアンダインに心を癒される。………うん、女の子らしくて大変かわいらしい。ただしベストオブカワイイはフリスクだ。異論は認めない。
一通り脳内でふざけてから現実を見る。そして、今の状況がかなりカオスな事に気付いた。……燃えてる家の前で笑ってるって下手したらサイコパスだって誤解されるな……
「……で、これからどうするよ。寝泊まりとか出来るところあるか?」
「………あ、あー……しばらくパピルスの家で世話になろうと思う」
「そっか、それなら安心だわな」
アンダインも現実に戻ってきたらしく、はっとして顔を引き締め、そう答えた。そして、アンダインは何かに気付いたように目を丸くし、考え込むように目を伏せる。
「………人間」
「ん?どした」
暫く沈黙が流れた後、アンダインが真剣な顔で話しかけてくる。それに反応し、首を傾げる。
「お前達は、アズゴアの元へ行くんだろう?」
「うん。そうだよ」
訊かれるだろうと予測していた問いに、私は頷く。すると、アンダインはだよな、と言って少し目を伏せる。
「……さっきも言ったが、アズゴアは闘いを望まない。だから、彼と話をするんだ。お前達なら、きっと家に帰してくれるように説得出来る筈だ」
「……あぁ、分かった」
……あぁ、ゲームでも言っていた忠告か。
アンダインが口にした言葉でそう判断する。
「……絶対に、ないとは思うが。お前達がもしアズゴアを傷付けたら」
「……傷付けたら?」
アンダインの言葉を繰り返し、先を促す。すると、アンダインは顔を上げ、私を指差し、声を高らかに宣言した。
「あたしは人間のソウルを奪い、結界を通り抜けて、貴様らを徹底的に叩きのめしてやる! …………それが、『親友』というものだろう? フフフ!」
最後はニッと豪快な笑顔でそう言い切ったアンダインに、私は頷き返す。
「……そうだね。その通りだ」
「だろう?」
「但し、一つだけ理解していて欲しいことがあるんだ」
「………なんだ」
私はアンダインに、一つだけ先に提示しておく。
「……今の私、キレやすくなってるんだ。だから、もしチェーンソーとかを理不尽な理由で向けられでもしたら、またブチギレちゃうかも知れないから、それだけは了承しておいてくれると助かるなぁ。……あぁ、本当に理不尽な理由だった場合だからね?」
笑顔でそう言えば、アンダインは私のブチギレを思い出したのか、顔を強ばらせた。そしてまた暫く沈黙し、苦々しい顔で頷く。
「………まぁ、その場合はな……」
「うん。本当に理不尽だった時だけだから」
……言質は取った。
そんな事は思いながら、私はポケットの中にあるナイフに触れた。
「さてと、話はそれだけかな? それなら私達はもう行くけど……」
「あぁ、それだけだ。もし何か用があったりしたら、スノーディンに寄ってくれ」
「りょうかーい」
それから、とアンダインは続ける。
「もし何か助けがほしけりゃ、パピルスの所に連絡してくれ。……まぁ、お前達ならきっと切り抜けられると思うがな」
「あはは、ありがとう。期待に沿えるよう頑張るわー」
「それじゃあまたな、人間!」
「うん、またね」
フリスクと一緒に手を振り、走っていくアンダインを見送る。………うっわ、はえぇ。
「………行っちゃったね」
アンダインの揺れる緋い髪が見えなくなったところで、フリスクが手を下ろしながらそう言った。そして、満面の笑顔でまた口を開く。
「良い人だったね」
「………そうだね。あ、パピルスのところに電話してみたら? 面白い事になってると思うよ」
「! うん」
同意しながら提案してみると、フリスクは頷いてポケットから携帯を引っ張り出す。そして、ボタンを押して自分の耳に押し当てた。
プルルル……
「……」
何回かコールした後、パピルスが出たのか、コール音が止んだ。あんまり聞こえないが電話の向こうでやっぱりカオスな事になってるらしく、少しすると、クスッとフリスクは笑った。
そして暫く話をした後、フリスクは電話を切った。
「どうだった?」
「お姉ちゃんの言う通り、面白い事になってたー」
「そっか」
ゲームだった時とおんなじ会話が展開されたらしく、クスクスと可笑しそうに笑いながらそう言った。
「……さてと、そろそろ行く?」
「うん、そうだね! 行こう!」
私の言葉に笑って頷いたフリスクは、私の前を歩き出す。その後を追って、私も歩き出した。……熱いとこ、苦手なんだけどなー……