守りたいもの   作:行方不明者X

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※注意:メタトンに対する多大なアンチ・ヘイト表現が含まれています

※メタトンファンの方、本当に申し訳ございません

※メタトン本当にごめん

※支離滅裂です


82.零れたモノ

【Mettaton】

 

 

 

ガシャンッ!!!

 

 

 

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 

 

何故僕が床に倒れて、ダーリンを見上げているのか分からなかった。

 

 

確か僕は、Alphysからの電話に出て、チェーンソーを止めて、番組を進行しようとした筈だ。

 

 

その瞬間、ローラーに何かが引っ掛かって、バランスを崩して、そこにダーリンの足が伸びてきて、体重をかけられて………

 

 

そこで、やっと気付く。ダーリンに踏み倒されたのだと。

 

 

そして、その目を見て、僕は凍り付いた。振り払える筈だったのに、振り払えなかった。

 

 

「ヒッ」

 

 

その目には、どろり、どろりと『ナニカ』が蠢いていた。

 

 

真っ暗な、土の色の中の虚の様な瞳孔が、僕を見つめている。その目を、見てしまった。

 

 

「………ねぇ。」

 

 

口が動き、言葉が紡がれていく。

 

 

「……………今、何しようとしたの」

 

 

無感動な表情が動き、言葉を紡いでいく。

 

 

「ねぇ。」

 

 

ねっとりとした絡めとられるような殺意を込めながら、疑問を投げ掛けてくる。

 

 

「答えてよ」

 

 

答えを促すその声に、僕は早鐘を打つSoulを宥め、答える。

 

 

「………その子、を……殺そうと……」

「へえ。」

 

 

僕の答えを聞いて、ダーリンの声がより一層低くなり、僕に対する明確な殺意が隠される事なくぶつけられる。

 

 

「………どうして?」

 

 

背筋が粟立つような殺意に反応してまた早鐘を打つSoulを何とか落ち着かせようとしている僕に、また質問が投げ掛けられる。

 

 

『どうして』。

 

 

たった一言のその言葉に、僕はどう答えていいのか分からなかった。

 

 

Alphysに頼まれたから?

 

 

その計画に賛同して協力すると言ったから?

 

 

それとも………

 

 

自分の夢を、叶えるため?

 

 

 

「………答えられないの?」

 

 

ただ一言、感情の消え去った声でダーリンは続ける。

 

 

「じゃあ、『理由なんて無かった』んだね?」

「違っ」

「じゃあどうして答えられないの?」

 

 

否定しようとした瞬間、その言葉ごと無慈悲に砕かれ、殺される。

 

 

「…………茶番に付き合ってやるつもりだったけど、もう無理だ。言いたい事だけ言わせてもらうよ」

 

 

『茶番』という言葉を言われ、僕はSoulが跳ぶのを感じた。

 

 

―――――全て、バレている。

 

 

このダーリンには、バレている。

 

 

僕は、本格的にダーリンに恐怖した。

 

 

「貴方には、大切な人は、ものはある? ―――いや、あるよね。だって、貴方だって感情はあるんだろうし」

 

 

じゃあ、と彼女は言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その大切なもの、壊しに行っていい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクリ、とした。

 

 

 

ただただ、真っ暗な光の入らない眼に、見据えられ。

 

 

 

そんなことを、言われたら。

 

 

 

「や、やだ、やだ!!! やめてよ!!!!!」

 

 

 

いつの間にか、僕はスターの顔をかなぐり捨てて、そう叫んでいた。

 

 

 

命乞いをするように。

 

 

 

巻き込みたくなかった、大切な従兄弟を殺してほしくないと、嘆願した。

 

 

 

彼はゴーストだから、消える筈は無いのに。どうしてか。

 

 

 

今の人間なら、彼さえも殺せてしまうような気がしたから。

 

 

 

「……どうして?」

 

 

 

そんな僕に、人間は不思議そうに問い掛ける。

 

 

 

「貴方がさっきした事を、ただしているだけじゃないか」

 

 

 

そして、事実を僕に叩き付ける。

 

 

 

「―――………同じ事をされるかもしれないという事を覚悟して無かったのかい?」

 

 

 

まぁ、しないけどさ、と人間は続ける。

 

 

 

「自分が嫌がる事を他人しちゃダメって言われなかったの? は、馬鹿じゃないか、貴方」

 

 

 

そんなの常識だろう、と感情なんてない声と表情で続ける。

 

 

 

「質問を変えるよ。じゃあ、どうしてこんな事をしたの?」

 

 

 

覚悟も無かったくせに、と人間は続けて僕に問う。

 

 

 

その言葉に僕は、何も返せない。

 

 

 

「ねぇ」

「それ、は………」

 

 

 

僕の答えを急かすように、人間はそう言ってくる。

 

 

 

 

「どうして?」

 

 

 

言葉を濁す僕に、また言葉が投げ掛けられる。

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

急かす。

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

せかす。

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

セカス。

 

 

 

「答えろよ!!!」

 

 

 

遂に、彼女は怒鳴った。その言葉にも籠められた明らかな殺意が、僕のSoulを傷付けていく。

 

 

 

「私のことはもうどうだっていいよ、でもどうしてあの子が殺されかけなきゃなんないんだよ、なぁ!」

 

 

 

怒鳴るダーリンは、僕にただ投げ掛けてくる。

 

 

 

自分の疑念を、ただ、言葉にして。

 

 

 

「どうしてだよ、どうして、あの子ばっかりこんな目に遭わなきゃなんないんだよ………」

 

 

 

言葉を紡いでいくと共に、表情も何も変わらなかったダーリンに、変化があった。

 

 

 

僕は思わず息を飲んだ。

 

 

 

「………どうして……」

 

 

 

ぽたり、と僕のボディに何かが落ちる。

 

 

 

「どうして、あの子ばっかりが、殺されかけなきゃならないんだ………どうして……」

 

 

 

ぽたり、ぽたりと、また落ちる。

 

 

 

「どうして………」

 

 

 

ダーリンの真っ暗な目から、透明な水滴が溢れて、零れる。それが涙だと気付くのに、そんなに時間はかからなかった。

 

 

 

「………どう、して……」

 

 

 

僕のボディを押さえ付けるように置かれていた足が無くなり、ダーリンは僕からふらつくように一歩下がって、その場にぺたりと座り込む。僕はその隙に何とか立ち上がり、一歩後退る。

 

 

 

「……どうして、あんな目に……」

 

 

 

しゃくりあげる訳でも無く、喚く訳でも無く、きっと、涙を流しているのにさえダーリンは気付いていないまま、

 

 

 

「………なんで……」

 

 

 

ただ、真っ暗な瞳のまま、涙を流し続ける。

 

 

 

「…………お姉ちゃん」

 

 

 

そんな彼女に、小さいダーリンが近付いた。

 

 

 

「……ぼくは大丈夫だからさ。行こう?」

「………」

 

 

 

ダーリンは近付いてきた小さいダーリンを涙を流したまま見上げ、頷いた。そして、小さいダーリンの手を借りて立ち上がると、ふらふらと歩き出して、二人で僕の横を素通りしていった。

 

 

 

「…………ねぇ」

 

 

 

そして、僕に振り返った小さいダーリンは、じっと僕を見据えた。

 

 

 

「………二度と、お姉ちゃんを泣かせないでね。じゃないと、本気でぼく、怒っちゃうからさ」

 

 

 

その言葉に、僕のSoulがまた跳ねる。

 

 

 

「……あと、これ」

 

 

 

向こうに置いてあった缶詰めを小さいダーリンは持ってきて、カウンターに置いた。

 

 

 

「材料だったんでしょ? もう流石にこの空気だし、放送事故だろうけど、持ってきたよ」

 

 

 

それじゃあね、と言って奥に進んでいったダーリン達を、僕はただ見ていることしか出来なかった。


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