※メタトンファンの方、本当に申し訳ございません
※メタトン本当にごめん
※支離滅裂です
【Mettaton】
ガシャンッ!!!
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
何故僕が床に倒れて、ダーリンを見上げているのか分からなかった。
確か僕は、Alphysからの電話に出て、チェーンソーを止めて、番組を進行しようとした筈だ。
その瞬間、ローラーに何かが引っ掛かって、バランスを崩して、そこにダーリンの足が伸びてきて、体重をかけられて………
そこで、やっと気付く。ダーリンに踏み倒されたのだと。
そして、その目を見て、僕は凍り付いた。振り払える筈だったのに、振り払えなかった。
「ヒッ」
その目には、どろり、どろりと『ナニカ』が蠢いていた。
真っ暗な、土の色の中の虚の様な瞳孔が、僕を見つめている。その目を、見てしまった。
「………ねぇ。」
口が動き、言葉が紡がれていく。
「……………今、何しようとしたの」
無感動な表情が動き、言葉を紡いでいく。
「ねぇ。」
ねっとりとした絡めとられるような殺意を込めながら、疑問を投げ掛けてくる。
「答えてよ」
答えを促すその声に、僕は早鐘を打つSoulを宥め、答える。
「………その子、を……殺そうと……」
「へえ。」
僕の答えを聞いて、ダーリンの声がより一層低くなり、僕に対する明確な殺意が隠される事なくぶつけられる。
「………どうして?」
背筋が粟立つような殺意に反応してまた早鐘を打つSoulを何とか落ち着かせようとしている僕に、また質問が投げ掛けられる。
『どうして』。
たった一言のその言葉に、僕はどう答えていいのか分からなかった。
Alphysに頼まれたから?
その計画に賛同して協力すると言ったから?
それとも………
自分の夢を、叶えるため?
「………答えられないの?」
ただ一言、感情の消え去った声でダーリンは続ける。
「じゃあ、『理由なんて無かった』んだね?」
「違っ」
「じゃあどうして答えられないの?」
否定しようとした瞬間、その言葉ごと無慈悲に砕かれ、殺される。
「…………茶番に付き合ってやるつもりだったけど、もう無理だ。言いたい事だけ言わせてもらうよ」
『茶番』という言葉を言われ、僕はSoulが跳ぶのを感じた。
―――――全て、バレている。
このダーリンには、バレている。
僕は、本格的にダーリンに恐怖した。
「貴方には、大切な人は、ものはある? ―――いや、あるよね。だって、貴方だって感情はあるんだろうし」
じゃあ、と彼女は言葉を続ける。
「その大切なもの、壊しに行っていい?」
ゾクリ、とした。
ただただ、真っ暗な光の入らない眼に、見据えられ。
そんなことを、言われたら。
「や、やだ、やだ!!! やめてよ!!!!!」
いつの間にか、僕はスターの顔をかなぐり捨てて、そう叫んでいた。
命乞いをするように。
巻き込みたくなかった、大切な従兄弟を殺してほしくないと、嘆願した。
彼はゴーストだから、消える筈は無いのに。どうしてか。
今の人間なら、彼さえも殺せてしまうような気がしたから。
「……どうして?」
そんな僕に、人間は不思議そうに問い掛ける。
「貴方がさっきした事を、ただしているだけじゃないか」
そして、事実を僕に叩き付ける。
「―――………同じ事をされるかもしれないという事を覚悟して無かったのかい?」
まぁ、しないけどさ、と人間は続ける。
「自分が嫌がる事を他人しちゃダメって言われなかったの? は、馬鹿じゃないか、貴方」
そんなの常識だろう、と感情なんてない声と表情で続ける。
「質問を変えるよ。じゃあ、どうしてこんな事をしたの?」
覚悟も無かったくせに、と人間は続けて僕に問う。
その言葉に僕は、何も返せない。
「ねぇ」
「それ、は………」
僕の答えを急かすように、人間はそう言ってくる。
「どうして?」
言葉を濁す僕に、また言葉が投げ掛けられる。
「ねぇ」
急かす。
「ねぇ」
せかす。
「ねぇ」
セカス。
「答えろよ!!!」
遂に、彼女は怒鳴った。その言葉にも籠められた明らかな殺意が、僕のSoulを傷付けていく。
「私のことはもうどうだっていいよ、でもどうしてあの子が殺されかけなきゃなんないんだよ、なぁ!」
怒鳴るダーリンは、僕にただ投げ掛けてくる。
自分の疑念を、ただ、言葉にして。
「どうしてだよ、どうして、あの子ばっかりこんな目に遭わなきゃなんないんだよ………」
言葉を紡いでいくと共に、表情も何も変わらなかったダーリンに、変化があった。
僕は思わず息を飲んだ。
「………どうして……」
ぽたり、と僕のボディに何かが落ちる。
「どうして、あの子ばっかりが、殺されかけなきゃならないんだ………どうして……」
ぽたり、ぽたりと、また落ちる。
「どうして………」
ダーリンの真っ暗な目から、透明な水滴が溢れて、零れる。それが涙だと気付くのに、そんなに時間はかからなかった。
「………どう、して……」
僕のボディを押さえ付けるように置かれていた足が無くなり、ダーリンは僕からふらつくように一歩下がって、その場にぺたりと座り込む。僕はその隙に何とか立ち上がり、一歩後退る。
「……どうして、あんな目に……」
しゃくりあげる訳でも無く、喚く訳でも無く、きっと、涙を流しているのにさえダーリンは気付いていないまま、
「………なんで……」
ただ、真っ暗な瞳のまま、涙を流し続ける。
「…………お姉ちゃん」
そんな彼女に、小さいダーリンが近付いた。
「……ぼくは大丈夫だからさ。行こう?」
「………」
ダーリンは近付いてきた小さいダーリンを涙を流したまま見上げ、頷いた。そして、小さいダーリンの手を借りて立ち上がると、ふらふらと歩き出して、二人で僕の横を素通りしていった。
「…………ねぇ」
そして、僕に振り返った小さいダーリンは、じっと僕を見据えた。
「………二度と、お姉ちゃんを泣かせないでね。じゃないと、本気でぼく、怒っちゃうからさ」
その言葉に、僕のSoulがまた跳ねる。
「……あと、これ」
向こうに置いてあった缶詰めを小さいダーリンは持ってきて、カウンターに置いた。
「材料だったんでしょ? もう流石にこの空気だし、放送事故だろうけど、持ってきたよ」
それじゃあね、と言って奥に進んでいったダーリン達を、僕はただ見ていることしか出来なかった。