ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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傭兵の引退

アナウンサー『──…と意味不明な供述をしており、警察では詳しい動機などを調べています』

 

TVアナウンサーがニュースを読み上げるのを聞きながら、僕は車を走らせていた。行く先はデンバー、ワールド・マーシャル本社だ。後部座席にはウルフが座っている。

 

アナウンサー『パキスタンのサラーム大統領を訪問予定のヴァレンタイン大統領は今朝、アンドリューズ空軍基地を出発しました。この訪問はパキスタンの一部における反米世論の盛り上がりに対し、両国の友好関係をアピール…』

 

電話があり、僕はハンドルの通話のボタンを押す。アレを出してきた以上、装備品である通信機を持ち出すのは窃盗だ。だから今は軍用の通信機はもっていない。

 

ジョージ『ニンジャのアニキ!』

 

僕をニンジャのアニキと慕う少年、ジョージが通信相手だった。なぜそう呼ぶのかというと、研究所で研究員の動きを何もせずに止め、ボコボコにしたのを見たかららしい。

 

まぁスタンドが見えないからそう思えるのだろう。後は格好からか。

 

承一郎「ジョージか。体の方は大丈夫かい?」

 

ジョージ『快調だぜ!他の皆も元気にしてるよ』

 

承一郎「そうか、それは良かった」

 

ジョージ『それより、あいつらの本拠地に行くのか?俺も連れてってくれ』

 

承一郎「カズの奴…素人が来ても足手まといだ。それに、人殺しにはなりたくないだろう?」

 

まぁ、自分が足手まといというのは十分に理解したから人の事は言えないんだけどね。

 

ジョージ『でも…』

 

承一郎「『よく狙え。お前はこれから一人の人間を殺すのだ』…君にはその覚悟はないだろう?」

 

ジョージ『そうだけど…』

 

承一郎「そうだ、君が正しい。僕のようにはなるな」

 

ジョージ『わかったよ…』

 

そう言ってジョージは電話を切った。

 

…あの時、僕は彼を助けた。でも、『ジョージごと研究員を斬ってしまおう』とも考えてしまった。

 

僕は小野寺君と出会って戦場を離れようと考えた。でもまだ戦い続けている。角もヘシ折ったはずなのにまた生えている。

 

…僕はまだ、あの戦場を求めているのか?屍の山が築かれた、あの血生臭い場所を求めているのか…?

 

承一郎「…何が『僕のようにはなるな』だ」

 

八幡『そうだな。才能が無いのに傭兵になるなんて自殺志願者としか言いようがない。よく今まで生きていたわ』

 

承一郎「厳しいね。自分ではあるつもりでいたんだけど」

 

八幡『味方の邪魔しかしていないように見えたがな。代われ。ブラッディ・シャドウ」

 

ダァンッ!

 

八幡「警察官が高速走行中に自殺とは世も末だな」

 

八幡がブラッディ・シャドウで警官の銃口と警官の頭を繋げてザクロにする。コントロールを失ったパトカーは他のパトカーを巻き込んで爆発。炎上した。

 

カズ『ジョジョ!辞表を見たぞ!どういうつもりだ?』

 

承一郎「…悪いなカズ、僕は単独でやらせてもらうよ」

 

カズ『お前、まさか奴らの所へ?』

 

承一郎「ああ、だが組織の総司令官が同業他社に殴り込むわけにもいかないだろう?それに、八幡に指摘されたよ。僕に傭兵の才能は無いって。司令官としても、一兵士としても」

 

カズ『八幡………喋りやがったのか』

 

八幡「ああ。見てられなくてな。誰かが言ってやるべきだろ?」

 

カズ『それはそうだが……』

 

承一郎「カズ……お前の優しさはわかったが…ハッキリ言って欲しかった。言わぬ優しさより言う優しさが…」

 

カズ『すまねぇ。ボス。いや、承一郎……あんたに…兵士の才能はねぇ…カリスマはあっても、才能は無かったんだ…』

 

承一郎「……ハッキリ言ってくれてありがとう。これで僕も個人として遠慮なく動ける。今までありがとう。クリスタル・ファング。すでに相当数の脳髄がアメリカに持ち込まれている。放っておけない」

 

そうだ、放っておけない。子供達のこれからの未来を奪わせはしない。

 

カズ『脳の摘出をしたのは国境の向こう側だ。奴らの行為は合法的な治療扱いになる』

 

承一郎「合法なら正義だとでも?」

 

八幡「正義だな」

 

時折八幡が僕の体をジャックして返答する。

 

承一郎『なっ…………』

 

八幡「哲学になるが、なにが正義で何が悪かなど人それぞれだ。そんな集団としての正義のすりあわせが法律だ。悪法であろうと法律が定めた範囲なら正義なのだろうな。ま、この国でも違法と言うからには悪なのだろうが」

 

承一郎「話は後だ」

 

八幡はハンドルをそのままに……

 

八幡「ブラッディ・ワールド」

 

正面にバリケードが見えた。八幡は空間を繋いだまま時を止め、バリケードと敵の車両、警官隊を追ってくるパトカーの上方に飛ばす。

 

八幡「テメェらが張ったバリケードが障害となって道を塞いでいろ。何人死のうが知ったことか」

 

承一郎『だがサイボーグ警察官があの程度で』

 

八幡「自壊する。自然の摂理を甘く見んな。人型兵器が戦場のアドバンテージをとれるなんてのは空想化学の弊害だ。実際には意味がない。現状の兵器や機材で充分に代用が可能な物を……しかもそれよりも脆いものを高い金で買う方が間抜けだろう。貸費効果的に考えたら1機買うのに掛かる費用で重機や戦車を何台も買った方が遥かに効率的だ。こんなものを考えた奴はマジでバかとしか言いようがない」

 

グシャア!

 

サイボーグ達は数メートルの高さから落下した衝撃を受け止められずに潰れていく。

 

八幡「な?次にお前は『ナノマシンで再生するぞ!』という」

 

承一郎『ナノマシンで再生するぞ!……はっ!』

 

八幡「前述した通り、あんなガラクタにそんな高いシステムを使うくらいだったらもっと別の物に使うさ。偉いおバカさんはそれがわからない。お前がこんなガラクタに一々苦戦している理由が正直わからん」

 

承一郎『………』

 

下半身がボロボロになり、残ったサイボーグ警察官が用意したものは…

 

八幡「オイオイ、この街中で撃とうとするのか?」

 

そう、RPGである。PMC次第だとサイボーグには恐怖などの感情はナノマシンによって抑制されているが、いくらなんでもおかしいだろう。

 

警察官「撃て」

 

警官隊「「!」」

 

バックブラストによって上半身が吹き飛んだ生身の警官隊。RPGは車に衝突したと見せかけて。

 

八幡「ブラッディ・シャドウ。自分の射撃を自分で食らえ。ポンコツ」

 

ドグォォォォンッ……‼︎

 

と爆発を起こす。

 

RPGの弾を相手の背後に飛ばして自分で食らって頂いた訳だ。さっきのパトカーに対してやったように。

 

(突撃バカ)が刀一本で敵の陣地に踏み込んだ時、実は八幡がフォローしていなかったら僕は蜂の巣になっていたらしい。

 

高級サイボーグ(無駄金食い)を単独で運用するバカな組織はいない。まぁ、こんなものを使っている段階でバカな組織なのだが。

 

要はサイボーグ兵のような物を運用するとき、周囲にはそれを運用する部隊も近くにいるのが普通だ。

 

そこで八幡は気配を探って見たわけだが……いるわいるわぞろぞろと陣地を構築して地面に穴を掘って巧妙に偽装して。

 

そこで役にたったのがブラッディ・シャドウとハーミット・パープルだ。名付けてハーミット・ブラッディルビーって奴だ。僕を狙っていた小銃の弾を射った本人に食らって死んでもらっていた。

 

あの時思わずさすがだ……と言ったのはブラッディ・シャドウの能力に対してだ。僕は自分の事と勘違いしていたが、実際は空間を繋げる能力に対して敬意を払っていただけに過ぎない。

 

小銃の弾を骨のプロテクターでガードすることはできない。小銃には連発機能がある。他方向から連発で射たれた拳銃以上の威力の弾丸は、骨のプロテクターなど難なく撃ち抜く。

 

八幡が対処していなければ僕は間違いなく死んでいた。更に言えば僕のミスはそれだけではないようだ。

 

あんな場面で刀一本で突撃したならば、味方が射撃をすることが出来ない。活躍しているように見えて実は僕やジョニィは味方の邪魔をしていた。司令官としてだけでなく、傭兵としての才能がない…と評価した理由はそこにある。

 

アイデンティティーだった傭兵としての誇りを八幡がバッキリ折ったのは内心辛かったが、逆に感謝もしていた。八幡は僕を想ってくれて言ってくれたんだ。

 

八幡は車から降りて天国の外側に格納する。感謝するさ、お気に入りの車がお釈迦にならずに済んだんだからな。

 

ウルフ『この先を探索してくる』

 

ウルフはビルに飛び移り、先へ進んで行った。しかし、なぜ警察官が八幡を襲う?僕達は何もやらかしてないぞ?

 

警察官「州法によって未登録の戦闘用サイボーグは市内に立ち入り出来ない」

 

なるほど、情報を流されてサイボーグ扱いにして処理される手筈だったと。

 

八幡「それで?どうするつもりだ?ポンコツが数台揃ったところで何ができる?」

 

警察官「コロラド州刑法修正18条により、侵入者を殺害する」

 

サイボーグ警察官達は持っていた警棒を展開する。対サイボーグ用に電流が流れるタイプだ。

 

八幡『見ていろ、承一郎』

 

承一郎『何をするつもりだ!八幡!』

 

八幡『何でお前が、ザ・ジェムスーンを使えなかったかわかるか?』

 

承一郎『あれはお前独自のスタンドだからじゃあないのか?』

 

八幡『やっぱりその勘違いか。だったらお前がハーミット・アメジストやザ・ワールドを個別に扱える説明ができねぇだろ?ザ・ジェムスーンは俺が2つ同時にスタンドを出して融合させていたから出来る荒業なんだよ。2つ同時に扱い、合体させていたんだ。出来るはずなんだよ。最初から2つ精神があるお前らならば。今から見せてやるよ!』

 

ジョニィ『ザ・ジェムスーンの能力の使い方だと!』

 

八幡「例えば…これだ!ハーミット・アメジストとブラッディ・シャドウを融合!ブラッディ・アメジスト!」

 

ハーミット・アメジストとを影で伝わせ、ゼロ距離で巻き付ける。そして…

 

八幡「アメジスト・パープル・オーバードライブ!」

 

バリバリバリバリ!

 

八幡「ついでにラッシュも受けとれ!」

 

ゼロ距離から繰り出されるブラッディ・アメジストの無駄無駄ラッシュ。

 

八幡「次はこれだ!ザ・ワールドとクリスタル・ボーンでクリスタル・ワールド!時よ止まれ!」

 

ドォォォォーーーーーz__________ンッ‼︎

 

僕達では先にクリスタル・ボーンで武器を作ってからザ・ワールドで時を止めなければならなかった。ブラッディ・シャドウでも同じ。時を止めている間ではブラッディ・シャドウは使えない。だが、こうすれば時を止めながらそれぞれの特性を同時に扱える。

 

八幡は波紋の力を全開にし、サイボーグの周りに骨から作り出したナイフをばら蒔く。

 

ジョニィ『エグい…』

 

八幡「ゼロ。そして時は動き出す」

 

ザシュザシュザシュザシュ!

 

サイボーグ「ぎゃあああああ!」

 

八幡「さて…何度も地獄を見てきた俺の攻撃から、お前らは滅びずにはいられるかな?見てろ一条ブラザーズ。お前らのスタンドのえぐさの本質を。クリスタル・シャドウ!」

 

ジョニィ『俺達のスタンドで何を…』

 

八幡「久々に吸血鬼の力を使うぞ?」

 

スカルズを大量に発生させ、そして特攻させる。

 

八幡「露骨な肋骨…ブラッディ・シャドウのスカルズを生み出す力と空間をつなぐ力でその場にいなくてもクリスタル・ボーンで骨を自在に変質させて切り裂く」

 

サイボーグ「がああああああ!」

 

八幡「ブラッディ・ボーン…こいつはエグいぞ?自分の骨で…心臓を貫かれて…死ね!」

 

ブラッディ・シャドウの能力で敵の内部に空間を繋げ、クリスタル・ボーンの能力でサイボーグの骨を変質させて相手の心臓を貫く。

 

八幡「あれ?一例を見せるだけで敵が全滅した。いやぁ、相変わらずエグい能力だなぁ。お前らの能力。まぁ、こっそり戦場で使っていたけどな」

 

承一郎『エグいのは…』

 

ジョニィ『お前の発想と性格だ!』

 

八幡「解せぬ」

 

だが八幡のおかげで敵は一掃出来た。このまま先に向かわせてもらおう。

 

ウルフ『道路がバリケードで封鎖されているようだ。建物の中から進もう、ついてきてくれ』

 

八幡「その前にだ」

 

八幡は奴等の通信機を奪う。そして適当に路駐してあった車を移動させ、その中にRPGで完全に破壊したサイボーグ兵に僕の服の予備を着せて適当にボロボロにする。そして車に放り込んだ後に、距離をとってもう一発あったRPGを発射。

 

ドゴォォォォォォォン!

 

八幡「カズ。偽の情報を流せ。一条承一郎はこの場で警察官の砲撃で死んだ…とな」

 

そこで一旦僕に体を返してくれた。ここで別れを告げろと機会を与えてくれたのだ。

 

カズ『状況はどうだ?』

 

承一郎「敵の包囲網が厚い。これから奴らの本社までは徒歩だ」

 

カズ『本当に…行くのか?』

 

承一郎「…僕はもう、うんざりなんだよ。組織の力によって正しい事が捻じ曲げられるのも、虐げられた弱者達を見てみぬふりするのも」

 

カズ『ジョジョ…』

 

承一郎「僕が連中から脳を取り返してやる。サイボーグになるのは避けられないが、殺人機械(キリング・マシーン)にはさせない」

 

カズ『…一人で脳をどうするつもりだ?』

 

承一郎「伝手を辿って上手くやるさ」

 

主に華さんを頼ると思うが。あれは鬼畜だった。モットーが『タイム・イズ・ノット・マネー』だからなぁ…。あの人の秘書はもうこりごりだが、見返りとしてやらされるだろうなぁ…。

 

カズ『だが…』

 

承一郎「これはあくまで僕個人の戦いだ。口出しは無用だ」

 

カズ『…桐崎嬢達はどうするんだ?被害が及ぶかもしれないぞ?』

 

承一郎「橘警視総監に警備を頼むさ。それに集英組とビーハイブにもね。それにここで見てみぬふりをしたら、僕は彼女達に顔向け出来ない」

 

カズ『そこまで言うならこれ以上言わないが…だが、デンバーじゃあ奴らが法律と言っていい。くれぐれも気をつけろよ』

 

承一郎「ああ、わかっている」

 

カズ『そいつはそうと、無線の暗号レベルを上げてくれないか?』

 

承一郎「カズ、君…」

 

カズ『ボス、俺達はボスがあんただからこの組織にいるんだ。あんたと同じ、天国の外側(アウター・ヘブン)を夢見た人間なんだ。前に言っただろう、「あんたが行く所なら天国(ヘブン)でも地獄(ヘル)でもとことん付き合ってやるぜ」ってさ。クリスタル・ファングはあんたを慕って集まった組織だ。部外者になったと言っても、ここはお前の為の組織だ。これで完全なお別れなんて寂しすぎるぜ』

 

天国の外側…国家、イデオロギー、そして時代の流れによって兵士達が翻弄される事のない、理想の楽園。そして、DIOの考えた『天国』を否定する世界を創るという意味を持つ。

 

カズ『それに俺も奴らのやり方には我慢ならなかったんだ。見せてやれ。華々しくただの個人、一条承一郎の戦いを』

 

承一郎「…ありがとう、カズ」

 

キング・クリムゾン‼︎

 

先に進め、店の広告デジタルサイネージが多く並ぶ場所に差し掛かった時、広告の映像が一斉に変わった。その映像とは…

 

サム『よう承一郎、こんな所まで討ち入りか?研究所(ラボ)だけじゃあ暴れ足りなかったか?』

 

承一郎「ジェットストリーム・サム…」

 

実に四年ぶりといったところか。信乃の水を操る『村雨』と相対する炎を操る『ムラサマ』を持つ男。

 

サム『研究所での活躍は聞いたぞ。毒蛇(ヴァイパー)の本性を取り戻したか?』

 

それは主に八幡がやった事だ。僕のやった事じゃあない。

 

サム『それにしても、たった一人で業界最大手を敵を回そうとは大したヒーローだ。だがこんな事をして何になる?ブラジルやコロンビアのガキ共がお前にどんな関係がある?考えてもみろ。南米で子供(ガキ)が売られようが、アフリカで何万人死のうが先進国の奴らは見ぬフリだ。誰も構いはしない』

 

サム『残念だがそれが人間の本性ってもんだ。連中の興味は金儲けとセッ○ス、あとはセレブのゴシップがせいぜい…自由と資本主義の結果だ』

 

僕はそれらの言葉を無視してそのまま噴水の広場まで進む。噴水に投影されていたワインの立体映像が急にサムに変わる。

 

サム『…無視は困るな。お前は何のためにこんな事をしている?たった一本の剣で世界を変える気か?』

 

それはさっき、八幡が言ってくれたさ。だけど、僕は自分の信じる道を歩んでいきたいんだ。それは絶対に譲れない。

 

承一郎「…僕の剣は活人剣だ。弱者を守る剣だ」

 

サム『…弱者か。ならばお前はなぜサイボーグ達を斬る?確かに現行のサイボーグに子供の脳は使われていない。だが知っているはずだ、彼らの経歴を』

 

承一郎「大人は…自己責任だろう」

 

サム『まぁ、そりゃそうだ』

 

ブォン!と音を立てて立体映像のサムが消える。そして建物のガラスに投影される。

 

サム『自分で契約したんだし、自分の責任だろうな。確かにあいつらは自分で判断したんだろう。戦場で手足を失い出来る仕事もなく、サイボーグ手術を受けさせてくれるPMCと契約する事を』

 

投影されたサムはガラスの中をスタスタと歩いて他の建物のガラスに投影される。

 

サム『あるいは内戦で国土も荒れ果て喰う物にも困り…異国の地でサイボーグになる事を。そして彼らは痛みも抑制され、ナノマシンで恐怖すら消され命令のままに命を落とす。それが自己責任と言うんだな?』

 

一際大きな広告板に映ったサムがそう問いかける。

 

サム『ならば見せてやるよ承一郎』

 

承一郎「なんだと…?」

 

サム『戦場には不適切としてナノマシンが封じ込めた感情…それを聞かせてやる』

 

承一郎「どうする気だ⁉︎」

 

サムは僕を人差し指を口元に当てて制する。そして手を耳に当たる。

 

サイボーグ1「いたぞ!」

 

後ろの方から二人のサイボーグがやって来た。しまった、サムが足止めしている間にこっちの位置をつかんだのか!

 

サイボーグ2「殺れ!」

 

ガシャッ!とサイボーグの警棒が展開され、火花が生じる。

 

サイボーグ1『勝てるのか?』

 

サイボーグ2「どうした?」『こいつは仲間を何人も…殺した…』

 

このサイボーグ達、言っている事が矛盾しているッ⁉︎いや違う、後の弱気な言葉はこのサイボーグ達の口から出たものではない。

 

サイボーグ2『来るな…!死にたくない!死にたくない!』

 

これが、封じ込められた感情なのか⁉︎

 

サイボーグ1「いくぞ!」『俺には家族が…』

 

その言葉が承一郎の剣を鈍らせる。警棒を弾くだけに留まり、そのまま鍔迫り合いになる。

 

サイボーグ1『なんで俺がこんな…』「その程度か?」

 

サム『よく聴くんだ』

 

サイボーグ2「死ね…!」『いつまで…こんな生活が…?』

 

間髪入れずもう一人のサイボーグが襲いかかるがそれを避け、距離を取る。

 

サイボーグ2『妻も子供も殺されて…まだ戦うしかないのか?』「弱いぜ、こいつ」

 

二人のサイボーグによる連撃を捌き、両方の警棒を防ぐ。

 

サイボーグ1『自動車爆弾(IED)が脚を吹っ飛ばして…他の仕事はもう…』

 

承一郎「やめろ!」

 

警棒二本を弾き、襲いかかる警棒を防ぐ。

 

サイボーグ2『こんな契約するんじゃあなかった…』

 

気をとられてもう一人の警棒が僕の腹部に当たる。電流を流した警棒が僅かだけど腹を焼く。

 

そしてもう一人の警棒が僕の顔面に直撃し、吹っ飛ばされる。骨の鎧でそんなにダメージはないが…

 

サム『どうした承一郎?』

 

ゲホゲホと咳き込む。口元を拭い、すぐに構え直す。

 

サイボーグ1『金が貯まったら、母さんをアメリカへ連れてきたい…』

 

サイボーグ2「そろそろとどめだ」『早くこんな生活から抜け出さないと…』

 

承一郎「やめるんだ!」

 

八幡『代われ。承一郎(ボケナス)

 

承一郎『なに!』

 

コォォォォ……と波紋の力で体を治癒する。

 

ウルフ『承一郎、大丈夫か?』

 

ウルフは息を整えた八幡に近づく。

 

八幡「ちっ!あまちゃんめ……」

 

承一郎「奴らは自らの判断で契約した…ウルフとは違う」

 

八幡は僕が斬ったサイボーグ達だった残骸を一瞥する。

 

ウルフ『人は皆、違う』

 

承一郎「…いい指摘だ、プロトタイプ。AIは皆同じってわけかい?君の兄弟も?君も人類の進化を促す気かい?」

 

ウルフ『…すまなかった。お前への礼を忘れたわけではない』

 

承一郎「いや…君の意見も間違ってはいないさ」

 

ウルフ『承一郎…AIも学習により変化する。人に限らず、あらゆる知性は独自性を持つ。俺はこのとおり一匹狼(ローンウルフ)だ。人類がどうなろうと興味はない』

 

承一郎「だといいんだが」

 

ウルフ『…それにしてもサムの奴、いつもと少し様子が違った』

 

承一郎「知っているのかい?」

 

ウルフ『知っている。だが俺の知っているあいつはこんな手を使う男じゃあない…』

 

確かに、四年前剣を交えた時の彼とは違った。彼は姑息な手は使わず、自分の剣と力だけで戦う、まさに戦闘狂だったはずだ。

 

承一郎「買っているようだね?」

 

ウルフ『買いかぶりだったか?まぁいい、行こう。この先のデータを渡す』

 

ウルフから渡されたデータをiDROIDで受け取る。

 

ウルフ『忘れるなよ、子供達の事を』

 

ウルフはそう言って先へと進んだ。

 

ウルフ『承一郎、お前は今精神的に動揺している。作戦を中止するつもりはないだろうがしばらくは戦いを避けて進め』

 

サム『苦戦しているようだな。今さらサイボーグを斬るのをためらうのか?お前は一殺多生の活人剣を是としたのではないのか?』

 

八幡「…………」

 

サム『無視か……毒蛇』

 

八幡は少しずつ、時を止めて、瓦礫の埃で体を周囲に溶け込ませ、偽装をする。建物を使って少しずつ隠れながら進む。

 

対赤外線処理が施された市街地戦闘用の戦闘服。体に纏った周囲との偽装も併せて隠れながら、そして細かい動きで匍匐する。

 

サム『動きが違う………まるで本物の兵士のような動きだ。貴様………承一郎ではないな?』

 

八幡「…………」

 

一々返事をする意味などない。この挑発は八幡の位置を特定するために…音源で特定するためにやっている行為。八幡がこそこそと動いているのもそれを避ける為だ。それに……

 

八幡「スカルズ……行け」

 

僕を模したスカルズを囮として出す。

 

サイボーグ3「いたぞ!」『いやだ!死にたくない!』

 

八幡「ブラッディ・ボーン」

 

ブラッディ・ボーンの遠隔操作で足を切り裂き、無力化する。

 

サム『何をした……それに躊躇いがない。貴様は本当に承一郎ではないな?』

 

八幡(スカルズ)「僕は一条承一郎さ。もっとも、お前の指摘も外れでは無いがな。どんな理由であれ、お前らと契約をしたんだ。そのつもりがあろうと無かろうと、覚悟があったと見なす。後悔して無理矢理戦わされていようが知ったことじゃあない」

 

サム『ならばこの数ならどうだ?』

 

大量のサイボーグが現れる。

 

??『使うわよ?比企谷君』

 

八幡「許可する。やれ。雪ノ下」

 

雪乃『了解。フリージング・ビーム!』

 

別の瓦礫の方向から発射されたフリージング・ビームがサイボーグ達に命中する。そして躍り出るチーム黄金の風。

 

雪乃「あなた達から『強制力』を凍結させた」

 

ジョルノ「逃げるも戦うも自由。だけど、戦うからには僕達は容赦はしない」

 

ミスタ「銃のならしはよぉ。もう終わらせてあるからよぉ」

 

留美「ジョルノチームに容赦は無い。この場に留まるならば覚悟があるとみなす」

 

トリッシュ「死にたい奴からかかって来ると良いわ。ここまで来たらいつもの私達よ」

 

陽乃「慣れない軍人行動でフラストレーションがたまっていたんだよねぇ。さぁ、覚悟はできている?」

 

チーム黄金の風「「俺達は出来ている!」」

 

八幡「俺も出来ている!待ってたぞ!俺の家族達!」

 

八幡もジョルノ達と合流する。さあ、ここからが俺達の戦いだ。どう出る?サム。

 

サム『パッショーネだと!?何故ジョルノ・ジョバァーナがここにいる!』

 

ジョルノ「彼の中には……承一郎の中には僕の家族の魂がある。それに承一郎も僕の家族だからね。危なっかしくて見ていられない家族を助けるのに、理由がいるかい?」

 

八幡「それに、邪悪の化身の俺が言うのもなんだが、腐れ外道を許せねぇのは俺も一緒だ。敢えて名乗ろう。俺は比企谷八幡。承一郎に入り込んだ邪悪の化身だ。いくぞジョルノ!」

 

八幡とジョルノが並び立ち、指を天高く掲げる。

 

八幡・ジョルノ「「アーシス!スクランブル!」」

 

 

←To be continued


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