※短いです
【Lily】
アルフィスのラボから出て数歩すると、ピロン、という音が隣のフリスクから聞こえた。
「……なんだ今の音?」
「さぁ……? 携帯かなぁ?」
フリスクは首を傾げてから先程改造してもらったばかりの携帯をポケットから引っ張り出す。
「あ、やっぱりそうみたい」
そして携帯見たフリスクは、そのまま携帯を弄り出す。それを横から覗き込むと、何かの画面を見ていた。画面を隅々まで見て、アルフィスが言っていたSNSの画面だと結論付ける。……地上の某青い鳥マークのSNSそっくりやな、これ。
『アンダインの戦いまだ見てないんだったv.v』
アルフィスのページの書き込みを見て、ネットスラングを使いこなしてやがるという感想を抱く。……というか、見てなかったんだ。
「………あれ、アルフィスお風呂入ったんじゃなかったっけ?」
「あー、シャワーだけにしたんじゃないかな」
「そっか!」
矛盾に首を傾げたフリスクにフリスクから逃げる為の言い訳だったと言えるわけもなく、私はそれらしく誤魔化しておく。そのまま携帯を弄りながら歩いていると、またSNSが更新される。
『まあアンダインが負けるわけ無いし後で本人に聞いてみよ^.^』
ごめんアルフィス、思いっきり心叩き折りに行ったわ。アンダイン一回めっちゃ虚ろな目してたぞ。
「お姉ちゃん、ぼく、これ見てていい?」
「うーん………本当はやめてほしいけど……いいよ、じゃあ私が手を引いたげる。その代わり、書き込み読み上げてね」
「いいよ!」
アルフィスの書き込みに思わず遠い目になりながら、更新がされるのを待って携帯を見続けるフリスクの手を引いて角を曲がる。そして、少し進んだところで、またSNSが更新されたらしく、フリスクが声をあげた。
「『人間をご案内すべく拙者も参戦でござる』」
それが罠だったりしたら承知しないからな、と思いながら歩き続けていく。しばらくすると、ベルトコンベアが見えてきた。これに乗っていくらしいと判断し、フリスクに声をかける。
「フリスク、今からベルトコンベア乗るから一旦電話しまいな」
「ん、はーい」
返事をして電話をしまったフリスクの手をしっかり握り、手を引いてベルトコンベアに乗る。
「おお……」
勝手に足場が動くという感覚にエスカレーターを思い出し、懐かしさを覚えていると、ふと周りが白黒に切り替わった。……エンカウントか。
*
そのアナウンスに、目の前で陽気に微笑む火山ちゃんとぶつかったらしいということを察し、手を離して回避に専念しようとする。……この子の攻撃、殆ど弾けないからなぁ。
そんな事を思っていると、フリスクが『ACT』を押した。
*VULKIN-ATK 25 DEF 0
*
「ヤベェなおい!?」
マグマは人を癒すどころか燃やしますけど!?と言いたいのを抑え、笑顔で近付いてくる火山ちゃんに集中する。
『アッ! タスケル! イヤシノマグマ!』
「くんな」
思わず小声でそう言いながら、火山ちゃんの火口のような部分から発射される小さなマグマ弾の雨をフリスクを抱き寄せて避け、被弾しないように立ち回る。
なんとか攻撃を避けきると、ターンが回ってきた事を知らせるアナウンスが流れた。火山ちゃんの方を見てみると、アナウンス通りに歩き回っていた。……いや、ここ部屋じゃないけどね。
そんな事を思っていると、『ACT』を押したフリスクが火山ちゃんに近付いて、ぎゅうっと抱き締めた。
*
*
そんなアナウンスが流れた後、フリスクがばっと勢いよく火山ちゃんから離れた。
*
*
*
………まぁ、火山に抱き付けばそりゃあな……
そんな事を思いながら、走って戻ってきたフリスクを抱き止める。
「おおっと。大丈夫?」
「熱かった……」
「だろうよ」
『キャッ……スゴク………』
茶番を挟みつつ、火山ちゃんの火口から出来たにっこりと微笑む雲から発射される電の弾幕を少しづつ動いて避ける。……なんで火口から雲が出来るんだ。
*
アナウンス通り目をハートの形にしながら頬を染めた火山ちゃんを見て、腕の中のフリスクに視線を持っていく。フリスクは『MERCY』に手を伸ばしていた。
*
*
戦闘が終わり、周りに色が戻ってくる。怪我を負わなかった事に安堵しながら、ベルトコンベアに身を任せる。
「……! お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「ん? どうした?」
「見てて!」
何かを思い付いたらしいフリスクに呼び掛けられ、返答してみると、笑顔でフリスクはベルトコンベアの上を走っていった。………うおっ、はやっ
「この上で走ると早く走れるよ!」
「おぉ……私もやってみようかな」
ベルトコンベアの動力もあるからだろうか、と思いながら、私も走ってみる。ビュン、という風を切る音が聞こえた。はやっ。
ピロン
私がベルトコンベアの上から降りたと同時くらいに、ポケットから音が聞こえた。
「『そろそろ電話しなきゃね!』」
アルフィスのSNSが更新されたらしく、フリスクが携帯を引っ張り出してそう読み上げた。……アルフィスも見られてるならまだしもまさか読み上げられてるとは思わないよなあ。
「……進もうか」
「うん!」
また更新待機の為に携帯を片手に持ったフリスクの手を引いて、進み始めた。