ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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はい、本編で久々のマザーベース回です。

MGSキャラはもちろん、あの二人も登場します。

では、どうぞ!


第88話 新たな抑止力と恐るべき悪ガキ

どうしてこんな事に。それが青年の脳裏に浮かんだ第一声だった。

 

この男は日本人ジャーナリストだ。今なお紛争が続いている地帯へ赴きその現状をカメラに収め、帰国して本にして出版する予定だった。

 

しかし世の中そう上手くいくわけではない。次の瞬間、閃光と爆音によって男の目の前に広がったのは破壊された建物とさっきまで話していた現地の人々が血まみれになった姿だけだ。

 

あまりの恐ろしさに逃げようとしたが、銃を構えた男達に囲まれて顔を袋で覆われた。そのままされるがままに車に乗せられ、気付いたらそこには銃を持った数人の屈強な男達とカメラだった。

 

後ろに銃の硬く冷たい感触を感じ、冷や汗が流れた。

 

青年(まさか、俺を使って身代金を…?)

 

紛争を行う反政府軍や過激派組織などの武装集団の資金はどこから集まるのか?それは身代金である。中東ではよくある事だ。

 

『テロリストと交渉しない』と体裁は整えているものの、秘密裏には身代金を渡して解放させる。しかし各国政府は表向きには否定する。現在では『誘拐経済』という新しいビジネスが成立している。

 

自分はその人質になっているのだと青年は理解した。男の一人がある新聞が手渡される。新聞の日付は今日だ。恐らく録画した後にインターネットに流して公開するつもりだろう。

 

現在の電子網(シギント)は全世界を覆う程だ、政府も無視は出来なくなる。窓を見る限り現在の時刻は夜。どうにかして抜け出したいが数人の男達を突破して脱出する前に体中をハチの巣にされる事は間違いない。

 

青年の目からは涙が流れ、嗚咽を漏らした。自分で飛び出して捕まって、惨めな気持ちで国に帰るのだ。いや、無事帰国出来るかも分からないのだ。

 

男の一人がカメラを操作して録画ボタンを押した。後ろから突き付けられる銃の感触が一層強く感じ、背中からケツにかけて冷や汗がツー…と流れていく。

 

これから自分はどうなるのだろうかと横に立っている男を見ようとするが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は闇へ呑み込まれていた(・・・・・・・・・・)

 

自分の目を疑った。自分の後ろは照明が当たっておらず、夜も相まってまさに一寸先は闇だった。その闇へ男は呑まれたのだ。

 

男達も異変に気付いたらしく、長々と用意された台詞を読む男以外の男がゆっくりと向かう。

 

その後、またも闇へ消えた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

男達はようやく悟った。自分達は襲撃されている(・・・・・・・)と。男達が気付いたのも束の間、

 

バリィンッ‼︎

 

照明のライトは割られ、闇が辺り一面を包んだ。男達は銃を振り回しながら叫ぼうとするが、次々とドサッと音を立てて崩れ落ちといく。

 

青年はひたすらに近くの壁にへばり付き、暗闇の中で行われる戦闘をひたすら嵐の中で電柱に張り付くように耐えていた。

 

突然、青年の後ろから手で口を塞がれる。

 

青年「っ……!」

 

?「落ち着け、お前を助けに来た」

 

その冷静でなおかつ惹きこまれるような声は、青年の心を落ち着かせた。

 

青年「おい、あんたの名前は…?」

 

?「オレか?オレは…ジョン・ドゥ(名も無き男)だ」

 

ジョン・ドゥ…確か、アメリカの身元不明の男性死体の事で、日本でいうところの『名無しの権兵衛』だ。

 

?「さぁ、ここは危険だ。早く脱出を」

 

青年「…ありがとう」

 

青年は男に担がれ、闇夜の中へ消えていった。青年が日本大使館の前で発見されたのはその翌朝だった。

 

 

マザーベース、研究開発プラットフォーム───

 

殺人的スケジュールのクリスマスを終え、そろそろ年の終わりと始まりを感じさせる頃、僕は任務を終え久しぶりにマザーベースにいた。

 

スタッフ達「「お帰りなさい、ボス!」」

 

承一郎「ああ、ただいま」

 

敬礼するスタッフ達に労いの言葉をかけ、研究開発プラットフォームへ移動する。そろそろ例のモノ(・・・・)が完成するらしい。

 

プシュッ!と音を立てて開くドアに反応して振り向く男が一人。

 

?「やぁボス、久しぶり」

 

承一郎「ああ、久しぶりだなオタコン」

 

オタコン──もといハル・エメリッヒ博士は眼鏡を指で掛け直し、僕に近づいた。

 

承一郎「調子はどうだい?そろそろ完成するって聞いてね」

 

オタコン「ああ、機体はもう完成したよ。後は武装を施すだけさ」

 

僕はオタコンと共にプラットフォームの中央にそびえ立つ、暴君龍の如き機体を見上げた。

 

承一郎「……圧巻だな。これが?」

 

オタコン「ああ、僕が造り上げた皆の矛でもあり盾でもある機体…『メタルギアREX(レックス)』さ」

 

メタルギア──核搭載二足歩行型戦車、『歩兵と兵器を繋ぐ歯車』の意を込められた兵器の歴史は冷戦にまで遡る。

 

かつてあるソ連の科学者が発案したものなのだが、当時の学会には否定されたらしく、実機が造られる事はなかった。しかしそれをアメリカが一人の科学者によって造らせたものだ。

 

その男の名前はヒューイ・エメリッヒ。そう、今この場にいるオタコンの実の父親だった。聞けばオタコンの祖父はあのマンハッタン計画に参加していたらしい。そしてその影響からか父は足が不自由だったようだ。

 

そして今その息子がメタルギアを造っている。皮肉としか言いようがないが、この機体は確実に近い将来に起こる『愛国者達』との戦いには必要になる。

 

オタコン「機体は有人型だ。主砲はレールガン、他には追尾ミサイルに自由電子レーザー、色々あるよ」

 

そう言うオタコンの顔はボサボサだ。美形なんだからもう少し気を使えばいいのに。

 

承一郎「いいのかオタコン。君、科学が悪用されるのを嫌っていたハズだろう。僕達が正しく使うか分からない、そもそもメタルギアの開発は強制ではなかったし…」

 

オタコン「君なら問題ないよ、ボス。君はそんな事しないよ、僕が保証するさ」

 

承一郎「そんな事言われてもな…」

 

オタコン「それに、僕達には必要だろう?対『愛国者達』用にはさ」

 

承一郎「…確かに、僕達には『抑止力』がいる。外敵を寄せ付けない力がね」

 

正直、このメタルギアを造り上げるには途方も無い苦労ばかりだった。特にパーツや資金。

 

水晶の牙(クリスタル・ファング)』はPMC組織としてはなかなか大きくなってきたが所詮有志の集まり(ほとんどは僕がフルトン回収装置(人さらい風船)で無理矢理連れて来たが)だ。資金のやり繰りは必死だった。

 

さらにメタルギアの装甲は他のメタルギアに対抗するために出来るだけ高性能にする必要があった。そのためにひたすらメタルギア狩りをしていた(ついでに反メタルギア財団も設立した)のは懐かしい。

 

REXの装甲は今まで僕が破壊してきたメタルギアのジャンクパーツの集まりってわけだ。このメタルギアは僕の努力の集大成でもある。

 

承一郎「やり遂げよう、オタコン。この『REX』で、『愛国者達』を打ち破って見せよう」

 

オタコン「ああ、僕も出来る限りの事をするよ」

 

承一郎「ありがとう、それじゃあ僕は行くよ。カズが話があるんだって」

 

 

司令プラットフォーム───

 

承一郎「遅くなってごめん、REXの様子を見てきてね。はいコレ、皆へのお土産」

 

僕は任務前に買った小野寺君の家の和菓子を渡した。スタッフ達からの評判もいい。『血の影(ブラッディ・シャドウ)』は長期保存に向いているな。

 

カズ「おっ、悪いなボス。席についてくれ」

 

僕は席について『水晶の牙(クリスタル・ファング)』の現在の資料を見た。

 

現在、『水晶の牙』はダミー会社を通して五つのPMC組織を束ねるマザーカンパニーとして君臨している。さすがカズとオセロットだ。あの経営手腕には何度も助けられた。

 

組織は今のところ問題はない。問題は、カズが『TOKYO通信』で調べてきたある情報だ。

 

アメリカに本社を構える世界的な軍事兵器開発会社『アームズテック』、通称『AT社』が新たに技術開発を試みているというシステムだ。

 

その名も『愛国者達の息子(Sons Of the Patriots)』、通称『SOP』システムだ。

 

もはや完全に『愛国者達(組織)』を隠す気がないように思えるが、『愛国者達』の実態を知らない人間が大多数だし、軍用ナノマシンを体に入れている者は自動的に『らりるれろ』に変換されるから秘匿性は高いのだろう。

 

だが重要なのはそのシステムの内容だ。ナノマシンによる彼らの感情などといった精神状態を監視・制御するというものらしい。

 

一年半前くらいには世界中の銃火器にID登録を施し、その所有者として登録された人物のナノマシンが反応したときにしかそれらを使用出来ないようなシステムも導入されたが、このSOPはそれとは比較出来ない程強大なものだ。

 

このシステムが完成したとしたら『戦場の制御』という大変な事態が起こってしまう。今は試験段階らしいが、なんとかして対策を練らなくてはならない。

 

承一郎「オセロット、君はどう思う?」

 

オセロット「ついに奴らが目的を実現出来る段階に突入したと解釈してもいいでしょう。すでにID登録がされる前の銃火器は集められ、保管されてあります」

 

カズ「だが試験段階にあるのがまだ救いだな。ナオミにも意見を聞いておこう」

 

承一郎「ナオミか…懐かしいな、アメリカで遺伝子工学を研究していると聞いたが…」

 

カズ「ああ、彼女は今ナノマシンの研究者としてその『ATGC社』で活躍している」

 

承一郎「へぇ、アメリカの大手バイオ技術開発企業か!こりゃあ大出世じゃあないか!」

 

オセロット「ええ、ですが彼女が今こうして過ごせているのはボス、あなたのお陰ですよ」

 

承一郎「僕はチャンスを与えただけだよ。今の彼女があるのは自分の力さ。それに、彼女を救ったのはフランクだろう」

 

フランク・イェーガー、ナオミの義兄であり命の恩人。紛争の中で彼女の両親は殺され、フランクが彼女の義兄妹になったのだ。

 

ちなみにナオミと仲がいいオタコンにめちゃくちゃガンを飛ばしているあたりシスコンというか過保護というか…。

 

承一郎「そういえば、これも今度ナオミに見せて欲しいんだ」スッ…

 

オセロット「それは?」

 

承一郎「僕のDNAさ。ちょっと気になる事があってね」

 

カズ「気になる事?」

 

承一郎「…体の再生速度が遅くなっている」

 

オセロット「…!」

 

カズ「再生速度?」

 

承一郎「ああ、それだけじゃあない。体が少しだけ鈍いんだ」

 

カズ「鈍い?どういう事だ?」

 

承一郎「分からない…中学の頃はこんな事はなかったんだが…とりあえず彼女に調べてさせてくれ」

 

カズ「了解した、至急届けよう」

 

承一郎「ありがとう。それじゃあそろそろ行くよ」

 

オセロット「今日は何か?」

 

承一郎「いや、千棘さんとの定期デートなんだ」

 

カズ「へぇ、ホントに『ニセモノ』なのか?」

 

承一郎「……何が言いたいんだ。じゃあ、また連絡するよ」

 

キング・クリムゾン‼︎

 

?「待てッ!」

 

後ろから呼びかける声を僕は無視してそのまま歩くと、

 

?「おい、待てよッ!」

 

承一郎「なんだイーライ、なんか用か…って、デイビッドもいるじゃあないか」

 

マザーベースでは悪ガキで有名な少年、イーライとその弟であるデイビッドが後ろにいた。

 

イーライ「勝負しろ!今度こそあんたを超えてやる!」

 

金髪碧眼のイーライが声高々と僕に指を向け、

 

デイビッド「オレはこいつに誘われただけだが…理由は同じだ」

 

茶金髪のデイビッドは大人し気な声で言った。温度差あり過ぎるだろこの兄弟。

 

承一郎「そんなのオセロットとやればいいだろう」

 

イーライ「あいつはなんか…嫌いだ!」

 

デイビッド「右に同じく」

 

なんとまぁひどい言われようだが、確かにオセロットは子供に厳しい。僕を鍛えるための訓練でも容赦なく殴ったり投げたり、さらには関節を何回も外していたからな…。さらには拷問フェチときている。うん、嫌われるな確かに。

 

そういえばカズもいつもはフランクだが『鬼教官』とか言われているし…。

 

イーライ「行くぞ兄弟ッ‼︎」

 

デイビッド「倒すッ…‼︎」

 

いつもはケンカばかりしているデコボコ兄弟だが、コンビネーションはピカイチだ。しかも二人共すでにスタッフ達を圧倒する程の身体能力を有しているのだ。

 

僕はまずイーライの左ストレートを掴み、そのまま背負い投げで倒す。

 

イーライ「うっ‼︎」

 

そして逆サイドから襲いかかろうとするデイビッドの蹴りを躱し、その腹へパンチを叩き込む。

 

デイビッド「ぐっ…!」

 

承一郎「いい動きだ、さすがオセロットにみっちりCQCを仕込まれているだけはある。いいセンスだ」

 

デイビッド「うっ…欲しいのはお世辞じゃあない、勝利だ!」

 

イーライ「そうだ…まだだ、まだ終わっていない!」

 

二人共ゆっくりと立ち上がって拳を構え、今度は同時に襲いかかる。僕はそれを片手ずつで捌く。

 

承一郎「君達はもう自分でなんとかしていけるハズだ。だけどなんでここにいるんだ?」

 

イーライ「うるさいっ、ここに連れて来たっ、あんたが言うかっ!」

 

デイビッド「オレ達にっ、生き方を教えたのはっ、あんただろっ‼︎」

 

承一郎「血気盛んなのはいいが、足元もちゃんと確認しないと転ぶぞ。こんな風にね」ガッ!

 

僕は足元がお留守のイーライとデイビッドに足払いをかけた。

 

イーライ・デイビッド「「うわっ⁉︎」」

 

ドテッ‼︎

 

案の定攻撃に集中していた二人は足払いで重なって倒れた。

 

イーライ「痛って〜〜…」

 

デイビッド「くそっ…」

 

承一郎「そうやって強さばかり求めていたら、足元の大切なものを取りこぼすぞ。……まぁ、とっくのとうに取りこぼしている僕が言うのもなんだけどね」

 

イーライ・デイビッド「「……」」

 

承一郎「君達には才能がある。それを大切なものを守るために使え。僕は戦う事でしか自分を表現出来なかった馬鹿だが、それでも自分の意思で戦ってきた。その力は殺すためにあるんじゃあない、活かすために使え」

 

イーライ「〜〜〜〜ッ、子供扱いするなっ!」チャ!

 

イーライはおもむろにナイフを取り出した。

 

承一郎「おいイーライ、そのナイフをしまえ」

 

イーライ「オレは…あんたを、超えるんだッ!」

 

ナイフを突き出してくるイーライを、僕はまずナイフを持っている手を捻り上げてナイフを落とさせ、そこから足払いをかけて倒す。

 

イーライ「くっ…!」

 

承一郎「そろそろ行くぞ、次は『波紋』の呼吸でも覚えてくるんだね」

 

僕はそう言って空間をくぐり帰った。

 

後にイーライ とデイビッドがマジで『波紋』の呼吸を習得するのはまた別の話だ。

 

 

<=to be continued=




はい、登場しました。幼き頃のスネークとリキッドです。MGS要素入れようとしていた頃から二人は承一郎に保護された少年兵にしようと考えてました。

オセロットの拷問フェチは変わらず、特に電気攻めが好みという設定もそのまま。うん、軽く変態。

次は正月回ですかね。それではまた次回!

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