Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章 作:純白の翼
翌朝。俺は珍しく朝寝坊した。談話室も、これまでの1週間とは打って変わって、異常な程静かだった。そして、ハー子の髪は元に戻っていた。
「スリーク・イージーの直毛薬を大量に使ったのよ。」
「俺の、父方の祖父さんが経営してた会社で発明された魔法薬をか。成る程な。これで、昨日の綺麗な髪の謎が解けたわけだ。」
「だけど、毎日使うには不便過ぎるわ。それに面倒臭くって、とても毎日やる気にはなれないもの。」
「よし。今年度はクィディッチが無くて、宿題以外は料理の研究しかやる事が無かったんだ。新しい目標が出来たよ。ありがとうな、ハー子。」
「ちょっと待って。新しい目標って?」
「昨日使った薬、更に改良するのさ。ダメかな?」
「今よりも素晴らしい物を作る姿勢は、評価されるべきだと思うわ。」
「どうも。そう言えば、またロンと一悶着あったんだよな。あそこまで言わなくても良かったのにさ。」
「そうよね。折角仲直り出来たと思ったら、またケンカしちゃったものね。ロンってば、イドゥンに関して言い過ぎよ。彼女、少し傷付いてたんですもの。」
「だな。それにイドゥンの奴、エックスが成人するまでの間は、自分が当主として振る舞わなければいけないって言う重圧を持ってるんだ。それも1人で背負い込もうとする程にな。気丈な振る舞いに反して、精神が強いとは言い難いのさ。エックスやシリウス、クリーチャー、そしてまだ生きているかもしれない実の母親の存在によって耐えていられるんだよ。今でも。」
「凄いわ。あなたって、イドゥンの事が丸分かりね。」
「開心術が無くても分かるぜ。理不尽に肉親を殺され、残っているのは年下の、違う性別の兄弟だけ。その兄弟だけは何としても守り抜くという決意。俺と境遇が、ある程度似てるから分かるんだよなぁ。」
「ハリーの場合はエリナ、イドゥンの場合はエックス。確かに似てるわね。」
「ま、その話はまた今度にしよう。これからエリナと合流する予定になってるから、俺は行くよ。じゃあな。」
「気を付けてね。行ってらっしゃい。」
談話室を出て、必要の部屋の前まで来た。すると、エリナは既に来ていたのだ。
「ハリー。お早う。」
「お早う。それじゃ、2つ目の課題が何をするのか分かったんだ。俺なりに考えてたプランを…………」
「ちょっと待って。」エリナが待ったをかけた。
「どうしたんだ?」
「その前に、昨日あった事を話すよ。」
「ダンスパーティの感想か?それなら打ち合わせが終わった後に、幾らでも聞いてやるよ。」
「それもそうなんだけどね。昨日、ゼロと一緒に所々歩いてたら、色んな情報が収集出来たんだよ。」
「へえ。それで俺に話したいとね。そんじゃ、取り敢えず必要の部屋に入ろう。話はそこで聞くよ。」
秘密の会話をする為の部屋を指定し、必要の部屋に入った。
「さて。話とやらを聞こうか。」
「うん。話すよ。」
*
「少し歩こうか。エリナ。」
「オーケー。ゼロ。」
飲み物を取りに行くフリをして、外に出ようとした。が、エリナを呼ぶ声がした。
「やあ、エリナ。さっきは素晴らしいステージだったよ!」
バクマンが話しかけて来た。直前まで、パーシーと会話してたようだ。そのパーシーはと言うと、食べ物を取りに行っていた。
「こんばんは。バクマンさん。あのー、高官同士、パーシーと会話してたんですか?」
「バーティの事で積もる話をね。それとバーサやドローレスの事でね。」
「夏に行方不明になったバーサ・ジョーキンズと、第一の課題から消息を絶った元上級次官、ドローレス・アンブリッジの事を言ってるのですか?」
ゼロがバクマンに聞いた。
「そうだよ。おや、君は確か、フィールド家の子かな?フォルテが闇払いだった頃に散々、弟である君の事を自慢してたよ。」
「兄さんが?それはどうも。」ゼロがお辞儀をした。
「さーてと。エリナ。君はアレを解けたかな?」
「?アレって何ですか?」
「おぉっと失礼。金の卵の事だよ。エリナ。君さえよければ、私が。あー、更なるヒントを……与えようかと思っててね。」
「それに関しては大丈夫です。実はですね。」
エリナは、バクマンの耳に向けて、小さな声で囁いた。ヒントは解いてる事、その内容、クリスマス明けにハリーと対策を練る事を話したのだ。バクマンは、満足そうな表情になっていた。
「そこまで分かっているのであれば、私から言う事は無いね。それでは、失礼するよ。」
バクマンは立ち去った。スキップをしている。
「もう解いたのか。グラントはまだなのに。」
「教えようか?」
「いいや。あいつから聞かない限りは、俺はどうする事も出来ない。外に行こうか。」
玄関ホールに抜け出すエリナとゼロ。校庭は、休憩するのにうってつけな庭園となっていたのだ。歩き始めて早々、声が聞こえた。
「……我輩は、何も騒ぐ必要が無いと思いますがな。イゴールよ。」
「セブルス。もう何も起こってないフリをする事なんて出来る筈が無いだろう!」
カルカロフが盗み聞きを恐れるかのように、不安げな押し殺した声で言った。
「スネイプとカルカロフ。あいつら、ああいう関係だったのか。」ゼロが言った。
「それにしても、下の名前で呼び合ってるよね。」
「だな。それよりも聞こう。」ゼロとエリナは聞き耳を立てる。
「この数ヶ月の間に、ますますハッキリしてきた!私は真剣に心配しているのだ!否定出来る事ではない――」
「なら、イゴール。お前は逃げるが良い。我輩が言い訳を考えてやるぞ。だが、我輩はホグワーツに残る。残らねばならんのだ――」
スネイプが杖を取り出し、意地の悪い顔を剥き出しにて、バラの茂みをバラバラに吹き飛ばした。悲鳴が、あちこちから聞こえた。
「パチル。ブラウン。何をしていたのだ。」
パーバティとラベンダーがいた。
「お2人の姿をスケッチしていました。」パーバティが言った。
「新刊は、スネ×カルで行こうと思いまして。だって、それ以前はダンブルドア先生の薄い本まで書いて、その時は成功しましたから。」
「あの2人、腐女子だったんだね。」エリナが呟いた。
「不愉快極まりない思考回路はやめろ!グリフィンドール20点減点!」
パーバティとラベンダーは走り去っていった。スネイプは、別の茂みを吹き飛ばす。黒い影が飛び出して来た。
「フォーセットにステビンズ!ハッフルパフとレイブンクローからそれぞれ10点減点!」
名指しされた2人は、スネイプの脇を走り去っていった。
「フン。不純異性交遊をしたわけではないのに。」
「…………あ。こっち来た。」
「それで、お前達2人は何をしている?」
「外の空気を吸いに、休憩の一環で歩いてるだけですが?規則違反ではない筈です。」
ゼロがきっぱりと答えた。
「なら、とっとと歩き続けてろ!」スネイプが唸る様に言った。
「どうしたんだろう?」エリナが首を傾げた。
「俺が気に入らないんだろうな。下手に出たら、兄さんが出て来るし。」
噴水の近くまで来たゼロとエリナ。彫刻はトナカイの他に、牡牝の鹿、犬、狼、ホワイトタイガー、ハヤブサが彫ってあった。
「校長先生も粋な事をするんだね!」エリナが目をキラキラさせる。
「ご丁寧に石のベンチまであるな。ん?あれは……」
石のベンチに、2つの巨大なシルエットが見えた。
「マダム。ここで休もうや。座っちょくれ。」ハグリッドの声が聞こえた。
「ありがとうございまーす。アグリッド。」
マダム・マクシームの声も聞こえて来た。
「エレファントカップルだな。」ゼロが2人に聞こえない様に呟いた。
「そっと立ち去ろうよ、ゼロ。」
エリナが提案し、ゼロが頷いた。2人は、立ち去ろうとした。
「俺には、あなたを見た時から一目で分かったんだ。そうだとも。」
「何が分かったというのでーすか?アグリッド。」
「珍しく甘い声だね。マダム・マクシーム。」
「シッ!ハグリッドが話し出すぞ。何だこのコガネムシは。お前なんてこうしてやる!」
ゼロが、ハリーから貰った瓶にコガネムシを入れた。魔封石が含まれ、割れない呪文もかかっている。ハリーがペティグリューに使った瓶の、同型だ。今回のクリスマスプレゼントで、ハリーから送られたのだ。
「ああ、一目で分かった。あなたは……俺と同じだってな。」
「わたくし、何の事か分かりませんわ。アグリッド。」
「オリンぺ、あんたは……俺と同じ半巨人なんだろう?」
「そうでーす。わたくしも…………!?」
マダム・マクシームは、言葉を詰まらせてしまった。ゼロも固まっている。エリナは、どうしたんだろうかという感じだ。
「俺の場合はお袋なんだ。イギリス最後の1人だった、って親父が言ってたんだ。俺が3つの時の出て行って、あんまりよく覚えてねえや。」
マダム・マクシームは何も言わない。銀色の噴水を、じっと見ている。
「そんで……まあ、俺の事はええ。あなたはどうなんですかい?どっち方なんで?」
突然、マダム・マクシームが立ち上がった。
「冷えまーす。わたくし、もう中にあいります。」立ち去ろうとした。
「ま、待ってくれ!!俺は――俺は、これまで同類の人に会った事がねえんだ!だから、話を聞きてえんだ!」
ハグリッドが、必死にマダム・マクシームを引き留めようと腕をつかむ。
「離しなさーい!おおーう!何というこーとを!こーんなに侮辱されたのは、あじめてでーす!あん巨人!?わたくしが!わたくしはただ、骨が太いだけでーす!!!」
ハグリッドを振り払い、マダム・マクシームは荒々しく去っていった。
「どうしてマダムは怒ったんだろう?」エリナが不思議そうにゼロに聞いた。
「あれは図星だな。それにしても骨が太いねぇ。太いのは鯨か、恐竜だけだな。エリナ。中に入ろうか。説明する。」
場所を移して、ゼロはエリナに語りだした。
「…………と、いうわけだ。殆どが凶暴で、野蛮で、殺しを好む性質なんだよ。勿論、理知的な奴も数は少ないがそれなりにいるけどね。」
「そんな!ハグリッドは何も悪くないじゃん!彼は優しいんだもん!」
エリナが憤慨した。
「だな。俺達はハグリッドを良く知っている。でも、世間体が悪いんだ。本人が隠してたのも無理はないな。遠い祖先に巨人がいて、それが隔世遺伝したかと思ってたんだが。」
「巨人は、もうこの国にはいないの?」
「いないな。元々絶滅寸前だった。だが、死の飛翔に加担した過程で、闇払いの、最後のダメ押しで皆殺しにされた。ロックハートとは別タイプの、ナルシスト思考で自己顕示欲の強い同僚が嬉々として殺戮した話を高らかに説明してたって、兄さんが言ってたなぁ。」
「マダムが怒ってたのは、今までずっと隠し通して来たから……だね。」
「そうだな。外国にはまだいるとは聞いてるぜ。尤も、人間が簡単に辿り着けない様な山の中に隠れるんだ。だがハグリッドの奴、ヘマをやらかしたな。巨人のネタを引き出さずに、普通に告っちまえば良かったんだ。」
「そうすればゴールインも出来たのにね。今度励ましに行こう……あ、12時だ。」
「演奏が終わってお開きか。ハッフルパフ寮まで送るぞ。」ゼロが手を差し伸べた。
「ありがとう!ゼロ!」
ゼロから差し伸べられた手を握ったエリナ。彼の折角の好意に甘える事にしたのだった。談話室の入り口で別れた。
*
「昨日、そういう事があったんだよねえ。」
「成る程。スネイプとカルカロフの会話。半巨人……か。シリウスにそこら辺を聞いてみる価値はあるな。それと、半巨人。幾つか予想を立てていたが、本当に当たるとはな。」
「知ってたの?」
「少なくとも、純巨人ではないだろうってのは分かったよ。6メートルは、少なくてもあるんだからな。それにしても、本当に英国魔法界って遅れてるんだな。システムや思想が中世そのものじゃないか。」
「狼人間も同じだったよね。でも、それはハリーが解決しちゃったから、巨人だって出きるよ。」
「そうだな。積もる話はそれ位にして、俺なりに方法を考えたよ。1時間水中で活動する手段をな。」
「本当!?」
「第二の課題の場所は、恐らく湖だろう。大勢の観客がいるから、余程特別な場所でもない限り、絶対そうなって来る。」
「うんうん。」
「水中で、大事なものを取り返す。その為に水中を自由に駆け巡る必要があるわけだ。それには、何が必要だと思う?」
エリナに問い掛ける形で聞く。
「う~ん。やっぱり、酸素が欲しいなぁ。」
「最初はそう来るよな。後は水圧の軽減、極寒の克服、水中を素早く動く。最低でもこれらは重要になるだろう。」
「で、その方法は考えて来たって事なの?」
「ああ、そうだ。その為に、休暇に入ってすぐに宿題を終わらせたんだからな。水中を素早く動く手段は、今は除外する。休暇中に、呪文を幾つか習得して貰うから。」
「ええ!?」エリナが死にそうな顔になった。
「宿題は、分からん所は見るから。」
「う、うん。」それでも顔が白くなったエリナ。
「習得して貰うのは、泡頭呪文、防暑・防寒呪文、圧力軽減呪文、環境適応呪文の4つだ。習得スピードを上げる為に、細胞分身を修業の度に使って貰う。」
鰓昆布をすぐに渡すという手段もあるが、それ以上の点を狙うなら、それ相応の準備をすべきだろう。鰓昆布は、間に合わなかった時の保険だ。だから今は渡さない。
「まずは、泡頭呪文。
「それを常に細胞分身で、かぁ。出来るかな?」
「弱音なんて吐いてられないぞ。今の所はな、エリナ。お前がトップだよ。だけど、逆転される可能性だって大いにあるんだ。クラムも、デラクールも対策をしてるかもしれない。」
「グラントは…………まだだよねえ。」
「あいつが、水中で歌を聞く事に気付ければな。ゼロの気苦労は終わらねえな。早速始めるぞ。」