守りたいもの   作:行方不明者X

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※お待たせしました


85.Hotland探索⑦

【Lily】

 

道なりに進んでいくと、ピロンという音がフリスクからする。そして、暫くの沈黙の後、フリスクは小さく声を漏らした。

 

「えっ」

「ん? どしたよ」

「いや、さっきナプスタブルークからフレンド申請?っていうのが来てたから取り敢えず許可出したんだけど……もう撤回されちゃってた」

 

振り向いて訊いてみれば、しゅんとした様子でフリスクはそう答えた。そんな顔も可愛いなぁ、と思いながら、私はフォローを入れておく。

 

「あー……彼、恥ずかしがり屋だからさ、すぐに撤回しちゃったんじゃない?」

「そっかぁ、なら仕方ないかぁ」

 

まだ若干しょんぼりしながらフリスクは頷いた。

 

「……あ、ねぇ。こっちから申請しとこうよ。そうすれば受けてくれるかも。貸して」

「! そうだね!」

 

私の提案にぱぁっと顔を輝かせたフリスクから携帯を借り、弄る。……お、これか。

 

「申請、っと。これで大丈夫かな」

「登録してくれるかなー?」

「どうだろうね……」

 

わくわくしながら私から受け取った携帯をしまうフリスクを横目に、私は落ちていたエプロンを拾う。

 

「ところでフリスク、こんなものが落ちてたけど拾ってく?」

「え、エプロン? ……リュック、まだ空きある?」

「うん、まだ大丈夫」

「そっか、じゃあ、もし外した時は持っててもらっていい? それまではつけとくから」

「いいよ、任せて」

 

ごめん、と申し訳なさそうな顔をしながら謝るフリスクの頭を気にするなという意味を込めて撫でて、エプロンの土汚れを払い落とす。そしてフリスクに手渡し、装着するのを待つ。

 

「じゃーん、どう?」

「おぉ、似合う似合う。可愛いよ」

「えへへ……ありがとー」

 

……ごめん、借りるよ。

心の中で持ち主に謝りながら、エプロンをつけて、私によく見えるようにくるりと回ったフリスクに正直な感想を言えば、照れたように顔を綻ばせる。激かわ。

 

「それじゃ、行こうか」

「うん!」

 

――――――――――――――――――

 

来た道を引き返し、奥に進んでいく。歩を進める毎にゴウンゴウンという何かの機械が作動する音に近付き、次のパズルに近付いているんだなと察する。

 

プルルル……プルルル………

 

「あ、電話だ」

 

ベルトコンベアと三つのスイッチがしっかり見える所に来たところで、着信音が鳴った。フリスクは携帯を引っ張り出し、電話に出る。

 

「………」

 

電話が繋がり、微かに携帯から聞こえるアルフィスの声を聞きながら、私はパズルをよく観察する。ここのパズル、アルフィスの指示に従うと失敗するからな……アルフィスの指示には従わないようにしないと。

 

「お姉ちゃん」

「ん?」

「あのパズル、ぼくがやっていい?」

 

電話を終えたフリスクがそう提案する。それを少し考えて、危険は無さそうだし大丈夫かと判断する。フリスクの経験にもなるしね。

 

「……いいよ。でも、大丈夫? 解き方とか分かる?」

「うん、大丈夫! アルフィスが解き方教えてくれたから!」

「………そっか」

 

自信満々に頷いたフリスクの言葉に、私はそれ以上何も言わずに頷く。……大丈夫か? これ。

 

「あの三つのスイッチを押すと向こうのバリケード……かな?が消えるんだってさ。アルフィスがスイッチ押すタイミング教えてくれるって」

「そっか」

 

全然大丈夫じゃないけどな。

フリスクの言葉に内心で苦笑いしながら否定する。

 

「でも、アルフィスもミスしちゃうかもしれないから、もし合図が無くても押した方がいいよ」

「うん、そうだね! そうするー」

 

オブラートに包みながらそう伝えておく。その言葉に、フリスクは頷いた。

 

「じゃあいってくるね!」

 

フリスクはそう言うと、ベルトコンベアの前に移動し、一歩足を踏み出し、乗る。

 

「わ、わっ」

 

ベルトコンベアのスピードが速かったのか、フリスクは一瞬よろけ、そして直ぐに持ち直してパズルを解いていく。

 

 

「えいっ」

 

 

カチッ

 

 

まずは一つ目。

 

 

「そりゃ!」

 

 

カチッ

 

 

二つ目。

 

 

「さい……」

 

 

プルルル………プルルル………

 

フリスクが三つ目に手を伸ばした瞬間、着信音が鳴った。

 

「えっ!?」

 

着信音に気を取られたフリスクは三つ目のスイッチを押し損ねる。それを見てゲーム通りになったなと思いながら私もベルトコンベアの上に乗って走り、三つ目のスイッチを押して切り替える。

 

「お姉ちゃん、ごめん、ミスしちゃった……」

「あはは、ミスは誰にでもあるよ、気にしない気にしない。これからどうするかが大事なんだから、ね?」

「………うん」

 

そのままの勢いで向こう側に渡りきると、フリスクが携帯を耳に当てたまま申し訳なさそうな顔で謝ってくる。それを笑って流し、気にしていないことを伝える。

 

「……あ、ねぇ、まだアルフィスに電話繋がってる?」

「え? うん」

「ちょっと貸して」

 

まだ申し訳なさそうなフリスクに電話がまだ繋がっているか確認し、携帯を借り受ける。そしてフリスクに聞こえないようにフリスクから背を向け、携帯を耳に当てた。

 

「もしもし、アルフィス……だよね?」

『は、はいっ!』

 

先程ラボで聞いた声が携帯を通して聞こえた。返事の声の調子から、少し怯えているようだと察しながら、私は小声でアルフィスに話しかける。

 

「………かっこよくなりたい貴方に一つだけアドバイス。さっきは切らないで繋げたままにした方が良かったんじゃない?」

『……』

「それだけ。代わるね」

 

アルフィスだけに聞こえるようにアドバイスをすると、電話の向こう側でアルフィスは押し黙ってしまった。どうやら私が芝居だって分かってる事に気付いたらしいな、と思いながら、代わることを告げてフリスクに携帯を渡す。

 

「ありがと、もういいよ」

「そう? ………」

 

私から携帯を受け取ったフリスクはまた携帯を耳に当て、電話を始める。そして、話は直ぐに纏まったらしく、直ぐに電話を終えた。

 

「終わったよ、行こう」

「ん、そうだね、行こうか」

 

フリスクにそう促され、歩を進めた。


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