ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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少女は案じる。想い人と友人を。

少年は走る。約束を今度は守れるように。


第64話 毒蛇は静かに獲物を狩る その①

体育館、舞台裏───

 

体育館の表舞台には、二年生の先輩達がバンド演奏をしている。

 

男子1「…えーと、先輩の後1-Bの漫才で次がオレら?」

 

男子2「く〜〜〜〜!キン・チョ〜してきた〜‼︎」

 

女子1「ぜったい成功させるよー⁉︎」

 

女子2「おーーーー‼︎」

 

小咲「………いよいよだね一条君。頑張ろうね」

 

ジュリエットの衣装を着た小咲が承一郎に話しかけた。

 

承一郎「ああ、まぁやるだけやってみよう」

 

…あの一件以来、承一郎と千棘は全く口を利いていない。結局承一郎はまだ殴られた理由も分からないままだ──

 

承一郎(…どうすれば良かったんだ。何やっても怒るんじゃあないか…。──ってもう考えても仕方ない。今はこっちに集中集中…)

 

小咲(…あの日の事、一条君に聞いても何も答えてくれない。二人の間に…何があったんだろう…。千棘ちゃん、劇も観に来ないつもりなのかな──…)

 

男子3「うわ〜〜!あと一時間半かぁ〜‼︎」

 

男子4「やべ、超ドキドキしてきた〜‼︎」

 

女子3「ほら!早く準備済ませて!」

 

小咲「‼︎」

 

舞台裏の幕の間からは、体育館を埋め尽くす程の観客が集まっていた。

 

小咲(う〜〜、やっぱり緊張してきた〜。こんな大舞台、私生まれて初めてだもん…!でも…頑張らなきゃ…!一条君だった一緒なんだし、大丈夫…!あんなに練習もしたしセリフも暗記したし…大丈夫…‼︎)

 

小咲(…もっかい台本読んだこう…)

 

女子4「ちょっとー!危ないよー?」

 

女子5「大丈夫!あとちょっとだからー!」

 

女子が脚立で舞台のセッティングをしていた。

 

しかし、もう少しで舞台のセットに届くところで足が滑ってしまう。

 

女子5「あ⁉︎」

 

小咲は女子を受け止めようとするが──

 

 

 

 

 

承一郎と集は劇の最後の最終確認していたが、

 

女子6「キャーーーーー‼︎」

 

という女子の悲鳴の方に気づき、その方向へ向かった。

 

女子7「どうしたの⁉︎」

 

女子8「大丈夫⁉︎」

 

女子5「…ごめん寺ちゃん…!ごめん…‼︎…私が脚立から落ちたのを寺ちゃんが受け止めて…。でも…寺ちゃんが…」

 

承一郎(──…!小野寺君…‼︎!?)

 

そこには女子達とキョーコ先生、そして座っている小咲がいた。

 

小咲「痛っ…」

 

キョーコ「………うーん、こりゃ完全に捻挫だね。骨に異常は無いと思うけど…………小野寺…残念だけど本番は…」

 

キョーコ「…代役の橘は?」

 

女子9「…それが、橘さん今日風邪ひいて休んじゃって…」

 

キョーコ「………こりゃあ良くないね」

 

小咲「……先生、私やります…!」

 

キョーコ「やりますったってあんた…まともに歩けもしないでしょう?ちゃんと安静にしてなきゃダメ!」

 

キョーコ「…おいそこのロミオ!」

 

承一郎「え⁉︎」

 

キョーコ「あんたちょっとジュリエットに付いててあげな。先生ちょっと対応を考えるから、みんなは一応準備を続けてて。以上解散!」

 

先生が話を一回切り上げて解散するが、誰もが不安を抱いていた。

 

承一郎「……大丈夫かい?小野寺君」

 

承一郎は小咲の隣に腰かけた。

 

小咲「…うん」

 

承一郎(…どうしよう、すごい凹んでるよ小野寺君…。そりゃそうだよな、あんなにいっぱい練習も頑張ってたし、家でもずっと練習してたみたいだし…。よっぽどジュリエットやりたかったんだろうな…)

 

承一郎(僕には何か出来る事なんて……ん?…ある…?)

 

承一郎「…小野寺君」

 

小咲「…何?一条君?」

 

承一郎「まだ終わっていないかもしれない…」

 

小咲「えっ…?」

 

承一郎「僕の『波紋』の呼吸による治癒で小野寺君の足の捻挫を治せるかもしれない!」

 

小咲「えっ⁉︎ホント⁉︎」

 

承一郎「ああ!骨折までは治癒する事は出来るんだ!捻挫なんて簡単だ!なんでこんな事気づかなかったんだ…?」

 

そう、承一郎は『幽波紋(スタンド)』使いである前に『波紋』使いなのだ。何故さっきまでそんな事に気付かなかったのか自分を疑った。

 

それはともかく、これで小咲の捻挫が治れば劇は中止にならない。だが──

 

小咲「……いや…ダメだよ…!千棘ちゃんを呼んできて…!」

 

──小咲はその提案を断った。

 

承一郎「ッ⁉︎なんでだい⁉︎僕ならその捻挫を治せる!そうしたら劇にも出れ…」

 

小咲「…確かに、私も劇に出たいよ。…でも、千棘ちゃんと仲直り出来るかもしれないんだよ!それを逃しちゃダメだよ…!」

 

承一郎(…なんて子だ…)

 

小咲は治せるのに、承一郎に千棘と一緒に劇に出るように言っている。

 

つまり、自分より千棘との仲が改善される事を優先しているのだ。

 

この捻挫もクラスの子のため。そして承一郎に言った事も承一郎と千棘のため。

 

なんていう甘さだろう。なんという自己犠牲だろう。自分より他人を優先する心。

 

まるで承一郎の父、ジョナサン・ジョースターに添い遂げるハズだったエリナ・ジョースターと同じような聖女。

 

小咲「お願い…一条君…」

 

まるで、自分の母のような慈愛の精神──

 

 

『お願い…承一郎?』

 

 

承一郎「ッ⁉︎」

 

死んだ母の最後の言葉が思い出され、死んだ母と小咲が重なる。

 

小咲「一条君…?」

 

承一郎「…大丈夫、分かった。待っててくれ、この劇、中止になんて絶対にさせない…‼︎」ダッ!

 

承一郎は走った。母と重なった想い人の頼みを叶えるために。

 

今度は、約束を守れるように。

 

 

〜千棘side〜

 

私は特にやる事はなく、一人でぶらぶらと歩いていた。

 

…あと一時間ともう少しで本番が始まる。私はまだ観に行くか迷っていた。

 

…何やってるんだろ、私。どうして…こんなんなっちゃったんだろう…。あいつの顔見るとモヤモヤしてどうしても素直になれない。

 

なんであの時あたし、あんな事言っちゃったんだろう──…

 

『私達が本当に恋人だったら、私達上手くいってたと思う…?』

 

『そんなもの、上手くいくわけないだろう』

 

『…だいたい君は僕の好みと違い過ぎるしね。がさつだし暴力的だし、かわい気がもないし…』

 

『どーせ今と同じケンカばっかになると思うよ』

 

 

そーよ…元々上手くいくわけなかったのよ、あいつとはだってあいつと私は正反対で…私達の関係は…ただのニセモノで…。

 

………ああ、もういいか。どうせもう、完璧嫌われたし───

 

きっとこのまま、この関係もおしまい──…

 

千棘「ッ⁉︎」

 

そんな事を考えていた時、急に後ろから何かで口を押さえられた。

 

私は急いで後ろから襲いかかってきた奴を振り払おうとするけど、口に押さえられた物に薬品が染み込んでいたらしく、あっという間に意識が朦朧としてきた。

 

千棘(……承一郎…)

 

私は最後にニセモノの恋人の名前を心の中で呟いて、意識を手放した。

 

 

<=to be continued=




文化祭は考えた結果、承一郎&ジョニィ活躍回にする事にしました!

それではまた次回!

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