Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
薄暗い空間。どこかは分からない。そこにあるのは、2つの影。
「それで、計画の方はどうなっているのかしら?」
「順調です。これ、死喰い人共の個人情報物質でございます。」
男が、オネエ言葉を使う男に何かを手渡した。
「フフフ。生まれついての役者。それを成し遂げる為の演技力。私のお気に入り。」
「褒めていただき、感謝します。」
「引き続き、表向きの任務をこなしなさい。」
「はい。その上で奴も、ですね?」
「そうよ。14年ぶりね。15年前にヴォルデモートを襲撃した甲斐があったわ。これから先、連中は地獄を見る事になるとは知らずにね。」
「バカな奴らです。」
「そう言った意味では、あなたは脱したわね。そして、最初の……」
「それでは行ってきます。」
「幸運を祈るわ。」
礼をした男。男の身体が変質し、フィクションのドラゴンのような姿になった。そして、飛び立った。
「姿くらましで向かえば良いのにねぇ。」
その姿を呆れならも、ちゃんと見つめている。
「さあて。私も、仕事に取り掛かるとしましょう。あの術を完成させなければ…………」
*
1994年9月2日。授業が始まった。
「薬草学に魔法生物飼育学、古代ルーン文字学か。それよりもハー子、メシは食わないんじゃなかったのか?」
「もっといい方法を思いついたのよ。」
「食欲には勝てなかったんだろうな。」ロンがニヤッとした。
フクロウが来た。シリウスから菓子類が届いた。エリナも然り。ハッフルパフ生が、ここまで高級なのを見た事が無いといった表情で見ている。太っ腹だな。
薬草学の授業。第3温室で受ける。俺は、エリナと組む。ブボチューバー。いわゆる腫れ草を取り扱う。ドラゴン皮の手袋をした状態で、膿を絞って瓶の中に集めるという内容だった。石油みたいな臭いがした。授業が終わる頃には、数十リットルは溜まった。
「これだけやりゃ十分だろ。半純血のプリンスに感謝だな。」
「スプラウト先生も驚いてたよ。どうやったんだって。ここまで出来たの、他にネビル位なんだよねえ。」
次は魔法生物飼育学。全寮生でやる。ハグリッドの小屋へ向かった。準備万端と言った感じで立っている。先に来ていた証言者は言う。
「何あれ!」ルインが叫ぶ。
「ハグリッドさん!無理にも程があるぜ!」
普段ハグリッドに敬意を払っているグラントでさえそう言わせている。
「この授業やめようかな?」ゼロが、グラサンをクイッと整えてそう言った。
「クッソォ!だからあの時、クビにさせれば良かったんだ!ウワァ!こっち来るなあ!母上ええええ!フォオオオオオオイ!!!」
不気味な生き物が、ドラコを襲撃している。あいつ、マザコンかよ。イヤ、マジでヤバそうだから盾の呪文で助けてやろう。
「おいドラコ。何だ、あの化け物は!?」
「ぽ、ポッターか。助かった。感謝するよ。そうだ。あの森番がまた何かをするつもりらしい。」
「もう嫌な予感しかしないよ。」エリナがボソッと言った。ガクブルしている。
「他にも、木箱からガラガラっていう音と、何かが爆発する様な炸裂音が響いてやがるぜ。一定しない状態で。爆破属性持ちかよ。」
「おう。集まったか。」ハグリッドが口を開いた。
「おい、ハグリッド。こいつら何なんだよ?」怒りを込めた目で言った。
「尻尾爆発スクリュートだ!今孵ったばっかしだぞ!だから、お前さん達が自分で一から育てられるっちゅうわけだ!そいつをちいっとプロジェクトにしようと思っちょる!」
この上なく嬉しくないプロジェクトだよ。全く。
殻を剥かれた奇形の伊勢海老のような姿をしていて、頭部はないとみて間違いはない。青白く、ヌメヌメした胴体からは勝手気ままな場所から足が突き出しており、ワサワサと動いている。
「き、気持ち悪いよぉ。」エリナが青ざめている。
そう。見ているだけで生理的嫌悪を催すのだ。しかも、そんな奴等が狭い木箱一杯にウジャウジャと入れられており、加えて尻尾が時折爆発したかのように火花を飛ばすのである。
「何処で手に入れた?そしてこんな種類、見た事も聞いた事も無いぜ、俺。」
「細けえこたぁ気にすんな。ハリー。」
「逆に気になるぞ。」ゼロが俺に加勢した。
「何で僕らがそんなのを育てなくちゃいけないんだ?何の役に立つんだい?こいつらの存在意義は?」
ドラコが嫌味を言っている。だが、正論なので反論はしなかった。正直言うと、俺の言いたい事を言ってくれたのでそこは有り難いと思った。
「と、とにかくだ。今日は餌をやろう。何を食うのか、俺にもさっぱり分からん。そもそも飼った事が無いからな。一応、蟻の卵、蛙の臓器、毒のねえヤマカガシを用意してあるぞ。試してみてくれや。」
うわあ。今度は、飼った事が無いと来たか。ちょっと離れた所で、シエルが泣きそうになっている。
「注意事項や起こりうる危険が一切何も書いてない、白紙状態か。イヤ、それよりも恐ろしい可能性が見えてきた。」
「え?恐ろしい可能性?」
「どんな可能性を見出したんだ?ポッター。勿体ぶらずに教えてくれ。」
「お前ら2人共。良いか。これは仮定の話になるわけだが。仮に、仮にだ。あの『尻尾爆発スクリュート』が人間の肉の味を覚えたとしよう。ハグリッドは、連中の好物や習性を知らなかったという事になるんだ。」
俺の言葉が聞こえた全員、顔が真っ青になった。
「最悪じゃないか!」
「だが、マルフォイよ。ハリーが言った様に、最悪の事態は予め想定した方が良いぞ。」
「そういう問題じゃないわよゼロ!!」
「ハグリッドの授業で取り扱う魔法生物は皆化け物か!?」
「ハリー、ボクこの授業やめたい。」
「……」エリナに同意だな。今すぐにでも、やめる手続き取ろうかね。
その後の授業は悪夢そのものだった。針がある、吸盤で吸血、尻尾がリア充並みに爆発、襲撃、もう何なのコイツら。これは酷い。そう、例えるならば……得意料理は卵かけご飯的な意味で。
「はあ。鑑定呪文を使ってみたが、火蟹とマンティコアを掛け合わせたらしい。」
「ちょっと待て!」ゼロが血相を変えて言ってきた。
「立派な違法行為だな。」
「懲りてないじゃないか!ドラゴンの事もあったのに!」
後で報告するか。授業終了のベルが鳴る。その途端に、皆は急いで城へ戻っていった。昼食をさっさと食べる。それが終わって、すぐに古代ルーン文字学の授業に行こうとする。会話が聞こえた。
「吐くまで食べる事にしたのかい?」ロンがハー子に聞いた。
「図書館に行くのよ。」
面倒な事が起きそうな予感がするので、この場を去った。最初の古代ルーン文字学は、イドゥンと隣になった。
「……と、いう事が起きたんだよ。」
「あの森番も飽きませんわね。あなたも授業初日から災難ですこと。」
「からかってる?」
「いいえ。本当にご愁傷様と思っておりますわ。昨日の夜だって、スリザリンの談話室ではセオドールを励ます会をやったのです。」
「ノットを?」
「ええ。ほら、新学期前日の夜に、ノット家が事実上壊滅した記事が新聞に載っていたではありませんか。」
「あったな、それ。父親が殺されて、遺体も発見出来てないんだろう?あいつ、家とか金とかどうしてるんだ?」
「お金に関して大丈夫です。鍵と杖は持っていましたし、家も小さな一軒家を購入するそうです。」
「その励ます会ってどんな内容だったの?」
「7年生の首席が寮全体で彼を励ますのです。」
イドゥンは、何だか気まずそうな表情になっている。
「言いたくなかったら、言わなくても良いけど。」
「いいえ。ノット家を襲った犯人は、あなたにとっても決して無関係ではないのですよ。」
まさか、連中か。
「終わりを生み出す者……か。」
「はい。」
「授業が終わったら、その時の話を聞かせてくれ。」
「良いですよ。」
古代ルーン文字学が終了し、俺とイドゥンは空いている教室の中に入った。
*
それは、新入生歓迎会が終わった直後の事。7年生の首席、ルイス・ファーレイはスリザリン生を集めた。
「皆さん!この僕の呼びかけにお集まりいただき、誠にありがとうございます!!!」
嬉しさの余り、感激の涙を流すルイス。その横では、セオドールが今にも死にそうな顔で呆然と座っていた。この時点で、スリザリン寮はかなり気まずい空気が流れた。
「どうやって励ませばいいんだよ?」
「ルイス先輩も、そっとしてあげればいいのに。」
そんな状況にも関わらず、自分のペースを決して崩さないルイス。
「さあ。これから、家が火事になり、唯一生き残っていたお父上も失ったセオドール・ノット君を励ます会を始めましょう!この素晴らしい企画を考えたのは、このファーレイ。ルイス・ファーレイでございます!そこをお忘れなく。」
皆ドン引きしている。
「では皆さん!セオドール・ノット君を目いっぱい励ましましょう!では僕から、ノット君へ励ましの声を!」
「何なんだよ、この会。」ブレーズ・ザビニが言った。
「どうすれば良いんだ?」モンタギューがボソッと言った。
「ノット君!元気を出しましょう!この先の日々は、君の為にあるでしょう!!」
青いバラを出しながら、セオドールに励ましのエールを送るルイス。皆、更に気まずくなる。
「とまあ、こんな感じに励ましの言葉を送っていきましょう!では1人ずつ。男子から!」
無理矢理全員を立たせ、エールを送らせる。ここから先は、励ましの言葉一覧である。
「あ、あの。ノットさん。何と言ったらいいのか……大変だけど頑張って下さい。」
「素晴らしい!!!さあ、皆さん!もっともっと、ノット君に励ましの言葉をドシドシ送ってみましょう!!!」
ルイスが空気を読まずに談話室全体に聞こえる様に言った。
「頑張って下さい。」
「短い言葉の中にも優しさが溢れる言葉ですね!」
『ノット。全然励まされてないぞ。この集まりの意味って一体……』
ドラコが心の中でツッコんだ。
「くじけないで頑張って下さい。」
「はい。良いでしょう。次は、リドル君。お願いします。」
グラントが立ち上がった。
「ノットよぉ。昨日は新聞に出られて良かったな。そういう機会なんて、滅多に無いんだぜ。ちょっとは良かったじゃねえか。」
「…………」ノットは、更に落ち込んだ。
「リドル!逆に追い詰めてるぞ!」ドラコが言った。
「す、スマネエ!」
その後も、励ましの言葉は続く。
「元気出せよ!その内、良い事あるさ!」
「昔のお前に戻ってくれよ。」
「いつでも力になりますから。」
「ノット。生きてて良かったな。」
「火事なんて忘れちゃえよ。気分が楽になるぜ。」
「ノット。しっかりしろよ。」
これで、スリザリン男子は全員言い終えた。次は女子の番だ。
「さあ、どんどん励ましましょう。」
ルイスがまくし立てる。
「家はいつでも建て直せるから、希望を捨てないで。」
「生きてて良かったですね。」
「早く元気になって下さい。」
「ノット。頑張って。」
そして3時間後。ようやく最後の1人となった。ルインだ。
「くじけないでね。」
「全員言い終わりましたね!ありがとうございます!」
はあ、ようやく終わる。そう思ったスリザリン一同。しかし、ルイスはその斜め上を行く発言をした。
「最後に、ノット君を励ます為の歌をみんなで歌いましょう!」
「もうよした方が良いと思うけどなぁ。ルイス先輩なりに頑張っているのは分かるけど。」
ルインが小声でイドゥンに言った。
「励ますどころか、逆に追い詰めちゃってますからね。」
「曲名は、『ホグワーツ』の校歌です!みんなで歌いましょう!」
ルイスはフルートを手に持ち、演奏を始めた。スリザリン生が歌う。どこか楽しそうではないが。演奏が終わった後のセオドールから一言。
「皆は良いよなあ。火事にはなってないし、家族も死んでないし。」
スリザリンの談話室に、かつてない程の途轍もなく重たい空気が広がった。皆、何とも言えない表情で解散する事になった。
*
「励ますどころか、公開処刑しちゃってるじゃねえかよ。」
流石に笑えなかった。ノットが余りにも気の毒過ぎたからだ。その一方で、全てを失ってざまあとも思ったけどな。闇の陣営の関係者だし。
「ええ。そうですわね。あの時間程、生きた心地がしませんでしたよ。」
「それで、誰がやったんだ?」
「はい。セオドールによれば、ホドという死体コレクターと、ビナーという爆破が趣味の狂人だそうです。」
「ゲブラーじゃないのか。」
「あなたと出会った人物ではないようですね。残念ながら。」
「良いんだ。話が聞けて良かったよ。ありがとうイドゥン。」
「どういたしまして。」
俺とイドゥンは、それぞれの談話室に帰ろうとする。しかし、ある疑問をぶつけてみた。
「そう言えばさ。ムーディの魔力がおかしいんだ。最初の出会った時とは思いっ切り違うんだよなあ。」
「?あなたの魔力感知は、ずば抜けている筈。妙な話ですね。何か不具合でもあるのではないでしょうか?」
「もしかしたら、なりすましの可能性もあるから警戒した方が良いぜ。」
「分かりました。情報のご提供、感謝致します。」
今度こそ別れた。もう少し、ムーディを監視するかね。そう心に誓った俺であった。