Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
その数日間は、シリウス・ブラックの話題が尽きる事は無かった。城に入れた手段として、飛んできた、姿現し、花のついた灌木になれるという回答がったのだ。彼が
切り刻まれた「太った婦人」の肖像画は取り外された。代役として、ずんぐりした灰色ポニーに跨った「カドガン卿」の肖像画が掛けられた。誰彼構わず決闘を挑んでくる。
それだけならまだ良い。全然良くないけど。問題なのは1日2回も、それもとんでもなく複雑な合言葉をひねり出すのに余念が無い事だ。そんな絵は勘弁してくれ、とパーシーにグリフィンドール生全員が直訴したのは言うまでもない。だが返って来たのは、引き受けてくれるのが彼だけという事だそうだ。
極め付けは、先生達が完全な警戒態勢に入った。特に、俺とエリナは重要護衛対象としてカウントされた。事あるごとに、先生達がぴったりとくっついて歩いたのだ。俺の場合、主にマクゴナガル先生とフィールド先生だ。エリナは、スプラウト先生にスネイプだった。
後にハッフルパフ生からの証言によると、エリナの護衛をしている時のスネイプの表情は、いつも以上にやる気に満ち溢れていたと言う。
そして、第1回目のクィディッチが近付いていた。しかし、例年と違う所が1つあった。初戦がハッフルパフとだったのだ。
「マルフォイのクソ野郎。怪我を盾に悪天候で戦うのを避けやがったな。」
試合で使う箒はどちらにしようか迷ったが、不安定要素の残るレッドスパークをこんな悪天候で使うのは避けておきたい。そもそも、晴天の時しかレッドスパークを乗りこなす練習をしてなかったのだ。それよりは、俺に忠実なニンバス2000を使う事になった。
試合前日、打ち合わせがあるからと言われた。オリバーはクィディッチ関連の話だと話が長くなる。あまり聞きたくないなと思った時は、細胞分身を向かわせた。終わったら、解除して俺に還元しておいてくれと指令を出して、俺はさっさと授業に行った。闇の魔術に対する防衛術へ。
しかし、今日の授業は異質だった。レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンもここにいたのだから。どういう事だ、これは?そう疑問に思いながらも、エリナに声を掛けられた。折角誘われたので、彼女の隣に座った。
「何か知ってる?」
「今日魔法薬だったのを、闇の魔術に対する防衛術にチェンジするってスネイプ先生が言ったんだ。どうせだから、グリフィンドールとスリザリンの生徒も交えてな、だって。」
「あいつかよ。いつも以上に張り切るだろうな。元々闇の魔術に対する防衛術を志望していたんだからな。」
「それに同意だね。」
しばらくして、スネイプが入って来た。ルーピン先生の授業を散々こき下ろした後、人狼をテーマに授業を進めると言い出した。ざわざわと皆騒いでたけど、スリザリン以外からそれぞれ10点ずつ減点した。
スリザリンへの露骨な贔屓。そんな事ばかりしているから、他の先生がやる贔屓、フィールド先生のパーキンソンへの差別に対して抗議をしても、それを理由に一蹴されてしまうのだ。
見分け方、殺し方などを解説した。ハー子に答えさせても、知ったかぶりだと言って5点減点する。それにロンが反論した。
「ふざけんな!先生はクラスに質問したんだろう!だったらハーマイオニーが答えたって何にも問題ない筈じゃないか!答えて欲しくないなら聞くなよ!この女装が趣味の、ハゲタカ帽子のハイヒール!!!」
それは流石に言い過ぎ、皆は咄嗟にそう思った。他の先生の前だったら、厳重注意だけで済んだだろう。しかし、言った相手はスネイプだ。スネイプはじりじりとロンに近付いて、こう言い放ったのだ。
「グリフィンドール30点減点。ウィーズリー、処罰だ。ロングボトム、貴様も道連れだ。」
「そ、そんなあああああ!!あんまりだああああああああああ!!!」
ネビルの絶叫がクラス中に響くと同時に授業が終了した。外に出て、教室から大分離れた所で皆は、スネイプの悪口を言いまくった。
「ハリー。やっぱりあれって。」エリナが囁いて来た。
「ああ。ルーピン先生の正体をばらす為の授業だったろうな。」
「スネイプ先生の事は嫌いじゃないけど、性格が悪いから好きとも言えないんだよね。」
分からなくはないな。そろそろ、脱狼薬の改良版を作る事も念頭に置かなくては。改善案としては、人狼の本能を無力化し、飲む回数は1回だけで十分、変身前の状態を維持、味も苦いものがダメな人でも飲める様にする事だな。
そんな事を思っていると、ロンとネビルが来た。ロンはカンカン、ネビルは生気が消え失せていた。
「聞いてくれよ!あのキチガイ!トイレのおまる掃除に、レポートを4巻きにして書いて来いってさ。シリウス・ブラックがあいつの研究室に忍び込んでくれたらなぁ。あいつを始末してくれりゃ良いのに!!あのイカレ教師め!!!」
「ネビルは?」俺が聞いた。
「20巻き。しかもこの後、書類整理をさせられる事になったんだ。」
「レポートは手伝うよ。」
「そうだよ!ボクも手伝ってあげるからね!」
「グスッ、2人共ありがとう。」
次の日。大雨だった。覚悟はしていたが、まさかここまでになるとは。憂鬱だぜ全く。朝食を食っていると、マルフォイが捨て駒を5人引き連れて、勝ち誇った様子で俺の所にやって来た。
「僕の腕がもう少し早く治っていたらなあ!」
「……」存在そのものがうざいので無視する事に。
「僕の話を聞けよ!」
「……あれから首筋の呪いの印は痛むか?魔法を使おうとすると一々反応するなんて、お気の毒にな。」
そんな気分ではなかったが、虫の居所が悪いのでつい言ってしまった。マルフォイは、プルプルと震えている。取り巻き達が睨み付けているが、所詮魔法だけに頼って生きている連中の怒りなんて俺にとっては痛くも痒くも無い。だが、マルフォイが口を開いた。勝ち誇った様子とは一転、首筋を押さえつける様に重々しい口調でだ。
「ポッター。お前、僕の首筋の痣の事をどこまで知っている?」
感情を抑えながら、俺にそう聞いて来たのだ。
「魔力に反応して、刻まれた者の潜在能力を強制的に引き出す。呪いの印に侵食される事と引き換えにな。最終的に自我の崩壊を引き起こすのさ。最悪死ぬ。」
それを聞いたマルフォイ一味の顔色が悪くなる。自分達の中心的存在が、そんな症状を患っていたなんて思いもしなかったらしい。
「何でそんな事を知ってるんだ?」セオドール・ノットが言った。
「マルフォイに呪いの印を刻み込んだ奴は、俺の保護された組織の元構成員なんだよ。今は、裏切り者の烙印を押されて雲隠れしているのさ。お前らの親のご主人様とは、また違うタイプの不老不死を求めてね。」
明言はしてないが、マルフォイとクラッブ、ゴイル、ノットは俺が誰の事を言っているのか分かったようで、青褪めていた。
「ちょっと!そこまで知っているんだったら、直しなさいよ!!ポッター!」
今度は、パンジー・パーキンソンか。パグ犬の分際で生意気だ。
「俺は、エリナと違って敵に救いの手を差し伸べる程のお人好しじゃないんだよ。マルフォイがどれだけ苦しめられようが、知った事ではないな。本当に危うい時は、俺なりに一線を構えているから利害に関係無く助けているだけ。俺以上に強い奴に目を付けられたんだったら、対処のしようが無いんだよ。」
バッサリと切り捨てた。
「ポッター。お前は一体何なんだ?俺達にはとことんまで敵視している。それどころか、殺意すら見せる位だ。俺達から見ても、その感情は常軌を脱している。その一方で、リドルやブラックとかには優しい顔をする。お前はスリザリンが嫌いなのか、そうじゃないのかよく分からない。俺達に対する態度は、はっきり言わせてもらう。下手な闇の魔法使いよりもタチが悪い。」
ノットが、ビクつきながら俺にこう告げた。こいつらに、俺なりの認識を教えてやるか。
「スリザリンや、そこの寮生が嫌いってわけじゃない。もしそうだったら、グラントやイドゥンと話し込む事はしないし、交友関係にもならねえよ。俺が本当に一番気に入らないのはな。お前らのレイシストの思想だ。吐き気がする!その思想に俺の父様と母様は殺されたんだ!!そして…………」
俺は、ノットの首元にユーカリの杖を突き出した。
「親に伝えておけ。俺は、お前らを決して許さない。来るべき日に、いずれ思い知らせてやろうってな。俺の受けて来た傷や痛みを刻み込んでやるよ。」
俺は杖を下ろし、大広間を後にする。一度後ろを振り向いたが、マルフォイ一味は完全に俺に恐怖していた。
*
「なあ。さっきの人が言ってた、『お前らの親のご主人様』ってどういう意味だったんだ?」
スリザリンの1年生2人は、大広間の前でハリーの言っていた事の意味を話し合っていた。
「簡単な事だ。死の飛翔を、闇の帝王と言えば分かりやすいか?」
その疑問に答えたのはゼロだった。丁度、グラントやエリナと一緒に大広間に向かっていたのだ。
「り、リドルさん!?」
「おう!お前ら、朝から元気そうだな!」
グラントは、1年生に気さくに話しかける。実は、スリザリン生の中にはドラコを始めとする純血貴族の出身者よりも、立場とか関係なく親身に接してくれるグラントの方が良いと言う人がいるのだ。主に、マグル生まれや半純血、純血主義に否定的な考えを持つ者に限るのわけだが。
「例のあの人の事だったんですか!?その、ハリー・ポッターさんが言ってたのって。」
「でも、例のあの人は死んだって母さんが……」
「まあ、正確には自分では何も出来ない位までに弱っていて、尚且つ死んだ方がマシだって思う位に惨めに生き延びているってのが真相なのさ。」
「へえ。そうなんですか。」
「先生達は、生きているって認識しているみたいだけどね。」
「まあ、今はそんな慌てるこたぁねえよ。精一杯楽しんでおけば良い。」
「ありがとうございます!」
ゼロ達3人は、大広間に入っていった。
*
ユニフォームを着た時に、身に付けている物全てに防火・防水呪文を掛けておいた。これで、大雨による悪影響は受けない。そして外は寒かったので、俺が独自に開発した魔法薬『ホットドリンク』を飲む。トウガラシと苦虫を主な材料にしたのだ。体中がとても温まった。そして、そのまま競技場へ向かった。
試合開始。やはりハッフルパフは、去年よりも強化されていた。特にクアッフルを使ったシュートに磨きがかかっている。殆どエリナによるものだった。スニッチを探したが見つからない。ここでタイムアウトが掛かる。
「状況は?」
「110対30でハッフルパフが有利だ。ハリー。早いところ、決着をつけてくれ。」
「了解。」
その後、ハー子が俺以外の選手全員に防火・防水呪文を使った。視界はたちまち確保された。これで10点は取り返せた。
俺も超感覚呪文でスニッチを探す。右斜め方向、下。エリナの近くを漂っていた。ニンバス2000を走らせ、即座にスニッチのある場所までに行かせる。その時見えたのだ。黒い犬だ。黒い犬は、すぐに走り去ってしまった。
あの犬の事は一旦忘れて、とにかくスニッチだ。誰も気が付いてない。これで取れる!
だが、突然奇妙な事が起こった。周囲の音が全く聞こえなくなり、辺りが暗くなった。一体何が起こっている、と思って下を見る。コートに入り込んできた100を越える吸魂鬼のおぞましい姿だ。マズイ!エリナが気を失っている!!スニッチも、吸魂鬼に紛れているではないか。仕方がない。左手にアセビの杖を持ち、呪文を唱えた。
「
メンフクロウを召喚する。しかし、それでも吸魂鬼共はエリナの傍から離れない。ならば、消すまでだ。
「パトローナスよ!薄汚い吸魂鬼共を消してしまえ!
守護霊の身体から真っ白な聖なる光が解き放たれる。俺とエリナの周りにいた吸魂鬼達は、体が灰となって崩れた。そして、無数の青白い光の玉が出現した。それらは、天へと旅立っていった。
その直後、金色の玉を見つける。すかさずそれをキャッチした。よし、あとは気絶しているエリナを抱えて降りるだけだと判断した。近くにいたエリナとプラチナイーグルを回収した。降り終わってすぐ、また吸魂鬼が襲い掛かって来た。また杖を出して一蹴しようとする。だが、俺でも予想出来なかった事が起こった。
何と、ニンバス2000がひとりでに動き始めたのだ。吸魂鬼を追い払う。その内の1体に特攻を仕掛けた。
「おい!ニンバス2000!!戻って来てくれ!これからも俺と一緒に試合を戦い抜いてくれよ!!!」
俺の叫び声も虚しく、ニンバス2000は1体の吸魂鬼を道連れにしながら、そのまま黒犬が走って行った方向に去ってしまった。
試合は終了した。190対130で勝つ事は出来たが、俺はあまり嬉しくなかった。相棒を失い、妹は衰弱している。吸魂鬼も押し掛けて来て、堂々とした環境で白黒付けられなかったのだ。エリナは担架で運ばれていった。
俺の知らない所で、ダンブルドアやスネイプ、マクゴナガル先生にフィールド先生、ゼロが吸魂鬼を撃退していた。ゼロ曰く、その時のダンブルドアは、今までにない怒りを見せていたらしい。
後に、イドゥンも俺とは違う方法で吸魂鬼を消滅させていた事が分かった。これは、本人から聞いたのだ。水を掛けると、吸魂鬼が酸の様に焼かれるものらしい。本人は『精霊の水』と呼んでいたが。
試合終了後、ニンバス2000を探し始めた。向かった方向は、確か暴れ柳があった方向だ。最悪のケース自体も考えながら、必死に捜索した。
見つけた。ニンバス2000の残骸を。粉々になった木の切れ端が、小枝が、散らばっていた。吸魂鬼は、もういなかった。恐らく、学校の外に追い出されたのだろう。俺なんかの為に、ここまでしなくても良かったのに。俺とエリナを守ってくれたこの箒を、湖の畔にて手厚く葬る事にした。
翌日、医務室へ向かった。エリナは、酷く落ち込んでいた。
「昨日は負けちゃったよ。ハリーには、まだ敵わないや。」
無理に笑顔を作ろうとしていた。
「無理しなくて良い。俺としてもニンバス2000を失ったからな。それよりも、吸魂鬼に襲われたんだ。安静にしてた方が良いぜ。」
「うん、分かった。でも何で吸魂鬼が……」
「昨日の試合の盛り上がりは、連中にとってはご馳走だったろうな。だから来たんだ。」
「吸魂鬼が近付くと、ママが殺される時の声が聞こえるんだ。ボクって弱いのかな?」
「強い弱いの問題じゃない。母様は俺を隠した。でも、エリナは目の前で母様を殺されているんだ。普段記憶になくても、どこかの深層心理で覚えているんだよ、きっとね。吸魂鬼はね、心に最悪の経験しか残さないんだ。プラスの感情を貪り食うからね。」
「ボク。もっと強くなりたい。吸魂鬼にも。クィディッチでも。練習不足で、作戦も完璧とは言えなかったかも知れない。雨だからって理由で碌に連携も取れなかった。今回は負けたけど、勝ち目がないわけじゃないもの。」
エリナが、昨日の事をおさらいする様に言った。
「吸魂鬼に関しては、予めルーピン先生に対策を立てて貰うと良い。俺、今朝報告したんだ。丁度、
「うん。雌鹿だったよ。魔法省に登録されたんだ。」
「なら多少、吸魂鬼に対しての抵抗は出来るみたいだな。今度は守護霊の呪文をやってみな。もし習得出来たら、俺の所へ来なよ。守護霊が使えて初めて発動出来る魔法を教えるからさ。」
俺は、エリナのベッドに推薦状を置いておく。
「これをルーピン先生の所へ持って行け。親身になって教えてくれる。」
「ありがとう。ハリー。」
「そろそろ行くぜ。お大事にな。」
俺は、医務室を出た。さて、そろそろ行動を開始するか。新たな脱狼薬作りに、黒犬の捜索。ナイロックは、あの黒犬をクルックシャンクスから聞いていた。その正体は、人間だったという。
再び俺は、暴れ柳の所まで来た。襲いかかってくる枝を難無く見切ってかわし、扉を開く。そこには、やせ細りぼろぼろの服を着た男性がいた。左目を隠す様に包帯で隠している。
「き、君は……まさか!ハリー!!!本当に生きていたのか!」
「初めましてになりますか?いや、正確には12年ぶりの再会なわけですけどね。シリウス・ブラックさん。」