好きでやったとはいえ主人公の設定間違えたかも。メンドくさい設定付けたせいで作者の力量が追いつかず、イマイチ感情移入しづらい子になってしまいました。フツーに美琴の友人ポジでキャッキャさせといたほうが良かったかもしれません。
……愚痴タイム終了! とりあえずもうどうしようもないっぽいので勢いに任せて突っ走ることにします!
今回の話はタグ的な18グロ?描写がある、のかな? 右の取り扱い説明書を見る限りは著しく反社会的な行動、にあたるようなそうでないような。正直曖昧にしか把握してないんですけど。
またタグの後付けをしてしまい申し訳ありません。R18タグも追加しときます。
それでは、毎度毎度愚痴やら何やらで長い前書きに付き合って下さり恐縮です。本編にどうぞ。
《追記》
18タグを撤去いたしました。勝手して本当にすみません!
真っ暗な闇の中、切り取られたような四角形が浮かんでいる。
百合花はそれを食い入るように見つめていた。
煌々と光を放つ画面の向こうには、実験用のラットがピクリとも動かず手術台の上に固定されている。その側に少女が無表情で立ち尽くしていた。
年の頃は一三、四くらいだろう。簡素な手術着、肩に届くかどうかといった長さの茶髪。髪と同じ色の、感情の抜け落ちたような深い瞳が印象的な少女だ。
画面の向こうの彼女は誰かと話しているようだった。画面外なのでその誰かの姿は見えないが、どうやら少女に何か指示を与えている様子だ。時折少女がこくんと頷いている。
そして、話を終えた少女はラットの方へ体を向け、
ズプリと、無造作にメスを差し入れた。
露になった鼠の臓物に、画面を見つめていた百合花が体を跳ね上げる。
その間も、画面内の少女は無表情にその実験動物を解体していた。一切の躊躇いといったものが感じられない、ロボットのような手つきだった。
淡々と、ラットの体を開き、内臓を掻き分け、脳みそを引きずりだす。
画面の外で、百合花は俯いて吐き気を耐えることしかできなかった。
しばらくして、四角形の場面が切り替わる。俯いていた百合花が顔を上げると、先ほど画面に映っていた少女が手術台に縛りつけられていた。研究員らしき人間達がニタニタと粘質の笑みを張りつけて周りを囲っている。縛られた少女の瞳には、何の感情も浮かんでいないように見える。恐怖も、嫌悪も、不安すら。その顔からは何も見て取ることができなかった。
――まるで、自分が先ほどのラットと同じ実験動物だと思っているかのように。
そんな少女を見下ろしながら、研究員の一人がおもむろにメスを手に取り、
なんの躊躇いもなく、少女の腹に突き入れた。
先ほどの焼き増しのような光景だった。ただ一つ違うのは、メスを突き入れられたのはラットではなく人間だということ。
画面の向こうで少女が叫ぶ。痛み。ただそれだけの叫びだった。
百合花が息を呑む。体が震えていた。
悪趣味極まりなく、少女の解剖は進んでいく。
初めに内臓。
腎臓を取りだし、肝臓を磨り潰し、小腸を引きずりだし、大腸を切り刻む。
次に四肢。
皮膚を剥ぎ、血管を引きちぎり、筋繊維を一本一本ほどいていく。
次は心臓、その次は脳。
まるで子供が玩具で遊ぶような手つきだった。
少女が悲鳴を上げる。内臓を引きずり出し、四肢を切断して、胸を切り開き心臓をわしづかんでも、その少女はまだ生きていた。彼等が死なせてくれはしなかった。
研究者が笑いながら少女の頭を切り開き、パックリと空いた頭蓋骨の切れ目から桃色の何かが見えたところで、百合花は堪えきれずに胃液を吐き出した。びちゃびちゃと、闇の中に水音が響く。画面の向こうで血が跳ねる音なのか、胃液が床に叩きつけられた音なのか、錯乱した百合花には判断がつかなかった。
『――――ッ!』
ふと、画面の向こうから悲鳴ではない言葉が聞こえた気がする。思わず顔を上げ、百合花は絶句した。
目が合った。そんなことはあり得ないはずなのに、そもそもこれはリアルタイムですらないはずなのに、百合花は確かにそう思った。彼女はゆっくりと画面に向かって手を伸ばす。
少女の瞳は変わらず、何の感情も映してはいない。
それでも、その奥に揺れるものを、百合花は確かに読み取っていた。
――ドウシテ?
――コワイ
――イタイ
――タス、ケテ
決して届かない画面の向こうへ、百合花は手を伸ばす。助けを求める声に応えるように。
ゆっくりと、冷たい液晶に触れた。伸ばした右手は無機質なガラスに阻まれて。
ブツリと、そこで映像は途絶えた。
伸ばされた手は何を掴むこともなく、力なく地に垂れる。
と、場違いに間抜けなインターホンが鳴った。虚ろな顔を上げ、少女が覚束ない足取りで扉へと向かう。
扉の向こうには黒づくめの男が立っていた。黒いスーツを着た大柄な体に、面長な顔をサングラスで覆っている。短く刈り上げた髪の色さえも真っ黒で、明らかに堅気の人種ではなかった。
何も語らず、百合花の手に段ボールを押しつけて、男はそのまま去っていった。
受け取った百合花が重さに段ボールを取り落とす。べチャリと、中で微かな水音。
段ボールは重かった。まるで、中に一三、四の少女が詰め込まれているような――
嘘だ。
真っ先に浮かんだのは陳腐な否定の言葉だった。人間の少女がこんな小さな段ボールに納められるはずがない。
取り繕うようにそう思考しても、不安は際限なく膨らんでいった。頬を冷たいものが伝い、段ボールの表面にシミを作っていく。映像に映っていた少女は四肢を切り落とされている。もしかしたら、
「……違う」
ぽつりと呟いた否定は、むしろ祈りに近かった。
おそるおそる、百合花は段ボールを開けていった。
覗いたのは、深い深い、学園都市の闇の端。怖気が走るほどの狂気だった。
百合花の視界が真っ暗になる。
覚えているのはそこまでだった。
「またあの夢……」
『学舎の園』内部にある常盤台中学学生寮。
その自室、ベッドの上で百合花は小さく呟いた。真っ黒な瞳は眠たげに細められ、滑らかな肌には汗一つ浮かんでいない。
自覚して、百合花は自嘲の笑みを刻んだ。
「百も二百も見たら、流石に慣れちゃったか」
もう、何も感じない。感じないことに罪悪感を抱いている。
末期だな、と百合花は力なく横たわったままぼんやりと考えていた。
寝転んだまま視線を散らす。
他の一般的な学生寮と同じく、常盤台の学生寮に部屋ごとの内装の違いなどといったものは特にない。細かな部分は生徒の自主性に任せられてはいるが、たいていの生徒達は(食蜂のような例外を除き)そこまで派手な模様替えはしない。
上質なベッドとサイドテーブルが二つずつ、それぞれの傍らにはスーツケースと木製の上品な椅子、加えて小さな冷蔵庫が一つちょこんと置いてある。入口のすぐ横にはトイレと洗濯機を標準装備した豪華なバスルームがあり、まるでどこかの高級ホテルのようだった。
二つあるうちの一つ、入口から見て左側のベッドの上。百合花は眠たげにあくびを零した。手持無沙汰な手でそばにあったぬいぐるみを抱きしめる。彼女のベッドの上には、デフォルメされた蛇やら蜘蛛やら一般的とは言えないぬいぐるみ達が鎮座していた。デフォルメされ切った真っ白なドラゴン(フル〇ルというらしい。百合花のお気に入りだった)のぬいぐるみを左手で抱えながら、百合花は眠気に負けそうな視線でルームメイトを探した。
「桜……どこ?」
思わず呟きながらベッドを探るも、藍原の感触はしない。
部屋にも見当たらないし、どうやらもう起きているようだ。百合花が寝ぼけ眼を擦っていると、
「お呼びですか」
「わっひゃい!?」
ビックゥゥッ!! と肩を跳ね上げ慌てて後ろを向くと、トレイを持った藍原がいつも通りの無表情で突っ立っていた。
驚く百合花の顔を碧い瞳に収め、藍原は無表情を崩してくすくすと笑った。
「百合花様ったら。そんなに驚かれると私……襲ってしまいますよ?」
百合花は相変わらずの少女にげんなりとした表情を作る。眠気はいつの間にか吹っ飛んでいた。
「はいはいおはようおはよう」
「……もうお昼です」
「……、ホントだ」
言われて百合花が時計を見ると、昼の十二時を少し回ったところだった。
藍原が心配そうな雰囲気を滲ませて言う。
「最近お目覚めになるのが遅いですよね、お休みになられるのもそうですし。……まあ、私としては寝顔を拝見できる時間が増えてこの上なく嬉しいというかつい唇をくっつけてしまいたくなるというかとにかく嬉しいのですけれど」
「ちょっとね。……明日からは桜より早く起きることにするよ」
「……そんな」
微かに残念そうな藍原の視線を流しつつ、百合花はしわくちゃになったワイシャツを脱いで常盤台の制服に着替え始める。が、もちろん藍原が黙っているはずがなかった。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
「……、桜はあっち向いてて」
「ぇ……」
「向いてて」
「…………、ぐすっ」
「分かったそんなに見たいなら好きなだけ見ていいから泣くな!」
「ありがとうございます」
「……はぁ」
百合花は本日最初のため息をつく。常は艶やかな黒髪がどことなく煤け、真っ黒な瞳は一日の始まりに相応しくない疲れた色を映していた。
真っ白なワイシャツを洗濯機に放り込み、ベッドシーツに体を沈み込ませて一息。と、そこで藍原が百合花にトレイを差し出した。
「新しい茶葉を使ってみました。お口に合うといいのですが」
差し出されたトレイからティーカップを手に取り、注がれた紅茶の匂いを嗅いでみる。
「ん……美味しそう」
まだ湯気の立つそれにふーふーと息を吹きかけて、おそるおそる一口。
「……いかがですか?」
「うん、とっても美味しい」
百合花はにっこりと笑みを咲かせた。
藍原は弛む頬を必死に引き締めて……いるところで百合花の物言いたげな視線に気づく。百合花は物足りない表情で口を開けて、
「ケー」
「ケーキはありません」
藍原にバッサリと一刀両断された。不満げに頬を膨らませて言う。
「何でさ」
銀縁眼鏡をキラリと光らせ、藍原はキッパリと言い放った。
「しっかり昼食をお食べになってください。栄養が偏ります」
「けち。桜ったらお母さんみたいだね」
「いえ、私は百合花様の伴侶の方が……」
「やめなさい」
鼻血を垂らしてのたまう藍原に米神を引くつかせながら、百合花は大きくため息をついた。早くも本日二度目だ。
と、そこで百合花は気づく。
藍原の右袖、いつもならば何の変哲もない常盤台の制服に
「風紀委員の仕事?」
「はい。
「……そっか」
淀みなく言う藍原に、百合花は少し考える素振りを見せた。
藍原は少しの空白の意味を悟って、
「百合花様。風紀委員と協同はなされないのですか?」
百合花は俯いて言葉を返した。
「……、それも、考えたんだけどね。やっぱり越権行為で追求されるのも面倒だし、何より操祈が普段からあっちこちにお邪魔しちゃってるから」
食蜂操祈。
百合花の沈んだ声に眉を
「……困ったものですね」
「うん、全くだよ」
俯いた百合花は複雑そうな笑みを零して、
「いえ、そうではなく」
「え?」
「今、何か誤魔化しましたよね」
藍原の真剣な声に、百合花の息が止まった。
「え、いや、何のこ」
「……御坂様のことですか」
今度は心臓が凍った。少しだけ跳ねた百合花の肩を藍原が見逃すことはない。
百合花が驚いて顔を上げる。藍原は滅多に見せない表情をしていた。
――つまるところ、百合花は美琴に会いたくなかったのだ。
美琴のルームメイトである白井黒子は風紀委員であるし、美琴本人も三日前の
そしてそれは、『風紀委員に協力して』という形になっているはずだ。
先ほどの理由も嘘ではないが、実のところ百合花が美琴に顔を会わせたくないというのが『風紀委員と協同しない』理由として一番大きいだろう。
藍原はほんの少し寂しげな声で、
「食蜂様から……百合花様と御坂様が疎遠になったのは昨年の冬ごろだと聞きました。当初は会話もなさらなかったそうですね」
「……、」
「百合花様がよそよそしくなられた理由は御坂様も知らないご様子ですし……何があったのですか?」
百合花は自嘲して、
「……ごめん、言えない。ただ、嫌われるのが嫌だから離れた。子供みたいに単純な理由でしょ?」
藍原には分からない。この人当たりの良い少女があの器の広い少女に嫌われるところなど、ましてや自分から彼女を避けることなど、実際目の当たりにしてなお信じられなかった。
そして、それを成し得る肝心の理由には、百合花は一言も触れてはいない。
「食蜂様には……?」
「言ってない……けどバレてる。操祈には隠し事できないから」
聞いて、藍原は眉根を寄せた。
おそらく百合花は、自分からはその理由を誰にも話していない。
危ういのだ。
藍原が常盤台に入学してまだ三ヶ月と少し、彼女と百合花の過ごした時間はそれほど長くはない。それでも、百合花という一人の少女の一端を掴むには十分な時間だった。
百合花は誰かに頼ることを知っている。しかし、肝心なことは全部一人で抱えたがる少女だった。
彼女はたった一人で何か大きなものを抱え込めるほど強いのかもしれない。親友と離れて笑っていられるほど強いのかもしれない。
けれど、何も感じないなんてことはないはずだ。いつか限界が来る。
「百合花様」
「……何?」
だから、藍原ははっきりと言った。
「子供みたいに単純だなんてとんでもない。私にはさっぱり分かりません」
「え……?」
「御坂様がお怪我をなされたとき、百合花様泣いてましたよね。お見舞いにぬいぐるみも縫ってらっしゃいましたし」
しゃがみこみ、ベッドに座る百合花の顔を下から見上げて、
「御坂様の事をそんなにも思っているのに離れようとなさる理由なんて、分かりたくもありません」
呆気に取られて口を開け目を丸くする百合花を真っ直ぐ見つめながら、藍原は言う。
「嫌われたくない。なるほど、それも百合花様の本心なのでしょう。でもそれ以上に百合花様は御坂様の側にいたいと、そう思っているのでしょう? だから百合花様はそんなに苦しまれているのではないのですか?」
ここ最近は特にそれが顕著だった。
美琴の負傷を知ったとき百合花が見せた表情、藍原は二度とそんな顔を見たくなかった。普段通りの穏やかな微笑。いや、おそらくはそれにもどこか翳りは残っていたのだろう。藍原が百合花と出会ったとき、彼女はすでに美琴と距離を取っていたのだから。
だから、藍原は百合花の屈託のない笑顔が見たかった。ほんの一年ほど前、百合花が美琴に見せていたであろうそれがどうしようもなく見たかった。
余計な口出しだと分かっていても、言わずにはいられなかった。
藍原は氷のような無表情をにこりと和らげて、
「でしたら、そんな小さなことはお忘れになることです。たとえ憎まれていようが嫌われていようが一途につきまとっちゃえばいいんです。少なくとも私ならそうします」
普段からは考えられないほど柔らかい声だった。
百合花はそんな彼女が見せた極上の笑みに面喰らっていた。
藍原は立ち上がって扉の方へと歩きながら、少し乱れてしまった風紀委員の腕章を直して、
「では行って参ります。……いつまでもいじけてると襲っちゃいますからね」
部屋から出て、静かに扉を閉める。
ゆっくりと、静けさで満たされた回廊を藍原が歩いていく。
自分の所属する常盤台の風紀委員支部へと向かいながら、藍原は、
(……もしかしなくても
なんて、台無しな思考を巡らせていた。
一方で、閉じられた扉を見つめながら、百合花は藍原の言った言葉を反芻していた。
「憎まれても、か……」
窓を開けて、いつも通りの学舎の園を眺める。強烈な陽射しに目を細めながらも、百合花はある一点だけを見つめていた。
視線の先には仲良さげな少女達が数人、アンティークな町並みを楽しげに歩いている。
ため息をつく。三度目だった。
百合花は道行く少女達に羨ましげな目を向けながら、
「情けないね、私。グラグラと芯を揺らして」
悲しいとも嬉しいともつかない、複雑な笑顔を作った。
自分のどうしようもないところを切り取って見せつけられた気分だった。
藍原の言葉に、百合花はどうしようもなく揺さぶられていた。
「ホント、子供だな……」
百合花にとって、これは藍原が言うほど単純な問題ではなかった。それでも、藍原の言ったことは概ね正しい。
嫌われたくないから離れる。
大切だから離れたくない。
そのどちらも、確かに百合花の中にあった。
そして、そのどちらも、全部自分のためだった。
日の光が痛いほどに眩しかった。百合花は反射的に目を瞑って、
『適当にあしらって、距離をとって、少しずつ忘れてもらう。それが美琴のためだよ』
数日前の無責任な言葉を自嘲していた。
何が美琴のためだ。全部自分のためじゃないか。何もかもを分かったような顔になって、そのくせ友達に逃げる理由を押しつけて、どれもこれもが中途半端で。
汚い。
本当に、救えない。
思わず哂っていた。
「あは、本当に、抱きしめたくなっちゃうくらい無様だね。ねえ、そう思わない?」
――。
呟いた言葉は、誰の耳に入ることもなく消える。
自覚してしまったからには、離れることも近づくことも憚られた。
かと言って今美琴に打ち明けるわけにはいかない。今話せば、きっと彼女は躊躇いなく闇に踏み入り、そして呑まれてしまうだろう。
それだけは避けたかった。百合花の知る限り、御坂美琴は超能力者の中で最もこの街の闇に縁遠い。
眩しいほどの輝きを、汚してしまうことは嫌だった。
美琴のためか、自分のためか、死んだあの子のためか。
どうすればいいのか、百合花にはまるで分からなかった。
今回のタイトルは何故か天から降ってきた。多分東方のアレとかその元ネタのクラシックから来たんだと思います。ハイ。
さて、今回の話(というか拙作全体)から学んだことは、「下手くそ初心者のくせに勿体ぶって主人公の過去を隠してんじゃねえよ」ですね。行動理由が分からなくて感情移入がしにくく、おまけに心の動きも不自然。随分と分かりにくい話になっちゃったなあ、と反省中です。
次があるならこの失敗点を活かしたいなあ、と不安になりつつここにメモメモ。
……ていうかまた愚痴っちゃってね? あわわわわわ。
あ、あれですね! こういう日は好きな音楽でも聞きつつゆっくり眠るに限りますね!
それでは失礼をば!