ハリー・ブラックは、その軽薄に見える性格から誤解されがちだが決して成績は悪くない。
毎年の期末試験の順位は、中の上には必ず入っている。特に『呪文学』や『闇の魔術に対する防衛術』の実技は素晴らしく、足を引っ張る科目がなければハリーはもっと上位の成績を目指せるだろう。
では何の教科が足を引っ張っているか。
ずばり『魔法史』と『占い学』だろう。ゴーストであるビンズ先生の抑揚のない声で語られる魔法界の歴史は死ぬほどつまらない。ホグワーツきっての不人気科目だろう。まともに聞いているのなんてハーマイオニーくらいだ。
そして、今はまさにハリーが受けている『占い学』。
霧の奥から届くような不可思議な声(だと本人は思っている)のトレローニーの授業は、端的に言って最悪だ。授業の行程は恐ろしく面倒くさい。その割に何の役にも立たない。
教室は閉め切っているので暑苦しく、空気が悪い。
「…酸欠になるよ、こんなの」
ハリーはトレローニーにバレないようこっそり窓を開けた。隣りでロンがよくやったと言わんばかりに親指をぐっと立てる。
イースター休暇も終わり、風は夏の匂いを運んできた。その心地良さに思わず欠伸が出る。
ちょっとだけ--そんな甘い言い訳をして、ハリーは目を閉じた。
夢の中で、ハリーはワシミミズクの背に乗っていた。
ワシミミズクは澄み切った青空をするする飛んでいく。やがてワシミミズクは高い丘にある蔦の絡まった古い屋敷でハリーを落とした。
「ワームテール、貴様は運のいいやつよ」
冷たい甲高い声に、夢の中だと言うのにハリーはぞくりとした。姿が見えていなくても、この声の主がヴォルデモートであると分かった。
「我が君…どうか…お許しを……」
ワームテールは心底怯え切った顔を床につけ、懇願している。
「貴様はしくじったが、すべてが台無しにはならなかった。 やつは死んだ」
部屋の中でするすると大きな蛇がとぐろを巻いた。赤い舌がちらちらと不気味に揺れる。
--まるで、獲物を食べ損ねたことに憤慨するように。
「我が君…どうか…」
「二度とおまえがしくじらないよう、体に刻み込まなければいけないな?」
ヴォルデモートの嘲るようにそう言うと、ワームテールの顔が絶望に染まった。
「クルーシオ!!」
耳を劈くような悲鳴を上げ、ワームテールが転げ回った。
同時にハリーの額の傷が焼きごてをあてられたように、かっと痛んだ。耐えきれず、ハリーも悲鳴を上げる。
「ハリー!! 大丈夫か!?」
ロンの声で、ハリーは漸く自分が教室の真ん中で倒れていることに気付いた。周りを生徒達が取り囲み、そこには心配と好奇をごちゃ混ぜにした瞳が並んでいる。
「何ということでしょう!」
トレローニーが声を上げ、ハリーに近付いた。
「ブラック、どうなさったの? 夢で何を見たのです? 不吉な予兆? 亡霊?」
「なんにも」
ハリーは嘘をつくと、ロンに手を借りて立ち上がった。体が震えているのが自分で分かった。
「あなたは間違いなく占いの素質がありますわ! これまでにも--」
「すみませんが、医務室に行かせてください」
トレローニーが興奮した顔でさらに何かを言い募ったが、ハリーは鬱陶しそうにそれを振り切って占い学の教室を出た。
向かった先は医務室ではなく校長室。
先ほど見た夢は、ただの夢なんかではないという自覚があった。じんじんと痛む額の傷を揉みながら、ガーゴイル像の前に辿り着く。
「レモン・キャンディー」
ダメ元で呟いてみた合言葉は、やはり違ったようでガーゴイル像は動かない。
「よーし…梨飴。 杖型肝臓飴。 ドルーブルの風船ガム。 百味ビーンズ。 うーん」
像はピクリともしない。
「蛙チョコレート! フィフィフィズビー! ゴキブリゴソゴソ豆板!」
ガーゴイル像に命が吹き込まれ横に退き、階段が現れた。
「うえー…校長先生、本当にあんなのが好きなのかな」
ハリーは思わずそう呟いて、階段を登った。
ゴキブリゴソゴソ豆板といえば、魔法界のお菓子ランキングで10年連続ワースト1位の商品だ。
来年のクリスマスには、ダンブルドアにゴキブリゴソゴソ豆板を箱で送ってあげようか。
相当グロい絵面になることを想像し、ハリーは先程の夢も忘れて悪戯っぽい笑い声を零した。
「校長先生、失礼します。 ブラックです」
ノックをして、声をかけたが返事はない。
「校長先生?」
ハリーは控えめにノブを回し、ちょっぴり部屋を開けてみた。
しかし、ダンブルドアは居なかった。
ハリーは勝手に入っては行けないと思いつつも、好奇心に負け部屋に足を踏み入れた。
「やあ、フォークス」
真紅と金色の羽根を持った不死鳥は見惚れるほどの美しさで、ハリーに優しい瞳を向けた。
ダンブルドアの部屋は不思議なもので溢れていた。触らないよう色々な道具を見て回る。
そんな中ふとハリーの目を引くものがあった。
淡い光を放っている水盆。
しかし、その水面には何やら景色のようなものが映し出されていた。好奇心を擽られたハリーはもっと良く見ようと、水盆を覗き込んだ--その瞬間。
ハリーの体は吸い込まれ、気づけば知らない景色の中にいた。
そこは階段状になっている円形の傍聴席で、どうやら裁判所だということが分かった。
人々は拘束されている男を見下ろしている。ハリーはその人物に見覚えがあった。…カルカロフだ。
さらにムーディやダンブルドアが傍聴席に共に座っていた。
カルカロフは怯えた顔で、仲間の死喰い人の名を挙げていた。
「あとはレギュラス・ブラック! 彼も死喰い人だ!」
カルカロフが喘ぐように言うと、ダンブルドアが立ち上がった。
「彼はヴォルデモートが力を失う少し前から儂と通じていた。 もう闇の勢力に関わっていないことを、儂が保証しよう」
「聞いた通りだ」
裁判長を務めているクラウチ氏はやや不服そうであったが、そう頷いた。
「それならルシウスだ! ルシウス・マルフォイ! 彼は間違いなく死喰い人だ」
「残念ながらルシウス・マルフォイも既に無罪と証明済みだ。 証人はセブルス・プリンス」
いよいよカルカロフの顔が絶望に染まった。
しかし、次に挙げたオーガスタス・ルックウッドに関しては魔法省も掴んでいない情報だったらしく、カルカロフは何とか司法取引を成功させた。
裁判は続いていく。
次に引き立てられてきたのは、なんとクラウチの息子だった。
彼の罪状はベラトリックス・レストレンジたちと共に、ロングボトム夫妻を正気を失うまで拷問したとのことだった。
ハリーはネビルの不幸な生い立ちを、この時初めて知った。
「お父さん…やめて! 僕はやっていない!」
クラウチ・ジュニアは悲痛な声で何度もそう訴えた。
しかし、クラウチはその声に応えなかった。
「助けて!! お母さん、お父さんを止めて!!」
「この者たちをアズカバンに終身刑とす。 異論ある者は挙手せよ」
手を挙げる者は誰もいない。
「お父さん! やめて! 僕をあそこに送らないで!! お父さん!! 助けて!!」
「黙れ!! 私に息子などいない!」
クラウチの吐き捨てるような言葉に、ジュニアは目を大きく見開いた。
「おまえなど…私の息子ではない。アズカバンで朽ち果てよ」
その言葉を合図に吸魂鬼が這いずるように現れた。
初めて吸魂鬼を見たハリーは、これが記憶ということも忘れ身を竦ませた。
「お父さん! お父さん!!」
「闇の帝王はいつかまた立ち上がる! その時私たちは身に余る光栄を授かれるだろう!」
見捨てられても尚父に助けを乞うジュニアの声は、ベラトリックスの気が狂ったような笑い声に掻き消された。
「ハリー、そろそろいいじゃろう。 校長室に帰らんかの?」
びくりとして振り返ると、そこには記憶ではない本物のダンブルドアが立っていた。
次の瞬間、ハリーはダンブルドアと共に元いた校長室に立っていた。
「あの、すみません。 僕--勝手に見る気はなかったんです」
ハリーは慌ててそう言った。
「好奇心は悪いことではない。しかし、慎重に扱わなければいけない」
穏やかにダンブルドアはそう言った。彼から怒っている気配は窺えなかったので、ハリーは質問をしてみることにした。
「あれは…校長先生の記憶なのですか?」
「いかにも。 これは『憂いの篩』と言ってな、溢れた想いを頭の中からこの中に注ぎ込んで、時間のある時に吟味するのじゃよ」
ハリーは不透明な銀色に光るその水盆を、改めてまじまじと見つめた。
「ちょうど君が来る少し前にこの記憶をある人に見せていてのう。 片すのを忘れておった。 年をとると忘れっぽくていかん」
ダンブルドアはクスクスと笑った。
「校長先生、あの先程の記憶のロングボトム夫妻ってもしかしてネビルの…」
恐る恐る問うと、ダンブルドアは先程の笑みを瞬時に打ち消し、疲れきったような表情を浮かべた。その様があまりにも老いて見えたので、ハリーは少しぎょっとした。
「彼は、君たちにその話をしていないのかね?」
言われてみれば、ネビルの口から『ばあちゃん』の言葉は何度も聞いても『パパ』や『ママ』という言葉を聞いたことがない。
ダンブルドアは彼の両親が拷問され廃人状態になっていることを改めて聞かせた。しかし、ハリーはこのことを誰にも言わないようにしようと思った。
ハリーも死んだ両親のことを詮索されるのは嫌いなので、ネビルが そのことを話したがらない気持ちが何となく分かった。
「先ほどのクラウチさんは…」
ハリーは少し逡巡してからそう訊いた。
あまりにもショッキングな記憶だったため、訊いていいかどうか迷ったのだ。
「見ての通りじゃよ、ハリー。 息子のクラウチ・ジュニアが死喰い人として逮捕され、アズカバンに送られたのじゃ」
「彼はその後どうなったのですか?」
「…すぐに死んだ。 アズカバンはのぅ、ほとんどの人がたちまち気が狂ってしまう。 …ところで、ハリー。 儂に何か用があって、来たのではないかね?」
ハリーはそこで漸く、自分の傷が痛んでいたことを思い出した。
夏休みにハリーの額の傷が痛んだことを、ダンブルドアはシリウスから聞いていたようだ。
ダンブルドアは、ハリーとヴォルデモートに何かしらの繋がりがあると考えているようだが、詳しくは教えてくれなかった。
「ダンブルドア先生」
ハリーは部屋を出る際、校長を呼び止めた。
「まだ質問があるのかね、ハリー?」
その声に咎めるような色はなく、どこか楽しんでるようにすら聞こえた。
「どうして校長先生は、レギュラス・ブラック…先生が無実だと信じたのですか?」
「それはのう、ハリー。 私とブラック先生の問題じゃ」
ダンブルドアは穏やかに、それだけ言った。
生徒は慌ただしくご飯をかきこむと、皆我先にと競技場の方へ向かった。
とうとう最終課題が行われる。
みんな誰が優勝杯を取るのか見届けようと、いい観客席をとるため急いで向かっていた。
和気あいあいとじゃれ合う生徒が、かつての自分たちと重なって胸が痛む。ジェームズ、リーマス、セブルス…そして。
「いよいよ三大魔法学校対抗試合の最終試合が行われます! 速やかに観客席に向かってください!」
ソノーラスで拡大されたバクマンの声で、シリウスは追憶から抜け出した。
わいわい騒ぐ生徒を追い越すと、競技場の中の選手控え室へと向かった。
全く同じブロンドの髪を持つフラー親子と妹、ガッチリした体格をしたクラムの父親に軽く会釈をする。エイモスとは魔法省で親交があるものの、ハリーが不正をしたと信じて疑っていないらしくシリウスの視線をするりと躱した。
セドリックの隣りにはジニーが居て、エイモスからすれば『ハリー贔屓』のウィーズリー家の末娘が自慢の息子と付き合っていることも快く思っていないようだ。
「あ、パパ!」
こちらに気付いたハリーは嬉しそうに近寄ってきた。その隣りにはルーナもいた。
また少し背が伸びた。昔はシリウスの姿を見つける度抱きついてきたものだが、今はそこまではしてくれない。息子の成長に僅かな寂しさを感じた。
「いよいよだな」
「うん。 任せて! 優勝杯とってくる!」
ハリーは強気にそう言ったが、緊張してるのは一目瞭然だった。
「…頑張れよ」
シリウスはそう言って、ハリーの頭をかき抱き自分の胸に押し付ける。
「やめてよパパ! もう子どもじゃないんだから」
近くにガールフレンドのルーナや他の代表選手がいるせいか、ハリーは恥ずかしがってシリウスの体を押し返した。
「そうだったな」
シリウスは軽く笑うと、ハリーの耳元に口を近付けた。
「いいか、ハリー。 本当に危ないと思ったらすぐ棄権の信号を打て。 先生たちが迷路の周りを見張っているはずだが、万が一のことがある」
「でもパパ…棄権なんて…」
「おまえの名をゴブレットに入れたやつが何か仕掛けてくるとしたら、この試合しかないんだ。 もっとも俺が居るからにはそんなことさせないけどな」
魔法省の役員が選手たちを呼びに来た。
「行ってこい、ハリー!」
シリウスが背中をばんと叩くと、ハリーは痛そうに顔を顰めながらもスタート地点へと向かった。
現在1位のハリーは観衆の歓声に包まれながら、一番最初に迷路へと足を踏み入れて行った。
それを見守り終えたシリウスは、観客席とは真逆に位置する迷路の裏へと急いだ。辺りは既に薄暗く、空の橙色はどんどん闇に侵食されていった。
目当ての人物がなかなか見つからず焦り始めてきた頃、ようやく片足を引き摺って歩く、あの聞き慣れた音が聞こえた。
シリウスは素早く杖をいつでも抜き出せる位置に構える。
「やあ、アラスター」
ムーディは驚いたようにひくりと体を揺らすと、こちらへ振り向いた。
その顔に広がる一瞬の動揺。しかし、すぐにそれは打ち消された。…見事な演技だ。
「ああ、シリウスか。 こんな所まで儂に何の用だ? 儂はこの試合が安全に恙無く終わるよう、監視する責務があるのだが」
「つれない返事だな。 何年も戦場を共にした仲間だろ? 今年は俺も何度かホグワーツに来ていたのに、全く顔も合わせてくれなかったじゃないか」
シリウスはフランクに笑いかけ、そして久々の再会を喜ぶように手を差し出して握手を求めた。
「たまたまタイミングが合わなかっただけに過ぎん。 別にいちいちお前と会う用事もない」
ムーディは握手に応じ、そう言葉を返した。
「ああ、それもそうだな。 ところでアラスター…いや」
シリウスは一度そこで言葉を切った。
「おまえ、偽物だろ?」
ムーディの行動も速かったが、シリウスの方が1枚上手だった。
「インペディメンタ!!」
繋がれたままだった手でムーディを引き寄せると、空いている方の手で素早く杖を抜き妨害呪文を飛ばした。
呪文を諸に食らったムーディは弾け飛び、転がった。しかし、瞬時に反撃に出た。
「クルーシオ!!」
「プロテゴ・マキシマ!!」
シリウスは緑の分厚い盾を出して凌いだ。
「とうとう本性を表したな。 バーテミウス・クラウチ・ジュニア! 違うか?」
ムーディは…否、ムーディの顔をしたクラウチ・ジュニアは大口を開けて笑った。
「はははははははっ!! その通りだ。 長年共に働いたおまえの目は誤魔化せないと思って、距離を置いたんだがな! 何故気付いた?」
再びクルーシオが飛ばされ、シリウスは横っ飛びにそれを避けた。
「アラスターが授業で許されざる呪文を披露するわけない! それに忍びの地図でクラウチの名前を見つけたのも大きかったが、確証を得たのはたった今だ」
呪文を避けながら狙いを定める。
「どれだけ長い付き合いだろうと、アラスターが握手に応じるわけねえだろ! 本物の彼なら間違いなくこう言う--『油断大敵』!!」
シリウスは再び呪文を放った。
宵闇の中、光線が交差する。眩しい光が辺りを照らす。
しかし、ここなら生徒達に気取られることはないだろう。今日までシリウスが行動を起こすのを待ったのは、ホグワーツでは生徒を巻き込む可能性があると判断したからだ。
再びシリウスの放った赤い閃光がクラウチ・ジュニアに襲いかかった。
「プロテゴ!」
クラウチ・ジュニアは杖を振るい、シリウスの猛攻を防いだ。
妙だなとシリウスは思った。
先程から磔の呪いは放ってくるものの、イマイチ決定打に欠けている。
味方の加勢の機会を伺っている?いや、ホグワーツに忍び込むのは並大抵のことではない。
シリウスは戦いに身を浸しながら、冷めた頭で考える。
それならば…時間を稼いでいる?
その考えに至った瞬間にシリウスの背筋をぞくりと冷たいものが走った。
「…インペディメンタ!!」
シリウスはそう唱えると、杖を宙に放り投げた。
「なっ!?」
シリウスの予想外の行動にクラウチ・ジュニアは一瞬呆けた。
シリウスの杖は光線を散らしながら、地に落ちた。驚いたクラウチ・ジュニアに一瞬隙ができる。
シリウスは間合いを詰めると、クラウチの杖腕を握り捻った。そしてそのままクラウチの体ごと持ち上げ地面に落とす。
「ぐぅっ!!」
「ふん! おまえら死喰い人は馬鹿にしてるけどな、マグルの体術は覚えといて損はないぜ」
シリウスは転がっていた自分の杖を取ると、クラウチ・ジュニアを縛り上げた。そして彼が首からぶら下げている瓶を手に取る。
「成程な、これにポリジュース薬を詰めて飲んでいたのか。 考えたもんだぜ」
「アラスターの居場所を吐け。 それに炎のゴブレットにハリーの名を入れたのはてめえだな? 目的を今すぐ言え」
ところがクラウチ・ジュニアは、この場に及んでニヒルに唇を吊り上げた。
不気味に笑う偽物のその顔が、シリウスの知るアラスターの顔と一致しなくて嫌な予感が溢れる。
「早く吐け! そうすれば、罪は少しでも軽くなるんだぞ! てめえの負けだ!」
辺りは既に闇に包まれた。
遠くで観客席に居るのであろう生徒たちの喧騒が僅かに聞こえる。
「俺の負け? いや、それは違うな」
「…何が言いたい?」
「俺の役目は、お前が大事にしているあの小僧をあの方の元に届けることだった。 そして、恐らくそれは既に成し得た! お前がのんびり俺と戦っている間にな!!」
ムーディの顔をした化け物が、気が狂ったように歯をむきだして笑った。
いや、既にこいつは気が狂っている。自身の父親すら手にかけた男なのだから。
「俺は成し遂げた! 成し遂げたのだ! あの方へ一番の忠誠を示した! 俺は--」
「黙れっ!!」
シリウスは失神呪文をクラウチ・ジュニアに放った。
ぷつりと糸が切れるように、クラウチ・ジュニアは縛られたままその場に倒れる。
「…クソッ! ハリー!!」
シリウスは青ざめた顔で、息子の名前を呼んだ。
ひええ、また期間空けてしまった。