ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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季節風(モンスーン)

いつの間にか空に雲が覆われ小雨が降り始めた頃、僕達はワールド・マーシャル本社へたどり着いた。

 

承一郎「兄さん達は先に行って下さい」

 

ジョルノ「君はどうするんだい?」

 

承一郎「僕は少しサイボーグ達を足止めします。大丈夫、後から追いますよ」

 

ジョルノ「…わかった、行こう」

 

ミスタ「それじゃあ承一郎、また後でな!」

 

陽乃「承一郎君、気をつけて!」

 

雨が降る中、チーム黄金の風はビルの中に入っていった。

 

承一郎「…待ってくれるとは律儀な奴だな。出て来い」

 

?「ほぉ…私の事を気づいていたか」

 

ビルのはるか上層の上に立つサイボーグはそう言葉を返す。

 

モンスーン「私の名はモンスーン、『破滅を呼ぶ風(ウインズ・オブ・ディストラクション)』と呼ばれた一人…」

 

承一郎「…御大層な通り名だな、無法者(デスペラード)風情が」

 

モンスーンはいきなりビルから飛び降りる。モンスーンのボディはバラバラになり、足から順番に地面に着いてバラバラとなったボディがくっついた。

 

モンスーン「ここまで来るとは思わなかったな。…それにしても、何がお前をそこまで突き動かすのだ?」

 

承一郎「…あんたの事は知ってるよ。インドネシア出身でかつてのクメール・ルージュの大虐殺の生存者」

 

モンスーン「そうだ。プノンペンのキリングフィールドで、私はこの世界が人類という種が腐りきっていることを知った。…お前もそうだろう、毒蛇?お前も母であるザ・ボスを、親友である信乃を殺され、そう思った事はあったのではないか?」

 

確かにそうだ。僕が才能がない傭兵の道を進んだのも自分では抑えきれない世界への憎悪があったからだ。国に僕以外の全てを捧げた母が殺されるような規範を造った、この世界を。

 

承一郎「…ああ、そうだとも。僕だってそう思った事はあったさ。世界を壊したいと何度も思ったさ。でも、僕には護りたいものができたんだ」

 

雨に打たれ、二人の男が対峙する。

 

承一郎「僕は全てが偽りさ。この体も、この声も、この命も、存在すらも。ありとあらゆるものが偽りでできている。それは変えられようもない事実さ。でも、だからこそ──」

 

承一郎「この胸に抱く想いは、本物であって欲しいと願うんだ。そして、僕は自分が正しいと思う道を歩んでいきたい!」

 

メリ…メリ…と少しずつ角が生えてゆく。それは憎悪。今まで燻っていた憎悪に手綱を取り、飼い慣らす。それが、力となる。

 

承一郎「確かに僕にとって子供達は関係ない。正義か悪かなんてどーだっていい。ただ僕は正しいと思った事をやる。ただそれだけだ」

 

モンスーン「…ならば、やるべき事は決まった。全ては自然の成り行きだ」

 

モンスーンは二本の釵状スタンド、戦術釵ディストピアを構えて言う。

 

承一郎「そうだな。後は刃を交えるのみ」

 

僕は『村雨』を引き抜く。信乃…僕に、信じた道を歩める力を授けてくれ。

 

それに応えるように、『村雨』が青白く輝く。

 

承一郎「…いざ、参る!」

 

 

BGM『The Stains of Time』

 

モンスーンの顔で唯一見えた口元が戦闘時のバイザーで見えなくなった。

 

それが合図になった。

 

僕とモンスーンはお互いに走り出し、刃をぶつけ合う。

 

モンスーンは一旦距離を取り、何かを投げた。それからはなにか鱗粉状の物がばら撒かれた。

 

モンスーン「赤燐だ、赤外線でも見透せまい!」

 

モンスーンが目視出来ない赤燐の中からディストピアを向けるが、

 

ギィィィィン…ッ‼︎

 

モンスーン「何ッ⁉︎」

 

僕はディストピアを防ぐ。

 

承一郎「伊達に波紋の継承者というわけではない!」

 

僕は波紋の探知でモンスーンが動く事によって動く空気の流れを感じて防いだのだ。

 

承一郎「フンッ!」

 

僕は剣圧で赤燐を吹き飛ばす。そしてモンスーンの体に刃を向けるが、

 

承一郎「何ッ⁉︎」

 

刃がスカァッ!とバラバラに分かれたモンスーンの体をすり抜けた。

 

モンスーン「フフッ、剣圧で赤燐を吹き飛ばすとは、さすが毒蛇といったところか」

 

承一郎「あんた、体のほとんどをサイボーグにしているのか!」

 

モンスーン「その通りだ!くらえ!」

 

モンスーンの体が上下に分離して下半身だけが走り出してくる!

 

下半身が右回し蹴りをくりだす。僕は『村雨』で迎撃しようとするが、右足の部分だけがさらに分離する!

 

承一郎「ぐっ!」

 

蹴りをくらいながらも僕はその勢いを利用してモンスーンの上半身の方に接近する。

 

モンスーン「何ッ⁉︎」

 

承一郎「シッ!」

 

僕の『村雨』がモンスーンの分裂する前のボディを斬る。舞うのは白い人口血液ホワイト・ブラッド。

 

モンスーン「フフッ、さすがだな!」

 

モンスーンは近くの建物の屋上に乗り、

 

モンスーン「殺戮のユートピアへようこそ!」

 

モンスーンのディストピアのスタンド能力が発動、近くの戦車や戦闘ヘリが宙に浮かぶ。

 

モンスーン「マグネットパワー!」

 

モンスーンの周りを舞っていた戦車や戦闘ヘリが承一郎に迫る!

 

どうやらモンスーンのスタンド能力は『メタリカ』のように血の中の鉄分から武器を作るというような精密さはない代わりに強力な磁力を操れるようだ。

 

承一郎「WRYYYYYYYYY(ウリィィィィィィィィィ)ッ‼︎」

 

僕は卓越した剣さばきで飛来する戦車や戦闘ヘリを切断していく。

 

それらを切断している間にモンスーンは僕に迫り、流れるような二本のディストピアの連撃を繰り出す。

 

連撃によって『村雨』は上に弾かれてしまうが、そのまま一回転して地面に突き刺し、それを軸にした蹴りがモンスーンに迫るがバク転して回避する。

 

モンスーン「素晴らしい!想像以上の強さッ!」

 

承一郎「そうか、なら死ねッ!」

 

鎌状の水圧カッターを飛ばしながら接近する。モンスーンを体をバラバラにして回避し、そのまま僕に某バラバラの実を食った王下七武海のように迫る!

 

僕はそれを横に跳ぶ事で回避する。そして『村雨』の水圧カッターがモンスーンの頭に迫る!

 

モンスーンは頭部をズラして攻撃を回避する。

 

このままでは奴を倒せない。少しギアを上げるか!

 

承一郎「制御(リミッター)、解除ッ!」

 

脳が、高熱を発する。世界が、スローモーションになる。

 

人体が普段出している力は本来の力の一部であり、全力を出すことはできないようになっている。筋肉が持つ力をすべて使った場合、人体そのものがもたないからだ。これを防ぐために脳がリミッターとして働いている。

 

それを自分で強制的に外す。アドレナリンの分泌量を増やし血液の循環が早まって身体能力が格段に上がり、世界がよりクリアに見える。

 

今まで捉えきれなかった分裂するモンスーンのボディに斬撃が吸い込まれるように入り、白い血飛沫を散らす。

 

モンスーン「くっ!」

 

モンスーンは二本の腕を切り離しディストピアで迎撃するが、僕はそれを弾きながらモンスーンへ迫る!

 

承一郎「おおォッ!」

 

速くッ!

 

承一郎「おおおォッ!」

 

上手くッ!

 

承一郎「うおおおおォォーーーーッ‼︎」

 

より強くッ‼︎

 

今出せる最高出力でディストピアの猛攻を凌ぎきり、モンスーンの懐に入りながら、『村雨』を鞘に納め、

 

承一郎「…ハァァッ!」

 

一瞬の溜めから繰り出した居合斬りがモンスーンのボディを斬り刻む!

 

モンスーン「くっ…!」

 

モンスーンは斬撃を食らいながらもビルの上部に張り付く。

 

モンスーン「電磁力もまた自然の摂理だ!」

 

モンスーンは戦車をいくつもくっつけたものを浮かばせる!

 

モンスーン「ローレンツ力だ!」

 

戦車の塊が縦に回転しながら僕に迫る!僕は『村雨』に吸血鬼の筋力を加えたパワーで弾き返し、

 

承一郎「迸れ、『村雨』ッ!」

 

戦車の塊を水圧カッターでバターのように切断していく。

 

モンスーンは今度は先の鋭い石柱を浮かべる。

 

モンスーン「土に還れ、弱き者よ」

 

石柱にドリルのような回転がかかる。

 

モンスーン「さぁどうする、毒蛇(ヴァイパー)!」

 

僕は迫り来る石柱を跳んで回避、地面に突き刺さった石柱の上に乗りモンスーンに迫る!

 

登りきったその先には、戦車が!

 

承一郎「邪魔だッ!」スパァァァン!

 

戦車を切断し、モンスーンと相対する。

 

モンスーン「死ぬがいいッ!」

 

モンスーンは二本のディストピアを承一郎に向けるが、

 

承一郎「行け、『村雨』ェェッ!」

 

『村雨』から迸る水流が、まるでジェット噴射したかのような勢いで僕の体を押し出す!

 

そのままモンスーンに蹴りを叩き込む。ビルに叩きつけ、間髪いれず蹴りのラッシュを叩き込む!

 

承一郎「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ‼︎」

 

モンスーン「くっ!好きにするがいい!」

 

承一郎「WRYYYYYYYYY YYY(ウリィィィィィィィィィィィィ)ッ‼︎」

 

敗北を悟ったモンスーンに、承一郎は『村雨』でモンスーンの体を滅多斬りにする!

 

承一郎「斬ッ!」

 

最後にモンスーンの首を切断する。

 

そのまま着地、モンスーンのボディが爆散して頭が落ちてくる。

 

モンスーン 『なるほど……、私の、負けか……』

 

承一郎「残念だったな。お前の模倣子(ミーム)はここで途絶える。全て自然の成り行きだ」

 

殺意や憎悪の連鎖というミームに取り込まれ、自らも殺戮のミームを振りまくバケモノと化した男。もう、悪夢から覚める時がきたのだ。

 

モンスーン 『いや……、虐殺のミームは……、お前に……。お前が虐殺を……、続けてくれる……。それが、自然の……、成り行き……。土に還る……、時が来た……。風が吹き、雨が……降る……。強い者が……弱者を、殺す……。これで……、良かったのだ……』

 

そう言い残し、頭部が爆裂する。

 

承一郎「ぐぅっ…‼︎」

 

途端、激しい頭痛が走るッ!

 

脳はさっきの通り人体がもたないから安全装置(セーフティ)がある。人間は普段は潜在能力本来の全能力の20〜30%しか発揮出来ない。

 

僕が行うセーフティの解除は最高80%まだ解放出来る。さっきは45%といったところだ。80%まで解放すると全身がボロボロになる。筋肉120%解放出来る戸愚呂弟ってマジで半端ない。

 

八幡『大丈夫か?』

 

承一郎「…ああ、問題ない。早く兄さん達に追いつかないとな」

 

雨に打たれながら、僕はワールド・マーシャル本社のビルへ歩き出した。


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