Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第26話 崩れゆく日常

その後、エリナとグラントには多数の質問が舞い込んできた。どうやってとか、何があったとか。俺も同様だ。何しろ、人質になったのだから。ある程度の真実を話して、それで終わらせた。

 

ホグズミードに行く前日の3月。魔法薬の授業。スネイプは終始苦い顔をしていた。グラントが、エリナと同着とはいえ1位になったのに、あいつの事を気難しい顔で見ていたのだ。

 

「何かよぉ。スネイプ先生の視線が痛えんだよなぁ。」

 

俺は、ネビル、ロン、グラントの4人のグループを作り、魔法薬の調合をしていた。

 

『鰓昆布を自分の所から盗んで来たって思ってんじゃないのか?』

 

思念術で、グラントにそう言った。

 

「どう言えば良いんだ?」

 

『ロイヤル・レインボー財団の力を使って、取り寄せたって事にすれば?』

 

「そりゃ良いぜ。」

 

俺の編み出した方法で、また今回の課題を完成させた。スネイプ、一体どうやって短い時間でやったんだという顔をしてやがる。尤もスネイプよ。お前如きに教える筋合いは、これっぽっちも無いけどな。

 

その後、カルカロフが乱入して来た。何か左手をめくって、スネイプとヒソヒソ話してやがる。あいつら、変態ヘビの話でもしてるのか。それとも、パーバティとラベンダーが言ってた様に恋愛関係にあるのか。後者は有り得ないけどな。

 

翌日、ホグズミードへ。俺とエリナだけで行く。ホッグズ・ヘッドの密室で。話がバレない様に魔法を掛けておいた。

 

今まで起こった事を話した。エリナの第二の課題は、大いに喜んでいた。エリナも嬉しそうだった。次に、昨日の魔法薬学終了後のスネイプとカルカロフの会話もした。

 

「そうか。スネイプが腕をめくってねぇ……」

 

シリウスは、すっかり当惑していた。

 

「義祖父ちゃんがアルフレッドさんから通して集めたスネイプの情報。いつも闇の魔術に魅せられて、学校ではその事で有名だった。気味の悪い、べっとりと脂っこい髪をした奴だってね。」

 

「ハリー。その認識で正解だ。正しくその通りだよ。」

 

「う~ん。でもなあ。それだったら、どうしてダンブルドアは信用してるんだろうね?」

 

「裏切られるなんて明白なのにな。それに、1つ気になってる事もある。義祖父ちゃんが、スネイプに向けたあの憤怒の感情。今まで叱られたりって言うのはあったけど、それでも諭す様な感じでの叱り方なんだ。」

 

「え?アランさん。ボク達が3年生の時のクリスマスで物凄く怒ったけど。あれ、ハリー達も初めてだったんだ。」

 

エリナは大変驚いていた。

 

「ああ。あんなに激怒した義祖父ちゃんを見たのは、生まれて初めてだ。何か、息子夫婦がどうのって言ってたけどさ。」

 

「1度、アルフレッドが死んだ時にダンブルドアを責めているのは覚えているさ。」

 

シリウスが言い出した。

 

「どういう事?」俺は、もっと聞かせてくれという視線を送った。

 

「アルフレッドが卒業と同時に不死鳥の騎士団に入団してきてね。ヴォルデモートが凋落する、4ヶ月も前の事だよ。1週間後に、最初に与えられた任務で死んだんだ。死体は見つかってない。」

 

シリウスは、左目を隠している包帯を、クイッと整えた。

 

「あいつ程優しい奴はそう簡単にいやしない。これを知って、リリーは嘆き悲しんださ。あれだけ泣き止まなかったのは、メイナードの時以来だ。イドゥンのゴッド・ファーザーで、ジェームズの実の兄。」

 

「ボクとハリーの立場で言えば、伯父さんに当たる人?」

 

エリナは、シリウスにそう聞いた

 

「そうだよ。エリナ。生真面目な人でね。グリフィンドールではなく、レイブンクローだったよ。秩序や風紀を乱す者は、誰だろうとオシオキしてた。でも、余り寮で差別するって事は無かった。」

 

「レイブンクローか。」俺が呟いた。

 

「ポッター家はね。基本的にグリフィンドールなんだよ。でも、それ以外の寮へ行く素養も持っている。そして、何かしらの分野が突出して高いんだ。それ以外も、平均以上の能力を有している。エリナの変身術に、ハリーの魔法薬学と闇の魔術に対する防衛術が正にそれだ。」

 

「ハア。何か、今までの努力を血統や才能で片付けられて何か複雑。」

 

思わず溜め息をついた。違う。全部、俺自身の血の滲む様な努力で培ったんだ。

 

「ま、それだけポッター家が優秀な人材を輩出してるって思ってくれて良い。で、スネイプの話だ。何故あいつが、ダンブルドアからの信頼を勝ち取っているのか、俺には見当がつかないよ。」

 

「あ。やっぱりシリウスもそう思うんだ。ゼロも、フィールド先生も疑問に思ってたよ。」

 

「フィールド?ああ。闇の陣営の殆どを道連れに全滅した戦闘一族か。まさか、まだ生き残りがいたとは驚きだ。あの一族専用の杖が3本存在するって聞いた事がある。」

 

「フィールド先生は、スネイプよりも強い。全然本気を出してない状態でも、スネイプを本気にさせた上で打ち負かす程のね。あの人。絶対に奥の手を隠し持ってるよ。」

 

「それにね。ゼロの方も凄いんだ。本人の能力もそうなんだけど、決闘や戦闘で打ち負かした魔法使いの杖の力を、コピー出来るんだよ。フィールド先生も、何か凄い杖を持ってたんだ。普通の魔法だけで、吸魂鬼にダメージを与えられたり出来るの。」

 

エリナも負けじとゼロの凄さをシリウスに教える。

 

「分かった。2人の話を聞いて、フィールド兄弟が凄いって事もよーく分かった。話が逸れたね。で、だ。もう上級生よりも呪いに詳しくてね。あいつの所業は、極一部を除き、恐れられて近付けなかった。」

 

シリウスは、まるで不倶戴天の敵でも見るかの様な顔をしていた。

 

「死喰い人予備軍?極一部って。」俺が聞いた。

 

「ご名答だ、ハリー。奴もその一員だった。最悪な事件を起こした連中の集まりだよ。だけどね。スネイプが死喰い人だと指摘された事は無い。それどころか、殆どはまだ捕まった事が無いんだ。」

 

「一昨年はエイブリーにヤックスリー、カロー。去年はノットが滅ぼされたけどね。」

 

「その話は聞いた。ダンブルドアはつい最近、闇の陣営以上の危険組織の存在を知ったんだ。それが…………」

 

「PWPE。終わりを生み出す者ってわけか。」

 

「ああ。知ってるも何も、ハリーとエリナは一度だけ接触しているんだったね。何故、個々の力があれだけ突出しているのか、奴らの目的は何なのか、どれ位の勢力なのか。それすら分かっていない。色んな意味で、前回の戦争よりも危険度は高くなるだろうね。それでも、ロイヤル・レインボー財団は、ある程度渡り合えるみたいだがね。」

 

「桁が違い過ぎるよ。一度見たけど。」

 

「くれぐれも、引き続き注意を怠らない様にしてくれ。どうやら、ムーディも様子がおかしいと聞いてるし。」

 

「ダンブルドアから聞いたの?」俺が言った。

 

「まあね。フォルテ・フィールドが監視してるってのも聞いた。」

 

ふと時計を見た。もう3時半だ。帰る準備をしないと。

 

「またいつでも会える。でも、俺に会う為に学校は抜け出さない様にしてくれよ。手紙を出すとかして、異変を知らせてくれ。良いね?」

 

俺とエリナはコクりと頷いた。ちょっと離れた場所まで見送って貰い、そこでシリウスと別れた。

 

*

 

ハリーとエリナがシリウスと会話してた頃の話に遡る。ロナルド・ウィーズリー。聖28一族に属する由緒正しき魔法族の一家、ウィーズリー家の6男坊である。

 

優秀な兄5人と妹に囲まれて育った彼。影が薄かった。だが、彼に転機が訪れる。ハリーとエリナのポッター兄妹を始めとする友人が出来た事だ。彼らには色々教わったし、そのお陰で成績が上がったり、未知の体験をしたり、とにかく毎日が充実していた…………その筈だった。

 

いつの間にか、彼の友人達はどんどん先に進んでいったのだ。気付けば置いてけぼりに。彼らの活躍を見る度に心が痛くなった。

 

今、ルームメイトのハリーとは距離を置いている。彼とは1度喧嘩した。自分の下らない嫉妬のせいで、対立したのだ。下手をしたら、止めようとしたハーマイオニーが死ぬところだった。でも、第一の課題を見て、自分の過ちを認めて関係は修復した。

 

だが、また喧嘩してしまった。クリスマス・ダンスパーティでは、ハーマイオニーはクラム、ハリーはスリザリンのイドゥンを誘ったのだ。その事でまた感情を爆発させてしまい、今度は距離を置かれた。

 

今、彼はやや孤立している。

 

「……何だってんだよ!どいつもこいつも、僕を否定して!!!」

 

ちょっと離れた所で、感情を露わにする。

 

「ロナルド・ウィーズリーか?」突然声が聞こえた。

 

「だ、誰だ!」ロンは叫んだ。

 

突如、吐き出されるかの様に仮面を付けた男が出現した。右目だけが露出している仮面だ。その右目は、赤くなっている。

 

「俺の名はダアト。ロナルド・ウィーズリー。お前は、兄達や妹、友人が優秀で、お前自身は劣等感を感じているのだろう?」

 

ダアトがロンに尋ねた。逃げ出したい。この男は危険だと直感で感じ取った。だが、不思議と逃げようとは思わなかった。この男の声は、まるでこちらが魅せられる位なのだ。抗う方が難しい。

 

「ぼ、僕に何の用だよ?」

 

何故自分に話しかけるのか。それを知りたかった。

 

「フフフ。周りの人間と同じ力を、お前にも与えてやろうと思ってな。」

 

ダアトは、ロンの前に何かを置いた。粉末状の薬の瓶と、錠剤型の薬の瓶、邪悪な力を放っている杖、そして、神々しくもどこか禍々しい天使を連想させる白いアーマーだ。

 

「…………!?これは?」

 

「これはな――」ダアトが説明する。

 

そして、3時半になった。そろそろ、ホグワーツに戻る時間帯になった。

 

「これを全てやり遂げた時、お前は今までとは一味も二味も違う、次元を超えた力を手に入れる。まずは粉末状の薬で慣らし、その後に錠剤を全て飲むんだ。」

 

「分かった。これで僕は変われるんだね?」

 

「ああ。変われる。それでは、来たるべき日にお前を迎えに来るとしよう。」

 

ダアトは、まるで吸い込まれる様に消え去った。

 

「フフッ!アハハハハハ!!」ロンは、思わず高笑いした。

 

「これで、これで。僕は、変われるんだ!」

 

もう誰かの影とは言わせない。おまけとも。そう心に誓ったロンであった。

 

*

 

時が流れるのは早かった。気付けばもう5月の終わりだ。ニフラーの授業があったり、試験に向けての勉強をしたり。エリナから第三の課題の内容を聞いた。迷路である。その中心に三校対抗優勝杯が置かれており、最初にその優勝杯に触れた者が満点だそうだ。

 

「で、説明の後にクラムと話し、クラウチは混乱の果てに聖マンゴに入院、憂いの篩いでの出来事に繋がったわけだな。そして、クラムが変態という名の紳士だったとはな。」

 

エリナから聞いた事をおさらいする。

 

「うん。それはボクも意外だったよ。クラウチさんは、ヴォルデモートの事で警告して来たみたいだし。失神させられていたクラムさんと倒れている所を見つかったわけだけど、あと一歩遅かったら死んでたってスネイプ先生が言ってたよ。一緒にいたフィールド先生は、どういうつもりなのかムーディ先生を警戒してた。」

 

ジュニアが絡んでるのか?という事は、フィールド先生は気付いてるのか?

 

「それに最後の憂いの篩い。ネビルの両親があんな事になってたなんて。それにレストレンジの、特にあの女の人が酷かったよ。」

 

エリナは哀しそうな顔になる。

 

「気の毒にな。ネビルの奴も。ある意味、俺達と同じじゃないか…………で、その時のベラトリックスは何て言ったんだ?」

 

「うん。言うよ。『バーテミウス・クラウチ!闇の帝王は破られた!滅ぼされた!だから死んだ!生き残った女の子バンザーイ!これで魔法界は永久の平和を取り戻したのだ!そう思っていれば良い!そのままのうのうと暮らしているが良い!我々をアズカバンに放り込んで満足か!?そうだろうな!我々もだ!あの方を待つだけだ!お前達の知らない事を知っている!いいや、知ろうとも思わない事を知っているのだ!あの方は必ず蘇るだろう!我々をお迎えになさる!他の従者の誰よりも我らをお褒めなさるだろう!そして、一番にお辞儀させてくださるだろう!我々だけがあの方に忠実だった!我々だけが、あのお方を探しつづけたんだ!あのお方の手で自由になった暁には、貴様ら全員をアズカバンより惨めな場所へ送ってやるよ!!楽しみにしていると良い!アハ!ハハハハはハハハ!ハーハッハッハッハッハ!!!』ってね。あの女だけは正真正銘の狂人で、キチガイだって思った。ボク、寒気がしたよ。」

 

「レストレンジ。あいつらは本物の狂人だ。実際そうだったって義祖父ちゃんも言ってたし、親戚のマルフォイ家ですら引くレベルだそうだ。」

 

「スピカから聞いたの?」

 

「いいや。我が親愛なるドラコからだ。あいつから死喰い人の一覧リストを貰ってね。情報は殆ど正しかったよ。」

 

1冊の本を掲げた。

 

「何か彼、変わったよね。今までみたいな振る舞いはしなくなったし。あれは本心だって分かるよ。」

 

エリナは、どうも人の感情の変化に敏感な所があるからな。心までは読めずとも、自分が怒りに飲み込まれていなければ、気持ちとか直感で察する場面が多い。だから、これは本当だろう。それにだ。俺自身もドラコの心の中を探ってみたが、どうやら本気で今よりも良い形に変えたい、家族を本気で救いたいと思ってる事は知ったんだ。そしてイドゥン立会いの下、閉心術の訓練も施しているし。

 

「それで、夢で見たヴォルデモートとワームテールの会話。ワームテールがしくじったけど、何とか命拾いしたんだっけ?」

 

「そうだよ。ヴォルデモートは、かなり弱り切ってた。本気で復活出来るのかな?」

 

エリナは半信半疑と言った感じになっている。

 

「あるな。俺の考え付く限り、1つだけ。」

 

「え?あるの?」エリナが俺をまじまじと見ている。かなり驚いている。

 

「古い手法のホムンクルス製造方法。闇の魔術の1つだ。父親の骨、自らに忠誠を誓う下僕の肉、そして最後に己を憎む敵の血だ。奴はそれで肉体を取り戻すかもしれない。」

 

「な、何ておぞましい魔法なの……」

 

エリナは、それを聞いて全身をガクガクさせている。

 

「肉体再生……というよりは肉体生成と言った方が正しいな。ホグワーツにはそんなものは無い。ジジイが残す筈が無いからな。」

 

「た、確かにダンブルドアならそうするだろうけどさ…………」

 

「ロイヤル・レインボー財団にはな。アクセス制限が掛けられている文献があるんだ。俺は、ある程度融通が利く立場にあるのさ。」

 

「ロイヤル・レインボー財団って凄いんだね。」

 

「ダンブルドア以外で、ヴォルデモートがあらゆる面で勝つ事が出来ない、数少ない魔法使いがトップやってるからね。この国の魔法界以外の全ての魔法界、マグル世界に至っては殆ど全てに大きな影響力を及ぼしているんだ。義祖父ちゃん1人じゃ、出来る事なんてたかが知れている。だけど、世界中にいる支部のトップや全ての団員がいればそうなるんだ。」

 

「そんな組織を怒らせたダンブルドアとスネイプ先生って一体…………」

 

「ま、俺から言わせればね。不死鳥の騎士団諸共潰さないだけでも良いと思えたがね。あ、そうだ。ヴォルデモートの話になるよな。俺があの変態ヘビだったら、屈辱を晴らす意味でも復活材料の血に関しては、極上の血を使うよ。」

 

わざと悪そうな顔でエリナに顔を近付けながら言った。

 

「極上?誰の?」金縛りに遭ったかの様に動かなくなるエリナ。

 

「自分の凋落になった原因。『生き残った女の子』と呼ばれる存在。」

 

それを聞いたエリナは、ヴォルデモートが誰の血を使うのか悟った様だ。

 

「もしかして……ヴォルデモートはボクの血を使うつもりなの?」

 

恐怖が全身を駆け抜ける様になりながら、それでもハッキリと解答を言ったエリナ。俺は表情を元に戻し、真面目なものとなってこう警告したのだ。

 

「エリナ。これからは、それに気を付けて行動するんだ。」

 

「分かった。気を付けるよ。」

 

「そんじゃ、修行を再開するか。」

 

「うん!」

 

宿題をやりつつ、エリナの特訓に付き合う。もう並の7年生レベルの力を有している。だけど、死喰い人には及ばない。十数年もブランクがあるとはいえ、勝てる保証は少ないからだ。それに、アルカディアやPWPEという、闇の陣営以上の敵対組織には全く敵わない。だけど、準備をするのは悪くないんだ。

 

以前、ロイヤル・レインボー財団にジュニアの事を報告しておいている。その結果、泳がせておいた方が良いという結論となった。エリナの血に宿る、母様の護りの魔法を取り込む事で、触れないという弱点を克服する意味合いもある。

 

だが、イーニアス義兄さんによれば、それと同時にヴォルデモートが死なない限り、エリナも絶対に死ぬ事は無いという調査結果を送ってくれたんだ。これはまるで、ヴォルデモート自体がエリナの分霊箱そのものと化していると言っても良い。

 

怪我の功名とは良く言ったものだな。今は不利に見えるかもしれないけど、後々闇の陣営にとっては最大の痛手となるだろうさ。

 

俺も期末試験に向けての最終調整が完了しているから、思いっ切りエリナの指導が出来るんだ。どの教科も大した内容にはなってない。今まで通りの姿勢で臨めば良いんだ。俺も始めるか。屋敷しもべ妖精式の魔法は完全に習得したけど、今度は天魔の紅雷を杖無し、それに無言呪文で扱えるようにしないと。

 

ゼロとグラントも、同じレベルの特訓をしているって聞いているし。俺も負けてられないな。これ以上に強くならないと、守りたい者を守れないし。

 

*

 

「……という事で、どうだ。ワームテールよ。」

 

薄茶色の髪の男が、ネズミを連想させる小男にそう告げる。

 

「オーケー。あの方は、今は弱り切って寝ているから聞こえてない。蛇も付き添っている。」

 

「よし。決まりだ。さっきの取り決めで行くぞ。お互いに裏切り者同士(・・・・・・)、仲良くやっていこう。」

 

「分かっている。取り敢えず今は、休戦且つ共闘で行くよ。」

 

「それにしてもお前、本当にワームテールか?今更だが、しばらく見ない間に、随分と人が変わったが。」

 

「僕は僕だ。」

 

「ふ~ん。まあいいや。打ち合わせ通りに行くぞ。」

 

*

 

「ふう。だいぶ慣れて来たな。この薬にも。順調に行けば、第三の課題直前に飲み切るな。力が、力が湧いてくる様な感覚だ。」

 

ロナルド・ウィーズリーは、皆に見つからない様に錠剤型の薬を服用していた。最初は吐血していたが、徐々に体が慣れていったのだ。

 

「もう僕は、日陰者じゃない。究極の力、それを手に入れてやる。」

 

*

 

時は更に流れ、第三の課題当日になった。どの教科も大した事ではなかった。平常運転でこなせたのだから。最後の試験は魔法史。だが、それもかなり理に適った考察を交えて解答した。今までも、それで高得点を取れたのだから。

 

代表選手は家族が来るそうだな。ダーズリーが来るのか?エリナとの待ち合わせ場所である部屋に入った。

 

「ハリー。久しぶり。」

 

「元気そうで何よりだよ。」

 

「生憎、兄上と姉上、お爺様はスケジュールが取れなくてね。」

 

そうは言いつつも、そんな事は建前だ。俺には分かっている。そう言う視線で伝えた。アドレー義兄さんは、ニッコリとしている。

 

「ってわけで、俺達もシリウスとリーマスに同行しに来たんだ。」

 

シリウスとリーマス、それにキットもいた。4人共、中良さそうにしている。確かに、俺達の後見人を担当しているこの2人と、エリナとの仲も特に良い2人なら来るだろうな。妥当な人選だ。合計4人だね。

 

「4人が来てくれたんだ。良かった。エリナには、てっきりダーズリーが来るんじゃないかと思っちゃってたんだ。」

 

来てくれた4人にそれぞれ握手をして、再会を喜ぶ俺。

 

「エリナは?」

 

「さっきまでいたんだ。でも、グラントの家族の代理人として来ているモリーさんとビルの所に行ったよ。」

 

俺の質問に、アドレー義兄さんが答えた。

 

「キット以外の3人は懐かしいんじゃないの?」

 

「まあね。パッドフット。君もだろ?」リーマスが言った。

 

「しばらく出歩くのも良いかも知れないな。それでハリー。試験はどうだった?」

 

「この俺が苦戦をするとでも?簡単過ぎて歯応えが無さ過ぎだった。俺に点数で勝てるのは、ハー子にゼロ、イドゥン位だからね。」

 

「それもそうか。」シリウスは、そう言いながらもかなり驚いている。

 

「それでは私は、厨房から食事をとりに行こう。キット。君も来るか?」

 

「行くぜアドレー。ついでにホグワーツも案内してくれよ。」

 

そういうわけで、4人はフリータイムになった。後で、ウィーズリーおばさんやビルとも挨拶をした。

 

「元気そうで何よりだ。つーか、クラムの一家がキットを見て何かざわついてたな。別にキットは何もしてないのに。」

 

しばらく外の空気を吸いに行く。大広間の玄関の入り口には、ドラコ・マルフォイがいた。俺を見るや否や、近付いてきた。

 

「ポッター。丁度君を探してたんだ。話がある。付き合ってくれないか?」

 

「別に良いが。どうしたんだ?」

 

「とにかく来てくれ!イドゥンも呼んだ。」

 

「分かった。行こうか。」

 

誰もいない空き教室まで移動した。既にイドゥンはいた。

 

「ドラコ。ハリーを連れて来ましたか。」

 

「連れてきたよ。」

 

「それで、話って何だ?」

 

「昨日起こった話だ。それを話したうえで、僕の決意を聞いて欲しい。」

 

ドラコは、ゆっくりと話し始めた。

 

*

 

ドラコ・マルフォイはその日の試験を終え、気晴らしに外出した。まあ、出来は大丈夫だろう。後は魔法史だけだな、と思ったドラコ。

 

突然、鳥がぎゃあぎゃあと騒いだ。その鳴き声に交じって、不快にする様な笑い声が聞こえたのだ。

 

「誰だ!?」

 

その言葉と同時に、男が現れた。少しそばかすがあり、薄茶色の髪をしている。

 

「バーテミウス・クラウチ・ジュニア!」ドラコが叫んだ。

 

「正解だ。初めましてになるかな?いいや、この姿での対面になるわけだが。ケナガイタチで思い出すか?ええ?」

 

ドラコは悟った。この男が何を言ってるのかを。

 

「まさか。ムーディに化けていたのか!?」

 

「そうだ。フフフ、まさか。自分に教師の素質があったのは驚きだったがな。」

 

「死喰い人が何のようだ!?まさか、僕を闇の帝王の下に引き入れる気か!?」

 

「引き入れるのは正解だ。だが、その対象は全く違う。そして、もう俺は闇の帝王のものではない。リチャード・シモンズ様のものだ。」

 

そんなバカな!?こいつはダンブルドアだけではなく、闇の帝王まで欺いてたのか?

 

「シモンズは呪いの印を僕に植え付けて何をしたいんだ?」

 

「気に入った奴を、引き入れたいのさ。」

 

「僕に何のメリットがあるって言うんだ!?」

 

「逆に聞こう。お前の目的は何だ?このままホグワーツにいても、いずれヴォルデモートに利用されるだけなのに。」

 

「!?」唐突な問いかけに、思わずドラコは怯んだ。

 

「呪印。または新しい改造手術によって、シモンズ様に縛られる。それ相応の力は手に入るがな。結局の所、このまま学校で平穏を送るのもアリだ。だがな、早かれ遅かれお前の父のしくじりはバレる。ヴォルデモートはその時、間違い無くお前を無理矢理死喰い人にし、無茶な任務を与え、出来ずに殺し、父への見せしめにするだろう。そして、PWPEは手加減という文字が奴らの辞書にない。ターゲットになった奴は、好き嫌い問わず皆殺しだ。」

 

青ざめるドラコ。

 

「だが、今シモンズ様の所へ来れば、お前は守られながら、今までにない強大な力を手に入れる事が出来る。」

 

そうだ。この男の言う通りだ。このままでは、PWPEという組織に自分は碌な抵抗も出来ずに殺されるだろう。だから、この1年間は努力して来た。イドゥンのみならず、ハリー・ポッターにも勉強や戦闘訓練をして貰った。ハリーとちゃんと関わって分かったのだ。自分がどれだけ狭い見識を持っていたかを。それを脱却するきっかけを作ってくれたハリーに、感謝と敬意、友情まで感じ始めたのだ。

 

「何かを得るには、何かを捨てなければならない。お前は、家族を助けたいんだろう?その為の力を得るにはどうしたら良いか……分かったんじゃないか?」

 

「僕にホグワーツと、今までの繋がりを捨てろって言いたいのか?」

 

ドラコは、ジュニアを険しい表情で見た。ジュニアは、満足そうに頷いた。

 

「力を手に入れない事と引き換えに、お前は何ら変わらぬ平穏を再び手にするだろうな。だが、それは脆く崩れ去る。力を手に入れるには、お前が掴む筈の平穏を捨てる事が最低条件だ。」

 

正に孤立無援。ハリーが前に言ってた四面楚歌って奴か。今よりも桁違いな強さを得られるが、それは今までの繋がりを断ち切る事でもあったのだ。大切な存在がいる今の世界と、強大な力を得られる機会。板挟みになるドラコであった。

 

「もう、3年生の時のクリスマスと同じ思いはしたくないだろう?ドラコ・マルフォイ。」

 

嫌でも思い出す。死喰い人の家族だから殺すと言われ、自分は何も出来なかった。もう、あんな思いはしたくない。どうすれば良い?

 

『こうなったら……』何かを決意したドラコ。

 

「明日の期末試験終了後、第三の課題が始まる時に返答を貰おう。くれぐれも、目的と現状を忘れるなよ。」

 

ジュニアは立ち去る寸前、ドラコの顔を見た。それは、眼が大きく見開いていた。手応えがあったなと感じるジュニア。そうじゃなくても、何かしらの決意は固めたのは確かである。後は、答えを待つだけだ。

 

『仕上げをしなくてはな。』

 

ジュニアは、ムーディの部屋に戻って行った。

 

*

 

「と、いう事があった。」

 

「ヴォルデモートではなく、リチャード・シモンズの!?」

 

「成る程。正体を暴いた時に、道理でヴォルデモートに関する情報だけは簡単に引きずり出せて、それ以外の情報だけは引き出せなかったわけですわね。一杯食わされましたわ。」

 

「で、今日答えを言うんだろ?ドラコ、その答えとやらを聞かせてくれ。」

 

俺は、ドラコに質問を投げかけた。ドラコは目を閉じた。しばらくして、また見開いたのだ。決意を固めた目をしている。

 

「僕は不死鳥の騎士団の。いいや、ダンブルドアから送り込まれたスパイとしてリチャード・シモンズの所へ行く。もう本人も承知済みだし、事情を知ってる人間もいるって言っておいた。かなり苦い顔をしていたが、最終的にダンブルドアは了承した。父上や母上を助ける事を条件に。スピカに関しては、ロイヤル・レインボー財団に保護される事も言った。」

 

「……義祖父ちゃんから、その旨の連絡を受け取った。俺以外でマリアの心を解いた人間がいれば、マリアの他人恐怖症も直せるって言ってたし。」

 

「力を手に入れる代わりに、ひたすら魔法界のために尽くす。そういう決断を、あなたはしたわけですか。私とハリーにも真相を告げた理由。もし任務を達成出来てこちら側に戻って来る時に、間違い無く裁かれる可能性がありますね。」

 

「世界のほぼ全てに大きな影響力を持っているロイヤル・レインボー財団と、英国魔法界事実上の王族と称されるブラック家。そこに、アルバス・ダンブルドアの口添えで恩赦を。確かに俺も奴の情報は欲しいし、後になって君も不問になるわけだ。だが、良いのか?スパイというのは難しんだぜ。」

 

「ハリーの言う通りです。口で言うのは簡単ですけど、実際にやるのは困難を極めますわ。敵の信頼を勝ち取った上で、情報をこちら側に渡す。そんな芸当を、あなたはこれからやるのですよ。出来るのですか?」

 

俺とイドゥンで、最後通告を出しておく。

 

「やってみせるさ。何たって僕は、スリザリン所属のドラコ・マルフォイだからね。」

 

ドラコの決意は揺るがなかった。もう何が何でも行く気だな。これ以上の説得は無理そうだ。そうイドゥンに視線を送る。彼女も同じ気持ちのようだ。

 

「覚悟は出来ているのですね?」

 

「ああ。出来てる。だから、もう荷物は片付けたんだ。いつでも行ける。」

 

トランクを指差すドラコ。

 

「僕は、これからシモンズの所へ行く。ポッター……いや、ハリー。」

 

初めて俺を、下の名前で呼んだ。

 

「スピカを、僕の妹を頼む!」

 

散々いがみ合って来た敵としてではなく、友として俺に頼んできたドラコ。

 

「分かっている。ドラコ。心配するな。これから危険極まりない場所に行くお前に代わって、俺がスピカを全力で守る!だがこれだけは約束しろ!必ず、生きて帰って来い!」

 

俺は、ドラコにそう言った。ドラコは、力強く頷いた。

 

「ああ。2人共、行ってくる。」

 

ドラコは、ジュニアとの待ち合わせ場所まで全力で走っていった。

 

「行きましたわね。」

 

「よし。ロイヤル・レインボー財団に報告をしよう。」

 

*

 

疲れ切った顔のダンブルドア。これから審査員として行かねばならないのに、あまり行く気分ではなかった。その直後に、一仕事出来たのだ。

 

「わしは、やはり他力本願なのか。確かに、リチャード・シモンズの組織、アルカディアの情報は欲しいとは思っておった。じゃが、ドラコ本人から名乗りを上げたとはいえ、生徒を、ましてや未成年の子供をスパイとして送り込むとは。」

 

ダンブルドアは、今になって非常に後悔した。昨日の夜、ドラコ・マルフォイが来たのだ。家族の救出と、力を得る事と引き換えに、自分のスパイとなってリチャード・シモンズの所に行くと言い出した。最初は反対したが、彼の決意は揺るぎないものだった。

 

だが、情報が欲しかったのは事実。現に、ムーディの正体を明かしてくれたのだ。フォルテが監視していたが、これから、第三の課題の開始を告げた後にクラウチ・ジュニアを拘束しに行く。

 

「悩んでばかりもいられないのう。行動しなければ。」

 

ダンブルドアは、スネイプとマクゴナガル、フォルテ・フィールドを呼び出し、偽ムーディを捕まえに行く事にしたのだった。

 

*

 

「最後の1つ。」

 

ロンは、錠剤を飲んだ。その瞬間、力が漲って来た。何でも出来そうな感じだ。第三の課題開始まで、あと40分だ。

 

「さあ。ダアトと合流するか。」

 

自分の荷物、最低限のものだけを手に、談話室を出て行くロン。このまま、学校を抜けるつもりだ。大理石ホールの正面玄関へ向かう。そこには、ハーマイオニーがいた。

 

「何だよハーマイオニー。どうしてそこにいるんだ?」

 

思わず舌打ちしたくなったロン。

 

「外に出るには、この正面玄関を通らなきゃいけないから。」

 

僅かに震えているハーマイオニー。

 

「あの変な薬を飲んで、何をする気?」

 

「君には関係ない。もう僕は、誰かのおまけじゃない。添え物じゃない。特別な存在の、ロナルド・ウィーズリーとなる為に、僕は終わりを生み出す者の所に行く。」

 

「ふざけないでよ!そんな事、誰も望んでない!ロン。お願いよ。あなたが劣等感を抱きながら生きてたのは知ってた。でも皆、あなたを友達だって思ってくれてるのよ!その繋がりを断ち切る気なの!?」

 

「うるさい。口ではそう言いながら、僕の気なんか知らない癖に!麻痺せよ(ストゥーピファイ)!!」

 

ハーマイオニーを失神させた。成績優秀だからそんな事が言えるんだ。あいつらは、もう友達じゃない。敵だ。

 

「もう、平凡なんて言わせるか。僕は、今度こそ変わるんだ。」

 

ロンは駆け出した。禁じられた森の入り口、ハリーと喧嘩した場所だ。そこが合流地点になっている。

 

「来たか。」仮面の男、ダアトが待っていた。

 

「どうやって行くんだ?」ロンが問いかける

 

「姿くらましは無理だ。もう少し、俺も魔力を回復させる必要がある。だから、歩くんだ。」

 

「追っ手も来るんじゃないのか?」

 

「それについては心配いらない。足止め要因は準備してある。リーダーも、ヴォルデモートに地獄を見せつける為に遠くの場所へ行ったんだ。奴ら闇の陣営にとっては、さぞかし楽しい宴になるだろうがな。」

 

ダアトは笑っている。仮面で隠しているが。だが、その目は笑ってない。まるで、これから闇の陣営に待ち受ける最悪のシナリオを当然の報いだと思っているようだ。

 

「それでは、行くぞ。」

 

ダアトは、ロンを連れて校門まで歩き始めたのだ。

 

*

 

ドラコは、ジュニアとの待ち合わせ場所まで来ていた。もうジュニアはいたのだ。

 

「早いな。答えを聞こうか。ドラコ・マルフォイ。」

 

「僕は、リチャード・シモンズの所に向かう。力を手に入れる為に。」

 

その答えを聞いたジュニアは、満足そうにしていた。

 

「良い判断だ。早速行くぞ。」

 

「ダンブルドアは、あんたを捕まえに行くつもりの様だけど?」

 

「教員室にいる俺の事か?あれはダミーだ。3日間持続する。ほら、行くぞ。」

 

「ああ。」

 

ジュニアは、緋色の竜の姿になった。ドラコに乗れと促す。迷わず背中に乗った。ジュニアは、空を飛んだ。

 

*

 

試合開始30分前。俺とイドゥンは、周りを見ていた。

 

「そろそろ、第三の課題が始まりますわ。行きましょう。ハリー。」

 

「ああ。」

 

俺とイドゥンは、正面玄関に向かった。途中でゼロ、次にエックスと合流し、せっかくだから皆で行こうという事になったわけだ。

 

正面玄関。セドリックとチョウがいる。だが、倒れている誰かを呼び掛けているようだ。ゼロ、ブラック姉弟に目の視線を合わせる。3人共、頷いた。急いで彼ら2人の下へ駆け寄った。

 

「セドリック!チョウ!一体どうし……!?ハー子か!?」

 

倒れていたのはハー子だった。

 

「誰かに失神させられたみたいなんだ。」

 

「よし。俺に任せてくれ。活きよ(エネルベート)。」

 

ゼロが杖を振り、ハー子に魔法を掛けた。ハー子が目を覚ます。

 

「大変なの!ハリー!ロンが!ロンが!!」

 

目を覚まして早々、急に喚き出したハー子。

 

「少し落ち着いて下さい、グレンジャーさん。状況が呑み込めませんよ。」

 

エックスが落ち着く様にと諭した。ハー子は話し始めた。ロンが妙な薬を3月から飲んでいた事、何か胸騒ぎがしたのでロンを注意深く観察していた。正面玄関でロンと出会った時、彼の様子がおかしかったのだ。何とか引き留めようとしたが、早抜きで失神させられたというのだ。終わりを生み出す者に行くと言ってたようだ。

 

「私では、出来なかった。止められなかったの。」

 

ハー子が泣きながら俺達6人に言った。

 

「もっとロンを気遣っていれば、もっと彼の異変に早く気づいていれば。」

 

「それ言うならさ。ハー子。俺にだって落ち度はある。こんな事になるなら、もっと腹を割って話すべきだったってな。」

 

俺もハー子に謝った。

 

「ハリー。今後悔したって始まらない。まだ間に合うかも知れない。ロンを追うぞ。」

 

「ゼロ。お前、まさか……」

 

「フッ。当たり前だろ。何年お前とつるんでると思ってんだ?俺も行こう。エックス、イドゥン、セドリック、チョウ。ハーマイオニーを医務室に…………」

 

「僕にも行かせてください。先輩。ゼロさん。姉ちゃんは行くの?僕は行くよ。」

 

エックスが名乗りを上げた。イドゥンにも聞いている。

 

「ここまでの事情を聞けば、私達も手伝いますよ。ハリー、あなたには返しきれない恩がありますからね。」

 

イドゥンも言った。

 

「シリウス伯父さんの無実を証明し、レギュラス伯父さんの真実まで語ってくれた。先輩。あなたは、僕達を救ってくれたんですよ。僕達の『心』を。今度は、あなたがウィーズリーさんを救う手伝いをさせてください。」

 

エックスが続け様に言った。

 

「ハリー。それにゼロ。君達は、いつも僕が分からない所を教えてくれている。恩返しをさせてくれ。それにね、エリナは僕にとっては大切な後輩さ。双子の兄である君も、僕にとっては大切な後輩だ。それに、僕は成人してる。何かあった時に庇うことが出来る。」

 

気持ちとしては嬉しい。だが、終わりを生み出す者、PWPEが絡んでいるなら状況はガラリと変わってくる。

 

「皆。ロンは手引きされている可能性が高い。手引きしている奴らが終わりを生み出す者ならば、死ぬ可能性の方が極めて高いんだ。」

 

行くと申告したゼロ、セドリック、イドゥン、エックスにそう告げる俺。

 

「人数は10人前後。だけど、個人の戦闘能力は国1つを容易く滅ぼせるんだ。挑もうとしているのは、そんな奴らなんだ。」

 

頼む。PWPEの知っている事は教えるから、行かないと言ってくれ。因縁がある俺1人だけで十分だから。

 

「だから何だ。」ゼロが口を開いた。

 

「俺はな。お前と一緒に今まで戦ってきたんだ。賢者の石の時だって、秘密の部屋の時だって。俺の力は分かってるだろう?それにな、PWPEの1人との決着もつけなきゃって思ってるのさ。」

 

「ゼロ。お前はそれだけじゃなくて、あの力もあるから大丈夫かもしれないけど。」

 

「イドゥンは成績がトップだ。戦闘能力も、お前や俺、グラントと比べて1歩引き下がるけど、ちゃんとあるんだ。下手な上級生よりも頼りになる。」

 

「ゼロ。私、恥ずかしいですわ。」イドゥンが頬を赤らめる。

 

「エックスは、入学時点で卒業レベルの力を持ってる。それに、今の3年生では座学も実技も1番だ。修行もやっていて、お前との連携も取りやすいぞ。」

 

「もっと僕達を頼ったって良いんですよ。」エックスがニコリとした。

 

「セドリックは、この中では唯一の成人だ。監督生にも選ばれてるって事は、それ相応の能力を持ってるぜ。科目だって、12科目通過したみたいだし。」

 

「ハリー。君が何と言おうと、付いて行くよ。」

 

「これでも、死なせたくないから連れて行かないつもりか?」

 

ゼロが言った。もう、何言っても付いて行くだろうなぁ。

 

「……自分の身は、自分で守ってくれ。俺では庇い切れない可能性が高い。正直に言わせてもらうが、闇の陣営よりも化け物染みている。それだけは覚えておいてくれ。」

 

「決まりだな。10分後、玄関の外で集合しよう。そしてチョウ。ハーマイオニーを、医務室へ連れて行ってくれ。出来たら、先生達に伝えて欲しい。」

 

ゼロが皆を取りまとめた。ご丁寧に、集合時間まで設けてくれた。

 

「ええ。分かったわ。行きましょう、ハーマイオニー。」

 

「ありがとう。助かるわ、チョウ。」

 

チョウが、ハー子を付き添う。だが、ハー子が振り向いた。俺に視線を向けている。

 

「ハリー。お願い。もうあなたにしか頼めないの。ロンを……ロンを連れ戻して。」

 

泣きながらも、しっかりと俺にそう言ったハー子。

 

「任せろよ。言われなくてもそうするぜ。今さ、ハー子が苦しんでるのは分かるんだ。だからさ。ロンは絶対に連れて帰ってくる!安静にして、待っててくれ!!」

 

思い付く限りの励ましの言葉と、自分の決意を伝える。

 

「ありがとう……ハリー。」

 

「さあ。マダム・ポンフリーの所へ行きましょう。」

 

今度こそ、ハー子は医務室へ向かった。それを見送ってすぐに、10分で身の回りの準備をした。そして10分後。第三の課題、開始10分前。

 

「タイムオーバーだな。」

 

俺、ゼロ、イドゥン、エックス、セドリックが玄関の外にいた。

 

「ゼロ。それは?」

 

「バトルシャフトって言う武器でな。兄さんが、ロイヤル・レインボー財団に依頼して作ってくれた武器だ。」

 

片方だけに両刃が付いているロッドって感じだな。いけね、魔力感知しないと。

 

「ロンの奴、禁じられた森を歩いてるぞ。知らない魔力の持ち主と一緒に。」

 

予め感知した魔力の位置を、4人に教える。

 

「凄いな。魔力感知呪文って。」セドリックが感心している。

 

「行きましょう。時間もそんなにありませんからね。」

 

エックスが早く行くように促した。

 

「そうですわね。行きましょう。」

 

「出発だ!」ゼロが叫ぶ。

 

5人で歩き出した。俺には仲間がいる。心強い仲間が。彼らとなら、何処までも繋がる道を歩んでいけそうだ。そう感じられずにはいられないのだ。

 

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