ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子── 作:GIOGIO
劇は拍手喝采雨あられのフィナーレを迎え、大成功に終わった。
クロードは先生達や千棘の親父さんに罰せられた。まぁ劇に本物のレイピアを持って乱入したんだ。当然だろう。まったく、クラスの皆が作ってくれた衣装がボロボロになってしまった。
僕は体育館の外で体育館を背にもたれかかっていた。ジョニィが劇を演じていたけど、その疲れは僕達の体に蓄積されるわけだから、疲れるのは仕方ないんだ。
僕は疲れと外の心地よい風が少し気持ちよくてついこっくりこっくりと眠りこけてしまっていたけど、
承一郎「うおっ‼︎?」
首筋に冷たい物が当たってびっくりして起きた。
振り返るとそこにはコーラの缶を二つ持った千棘さんがいた。
千棘「………おつかれ」
承一郎「………またベタな事を……」
彼女はコーラ缶を一本僕に渡した。僕はそれを受け取った。
千棘「一度やってみたかったのよ。いいでしょ?かわいい女子マネみたいで」
千棘さんは僕の隣に座って言った。
承一郎「…自分で言ってれば世話ないよ」
千棘「…なんとか上手くいった…かな?」
承一郎「……十分でしょ。お客さんの反応見ただろう?…大したものだよ、ぶっつけ本番であそこまでやれれば。セリフも結局ほとんど覚えていたし…。まったく…こっちがどれだけ苦労して覚えたと思って…」
千棘「ふふーん、いいわよ。もっと誉めなさい」
承一郎「はいはい、スゴイスゴイ」
千棘さんはコーラを飲んだ。
千棘「…なんだか似てるわよね、この話と…私達……」
承一郎「ん…」
千棘「お互いの家が争ってて、そこの二代目二人が恋人同士…。ま、一番違うのは私達が本当は恋人同士じゃあ無いって事だけど」
承一郎「………そこが違ったら全然似てないよ」
千棘「あはは、確かにそーね」
承一郎「………」
千棘「……ゴメン…」
承一郎「え」
千棘「ここんとこずっと…色々おかしくなっちゃってて、ゴメン……。態度とか…悪くなってゴメン……。ヒドイ事色々言ったり、顔…ハタいちゃってゴメン……」
千棘「…………もう、戻るから。ちゃんと…前みたいに…いつも通りに戻るから…。前の…何もかもが正反対で…お互い大嫌いのニセモノカップル…。ちゃんと戻るから…」
千棘「だから…その……許してくれる?」
僕は少し考えて言った。
承一郎「……別に良いんじゃあないか…?…お互い大嫌いのニセモノカップルなら、そりゃあケンカぐらいするだろうしね…」
千棘「…さっきは私の事『嫌いなんかじゃあない』って言ったクセに…」
承一郎「ええっ‼︎?いや君…!今自分から嫌いって言い出したんだろう⁉︎」
千棘「あの言葉はウソだったのかしら?」
承一郎「いやいや何言ってるんだ君は…。君は嫌って欲しいのか欲しくないのかどっちなんだ‼︎」
承一郎「…まったく……なら君はどうなんだい?僕の事、嫌いなんじゃあないのかい」
千棘「………………私はそりゃあ…」
千棘「…もちろん、大っ嫌いよ」
彼女は笑顔で言った。
その笑顔に、僕はついドキッとした。
千棘「……ねぇ。時間もまだあるし、私あまり文化祭見れてないからさ…あんたがどうしてもって言うなら付き合うけど、どうする?」
承一郎「……まったく、しょうがないな」
…なんなんだ…その顔は。ホント…劇の前までがウソみたいに元気になって────…
どうしてここまで180度態度が変わったのか…。
『………嫌いなんかじゃあねぇよ……』
…彼女は、今まで僕に嫌われてると思ってたからあんなに怒ってたって事なのか…?
…それって──…?
キング・クリムゾン‼︎
一年C組の教室───
集「…それでは皆の衆…!」
一同「「カーーンパーーイ‼︎!」」
皆の声と共に、それぞれ飲み物が入ったコップを掲げた。
皆は千棘さんに集まっていた。ほぼぶっつけ本番であれほどの演技をやってのけたんだ。注目されて当然だ。
集は鶫さんに追い回されている。あのアドリブに相当怒ったのだろう。
承一郎「コォォォォ……よし、もう大丈夫だよ」
小咲「…うん、ありがとう一条君」
僕は捻挫した小野寺君の足を波紋の呼吸法で治癒した。治療のためだとはいえ、好きな子の足に触るのには少し照れてしまった。
小咲「…そういえば橘さんは…?」
承一郎「…さっき見舞いを行って来たよ。まったく無茶しちゃって…。一応波紋の呼吸法で大分楽になったみたいだけど」
僕は小野寺君の隣の席に座った。
小咲「そっか…」
小咲「…仲直り出来たんだね」
承一郎「…ああ……ありがとう、小野寺君。君は僕と千棘さんの事を考えて自分が演じられたジュリエットの役を…。ジュリエットを一番演りたかったのは他でもない小野寺君だろう…?」
小咲「あはは……うん…まぁそうなんだけど…」
承一郎「…何か思い入れがあったのかい?」
小咲「…え?」
承一郎「その…ジュリエットを演る事に…」
小咲「………いや…それは…その……」
承一郎「…?」
小咲「………そうだね………うん……。とても個人的な事なんだけど…本当は…どうしても演りたかった…かな。私にとってはとても、特別な思い出になったような気がするから」
承一郎(………そんなに……)
承一郎「…ねぇ小野寺君、もし小野寺君さえ良かったら…」
小咲「…?」
キング・クリムゾン‼︎
夕暮れ、学校の屋上───
屋上からは、沈みかけた夕日が赤く輝いていた。
小咲「…わあ〜〜!すごい…!キレイな夕日…」
僕と小野寺君はロミオとジュリエットの衣装を着て屋上に出た。
承一郎「…ここなら誰もいないし思いっきり出来るかな」
小咲「うん…少し照れるけどね」
承一郎「……それじゃあ…」
小咲「…うん」
承一郎「………………いや〜…やっぱりこういうのかえって緊張するよね」
小咲「…私だって恥ずかしいよ…!」
承一郎「…では」
僕は一旦気を引き締めて、言った。
承一郎「…愛しのジュリエット。僕は君と僕とを隔てるすべてが憎い…。なぜ神は僕達にこのような試練を与えるのだろう──」
それは劇のセリフ。僕は小野寺君とここで演れなかった『ロミオとジュリエット』を演ろうと考えたのだ。
小咲「……ああ、なぜ私達の両親は憎み合い争うのでしょう。本当ならきっと私達のように手を取り合い、想い合う事も出来るというのに」
小咲「私のロミオ様を想う気持ちの半分でも理解して貰えたならきっと……」
僕は小野寺君を見る。この光景を瞳に焼き付けるように。
この
承一郎「……いけないジュリエット。もうお別れの……「一条君…」」
小野寺君がセリフの途中に声をかける。僕は小野寺君を見る。
小咲「……ありがとう。…嬉しい…凄く嬉しい……!」
風が小野寺君の髪を揺らす。
…ありがとうと言いたいのは僕の方なのにな…。
承一郎「…もうお別れの時間だ。明日の夕暮れ、またあのバルコニーに会いに行くから──…」
僕は小野寺君の前でしゃがみ、言った。
承一郎「…またきっとそこで待っていてくれるかい…?」
小咲「…はい、待っていますわ。ロミオ様」
秋、木枯らしの吹き始める夕暮れ時、高校最初の忘れられない文化祭が今、幕を閉じた。
<= to be continued=
原作で最後に楽が間違えるシーンを変えてみました。
こっちの方がしっかりくると思いましたので。