とある魔術と超能力者   作:和菓子

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けっこう長い事ハーメルンで読み専やってたくせにR-18タグ付きの作品は通常とは区別されてるっていまさらながら知った駄作者です。
何て言うか、刺激が強い作品が多いというか……ええい! はっきり言います! 超エロいですね。場違い感マックスです。
というかR18とガールズラブで誤解を与えてしまってるんじゃないでしょうか。もしそうなら作者は頭を床に擦り付けて土下座する準備がある! ……かも。
タグつけてあまり日も経ってないうちから情けないのですが、拙作にR-18ってつけた方がいいんでしょうか? 図々しいですが、その辺の感覚がマヒしちゃってる馬鹿作者にご意見いただければ幸いです。

さて、ごちゃごちゃとすみません。それでは暇つぶし十分間ツアーにいってらっしゃいませ!



1-12. 藍原桜 Partner_or_Rival

 風紀委員(ジャッジメント)一七七支部。初春飾利の在籍する柵川中学に設置された風紀委員支部であり、彼女を始めその他何名かの風紀委員が勤めている。だがその一方で、白井黒子など他支部の人間の出入りも多かった。

 備え付けられた多数のコンピュータが古ぼけた駆動音を吐き出す。どうやらこの支部は設備に恵まれていないようだった。初春がまとめて改造したくなるのも頷ける。

 そんな機械音へと割り込むように高い電子音が響いた。それと同時、ディスプレイが文字を浮かべる。

「完了、と」

 初春はそう言って、手にした音楽プレーヤーを胡散臭げに見つめた。

「それにしても、これを聞くだけでレベルアップなんて信じられませんよねぇ」

「善意の情報提供者はそう仰ってましたの」

 黒子は思い出したように言ってから、何かを考え込むように顎へ手をやった。

「そういえば、今朝佐天さんの様子がおかしかったのですが、初春は何か心当たりはございませんこと?」

 今朝、七月二十一日の朝から、黒子は幻想御手(レベルアッパー)の取引現場を押さえるため方々を慌ただしく回っていた。佐天と遭遇したのはその一つ。たった今初春が抽出したデータを押収したときの案件だった。

 逃げるように走り出した佐天の姿が、妙に黒子の印象に残っている。

 そんな黒子の言葉を聞いて、初春が真っ先に思い浮かべたのがあの音楽プレーヤーだった。何の偶然か幻想御手も音楽ソフト。初春を不安にするには十分な要素が揃っていた。

 だが、確証は何もない。あるのは漠然とした悲観だけ。

 だから、初春は不安な内心を隠して平坦に返した。

「心当たりですか、特には、……」

 と、黒子の端末が着信を告げた。

「……携帯、鳴ってますよ」

「? まぁいいですの」

 黒子は怪訝に首を傾げながら携帯電話を手に取った。

 四角柱を曲げたような形が特徴的だった。ディスプレイ兼タッチパネルを普段は筐体に巻き入れ、必要に応じて引き出して使う、便利なのかそうでないのかよく分からない機能が付いている。全体的に平凡な印象を与えるこの支部に似合わない、やけにハイテクな風体だ。

 黒子はそんな携帯を耳に押し当て、真剣な表情で向こう側の声に耳を澄ませていた。風紀委員の連絡網なのだろう。会話はどこか事務的な感を漂わせている。

「はい、はい、分かりました」

 話は手短だった。黒子は携帯を懐にしまって初春に視線を戻す。面倒だと言わんばかりの黒子の瞳に、初春はほとんど反射的に頬を引き攣らせた。

「また学生が暴れているらしいですの。今朝からどうも私を過労死させる気が満々ですわね……」

 黒子はうんざりしたように肩を竦めて言葉を吐き出す。初春は苦笑しながら、

「あはは……それだけ信頼されてる証拠ですよ。さあさあ! 馬車馬のように働いてください!」

「……うーいーはーるー?」

「痛い! 痛いです! 頭ぐりぐりは卑怯ですよ痛い痛いすみません!」

「全く……でもまぁ、少しは調子が出てきたようですわね」

「へ?」

「いえいえ、こちらのことですのでお気になさらず。……では行ってきますの。初春は木山先生に連絡を、幻想御手の解析をお願いしてくださいな」

 分かりました。と初春がそう言う前に、黒子は空気を裂いて姿を消した。

 

 

 

『ああ、木山だ。こちらにも現物は届いてるよ』

 特徴的な、軽いようで落ちついた声が電話口の向こう側から聞こえた。

「音楽ソフトで能力を上げるなんて、そんなことが可能なんでしょうか?」

 初春がおそるおそるといった風に、否定してほしいと言っているような声音で尋ねる。それを汲んだのか、木山はいつも通りの宙に浮いた声で答えた。

『うーん、難しいね。洗脳装置(テスタメント)ならいざ知らず』

 少しだけ初春の顔が弛んだ。どうやら専門家から見ても幻想御手の原理は考えにくいものらしい。これならば、自分の不安も杞憂で終わってくれるかもしれない。

 そう思ってもまだ、どこか引っかかった感触は燻る火種のように消えてはくれない。

 不安を誤魔化すように、聞きなれない単語のことを尋ねていた。

「テスタメント? そういう装置があるんですか?」

『……、ああ』

 木山の言葉は何故か歯切れが悪い。それが少し気にかかったが、初春は追求しなかった。

 そこから、何でもないやり取りがしばらく続いた。数分後、木山が話を打ち切るようにまとめて、

『まぁ、現状では何とも言えないな。何か分かったらこちらから連絡するよ』

「そうですか……、色々とありがとうございました」

 そう言って、初春は通話を終えた。

「やっぱり、音楽プレーヤーなんて見当違い、ですよね」

 少女の言葉を思い出しながら、不安は思わず言葉になっていた。

 

『刮目しなさい! ――ついに見つけた噂のアイテム!』

 

『チ、チ、チ。中身が問題なのよね』

 

 明るく笑った少女の顔が、初春の目に焼きついて離れない。

 初春は押し黙ってディスプレイを見つめていた。

 携帯電話を握る手に知らず、力がこもる。赤い携帯がほんの少しだけ軋んだ。そのまま件の少女の番号を押して、いつもと同じ呼び出し音を、初春は祈るような気持ちで聞いていた。

 単調なメロディを繰り返し、繰り返し、そしてついに、長い呼び出し音がぶつりと途切れた。

 初春は安堵して、

「あ、もしもし佐天さ――」

『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』

「――」

 聞こえてきたのは佐天の明るい声でなく、無機質な冷たい機械音声。通話を切って、真っ赤な携帯を無造作に机の上に置いた。

「……違い、ますよね。佐天、さん」

 溢れそうな涙を堪えて、初春飾利は小さく呼びかけた。

 

 

 

 睨み合う。薄暗い路地裏で、白井黒子は数人の男達と対峙していた。

「全く、切りがありませんわね……」

 第一七七支部を出てからの数時間でこの手の輩がすでに三件。黒子はうんざりして呟いた。

 男達はというと、黒子の『空間移動(テレポート)』を警戒してか迂闊に攻めこめないでいる。最初の数人がテレポートからのカウンターで沈められたのを見たせいだった。わざわざ敵の得意分野に乗る気はないということだろう。

 黒子としても、不用意に突っ込んで手痛い反撃を受けたくはない。そこそこ統率がとれているようであるし、空間移動で掻き乱そうにも効果はあまり見込めないだろう。黒子の『空間移動』は転移と転移の間に約一秒ほどのラグがある。乱用の隙を突かれることもあり得ない話ではない。

 他には金属矢という攻撃手段もあるにはあるが、これは倒れた相手を縫い止めて拘束するためのもので、直接体内に転移させることはできるだけ避けたかった。

(このまま拘束しようにも、靴を地面に縫い付ける程度では足止めくらいにしかなりませんし)

 何より、金属矢は数に限りがある。相手も少なくはないことだし、考えなしに乱用して肝心なときにありませんでしたでは困る。

 その結果がこの睨み合い。膠着状態だ。

 存外冷静な男達に黒子が焦る。一見互角のこの状況、黒子がやや不利だった。

 現在の学園都市では、幻想御手によって力を得た学生達の暴走が頻発している。そういった事柄の多くに対応しなければならない黒子にとって、いつまでも目の前の男達だけにかかずらわっている暇はない。

 焦る。風紀委員としての責任感が彼女を追いつめていた。

(……仕方、ありませんのっ!)

 苦渋の決断は一瞬だった。黒子は突撃の選択肢を選び取っていた。

 男達に向かって、駆け出す。

 初手は空間移動と踏んでいたのだろう。男達が微かに動揺の色を見せた。

 その隙を突く。黒子は手近な男を標的に定めた。

 踏み込んで、掌打。衝撃が顎を突き抜け、男の脳が揺さぶられた。(うずくま)る男に視線は向けず、黒子は前を見つめた。

(まずは、一人)

 そこで舌打ち。男達はもう動揺から立ち直っていた。

「二人一組だ! 背中をカバーして遠距離で攻めろ!」

 リーダー格らしき男が叫ぶ。統率のとれた集団だった。男達の表情に迷いはない。これではやはり、連続で転移しての撹乱もあまり効果が見込めそうになかった。

「三下では、ないようですわね……」

 呟いた挑発に返ってきたのは、念動力で飛ばされたダストシュート。当たればただではすまないだろうそれを黒子は屈んで避ける。

 そのまま走り出し、念動力使いとおぼしき男の顎を蹴りあげる。……と見せかけ、その後ろに空間移動。念動力使いの背中をカバーしていた男を狙った。

 突然現れた蹴りに驚いた表情のまま、男が仰向けに倒れ気を失った。そのまま念動力使いの首を固めて意識を落とす。

(これで三人)

 残り、六人。

 と、黒子は弾かれたように横へ跳ぶ。瞬間、凄まじいうねりを上げて、風の弾丸が彼女の側を通過した。

「ほぉ……」

 舌打ちを溢す男の背後、リーダーの男が息を漏らし、ニヤリと口角を上げて笑っている。

「一人一人ではお話になりませんわね。……纏めてかかってきては?」

 挑発。それに応えて一組になった男達が一度に能力を放つ。放たれたのは二つの火の玉。どうやら発火能力者(パイロキネシスト)らしい。学園都市では比較的ありふれた能力だった。

 放られた火球がアスファルトを焦がす直前、空気を裂く音と共に黒子の姿が掻き消える。現れたのは発火能力者達の真正面。振りかぶった鞄で、隙だらけの男の頬を強かに打った。勢いをつけてもう一人も殴打。男達がくずおれる。

「お馬鹿さんで助かりましたわ」

 黒子は嘲るように言って髪をかきあげ、

「そいつらは囮だよ。テレポートのタイムラグを突くためのなぁ!」

 リーダーの男が取り出した無骨な拳銃に気づく。

 表情が驚愕に染まった。体は凍ったように動いてくれない。

 このとき黒子が冷静ならば、金属矢を拳銃に転移させて決着だったろう。当初躊躇った突撃を実行したことからも分かる通り、うまく立ち回れば空間移動のタイムラグをカバーすることもできる――はずだった。

 しかし、まずい要因が重なった。

 いくら統率が取れていたとはいえ所詮不良。大きなスキルアウト集団と違い、武装もせいぜいナイフ止まりだろうとタカをくくっていた事。

 そして、黒子のそばに倒れた男がそのままになっていた事。

 黒子は一瞬男に意識を向けて、そこで致命的な隙は生まれていた。

 空間移動の演算をしようにも、不意を突かれた焦りが働いてうまくいかない。

「気づいてねえとでも思ってたのかよ、あァ!?」

 学園都市製の銃にもピンからキリまで存在する。子供が難なく片手で撃てるような怪物もあれば、それなりの修練を必要とするじゃじゃ馬もいた。

 そして、男の手に収まるそれは後者だった。かなりの骨董品。外れた弾丸が仲間の心臓を貫くことだってあり得た。

 それでも躊躇わず、男は引き金にかけた指に力を入れる。

「くっ」

 黒子が思わず表情を歪め、声を漏らしたそのとき、

 

 乾いた音が空気を震わせた。

 

 小気味いい反動が男の肩を叩くと同時、黒子の頭がぶちまけられた絵の具のように爆ぜる。

「くく、ひゃは、ひゃはははははっ!」

 男は狂ったように笑った。体をくの字に折り、愉快で堪らないとばかりに、哄笑。体が力なく転がる音に腹を抱え、手こずらせてくれたお礼に、物言わぬ死体と化した風紀委員を蹴飛ばしてやろうと顔を上げて、

 ――彼はようやく異常に気づいた。

 呆気にとられて、男は目を限界まで見開き口をだらしなく開けていた。

 思いがけず、疑問は口から零れている。

「どういうことだ、テメェ……いつの間に移動しやがった!? テレポートには確かにラグがあったはずだぞ!?」

 白井黒子は健在だった。驚いた表情で辺りを警戒している。

 ただし、先ほどまでとは数メートルも離れた場所で。

「じゃ、じゃあ、さっきの何かが倒れた音は!?」

 男は焦ったように周囲を見回した。

 瞬間、男の耳に音が届く。手下が二人、地面に倒れこんだ音だ。

「!?」

 倒れた男達の周りには何もいない。白井黒子が何かした様子もない。訳の分からない現象に男の頭が沸騰しかけて、

 後ろにいた手下の倒れる音で、一気に背筋が凍った。

 あと、一人。

「ぁ……、ぉぃ、嘘だろ……」

 パクパクと必死に、酸素をかきいれるように乾ききった口を上下させる。

 視線の先には何も、いない。姿は見えず、音もせず、気配すら感じない。

 そう、何もいない、はずだ。

 それでも、突き刺さるような悪寒を確かに男は感じていた。

「ひ、ひぃぃぃっ!」

 引きつけを起こしたように体を震わせながら、男は必死に走り出す。倒れた部下のことなど気にも留めない。

 正体不明の悪寒から、猛獣に怯える草食動物のように一目散に逃げ出し、そして、

 あっさりと、首筋を走った衝撃でアスファルトに沈んだ。

 

 

 

 倒れこんだ男を見つめながら黒子が口を開く。動揺はもうなかった。こんな現象を起こす人物に彼女は心当たりがあったからだ。

「そろそろ出てきてはどうですの? 藍原桜」

 言葉と同時、倒れた男の側で空気が蜃気楼のように揺らいだ。空気の衣を脱ぎ去るように現れたのは藍原桜。黒子と同じ、常盤台中学に所属する風紀委員(ジャッジメント)だ。

「相変わらずですね。手足にでも金属矢をテレポートさせればすぐに片付いたと思うのですが」

 常盤台の制服に風紀委員の腕章といった出で立ち。ダークブラウンの髪を前は切り揃え、後ろは一つに纏めている。銀縁眼鏡をかけた奥で、碧い瞳が静かに瞬いた。黒子の聞いた話によると、確か祖母が外国人だったはずだ。

 そんな事を考えながら、黒子はさも心外だとばかりに半目になった。

「余計なお世話ですの。風紀委員があまり無駄な血を流すものではないですし、そう思うからこそあなたもあの無駄に鮮やかな暗殺術もどきを身に付けたのではありませんの?」

 藍原は首を横に振って、どうでもいいとばかりに何気なく言った。

「いえ、単に能力の力不足をカバーするのに最適だっただけですよ。実弾の使用は流石に認められていませんし」

「はぁ!?」

 黒子が目を剥く。サンタクロースは実在しないと告げられたときのような表情だった。

 その反応をどう捉えたのか、藍原は不審な様子を滲ませて尋ねた。

「……お邪魔でしたか?」

 コテリと首を傾げる。可愛らしい仕草と少女特有の甘い声質に反し、人形のような無表情と冷たい話し方がちぐはぐな少女だった。

 黒子は悪夢を振り払うようにぶんぶんと首を左右に振り、不機嫌そうに言った。

「お邪魔でしたわ。……で、何故あなたがここに?」

「白井様ならお分かりかと。現在、風紀委員には能力者達の暴走を抑える役目が与えられているはずですので」

 言いながら、藍原は倒れている男達の腕を無造作に拘束していった。

 それを手伝いながらも、しかし黒子は怒ったように声を荒げる。

「そういうことではありません、どうしてあなたはわざわざ(わたくし)を助けたのかと聞いているんですの!」

 常とは違う、微かに敵意のこもった声だった。

 白井黒子は藍原桜が気に食わない。藍原も黒子のことが気に入らない。

 故に、藍原桜は白井黒子の天敵で、それは向こうからしても同じはずだ。

 ならば何故藍原は黒子を助けたのか?

 何も藍原が黒子を見殺しにするような人間だと言っているわけではない。

 ただ、黒子は現在オペレーターを特に付けずに行動している。ならば当然、彼女の危機を知らされてそこから動いたということはありえない。

 藍原が初めから黒子に接触しようとしていたと仮定して、ならどうして彼女は黒子に近づいたのか?

 自分の天敵をわざわざ探していた理由は何だ。

 黒子の問いに藍原は表情をピクリとも動かさず、何の気なしに言った。

「ツーマンセルで互いの生存率を大幅に上昇させるパートナー、という条件に最も相応しいのが白井様だと判断しました。私一人では戦力に不安がありますから」

「……どの口が……!」

 黒子は釈然としない様子だった。そこへ被せるように、藍原が冷たい声で言う。

 黒子と藍原が永遠に相容れない、その確執の一端を。

「白井様の主義主張を認めたわけではありません。貴女は少し強引過ぎます」

「ぬ……、まだ分からないとは、哀れな女ですわね!」

 黒子は射殺さんばかりに藍原を睨みつける。

 藍原は首を横に振って、そんな黒子を蔑むように、

 

「私は、媚薬を使ってまで百合花様と関係を持ちたいとは思いません」

 

 緊迫した雰囲気を物の見事にぶち壊した。黒子はツインテールを荒っぽくかきあげて藍原を嘲笑う。

「はっ! そういうプラトニックな子供っぽさが受けると思ってますの? 己の中の欲望を認めず逃げ続けるだけとは、全くもって愛が足りませんの!」

 少女達のあんまりな論争が薄汚れた裏路地に木霊した。街中ならどうなっていたことやら、そんな事は気にも留めず、少女達は己の主張をぶつけ合う。ホント何だこれ。

 黒子の言葉に藍原が不審げな表情を見せて、

「その愛の媚薬作戦とやらの結果、どうでしたか?」

「……、愛が足りませんの!!」

「……大体分かりました」

「キィィィィィッ! あなただって言葉で告白してものらりくらりとかわされるだけではありませんの!」

「……、痛いところを突きますね」

「ほうら見なさい! 『光学操作』なんて便利な能力が宝の持ち腐れですの!」

 ビシィッ! と指を突きつける黒子を気にすることなく藍原は言う。

「私の力は百合花様を傷つけるためのものではなく、あの方の敵を殲滅するためのものですので」

「黒子だってそうですの! お姉さまのお役に立ちたいですの! ただしその過程でお姉様の裸をじっくり鑑賞したりするのも不可抗力というかなんというか……ぐふ、ぐへへへへへ」

「否定はしませんが、あなたはあからさま過ぎます。少しは慎みを持たれては?」

「聞こえませんの! そうだ! 今度その便利な能力をお貸しなさい」

 暴走する黒子に藍原は軽く息を吐いた。

「……、一応聞いておきます。何に使うおつもりですか?」

「盗撮ですの! 『光学操作』ならお姉様に気づかれることなく真正面からのレアアングルや際どいローアングルなども自由自在……ふふ、ぐふふ、へへへへへへ」

「……、それくらいなら、まあ、いいんじゃないですか」

 それで良いのか大能力者達(レベル4)。お前らホントは仲良いだろ。

「(電磁波レーダーに引っかかる気もしますが、これで大人しくなれば御の字です。……私だけでも今から言い訳を考えておかなければ)」

 やっぱりそんなことはなかったらしい。藍原は百合花以外には意外とヒドイ少女だった(百合花への行動がヒドイかそうでないかはさておき)。

「何かおっしゃいまして?」

「いえ何も」

「ならいいですの……ぐふふふふ」

 ぼそりと零す藍原を深く追及することもなく、黒子の不気味な高笑いが裏路地に響いている。藍原は無表情の奥でこっそりと笑みを浮かべた。それに気づかず、黒子は浮かれた気分を持て余したように叫ぶ。

「そうと決まればさっさとこんな仕事終わらせてしまいますの!! 藍原、次の現場に向かいますわよ!」

「はい、通報を受けてまだ風紀委員が向かっていないフリーの事件が……ええと、十七件ですね。とりあえず近場から行ってみましょう」

「……やけに多いですわね」

「日頃の鬱憤が爆発したのでしょう。まだまだ増えると思いますよ、この街は治安良くないですし」

 二、三日は最寄りの支部で寝泊りですね、と憂鬱なため息を吐く藍原をよそに、黒子は興奮した調子で言った。

「上等ですのッ!! お姉様のローアングルのためなら、この程度(わたくし)には何の障害にもなりませんわ。それに、私達もそろそろ決着を着けるべきだと思いません?」

 黒子の鋭い眼光をさらりと受け流して、藍原は落ちこんでいるだろう敬愛する一つ上の少女の事を考えていた。眼鏡のレンズが微かな光を反射して弱々しく照っている。

 大声で呼びかける黒子にわき目も振らず、藍原は上の空で路地裏の汚れた地面を見つめていた。

 黒子の拳骨が落ちてきたのは次の瞬間だった。藍原が頭を押さえながら黒子を見ると、

「少しはこちらの話も聞いていただきたいものですわね」

「……すみません」

「それで、ここから一番近い現場というのはどこですの?」

「白井様の携帯にも情報が送信されているはずですよ」

 聞いて、黒子は藍原にきょとんとした顔を返した。慌ててメールを確認し、悔しそうに表情を歪める。

「むぅ、忙しすぎて気づきませんでしたの」

 拘束した男達に視線を向けながら、藍原はそんな白井を全く気にせずに尋ねた。

「この方々の回収はどうします?」

 失態をスルーされたのが何となく複雑。そんな表情で黒子は答えを返す。

警備員(アンチスキル)に連絡を入れて引き取ってもらいますの」

 てきぱきと携帯電話を操作して手短に通話を済ませる。携帯をしまいながら、黒子は藍原の手を取って空間移動。

 空気を裂く音と同時、波乱の三日間が始まった。

 




あとがきに何を書こうか、いやいっそ何も書かないのもアリか。なんて考えながらも結局書いてる馬鹿が一人おります。
光学操作って実際どんなことができるんでしょうね。作者の知る限り原作ではおそらくたぶんメイビー実際に出たのはレールガンのトリックアートさんだったように思えるんですけど……うん、しょっぱい。ほぼテレポーター専用じゃないですか。
やっぱ中二的にはこう幻術使いとかカッケーと思うわけですよ作者は。NARUTOの月読を見たときは思わずはしゃいでしまいましたね。何だあれ、幻術で一つの世界造るとかかっこよすぎだろ、と中二心に思ったものです。……っと、微妙に脱線してました。
結論を申しますと、藍原さんはそのうち忍者の末裔とかいう設定になっちゃうかもしれません(アレ?)。
では、よく分からない結論に至った頭を捻りつつ、駄作者はここらで失礼します。
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