守りたいもの   作:行方不明者X

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※連続投稿です

※支離滅裂な出来になってしまったのでご注意を


92.Hotland探索⑩

【Lily】

 

フリスクの手を引いて階段を上っていくと、ウォーターフォールで会ったナイスクリームさんと先程出会ったロイヤルガード巡回組が居た。あ、アイス持ってら。デート中だったか?

 

「あれ、あの人達ってさっきの……」

 

フリスクも彼らに気付いたらしく、私の手を離して二人の所に駆けていく。

 

「おぉ、やぁ」

 

フリスクが話しかけると、二人も気付いたのか、二人で話すのをやめて、兎耳の方の彼が片手をあげる。フリスクが自分の事を指差して首を傾げると、兎耳の彼はあー、とか、うーん、という苦い声をあげた。

 

「えーと、俺達、お前を殺すのはまた今度にしたいんだ。て訳で、アンダイン様にはこのこと内緒だぞ、いいな?」

「あぁ、うん。見るからにデート中っぽいもんね」

「で、デー……!? か、揶揄うな!」

「あははは、冗談だよ! 分かった、内緒にしとく」

 

フリスクの隣に立って茶化してみれば、予想以上に上擦った声でそう言われた。そのままフリスクと話し始めた彼から離れ、私は無口な方の彼の傍に寄る。

 

「さっきは戦闘中だったとはいえ蹴ったりしてごめん。……お幸せにね」

「……あぁ」

 

そっと耳打ちして彼から離れ、フリスクの肩を叩く。

 

「これ以上邪魔するのも無粋だし、行こうよ」

「そうだね。………」

「あぁ、またな!」

 

フリスクが手を振りながら口を動かせば、彼らは手を振り返してくれる。それを見てから、今度はナイスクリームさんに話しかける。

 

「やっほー、さっきぶり。またお店移動したの?」

「やぁ! また会ったね!」

 

話しかけると、彼はさっきまでとは全く違う爽やかな笑顔で出迎えてくれる。うお、なんでか光が見える。まぶしっ

 

「嬉しそうだね、アイスが売れたの?」

「そうなんだ!! ビジネスは大成功さ! そこのお二方の男性がアイスを買い占めてくれたんだ! みーんな売り切れ!」

「そうなの、良かったね」

 

嬉しそうに話す彼に思わず笑顔になりながら、私は相槌を打っておく。そして、ふと何かに気付いた彼はハッとして口を抑え、申し訳なさそうに眉と耳を下げた。可愛いな。

 

「……ゴメンネ」

「いや、いいよ。全部売り切ったんだろ? 喜ばしいことじゃん。そうやって君が笑顔でいてくれるなら私は嬉しいよ」

 

彼が言わんとしている事を汲み取り、言葉を返す。アイスがない事にちょっとしょんぼりした様子のフリスクが背を向けると、慌てて彼はフリスクを引き留める。

 

「あ、待って! まだ君にあげたいものがあるんだ!」

「?」

 

フリスクが振り返ると、彼は指で自分の口角をあげ、にっこりと笑顔を作る。

 

「ビッグ・スマイル! なんていい日だ!」

「……そう、良かったね」

 

最後まで爽やかだな、と思いながら、私は彼に手を振って、脇道に進んだフリスクについていく。

 

「あ、ここ、さっきの……」

 

道を進んでいくと、先程まで居たミュージカルの会場に出る。ここに繋がってたのか、と思いながら、辺りをざっと見渡してから何もないと判断して来た道を引き返し、逆の道に進む。

 

「あれ、あの子……」

 

逆の道を進むと、『R3』と大きく書かれたエレベーターが見えた。フリスクはエレベーターの前辺りに佇む小さい炎の小人君に気付いたのか、近付いていく。それを見ながら、私は脳内マップに此処にエレベーターがある事を書き加え、直ぐに引き返せるようその場に留まってフリスクを待つ。

 

「な、なに!? 覚えてるのか!? こうもアッサリ負けるなんてどういうことなんだああああ!?」

 

うるさっ

突如辺りに響いた少年らしい驚いた声に顔を顰め、フリスクは『覚えてる』と彼に返したのかと見当をつける。というかいつから勝負してたんだよと切実にツッコミたい。

愕然とした顔の彼との会話を切り上げたフリスクが戻ってきたのを見計らい、直ぐに元の道に引き返す。引き返した所で、今度は真っ直ぐに階段に向かい、その階段を上らないでも見えるホテルを見上げる。

にしても現実で見るとかなりデカいな。ざっと見た感じ屋上のフェンスとか見えないし、地盤を支える為の支柱としても使われてるのか?

 

「お姉ちゃん? どうかした?」

 

何段か階段を上がった所で私が階段を上がっていないことに気付いたらしいフリスクが振り返って訊いてくる。何でもないよ、とだけ返し、私も長い階段に若干重い足を動かして足を掛けた。

 

――――――――――――――――――――

 

結構長かった階段を上り切り、ホテルの前に辿り着く。足を休めることも兼ねて辺りを見渡せば、何故か道に落ちている紙と、サンズが植え込みの前で立っているのが伺えた。……もう此処まで来ちゃったのか。早いなぁ。

そんな事を思っていると、サンズと目が合う。よう、と片手をあげる彼に私も手を上げて返しておく。

 

「やぁ、サンズ。こんな所で会うなんてね」

「あぁ、ちょっとお前さん達に用があってな」

「私達に?」

 

サンズに近付いて話し掛けてみれば、そんな返答が返ってくる。……あぁ、そう言えば此処でもあったな、デートイベント。

 

「お姉ちゃん、こっちお店があるんだって。行ってみない?」

「あ、そうなの?」

 

そんな事を思っていると、紙を読んだらしいフリスクに手を引っ張られてそう言われる。どうしようかという目線をサンズに送れば、片手で先を促すジェスチャーをされる。先に行ってこいという意味だろうと解釈し、それに甘えて、先に店に行くことにする。

 

「そうだね、行こうか。ごめんねサンズ、ちょっと待ってて」

「おう」

 

私の返答に嬉しそうに顔を綻ばさせたフリスクに手を引かれて路地裏に入れば、話し込んでいたワニのモンスターと猫のモンスターがいる事に気付く。

 

「あのー、すみません。ここの奥に店ってあります?」

 

二人に声をかけると、二人は私達を見て目を丸くし、顔を見合わせた。

そして、にーっこりと笑顔を作って近付いてきた。

………逃がさないと言わんばかりに同時に腕を掴んで。

 

「ねえ! 見ていきなさい!」

「そうよ、隅まで見るのよ!」

 

こうして私達は二人に出迎えられた……いや、『出迎えられた』というより『引き摺り込まれた』の方が正しいな。

内心そう訂正しながら、彼女達に引っ張られるままモノが溢れて山積みになっている最早ゴミ山の前まで連れて来られる。

 

「あはは………それで、なんか良いものあります?」

「良いもの? 勿論あるわよ!」

 

そう言うと、猫のモンスターの方が山の中から引っ張り出した包みを地面に雑に置き、バサバサと地面に広げる。

 

「此処にあるものぜーんぶ買っちゃって!」

「流石にそれは無理があるかなぁ……」

 

仮にも商品なんだから雑に扱うなよ、と思いながら、商品に目を通す。使えそうにないものと使えそうなものに品定めしていく中、きらりと一瞬光に反射した物に目が留まった。

 

「………これ……」

 

思わず雑多に広げられた物を掻き分け、埋もれたそれを手に取り、眺める。ずっしりとした重さの、銃。そして、冒険家のような茶色のカウボーイハット。フリスクと私を除いて、此処に落ちてきた最後の人間のものだった。

 

「…………その二つ、気になるの?」

 

今時見かけない珍しいリボルバー型の薬莢を開けて、中身が空っぽな事を確かめていると、フリスクが声をかけてくる。

 

「……うん、まぁね。これ、あからさまにモンスターが持ってるようなモノじゃないし」

「……今まで落ちてきた子のかもってこと?」

「うん」

 

暫くじっと私の手の中にある銃とハットをじっと見つめたフリスクは、貸して、と一言言って私に手を差し出す。その手に銃とハットを置くと、フリスクはまたじっとそれらを見つめてから、ポケットを探り、お金を出すと、彼女達に向けて差し出した。

 

「えっ、ちょっと」

「ベティー! 私達お金持ちだわ!」

 

興奮した様子でフリスクからお金を受け取ったブラッティー(だったっけ)はそのままポケットにお金を突っ込んだ。………あぁ、こうなっちゃ、もう返せないな。

 

「はい!」

「………いいの?」

 

めでたく私達の物になった銃とハットを私に差し出し、フリスクはにっこり微笑んだ。それに戸惑いながら二つを受け取って訊けば、フリスクはその笑顔のまま頷く。

 

「うん、それ格好いいし、ぼくも欲しかったからね!」

「そっか……有り難う」

 

私に気を遣ってくれたフリスクの優しさに感謝しながら、頭を撫でておく。すると、フリスクはまた嬉しそうに笑ってから、店長の彼女達と話し出す。

その会話を聞き流しながらリュックを降ろし、銃とハットをリュックの中にしまっておく。ハットが潰れないようにしまうのに案外苦戦し、やっとしまってリュックを背負い直した時には、フリスクは彼女達と話し終わっていた。

 

「あ、待たせちゃった? ごめん」

「んーん、大丈夫だよ! いこう」

 

首を横に振ったフリスクに手を引かれ、彼女達に見送られながら路地裏から出る。そうして先程のホテル前まで戻ってくると、植え込みに寄り掛かるようにして転た寝しているサンズの前まで移動する。

 

「サンズ」

「ん、あぁ……」

「お待たせ。で、どうしたの?」

 

一声掛けると、サンズは直ぐに目を覚まし、此方を見た。私が何なのか訊ねれば、サンズは自分の用件を話す。

 

「なあ、コアに行くんだって?」

「そうだけど……」

「その前に俺とディナーなんてどうだ?」

 

サンズの提案に、私ではなくフリスクが反応し、嬉しそうに頷く。サンズがまたご飯に誘ってくれる程仲良くなれてると思ってるんだろうな、とフリスクの思考に大体の見当をつけながら、私は言葉を濁しておく。

 

「あー………私は……」

「おっと、そうだ、忘れてた。リリー、お前さんにはちょっと個別で用があるんだ。あまり乗り気じゃないならディナーは来なくてもいいが、待っててくれないか?」

 

断ろうとした瞬間他でもないサンズの手で然り気無く先手を打たれて逃げ道が無くなる。

………私から『話』を提案する気だったしどっちにしろ逃げる気は無かったが、本当に中々策士だな、コイツ。

 

「ん、そういうことならいいよ」

「お姉ちゃん、また食べに行かないの?」

 

驚いたような顔でフリスクがそう訊いてくる。

 

「あー、お腹が空いてないんだよ、私。だからフリスクだけで行っておいで」

「………そう?」

 

ならいいんだけど、と言いながらフリスクは私から手を離した。

 

「いいな、奢ってくれるんだろ」

「は?」

「冗談だ」

 

サンズの一言に思わず真顔で聞き返せば、直ぐに取り消しの言葉が返ってくる。

 

「こっちだ。近道を使うぞ」

 

サンズに連れられて奥の道に入っていったフリスクに手を振り、姿が見えなくなるまで見送る。シュン、という音がして二人の姿がかき消えた後、振っていた手を下ろして私は先程のベティーちゃん達の店に戻る。

 

「あのー、すみません」

「あれ、さっきの」

 

どうかしたの、と訊いてくる彼女達に、私は笑顔を作った。

 

「ちょっと、欲しいものがあるんです」


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