ジョジョの奇妙な冒険──5人目のDIOの息子──   作:GIOGIO

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悪に堕ちる。

復讐のために。


憎悪(The Venom)

マイク・O「お前ら、奴を撃て!」

 

マイク・Oは男達に指示するが、鬼のような姿の承一郎に怯んでしまう。

 

承一郎「遅いッ!」

 

承一郎はその一瞬で間合いを詰め、両腕で二人の男の首を掴む。

 

ズギュン!ズギュン!

 

男1・2「がぁっ…!血がぁ…!」「助けてくれぇ…!」

 

ピキピキピキ…!

 

男二人は血を吸われ、みるみる内に萎れていき、そして骨で覆われていく。

 

承一郎が手を離した後、血を吸われた二人の男は異形の身となっていた。

 

マイク・O「…なんだ、あの怪物共は…!」

 

承一郎「行け、髑髏(スカル)兵」

 

承一郎のその言葉と共に髑髏兵は圧倒的な速さで男達に襲いかかる。承一郎は『村雨』を使い濃霧を発生させ、ビルの中では何も見えなくなった。

 

男達「何も見えねぇ…ギャッ!」「気をつけろ!どこからか襲って…ぐぁっ!」「たっ、助け…あぁぁああ‼︎」

 

濃霧で見えないビルの中で悲鳴が木霊する。

 

濃霧が晴れると男達はいなかった。男達だった異形達(・・・・・・・・)がマイク・Oを見つめていた。

 

マイク・O「ヒッ…!」

 

承一郎「……」

 

承一郎は『村雨』を手にマイク・Oに向かって歩み寄る。

 

マイク・O「くっ…!『チューブラー・ベルズ』!奴を止めろッ!」

 

マイク・Oは大量のバブル犬を承一郎に襲わせるが、

 

承一郎「…迸れ、『村雨』」ボソッ

 

たった一振り、それだけでバブル犬が一斉に割れる。

 

マイク・O「なっ…⁉︎」

 

承一郎はゆったりと、しかし確実にマイク・Oへ迫る。

 

マイク・O「このッ!クソッ!クソッ!」ダァン!ダァン!

 

マイク・Oはヤケクソになりながら銃で承一郎を撃つ。承一郎は避けない。そのまま弾丸が命中する。

 

しかし承一郎は止まらない。瞳に漆黒の炎と灯しながら、マイク・Oの首を掴む。

 

ズギュン!ズギュン!

 

マイク・O「ぐあぁぁああぁぁあ‼︎」

 

血を搾り取られ、代わりに吸血鬼のエキス(EXTRACT)を拝領される。

 

しかし、それだけでは終わらない。

 

承一郎「…『山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)』」バチィ!

 

マイク・O「ぎゃああぁぁあああぁぁああ‼︎熱い!体が溶けるッ!ぎゃああぁぁあああ‼︎」

 

手からの強力な波紋疾走(オーバードライブ)、承一郎は屍生人(ゾンビ)になったマイク・Oへ太陽のエネルギー、『波紋』を流し込んだ。

 

吸血しながらの波紋疾走は承一郎の体にダメージを与えるが、

 

承一郎(あいつらの『痛み』は…ッ!『恐怖』はッ…!『怒り』はッ…!『哀しみ』はッ…!こんなものじゃあないッ!こいつには、最大の苦痛をもってこの世から消えてもらうッ!)

 

マイク・Oという人間は消え失せた。

 

承一郎「…迸れ、『村雨』」

 

スパァァァン…ッ!

 

承一郎は『村雨』でビルを切断した。それも一回だけではない。何回も、何十回も。

 

荒々しくも、仲間達の死体には一切傷を付けない緻密なコントロール。

 

ガラガラガラァッ…‼︎ドゴォォォン…‼︎

 

サム「…!」

 

ビルが崩壊し、それにサムが気づきそっちを見ると、

 

承一郎「……」

 

何も見ていない(・・・・・・・)承一郎と髑髏部隊がそこにいた。

 

承一郎は目を開けてはいる。しかし、その瞳には何も写していない。あるのは空虚(ゼロ)、ただそれだけだった。

 

サム「よぉ『若』…あの剣士はどうした?」

 

サムは承一郎を呼んだ。信乃がいつも呼ぶ、あの呼び名で。

 

承一郎「……」

 

しかし承一郎はそれに答えない。ただ、『村雨』を持つ力が強まるばかり。

 

サム「…そうか…。逝っちまったか…そいつは残念だ」

 

さっきまでの斬り合い。あれだけだが、サムは信乃を好敵手と認めていた。だからサムは信乃が承一郎を案じた時に見逃したし、信乃が戻って来ると信じていた。

 

承一郎「……」シュカァァン…!

 

承一郎はおもむろに『村雨』を鞘から引き抜いた。

 

サム「…いいだろう。信乃(あいつ)が死んだ意味があったのか、確かめさせてもらおう」シュカァァン…!

 

サムも『ムラサマ』を鞘から引き抜いた。

 

サム「…いざ、参る!」

 

承一郎「……フッ」

 

サムが第一に思ったのは、死神の鎌だった。

 

承一郎は一瞬で水圧カッターで鎌の形に放出、そしてその鎌形の水圧カッターを切り離してサムに飛ばした。

 

サム「フッ!」ボォッ!

 

ジュワァァァァ…!

 

サムの『ムラサマ』が飛ばされた水圧カッターを蒸発させる。

 

その中から承一郎はサムに向かって飛び込む。

 

サム「ほぅ…!」

 

承一郎「…シッ!」

 

承一郎が放った『村雨』の一閃をサムは受け止める。

 

だが承一郎は骨の刀を生成してサムに斬り込む。

 

サム「ムッ⁉︎」

 

だが『烈風』の呼び名の如く、サムは『村雨』をはじき、骨の刀を防ぎながら間合いを取る。

 

サム「お前さん…『スタンド能力』をさっき覚醒させたのか…。仲間を喪った憎悪(The Venom)で…」

 

承一郎「……」ダッ!

 

承一郎は答えない。サムとの距離を一気に詰めて、二刀で斬る。それだけだ。

 

サム「…なら、一気にケリをつけようか」パチン!

 

サムは『ムラサマ』を納刀、抜刀の構えを取る。

 

承一郎はサムに左腕の骨の刀を振るう。

 

カチッ!

 

サムが、鞘にある引き金を引く。

 

バシユッ!ギュィィィィィン……ッ‼︎

 

爆発的な速さで『ムラサマ』が鞘から飛び出し、それをサムが掴み、

 

サム「ハァッ‼︎」

 

ズバァァァン…ッ‼︎と、高速の抜刀により承一郎の左腕を切断した。

 

骨の刀を掴んだまま吹き飛ぶ左腕は、『ムラサマ』の炎によって空中で焼き尽くされる。

 

だが、承一郎は止まらない。否、止まれない。止まるわけにはいかない。この悪夢を生み出した張本人を殺すために、こんなところでは止まれない。

 

承一郎「ぐぅっ…!がぁぁああぁああ‼︎」

 

抜刀によって無防備になったサムの右手を『村雨』で貫く。

 

お互い、紅い鮮血を散らす。

 

サム「ぐあぁぁああぁぁあぁぁあぁぁああ‼︎」

 

右腕を貫かれ、あまりの苦痛に顔を歪めるサム。

 

サム「ぐぅっ…!流石だな、あいつが命を懸けた価値はあったという事か…」

 

ボタボタと血を流しながらサムはそう言う。

 

サム「お前さん…名は…?」

 

サムは問う。

 

承一郎「僕は…一条承一郎…『毒蛇(ヴァイパー)』だ…」

 

サム「承一郎か…覚えたぜ…。また剣を交える事が出来るのを楽しみにしてるさ」

 

サムはゆっくりと暗闇の中へ溶け込んでいく。

 

承一郎「……」

 

承一郎は瓦礫の山に立ち、仲間達の死体を見る。

 

承一郎はゆっくりと一人ずつ瞳を閉ざす。

 

承一郎「信乃…皆…僕は進むよ…。これから…どんな事が起ころうと…」

 

承一郎が立つ瓦礫の山の周りには、髑髏部隊(スカルズ)がこうべを垂れる。

 

承一郎の瞳からは、紅い血の涙が流れていた。上に昇る満月も、同じく紅く染まっていた。

 

承一郎「見ていてくれ…僕が…必ず…」グラッ…

 

そこで承一郎はぐらつく。意識が朦朧とする。倒れながら心の中で呟く。

 

 

承一郎(僕が…必ず…──)

 

 

悪に堕ちる。

 

 

承一郎(──仇を取る(・・・・)

 

 

復讐のために。

 

 

<= to be continued =




なんか最近、メタルギア寄りになっているような…(汗)

次回は、第0章最終話。


少年は進む。

親友(とも)の魂を抱きながら。

次回、『ダイヤモンド()を抱いて』

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