例えば、組み分け帽子が性急じゃなくて。   作:つぶあんちゃん

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アズカバンの囚人編
脱獄囚


ジリジリと照りつける午後の陽光がようやく和らいできた黄昏時、アルバス・ダンブルドアは校長室の戸を叩く音で顔を上げた。時計を見ると、ぴったり約束の時間である。それまで捲っていた分厚い本を片付ける。

 

「お入り」

 

ダンブルドアの言葉を合図に扉が開く。

長期休み中だというのにキッチリとローブを着こなしたレギュラス・ブラックは、軽く一礼をして室内へ入った。

 

「時間をぴったり守る癖は相変わらずじゃのう」

 

ダンブルドアは朗らかに笑った。そうすると、皺も相まって彼は一層人のいい年寄りに見えた。しかし、レギュラスは彼がただの好々爺ではないことを知っている。

 

ダンブルドアは杖を一振りした。すると、フカフカした椅子とティーセットが現れた。

どうやら長話になりそうだ。

 

「マグル界で有名な紅茶じゃ。 君の口に合うといいが」

 

「用件は何です?」

 

マグル界の物なんて十年前の自分なら口にしなかっただろう。何となく自虐的な気持ちでレギュラスをティーカップを口元に運んだ。…なかなか美味しかったそれは、さらにレギュラスを暗鬱な気持ちにさせた。

 

「ふむ。 先日、セブルスと共に行った日記の分析が終わってな…。 あの日記もトムの分霊箱に間違いないじゃろう」

 

ダンブルドアは落ち着いた声色でそう言い、ズタズタに引き裂かれた日記と…穴の開いたロケットを机の上に出した。ロケットにはSと刻まれている。紛れもなくレギュラス本人が『例のあの人』から盗み出してきた代物だ。

 

「やはり…そうでしたか。 分霊箱が1つではないのは薄々気付いておりましたが」

 

「ああ。 これはまだ仮説じゃが、儂は彼が魂を分けた個数は7つだと考えておる」

 

「7つ…!?」

 

普段落ち着いているレギュラスでさえ、動揺を隠せず目を見開いた。

 

「確かに7というのは、魔法として強力な数字です…しかし…」

 

魂を分かつというのは想像を絶するほどに残酷な行為だ。過去に闇の魔術に傾倒したことがあるレギュラスは、その恐ろしさが分かっていた。

 

「…じゃが、トムはもしかしたら…あの時本人も予期せぬ分霊箱を作ったかもしれない」

 

突然ダンブルドアはどこか独り言のように言った。

 

「どういうことです?」

 

「…いや、何でもない。 あくまでまだ仮説じゃ。 そうでないことを祈ろう」

 

ダンブルドアが何処か苦しそうな顔をしたので、レギュラスはそれ以上聞かなかった。

 

「…ミス・プリンスは元気かね?」

 

ダンブルドアは話を変えた。

 

「ええ、とても。 相変わらず魔法薬の勉強ばかりしてますが」

 

レギュラスはプリンス家別邸に住んでいるが、夜ご飯はちょくちょく本邸の方に食べに行っていたのでシャルロットにも頻繁に会っていた。

 

「元気になったなら何よりじゃ。 そうそう。 ミネルバがミス・グレンジャーとミス・プリンスに『逆転時計』の使用を提案したらしい。 2人とも秀才だからのう」

 

その話はレギュラスも知っていた。

シャルロットは迷ったらしいが、セブルスはマグル生活が長くそれがシャルロットにも影響しているため『マグル学』はいらないこと、そして同じくセブルスが『占い学』は多分シャルロットに合わないからとアドバイスしたので、『逆転時計』の使用は断った。確かに、魔法薬に心酔している――言ってしまえば理系脳である――シャルロットに『占い学』は合わないだろう。

 

「ミス・グレンジャーは使うことにしたらしい。 ところで、レギュラス。 彼女に今年1年個人授業を行っていたらしいのう?」

 

「ええ。 シャルロットに勝ちたいようで。 尤も今年の期末試験はキャンセルされましたが」

 

「セブルスがなぜ彼女はレギュラスにだけ質問に行って、自分の元に全く来ないのか不思議がっていた。 素晴らしきかな、青春じゃ」

 

ダンブルドアは心底楽しそうにクスクスと笑った。

レギュラスはダンブルドアの真意が分からず、ティーカップを手にしたまま首を傾げた。

 

ふとダンブルドアは真面目な顔になった。

 

「レギュラスよ。 儂は立場上、どうしても冷酷にならざるを得ないこともある。もしもトムが復活を果たしてしまった暁には、君に危険なスパイ任務を頼むように」

 

ダンブルドアはレギュラスをじっと見据えた。

 

レギュラスは『例のあの人』に失望した時、持ち出した分霊箱を壊してさらに自分を受け入れてくれたダンブルドアに全幅の信頼を置いてはいる。しかし、彼のために命を捨てたいかとまで聞かれたら嘘になる。

 

だが、自分の恩人であるセブルスと幼い頃から自分に懐いてくれたその娘のシャルロットを守るため、そして自分の贖罪のためならその任務も仕方なしと考えていた。

 

「…それは了承しておりますが」

 

「しかしな、教え子の1人として君にも幸せになってほしい。 そう思ってしまう儂を偽善者だと詰るかね?」

 

既に日は落ち、外は既に群青色の闇が広がっている。

 

ダンブルドアの瞳はどこまでも深い海のような、穏やかなブルーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリモールド・プレイス12番地。

 

ヴァルブルガの肖像に悪態をつかれるという何でもない日常をこなしながら、ハリーは欠伸を噛み殺した。

 

そういえば、幼い頃はこのシリウスの母の肖像が怖くて怒鳴られる度に泣いていたっけ。

 

「おはよう、パパ」

 

シリウスに挨拶をしながらリビングに降りたハリーは、慣れた手つきでテレビをつけた。

 

「ハリー、ロンから手紙が届いていたぞ」

 

シリウスは花模様の入った高いコーヒーカップを2つ出すと、淹れたばかりのコーヒーを注いだ。

そして、ハリーに手紙を渡すとまるで舞台俳優のように芝居がかった仕草でハリーを抱きしめた。

 

「愛しい息子よ、ハッピーバースデー!」

 

ハリーは返事の代わりにニッコリと笑った。

今日のハリーの13歳の誕生日の予定は、昼間はシリウスとマグルのテーマパークに遊びに行き、夜はブラック邸でパーティーを開く手はずになっていた。

 

ハリーはロンの手紙の封を破りながら、リモコンを弄った。

シリウスは純血貴族のくせにその家風に染まらず、マグルのものをよく好む。そして、そんなシリウスがハリーは好きだった。

 

見慣れたバラエティ番組に耳を傾けながら、手紙を広げた。

 

 

『ハリー、ハッピーバースデイ!

 

今日は君のパーティーに参加出来なくてごめんね。

ねえ、ハリー。エジプトって本当に素晴らしいよ!古代エジプトの魔法使いがかけた呪いって信じられないくらいすごい。

パパが『日刊予言者新聞』のくじで七百ガリオンも当てるなんて僕びっくりさ!今回のエジプト旅行でほとんど無くなっちゃったけどね。

また夏休み終わる前に会おうぜ!

 

ロンより

 

追伸 パーシーは首席だってさ!』

 

 

ハリーは同封されていたプレゼントの包みを開けてみた。

中にはかくれん防止器が入っていた。

 

「パパ、僕もエジプト行ってみたいな」

 

手紙を折りたたみながら、どこかおねだりするようにハリーが言った。

 

「うーん…そういえば、俺もエジプトは行ったことないな。 若い頃はよくジェームズたちとあちこち旅行に行ったものだけど」

 

「そういえば、パパって昔の写真あまり見せてくれないよね。 ジェームズパパたちとの旅行の写真見たいのに」

 

ハリーは少しむくれて、コーヒーにミルクを入れて1口飲んだ。

 

その時、何気なく見ていたテレビの画面が変わった。バラエティ番組から、緊急のニュース番組に画面が切り替わる。

 

 

『番組の途中ですが、ニュースをお伝えします。 大量殺人の犯人であるピーター・ペティグリューが脱獄した模様です。 繰り返します、大量殺人の犯人であったピーター・ペティグリューが…』

 

 

テレビでよく目にする女性のアナウンサーが早口でそう捲し立てた。

 

ガシャンッ!

シリウスの手からカップが滑り落ちた。高級品であったカップは粉々に割れ、ブラックコーヒーの黒い染みが毛足の長い絨毯に広がる。

 

「どうしたの、パパ?」

 

ハリーはニュースより、シリウスがカップを落としたことに驚いた。

 

シリウスは真っ青な顔をしていた。手も小刻みに揺れている。

 

「パパ…?」

 

もう一度ハリーがそう呼ぶと、シリウスははっとして我に返った。

そして彼はおもむろに立ち上がると、出勤用の黒いローブを手にかけた。

 

「ごめんな、ハリー。 俺はこれから魔法省に行かなければならなくなった。この埋め合わせは絶対する。 …夜のパーティーまでには帰るから」

 

心底申し訳なさそうにシリウスは言った。

 

「え、ちょっと待ってよパパ! 今日は前からの約束だったじゃない…」

 

煙突飛行粉を手にしたシリウスに、ハリーは尚も食い下がった。しかし、シリウスはもう一度、ごめんと謝ると青い炎の中に消えていった。

 

いつのまにかリビングに来ていたアンが、シリウスが派手にこぼしたコーヒーを掃除していた。ハリーに気を使ってくれたのか、焼き菓子がテーブルの上に置いてある。

 

拗ねた気持ちで、ハリーはクッキーを齧った。

シリウスのドタキャンにより、突然ハリーは夜まで暇になってしまった。

 

夜まで何をしよう?

アンにチェスでも付き合ってもらおうか。

 

一瞬そんなことを考えたが、すぐに辞めることにした。

アンはハリーとチェスをすると気を使ってすぐに負けようとするので、暇つぶしにもならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法省はてんやわんやだった。

 

ペティグリューのアズカバン脱獄を告げる日刊預言者新聞の号外が目にも止まらぬ速さで刷られている。

 

とはいえ、テレビで放送されたマグルより魔法界の方が情報の伝達が遅いのは如何なものかとシリウスは思った。

 

「やあ、チャールズ」

 

偶然ロビーを同僚が通ったので、シリウスは軽く手を上げた。

 

「おお、シリウス。 今日は非番だと聞いていたがもう大臣に呼び出されたのかい?」

 

彼は残業続きなのかローブの裾はよれて髪もボサボサだった。

 

「いや、ニュースを見てすぐ来たのさ。 家にいてもどうせ呼び出されるだろうしね。 …それで大臣はどこに?」

 

「執務室に居ると思うよ」

 

シリウスは礼を言うと、足早にエレベーターに乗り込んだ。

 

ファッジは執務室の中でイライラと爪を噛みながら歩き回っていた。最早彼のトレードマークとも言える山高帽を浅く被り、紺の縦縞のスーツを着ている。恐らくマグルの首相に会ったためにこの格好なのだろう。

 

「失礼します、大臣」

 

相変わらずセンスのない格好だなとシリウスは思ったが、もちろんそんな様子をおくびにも出さずに控えめに頭を下げた。

 

「おお、シリウス! 今まさに君に連絡を取ろうと思っていた! 大変なことになってしまった。 これでは私の評判は…」

 

「大臣、何故ピーター・ペティグリューは脱獄を?」

 

シリウスはどうにか落ち着いてそう遮った。ファッジの権力への執着心に付き合ってる暇はない。

 

「吸魂鬼のキスを恐れての脱獄だろう。 彼はネズミに変身できる! しかし、それを踏まえて収監していたはずなのに何たる失態!」

 

まさかあの孤島からネズミに変身して泳いで逃げるとは。

 

「すぐ吸魂鬼を手配しろ、シリウス!」

 

「お言葉ですが、大臣。 吸魂鬼は無差別に人に襲いかかる可能性があります。 ネズミを探すなら闇祓いを手配した方がよいかと」

 

「何でもいい! 早くペティグリューを捕まえろ!」

 

シリウスは執務室を出た。

出来たての日刊予言者新聞を銜えた幾千ものフクロウが、魔法省からバサバサと飛んでいく。

 

シリウスは再び魔法省の暖炉から煙突飛行粉を掴むと、「プリンス家!」と叫んだ。最早慣れきった不愉快な回転。次の瞬間、ブラック家とそっくりの蛇の彫刻が目に入った。

 

リビングには日刊予言者新聞を握りしめてわなわなと震えるダリアがいた。

 

いつもなら、アポイントメントもなしにふらっと訪れるシリウスに対して「全くレギュラスを見習って欲しいわね」と皮肉を言うダリアだが、今はそんな余裕もなさそうだ。

 

「シリウス…! これは本当なの、シリウス」

 

「…残念ながら本当です。 今闇祓いたちが捜索にあたっています」

 

ダリアは噛み締めるようにシリウスの言葉を聞いて…ぐったりと椅子に倒れ込んだ。

 

「どうして? どうしてセブルスだけがこんな辛い思いをしなければならないの?」

 

ダリアは悲痛な声でそれだけ言った。

 

「プリンス夫人、セブルスは?」

 

「2階の書斎に。 リーマスも来ているわ」

 

運のいいことにシャルロットは、ハリーの誕生日プレゼントを買いに出かけているようだ。彼女は、母親を植物人間にさせた犯人の正体を知らない。

 

書斎に着くとノックもせずに扉を開けた。

セブルスは眉間に皺をこれでもないくらい寄せて、ソファーに体を投げ出していた。テーブルにはファイアウイスキーの空き瓶とグラスが2つ置かれている。

 

 

「やあ、シリウス。 ニュースを見たが魔法省は彼が『動物もどき』であることを公表しないんだね」

 

反対側のソファーに座っていたリーマスは、右に寄ってシリウスの座る場所を作った。

リーマスは怪しい呂律で皮肉げに笑った。酒に弱い彼は、酔うとちょっと卑屈で攻撃的になる。

 

「魔法省の隠蔽体質は相変わらずだな」

 

セブルスはうんざりしたように言った。

未成年が『動物もどき』を習得していた事実を隠すため、ピーターがネズミに変身できることは自分たちを除けば魔法省のトップのごく一部しか知らない。

 

「…面目ない」

 

シリウスは暗い顔でそう謝った。それ以外言葉が見つからなかった。

 

「奴は…見つかるのか?」

 

セブルスが苦しそうな顔で、頭痛を抑えるように眉間をとんとんと叩いた。

セブルスがここまで飲むのも珍しい。

 

「何とも言えないが…正直厳しいだろうな。 どこの国にいるかわからないネズミを1匹探すなんて、それこそ砂漠の中から金を探すのと同義だ」

 

「そうだよねぇ…」

 

リーマスも額に手を当てて嘆いた。とはいえ、一様に3人は複雑な気持ちだった。

 

ジェームズとリリーを殺したこともレイチェルを昏睡させたのも許せない。しかし、青春を共にした友人の処刑を喜べるわけもなく、彼への吸魂鬼のキスが執行されるその日にちが決まったときから胃をキリキリとさせながら毎日を送っていた。

 

「俺が、絶対あいつは捕まえる。 例え捜査を打ち切られても、俺一人で」

 

シリウスはセブルスの目を真っ直ぐ見たまま、贖罪するかのような口ぶりで言った。

 

「…シリウス、おまえがあのことで自分を責めているのは知ってる。 だが、思い詰めるな。 例えピーターが死んでも、ジェームズとリリーは戻ってこないし、レイが目を覚ますわけでもない」

 

セブルスは静かに言って、言葉を1度切った。

 

「じゃあ…彼がこのまま見つからなくてもいいと思ってるのかい?」

 

リーマスが慎重に言葉を選ぶようにそう言った。

 

それはシリウスも気になっていたところだったので、セブルスの顔色を窺った。シリウスの予想では、もっとセブルスは怒り狂っていると思っていたのだが、意外と彼は落ち着いていたのでむしろ不気味だった。

 

すると、セブルスは驚くことに、薄っすら笑ってみせた。しかし、それは恐ろしいほど憎しみに満ちた笑みだった。

 

「ああ、そうだな。…ところで、追跡者に怯え死ぬまで逃亡生活を繰り返すのはどれほどの苦痛だろうな? あの臆病者にとって」

 

今まで怒りの色を見せなかったセブルスは声を震わしてそう言った。シリウスとリーマスは背筋に冷たいものが走った。

 

暫く、部屋には深い沈黙が続いた。

 

「…飲みすぎみたいだよ、セブルス」

 

リーマスは自分のことを棚に上げて、徐に優しくそう言った。少し酒が抜けたのか、穏やかで慎重な彼が俄に戻ってきていた。

シリウスは無言で杖を振ると、瓶とグラスを片付けた。

 

突然、階下から扉の開く音とシャルロットの元気な声が聞こえた。

無邪気なその声にそれまで暗かった3人の表情も自然と柔らかくなる。

 

「そうだ。 今日はハリーの誕生日だったな」

 

「ああ。 夜のパーティーには絶対来いよ。 もちろんリーマスもな」

 

去年ハリーの誕生日に来れなかったリーマスは、もちろんと笑った。

 

「…そういえば、リーマス。 ダンブルドアから『闇の魔術に対する防衛術』の教師の依頼を受けたらしいじゃないか」

 

セブルスが思い出したように言った。

シリウスは初耳だったらしく、へえと驚いた。

 

「いい話じゃないか。 セブルスと同じ職場なら脱狼薬も作ってもらえるし」

 

「私のような者に教師なんて勤まるのかな。 セブルスにも手間をかけてしまうし。 ただ去年あんなことがあったからかさらに教師が見つからないらしくてね、ダンブルドアからお話を頂いたんだよ」

 

リーマスは少し困ったような顔をした。だが、その顔は照れ臭そうでもある。ダンブルドア直々に仕事を紹介されたのが嬉しいのか、満更でもなさそうだ。

 

「『秘密の部屋』の真犯人はまだ見つからないのか? 一歩遅ければ私の娘は死んでいたんだぞ」

 

「残念ながら。 とはいえ、ピーターのことで忙しくなりそうだし、『秘密の部屋』の捜査は打ち切られるだろうな」

 

ちょうどシリウスがそう言った時、扉がばたんと勢いよく開いた。

去年に比べ随分長く伸びた金髪をポニーテールにしたシャルロットは、嬉しそうに部屋に飛び込んできた。

 

「シリウスおじさん、リーマスおじさん! 来てたのね! って…何よこれ! すごくお酒臭いわ」

 

入るなりシャルロットは顔を顰めた。

その様子があまりにも子どもらしかったので、3人はクスッと笑った。

そういえばレイチェルも表情がコロコロ変わる少女だったっけ。

 

学生時代のレイチェルは髪を短く切り揃えていて目つきも鋭かったので人によってはきついイメージを持たれていたが、シャルロットは彼女より雰囲気が柔らかかった。

セブルスは未だにレイチェルの昏睡した詳細をシャルロットに話していない。

母親を植物人間にさせた犯人はさらにハリーの両親の死の原因を作り、その正体が父親の親友だなんて、13歳の少女が聞くには残酷すぎるだろう。

 

 

「おかえり、シャル。 ハリーへのプレゼントは何を買ったの?」

 

「夜まで内緒よ」

 

リーマスが訊くと、シャルロットは悪戯っぽくそう答えた。

夜のハリーの誕生日会が楽しみなようで、シャルロットは終始浮かれていた。

 

それは夜のグリモールド・プレイス12番地に行っても変わらなかった。

ハリーとシャルロット、そしてハーマイオニーへの接し方が僅かに軟化したドラコたち4人は夜が更けるまで遊び回っていた。

 

それを大人たちはかつての青春を思い出し、微笑ましく見守っていた。

 

子どもたちに何の不安も与えたくない。このまま健やかに元気に成長してほしい。

 

一様に皆、そう願いながら。

 

 





【挿絵表示】


Miari様より、とても可愛らしいシャルロットのイラストを頂きました。魔法薬の図鑑を持っているのが、また嬉しい!

アズカバン編、開幕です。オリジナル要素が強い年になりそうですので、ちょっと執筆速度遅くなりそう。

ハリポタ用のTwitterアカウント作りました。
作りたてほやほやでFFが0なのでぜひ絡んでやってください。
@tsubuan_chan_

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