Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
翌日、キャンプ場から帰った。その時にウィーズリー家の人達に挨拶した。また新学期に会おうと言って。俺とエリナは、すぐさまシリウスの所へ帰った。相当心配してたらしく、俺達の顔を見るとすぐに抱き着いて来た。ああ、苦しかった。メリンダが止めてくれたけど。
新聞を見て見る。マグルの物と予見者新聞の2つを。前者は特に何もなかった。だが後者は、一面大見出しと化していた。しかも、その内容が酷い。
「スキーターの野郎が書いていたか。」俺は、苦々し気に新聞を読む。
「ゴシップを書く為に生きているような女だからな。」
「あの女の書く記事は、全て悪意に満ちていますからね。」
シリウスが新聞を覗き込みながら、そう言った。そして、次にメリンダがバッサリと切り捨てた。
「幸い、俺の事は書いてなかったからそこは安心だけどね。」
シリウスに新聞を手渡し、ティーポットの水から4人分のコーヒーを注ぐ。
「ねえ。闇の印ってなあに?」エリナが聞いて来た。そういや、知らなかったんだっけな。
「ヴォルデモートの印よ。」メリンダが即答した。
「奴やその配下が、誰かを殺すっていう予告みたいなものさ。だからワールドカップに来ていた大人達は、慌てふためいたんだ。」
シリウスが続いた。
「そうだったんだ。後、イーニアスさんの言ってたことが何か意味深だったよね。」
「ああ。それはちょっとロイヤル・レインボー財団に情報を送って貰おうと思っていてね。連絡待ちさ。」
「イーニアスは何を言ってたのかな?」
「シリウス。それがね。クラウチさんの親族に死喰い人がいれば闇の印が作れるとか何とか。」
「その事か。それはね、ハリー。そしてエリナ。奴の息子が、そうだったからだよ。」
「それも、同じ名前の息子の、バーティ・クラウチ・ジュニアってね。あ、そろそろ行かなきゃ。」
「行ってらっしゃい。」
ロンドン警視庁に仕事へ向かうメリンダを見送ってから、また話を始めた。
「それで、さっきの話。どういう事なの!?」
「俺も最低限の事しか分かっていないんだ。そこら辺、詳しく。」
「君達も14だ。ま、話しても良いだろうな。クラウチの息子はね。死喰い人の中でも、最悪の部類の連中といた所を捕まった。俺の愛しき従姉と、その嫁ぎ先の家族と一緒にね。」
「愛しき従姉?」
「エリナ。その話はまた後にしようぜ。」
「その時クラウチの奴は、魔法法執行部の部長だった。」
「何それ?」
「罪人を裁く最高の役職とでも言えば少しは実感が湧くんじゃないか?俺は興味無いけどね。」
「ハリーの認識で正解さ。名誉や権力に興味が無いのは、本当にジェームズそっくりだ。だがクラウチは、とことん権力欲があった。そう言った意味では、ジェームズとは真逆のタイプの人間なのさ。」
「ウィンキーをクビにしたあの態度からして、自分の顔に泥を塗る奴は徹底的に潰さないと気が済まないみたいだったな。」
「ああ。その通り。自分にも他人にも厳しい。凄まじい魔法力と正義感を持って、魔法省で頭角を現した。」
「あれが正義?ボクにはそうは見えなかったよ、シリウス。」
「正義ってのは、行き過ぎると誰にも止められないのからな。」俺がすかさず返した。
「う~ん。難しい。」
「一応はそう言える、とでも言っておこう。法を変えて、知り尽くした規則を駆使する。『闇払い』達に新しい権力を与えた。例えばだ。捕まえる為の魔法ではなく、殺す為の魔法を使用出来る権力。もう1つは、裁判無しに牢獄へ送って良い権力。」
「前者はともかく、後者は流石にマズいだろ。マグルの世界では、そういった冤罪を起こさない様に3回裁判するのにさ。」
「それは初めて知ったよハリー。さて、話を戻そう。暴力を、暴力を以って制する。そうだ、奴は紛れも無い正義だ。悪とは正反対の存在さ。でもね。誰も批判する者がいなかった。どうしてかって?2人とも分かるかな?」
「クラウチさんからしてみれば、自分達の生活を脅かす悪を排除しているんだって言いたいの?」
「正解だ、エリナ。それじゃあハリー。今度は君に聞こう。クラウチの政策、怪しい輩に許されざる呪文を使って良い許可を出した。それの行きつく先はどうなると思う?」
「……結局の所、闇の陣営と同じ冷酷非情になるだろうな。クラウチ自身は気づく筈が無い。俺から言わせてみれば、自分のやっている事が悪だと自覚していない、最もドス黒い悪だよ。」
「凄い言い回しだな。余程クラウチを嫌っていると見えるが。」
「碌に捜査もしないで、無実の人間を牢獄に入れる奴なんざ、俺の中での評価は最悪だね。それが父様の親友で、俺達兄妹を実の子同然に思ってくれているあなたであるなら尚更だ。」
「俺の為に怒ってくれて本当に嬉しいよ。」
「話の続きを聞かせてよ。」エリナが、シリウスにそう急かした。
「そうだな。そして、俺達のエリナがヴォルデモートを失脚させた時だ。」
「今はゴミムシにも劣る、死に損ないと化してるけどね。」
「ハリー。本当の事だけど、言い方。」
「分かった分かった。」
「クラウチの魔法省大臣の地位は約束されたも同然だった。後は、落ち武者狩りならぬ落ち死喰い人狩りをすれば良いからね。それが終われば、すぐにでも魔法法執行部から出世出来た。出来た……筈だった。」
「そこで、最初の息子さんが捕まった話に戻る訳なんだね。」
「そうだ、エリナ。皆、何かの間違いだと思ったわけだ。クラウチにとっても予想出来なかった。いつも仕事詰めで、息子の事は妻としもべ妖精に任せっきりだった。たまに早く仕事を切り上げて、帰って来れば良かったのかもね。」
「たまたま一緒だったって可能性は?」俺は、そう聞いてみる。
「分からない。今となっては。だが、一緒にいた連中は確実だ。ベラが、やたら嬉しそうな表情でシシーにベラベラ自慢しているのを何度見た事か。ドロメダは、かなり嫌そうにしてたけどね。」
「でもクラウチは初めてだったと、そう言いたいわけだね?」確認を取っておく。
「そうだな。もしかしたら、運悪く絡まれていただけかも知れない。世間の多くもそう思ってた。それだけ、息子は評判が高かったんだ。癒者世界の、期待の超新星として。」
「あのう、それじゃあ。クラウチさんは、自分の息子さんを少しでも罰から、逃れさせようとしたんだね?」
「いいや。エリナ。君なら、少しでも奴の本性を分かってると思ったんだがね。その逆だよ。闇の魔法使いと一緒にいた。仮に闇の陣営じゃないにせよ、奴にとっては関係無いのさ。」
「少しでも自分の評判を汚す様な奴は、誰であろうと排除する男なんだ。ウィンキーの事もあるし。」
俺は、エリナにそう説明した。
「屋敷しもべ妖精をクビに……奴がやりそうな事だ。一切息子の罪を庇わなかった。せめて裁判だけを受けさせたのが親としての情だと世間は言っている。だが、俺はこう思う。公に見せ付けてやりたかった。自分がどれだけ、悪や、社会のゴミクズ共を、例えその正体が息子であろうと憎んでいるのかをね。」
それで、息子はアズカバン送りになったわけか。何をしたんだろうか。
「俺の隣にすぐ収監されたよ。3日位泣き叫んでいた。でも、すぐに大人くなったよ。あそこは、誰だってああなる。」
「……」エリナは絶句している。
「……」俺としてもあまり良い話じゃないな。
「勿論俺は、ピーターへの妄執で何とかね。それを入って来たばかりのクィリナスに教えたよ。アズカバンを脱獄する時に、グッド・ラックと言ってくれたっけなぁ。」
「逞しかったんだね、シリウスって。ボク、尊敬しちゃう。」
「そんな事も無い。……あー、息子は死んだよ。元々病気がちだったようだ。死ぬ前日にクラウチが妻と共に来てね。面会だったそうだ。」
「そして翌日、クラウチの息子は死んだってわけか。病気で。」言葉を繋げた。
「そう。クラウチの妻もしばらくして亡くなったのだとかって聞いているよ。あいつは全てを手に入れようとした瞬間、全てを失ったんだ。」
「という事は、支持してた人達もクラウチさんを見捨てたの?」エリナが聞く。
「ああ。息子と妻が死に、惨めに屋敷しもべ妖精と暮らすクラウチに集まったのは、同情じゃなくて非難だった。」
「何故?」それは、一切分からなかった。
「ハリー。死って言うのはね。死んだ者の良い所ばかりが強調される時があるんだ。」
「……」
「何でこうなったのか。いつも仕事ばかりして、2人を蔑ろにしてた。息子が闇に堕ちたのも、妻が病気になったのも、気に掛けなかったんだと世間は凶弾した。そして、国際魔法協力部に左遷される形で、事実上失脚したんだ。そして、何をどうしたらそうなるのか、小鬼潰しのファッジが大臣になった。」
「後味が悪過ぎるよ。」
「全くだな。とにかく、イーニアス義兄さんの言葉の意味が分かったからね。これで良しとしよう。シリウス、後で修行の方を見て貰って良い?」
「勿論さ。マグルの戦闘技術も、大いに役に立っているからね。今日は、近接戦闘と魔法戦闘を上手く嚙合わせる様にしておこうか。」
「お願いします。」
地下の戦闘訓練場で手合わせをした。人を斬り殺す剣から、人を導く剣に昇華する様にフィールド先生から言われた。その方向でシフトチェンジしているけど、それだとどうしてもシリウスに近接戦闘で防戦一方になってしまう。
「ハリー。確かに君の剣術は超一流だ。嘗てのスタイルに魔法を交えたコンボだったら、俺は確実に負けていただろう。だけどね、人を導く剣へ戦い方を変えるなら理屈じゃなくて体に直接叩き込んだ方が良いよ。」
「頭では分かってるんだけど。」
「こればっかりは、実技で変えて言った方が手っ取り早いからね。さあて、今日はこれ位にしておこうか。」
「そうだね、そろそろ飯にしないと。2人共、何が良い?」
「昨日の夕飯の野菜炒めの残りがあるから、それを使って料理をしてくれないか?」
シリウスが提案した。
「それで焼きそば作って!」エリナが追加の注文をした。
「了解。」
野菜炒めに、焼きそばの麺とソースの粉をフライパンで程良く混ぜ合わせた。完成した後に、テーブルの真ん中に置いた。メリンダも含めた4人分の皿とフォークも用意して。彼女の分は冷蔵庫に入れておいた。テーブルに置手紙を残して。
「美味しい!またこれを食べられるなんて!」エリナは、どんどん食が進んでいる。
「日本という国にはこんな美味い食べ物があったなんて。世界はまだまだ広いんだな。今までちゃんと生きてて良かった。」
シリウスにも好評だった。シリウスの家に来てからは、料理が俺担当になってた。2人も一応は出来るけど、人に出せるレベルではないようだと言っているが。メリンダも結構料理は出来る方だけどね。
それから1週間は何事も無く過ごせた。新聞では、真脱狼薬が開発された事により、反人狼法という悪意ある法律が廃止されたと書いてあった。これを提案した奴は事実上の失脚をしたそうな。後は、帰って来た日の4日後にロイヤル・レインボー財団から電話が来た事位だろうか。
「イーニアス義兄さんは、ウィンキーからその情報を手に入れたんだね。」
「一応、警戒はしておいてくれ。」
「分かったよ、義祖父ちゃん。」
「それと、ドラコ・マルフォイの件は主にハリーに任せよう。ただ、常に会話のやり取りだけは記録して提出して貰えないか?」
「了解。」
「それじゃあ、そろそろ切ろう。9月1日に、キングズ・クロス駅でな。」
「じゃあね。」
義祖父ちゃんとの電話が終わった。クラウチの息子が生きてるのか。母親とのなり代わり作戦で脱獄してたとはな。とにかく、やる事は決まった。マルフォイ宛に取引に応じるという旨の手紙を送る事だ。ナイロックに運ばせた。
シリウスが仕事に行ってる間、エリナと特訓をしている。守護霊を習得出来たので、今度は
「守護霊以上に、プラスエネルギーの出し方を考えないとダメだぜ。」
「ハア……ハア……難しい。一瞬しか出来なかったよ。」
「ま、今日はここまでだな。お疲れさん。高望みはダメだぜ。今の年齢で、守護霊を使えるだけでも大した事なのに。今度はそれ以上を行く呪文を練習しているからな。本当であれば、出来なくて当たり前なのさ。」
修行の後は、ゲームをしたりして残りの時間を潰している。
その後も日常は続く。闇払いの人が家に来る事もあった。来たのは、ニンファドーラ・トンクス、キングズリー・シャックボルト、マッド‐アイ・ムーディが主だった。一応、彼らの魔力を覚えておくか。ポリジュース薬で上辺だけ似せても、俺の感知能力の前では、それは意味を為さないからね。
ロイヤル・レインボー財団から、新しい学用品が届いた。ご丁寧にエリナの分も買っているではないか。
「良いのかなぁ?ここまでして貰っちゃって。」
「気にするなよ。」
基本呪文集・4年生用、新しい羽ペンを一揃い、羊皮紙の巻紙を2ダース、魔法薬調合材料セットの補充品をそれぞれだった。同じのはそこまで。ドレスローブが男女用で分かれていた。まあ、同じだったらそれこそ問題なわけだけどさ。俺のは深緑色の、制服に近い物。エリナは、朱色のワンピース・ドレスだ。
「学校の持ち物に書いてあったのは知ってるけど、何に使うんだろう?誰かの結婚式かな?」
エリナがキラキラとハシバミ色の目を輝かせる。
「分からん。もしかしたら、誰かの葬式かも知れねえぞ。」
「縁起でもない事を言わない!」
「……」エリナにキレられた。沈黙しておこう。こうなったエリナは止まらないし。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、夏休みの最終日となった。最後の夕食は、鍋にでもして4人で楽しく食べた。シメに米と卵を入れて雑炊にした。その後に、学校へ行く準備をした。当日はバタバタするだろうからね。着替えもベッドの近くに置いておくとしようか。