ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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今回はポーラ登場回の前です。

牙といったら分かる人がいると思いますけど、温かい目で見守ってもらえれば恐縮です。


第78話 新しき牙

一条家、地下修練場───

 

承一郎「………」

 

承一郎は修練場の真ん中をゆっくりと進んでいる。

 

ステファノを始末した後、情報を絞り尽くした承一郎はそこから組織を探ろうとしていたが、全世界に情報の網を張り巡らされているせいで完全には不可能だった。

 

しかしこのまま何もしないというわけにもいかない。今は力をつけるべきだ。もっと、誰にも負けないように。皆を守れるように。

 

今の承一郎にはいくつか課題がある。

 

1、波紋と吸血鬼の能力を強化する

 

2、『クリスタル・ボーン』および『ブラッディ・シャドウ』の能力の応用を考える

 

1の方はすでに目処はついている。夏休みの時に静・ジョースターに波紋の呼吸の修行法を教えてもらったのだ。

 

静はジョセフ・ジョースターの養子で波紋の後継者だ。独学の承一郎とは違い効率の良い修行法を知っていた。これなら波紋をさらに強化出来そうだ。

 

吸血鬼の能力は唯一のオリジナル技である闇を破る雷光(ブレイク・ダーク・サンダー)の一点集中の修行が必要だ。ただ周りに放出するだけでは威力も半減してしまう。

 

他の技は父であるDIOと同じレベルまで精度を上げる事が出来ている。ひとまず問題はないだろう。

 

さて、問題は2の方だ。

 

これからはより強力なスタンド使い達と戦闘を行うハズ。自分の能力にバリエーションを増やすべきだ。『ブラッディ・シャドウ』は現在のところ打ち止め状態だ。つい半年前に発現したばかりの能力なのでもう少し能力の全容を把握してからでも遅くはない。

 

だとしたら強化するべきは『クリスタル・ボーン』の方だ。中学の頃から発現してからずっと使い続けてきた能力。体の骨から刃を生成する能力は暗殺の任務の時に非常に役に立った。

 

それをさらに発展しよう。そう思い承一郎はこの修練場に来たのだ。

 

承一郎「近距離での戦闘は今のところ問題はない。そうなると遠距離戦がネックになるな…」

 

承一郎とジョニィのスタンドを入れ替える時間には少しのタイムラグが発生する。敵はそんな時間を呑気に自分に与えてくれるだろうか?NOだと断言出来る。

 

そんな中、射程外への決定打にかける。傭兵時代の頃はよく狙撃手(スナイパー)には苦労した。ひたすら気配を消し、自分の有利とする接近戦に持ち込むしかないのだから。

 

承一郎「だとしたら必要なのは遠距離への攻撃手段か…」

 

骨のナイフもあるのだが、所詮はナイフだ。いくらスタンドで投げてもスピードには限界がある。銃のような速さが勝負を分ける。

 

承一郎は左手の人差し指を的に向かって構える。そして、能力を使う。

 

ダァン!

 

人差し指が吹っ飛び、そこから一発の弾丸──いや、人差し指の骨が放たれた。

 

承一郎が参考にしたのはジョセフがかつて太陽の光を浴びせて機能を停止させた吸血鬼を超えた生命体、柱の男達の一人であるサンタナだった。

 

サンタナは撃ち込まれた弾丸を指先に集めて撃ち返すというなんとも強力な力を持っていた。

 

承一郎「…ダメだな、これじゃあ指先がブッ飛んで使い物にならない」

 

破裂した後にゆっくりと修復されていく人差し指を見て承一郎は呟いた。

 

考えとしては悪くない発想だ。骨を操る自分ならではの着眼点だと思う。けれど指が吹き飛んでは連射は不可能だ。それに威力も今ひとつといったところだ。

 

いつもから指先をライフル弾のように骨を変化したらどうなるだろうかと考えるが、それでは生活に支障が出る。

 

承一郎「どうするか…「どうしたイチ、また考え事か?」ッ‼︎」

 

承一郎は背後からの声に反応し、裏拳からの回し蹴りを背後に打ち込んだ。

 

しかしその一連の攻撃には手応えはなく、声をかけた人物──一条一征はいつの間か間合いを取っていた。

 

一征「背後からの気配を感じ取れないとはまだまだ修行不足だな、イチよ」

 

承一郎「…父さんが規格外なだけでしょ。気配が消えているのなら分かるけど気配が無い(・・)なんて歴戦の強者でも不可能だよ」

 

本当にこの養父は規格外だ。自分で言うのもなんだが、自分より化け物らしい人だ。自分と亡き友信乃に剣を教えたのは竜だった。そしてその竜に剣を教えたのはこの一征だし、承一郎に弾丸を刀で叩っ斬るなんて事を教えたのも一征だった。

 

規格外中の規格外、それが承一郎が思う一征の印象だった。

 

承一郎「…それで?今日はどうしたんですか?」

 

一征「いやな、今日はおめぇがどれだけ成長したか見てやろうかと思ってよ。久しぶりに勝負しねぇか?」

 

承一郎「…いいですね。今日こそ父さんに勝ってみせますよ」

 

承一郎と一征は距離を取り、木刀をそれぞれ手に構える。

 

ズンッ‼︎

 

と一征から圧倒的なスタンドパワーのオーラが溢れ出る。

 

承一郎「ッ‼︎」ズンッ‼︎

 

承一郎も負けずとオーラを放つ。

 

この勝負、もちろんスタンドもアリだ。もっとも、スタンドを使っても一征相手には勝算はほぼないに等しいのだが。

 

フッ…!

 

突然、一征の姿が消えた(・・・)。いつもの事だ、あの集英組最強の組長は神出鬼没の男である。だが承一郎は目を離してなんていない。

 

ヒタ…ヒタ…

 

承一郎「ッ…‼︎」

 

足音が聞こえる。それはさっき一征が消えた場所からだ。

 

彼は仁義を重んじるヤクザの組長であるが、家業柄敵を作る事は珍しくはない。ではなぜ一征は街を護衛も付けずにフラフラと回っても大丈夫なのか?

 

その秘密は、彼のスタンド能力にある。

 

ヒタ…ヒタ…

 

まただ、また足音が聞こえる。しかもだんだんとこちらに近づいている。

 

しかしやはりといったところだろうか、体は依然動かない。いや、反応しない(・・・・・)といつたところか。

 

ピクッ!

 

体が動ける!そして、一征の姿が見えるッ!

 

承一郎「ハァァッ‼︎」

 

その瞬間を見逃さず、承一郎は木刀を振るう。骨で加工された刃だ。ただの木刀でも凶器になるにもかかわらずこの一撃はまさしく必殺の一撃。

 

そのハズだった(・・・・・・・)

 

フワッ…!

 

刃は一征の体に当たり、一征の姿が陽炎のように、いや水面に映った月のように揺らめくだけだった。

 

承一郎「くっ…!」

 

しまったと思った。コレ(・・)は一征のスタンド能力の応用で作られた幻ッ…!

 

一征「ここまでだな、イチ」ピタッ!

 

承一郎「…また負けたのか」

 

いつの間にか一征は承一郎の懐に入り、喉元に木刀の先を向けていた。

 

一征「これで423戦中423勝だな」

 

承一郎「…相変わらず反則的ですね、そのスタンド能力」

 

一条一征のスタンド『明鏡止水』、その能力は視覚認識を操る能力だ。

 

本来人間は目、耳、鼻、手足などの末端神経から情報が脳へ送られて初めて認識する。しかしその認識がされていなかったら?反応の仕様がない。

 

パワーもスピードも、どんな能力も無意味になる。それが一条一征のスタンド能力だ。

 

一征「俺が負けるなんて事があったらお前に正真正銘の二代目組長の座を譲ってやるさ」

 

カラカラと一征は笑った。未だに承一郎は一征に勝利した事がない。肉弾戦でも、剣術戦でも、スタンド戦でも。全てにおいてこの男には勝てない。だが承一郎は勝たなくてはならない。この大きな壁一つ越えられぬ男では、何も守れないのだから。

 

一征「…そういえばイチ、さっきは何を悩んでいたんだ?」

 

承一郎「…実は…」

 

キング・クリムゾン‼︎

 

一征「…なるほどな、『クリスタル・ボーン』での遠距離への攻撃手段、それも銃並みのスピードときたか…」

 

承一郎「父さんから何か考えはありますか?指先の骨を撃ち出すっていうやり方じゃあ連射も出来ないんです」

 

一征「うーむ…そうだイチ、『爪』はどうでい?」

 

承一郎「『爪』ですか?」

 

一征「おうよ、詳しくは知らねぇが爪も骨と似たようなもんだろう?」

 

承一郎「父さん、爪はあくまで皮膚の角質が変化して硬化したもので骨とは違い…いや、待てよ?」

 

一征「ん?どうした?」

 

承一郎「いけるかもしれない…!ありがとう、父さん!」

 

承一郎は再び左手の人差し指を向けて構える。

 

承一郎(今度は爪に、骨を…!)ズズッ…

 

瞬時に骨が爪と同化された。これなら急な戦闘時にも使えるし日時生活に支障をきたす事もない。

 

承一郎「今度は…『回転』だ」

 

銃にはライフリングという機構が備わっており、弾丸が放たれる時に回転がかかりジャイロ効果という効果を発揮して、弾道の安定と直進性を向上させるのだ。

 

それとは違うが、『回転』が鍵を握る。何故だか分からないが、そう承一郎は本能で感じ取っていた。

 

承一郎(『イメージ』は…なんとなくだけどある。弾丸のような螺旋状じゃあなく…風の中の木の葉がバレエ・ダンサーのようにくるくる『舞うイメージ』…)

 

これから『回転』させるのは『弾丸』ではない、『爪』だ。『弾丸』のような『回転』は不要だ。

 

承一郎(能力で…回すッ!)

 

シル…シルシル…ッ!

 

承一郎「‼︎」

 

一征「へぇ…!」

 

『爪』は爪床を軸にして浮いた状態で『回転』が発生した。まるで指先で小さな竜巻が起こっているみたいだ。

 

承一郎「これならッ…‼︎」

 

承一郎はそのまま的に向けて撃とうとすると、

 

バリィィィッ‼︎

 

左腕が裂け(・・)、中から干からびた左腕が現れた(・・・・・・)

 

承一郎「なっ…⁉︎」

 

承一郎は突然の事に驚くも、ステファノの男の話を思い出し、直感した。

 

承一郎(これがッ!これがステファノが言っていた『聖なる遺体』ッ⁉︎)

 

ボゴォォッ‼︎

 

『遺体』の手の平に穴が空いた。まるでイエス・キリストに穿たれた聖痕(・・)のように。

 

その瞬間、

 

ドバァッ‼︎

 

人差し指の爪が凄まじい勢いと共に放たれ、

 

ドゴォンッ!ベキィッ!

 

的を突き抜け、そのまま修練場の壁に深いヒビを入れてやっと停止した。

 

承一郎「この威力ッ…‼︎」

 

一征「…どうやら、問題は解決したようだな、イチ」

 

承一郎「…はい、ありがとうございます父さん」

 

承一郎はまた生え直される爪を見る。

 

承一郎「これはもう『爪』を超えた…これからは『牙』と呼ぼう!『水晶の牙(クリスタル・ファング)』だッ‼︎」

 

『クリスタル・ファング』、それは承一郎が結成した部隊の名だ。皆でだ、皆で敵の喉に喰らい付こう。

 

そう、胸に誓った。

 

 

<=to be continued=




スタンドプロフィール

明鏡止水

本体:一条一征

ステータス
【破壊力-0/スピード-0/射程距離-B/持続力-A/精密動作性-0/成長性-D】

視覚認識を操る能力。その能力の前では敵は自分の首が落ちるまで一征を認識する事も出来ずに死を迎える。

敵から認識されなくなるという本来の使い方から、認識をずらして幻を作り出したりする『鏡花水月』など応用性は高い。

元ネタは『ぬらりひょんの孫』のぬらりひょんの畏。


ついに出て来た絶対殺すマンの鱗片。承一郎の骨の能力でどうやって爪に結びつけようと考えた結果、爪を骨と同化させてしまおうという考えに発展してしました。

次回、『学校の前で銃撃戦とか狂ってる』

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