Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第33話 悪夢の晩餐

シモンズとマクルトが杖を構え……なかった。

 

「ヴォルデモート!そして死喰い人共よ!貴様らをどれだけ本物の地獄に送ろうと願った事か!お前達に大切なものを奪われた俺の悲しみ!それに痛み!貴様らには分かるまい。俺の怒り、貴様らの罪!今、この場で刻み込んでやろう!!」

 

マクルトの怒声が響き渡った。死喰い人達は恐怖の余り、失神している者まで現れる始末だ。あのヴォルデモートでさえ、本能的な恐怖を感じており、杖を持っている右腕が笑っている。そこから発せられた魔力は、ボクにも伝わってきた。感知が得意じゃないにも関わらずである。

 

『この魔力!質はハリーで、量はイドゥンじゃないの!い、今は敵じゃなくて良かった。だ、だけどこれから敵になると思うと…………』

 

それよりも、グラントが高熱を出している。何とかしたいけど、医療の知識なんて持ち合わせていないよ。こういうのは、ゼロが詳しいのに。

 

「ボクは……役立たずだよ。友達が苦しんでるのに、助けられない。どうやって励ませばいいのか分からない。どうすれば……」

 

自分の無力さに、思わず涙が溢れてきた。

 

「フフフ……理由は分からないけど、よっぽどあなた達、マクルトに恨まれてる様ね。ここまで感情的になった彼は久しぶりに見たわ。あなた達、怒らせてはいけない人物を怒らせたようね。」

 

シモンズがそう言っている。

 

「たかが2人だ!さっさと殺して、ポッターも捕まえるぞ!」

 

死喰い人の1人が吼える。

 

「バカ!あの2人が只者じゃないって事、お前には分からないのか!下手をすればこっちが全滅だ!」

 

別の死喰い人が怒鳴りつける。

 

「痛みを知れ……」

 

マクルトが静かに言った。すると、マクルトの前に更に5人が現れた。

 

「え?何これ?」

 

全員シルバーの髪をしている。目は、マクルトと同じ虹色だ。彼と同じ、鼻の所に黒いブツブツもある。でも、その容姿は全く違う。多種多様だ。

 

人間離れした巨体の持ち主であるアフリカ系の男。下半身が戦車の様になっていて、上半身も多数の兵器を搭載しているケロイド状の男。中東でよく見かけるような服装をしている男。顔以外を全身鎧にして纏っている美少年、ダークグリーンのカンフーの服を着用した若い男が現れたのだ。

 

「「「「「「我らが、『マクルト』なのだ。」」」」」」

 

5人が飛び出し、その場にいた死喰い人達を殺害した。首をもぎ取ったり、心臓を抜き取ったり、何でもアリな方法で。まるで、下手なB級映画を見てるみたいだ。

 

死喰い人の放った死の呪文が、中東男に命中し、そのまま動かなくなった。だけど、他のメンバーは無表情だ。

 

「な、何なんだ?」

 

「まるで、恐怖すら感じていないぞ。こいつら。」

 

その言葉を死喰い人言い終えたと同時に、中東男が再び立ち上がった。

 

「あ、有り得ない!死の呪文をまともに食らって、また立ち上がって来るなんて!」

 

「我が君!助けてください!」

 

「ば、化け物だあああああああああああああああああ!!!」

 

必死に逃げまとおう死喰い人。マクルトの呼び寄せた5人は、どんどん死喰い人達を殺戮していく。魔法で応戦する者もいるにはいたが、その5人には全く通じない。倒しても、しばらくしてまた蘇ってしまうのだ。

 

「ここまで本気を出すなんてね。本当に闇の陣営が憎くて憎くて仕方ないようね。私もやろうかしら。つい最近完成させた魔法を。」

 

シモンズが杖を手に持ち、その魔法を唱えようとする。

 

死魂よ、下界へと舞い戻れ(アニマース・リベーティフェリア)!」

 

その言葉と同時に、シモンズの後ろから沢山の棺が出現した。まるで、古代エジプトのピラミッドや王家の谷で発掘された棺みたいな感じの。そこから中身が出て来た。

 

その中身とは、人間だった。でも、まるで生気が無い。

 

生き残っていた死喰い人達とヴォルデモートは、それを見て戦慄したのだった。

 

「あ、悪夢でも見てるのか?」死喰い人の1人が震えながらそう言った。

 

「こいつら、我々が昔殺した魔法使い達ではないか!!」

 

え?今なんて言ったの?死んだ魔法使い?

 

「それだけじゃない!ロジエール!ウィルクス!任務で死んだ筈の同胞までいるぞ!」

 

「…………」

 

ヴォルデモートは恐怖している。さっきのボクとの戦いで出現したパパ達の幽霊みたいなものでさえ、酷く怯えていたんだ。まして、この世に蘇った死者であれば、余計その恐怖心は増幅するんだろうね。

 

リチャード・シモンズ。ある意味、ヴォルデモート以上に危険な存在だよ。死者をこの世に呼び寄せて、手駒にするなんて。冒涜してるじゃないか。命を、魂をなんとも思ってないんだ。この人は。吐き気がする。

 

「さあ。無念の死を遂げた不死鳥の騎士団のメンバーに数多の魔法使い達。あなた達に、あいつらへの復讐の機会を与えてあげる。そして、ロジエールにウィルクス。昔の仲間同士、思う存分に殺し合ってきなさい。」

 

シモンズがそう言い放つ。死者の軍団は、たちまち死喰い人に襲い掛かってきた。迫りくる死者を目の前に、死喰い人達は戦意喪失。とにかく生き延びる事を最優先にし始めたのだ。

 

「ロジエール!待ってくれ!仲間だったじゃないか!」

 

必死になって説得をする死喰い人がいる。

 

「違う!俺の意思とは勝手に動き出すんだ!とにかく生き延びてくれ!」

 

でも、ロジエールから緑の閃光が発射されて説得していた死喰い人が絶命してしまった。ロジエールは、いやだいやだと泣き喚きながら、生きている死喰い人に襲い掛かっている。

 

「ルシウス・マルフォイ!!」

 

「どれだけこの時を待ちわびた事か!」

 

「不死鳥の騎士団は、お前を決して許さない!!」

 

「ヒイイイイッ!?そ、そんな!トラバースやドロホフに殺された筈なのに!」

 

ルシウス・マルフォイは、もう精神崩壊寸前まで来ている状態だった。そして、最悪過ぎる事態の連続に失禁もしている。

 

「こいつらも、死の呪文が効かないぞ!」

 

「奴らの進撃が止まりません!我が君!」

 

「ヒィィ………も、もう………止めてくれ!!」

 

「許してくれ!助けてくれええええええ!!!」

 

泣き叫ぶ者も現れた。

 

それは、まさに惨劇そのものだった。今まで死喰い人として、多くの人間を恐怖に貶め、無慈悲に殺して来たであろう魔法使い達が成す術もなく、一方的に殺されているんだ。何度でも蘇ってくるマクルトの仲間と、決して死なない死者の軍団によって。

 

マクルトとヴォルデモートの対決も行われている。だけど、終始マクルトが優勢だった。それでいて、決して油断していない。マクルトは、杖の無い状態で魔法を行使している。ヴォルデモートは跪いている。

 

「闇の帝王も大した事が無いのだな。」

 

「黙れ!俺様は、死を克服したヴォルデモート卿だぞ!この世の全てを支配する、最強で偉大な魔法使いだ!!!」

 

その言葉を聞いて、マクルトが大爆笑した。

 

「お前が最強で偉大な魔法使い?面白いジョークじゃないか…………おい!貴様の減らず口を聞いていると、本当に笑えるぜ。」

 

もう我慢の限界まで激昂しているヴォルデモート。

 

「貴様あああああ!言わせておけばああああああああああああああ!!!」

 

死の呪文を乱射するヴォルデモート。しかし、マクルトが右手を前に出すと、幾つもの緑の閃光が別方向に向かって行き、周囲の墓石や死喰い人、マクルトの仲間、不死のゾンビ軍団に直撃した。墓石は大破し、命中してしまった死喰い人は絶命。マクルトの仲間、不死のゾンビ軍団に関しては倒れてしまったが、すぐに活動を再開した。

 

マクルトがヴォルデモートを右手で吹き飛ばし、墓石を何個も衝突させて、そのぶつかった墓石も大破させて重症を負わせた。全身が血だらけとなり、前のめりに倒れ込むヴォルデモート。そのヴォルデモートの頭を、右足で力いっぱい踏みつけて逃げられなくしたマクルト。

 

「お、の、れえ………!お前達の様な者もいると分かれば、今回の俺様の復活の儀式は行わなかったのに!!!」

 

悔しそうな表情を浮かべるヴォルデモート。

 

「今更後悔しても遅い。それに、だからこそだ。こうやって今まで、水面下で活動していたのだ。時には、禁じられた廊下のトロールをバラバラに殺したり、ロイヤル・レインボー財団がお前の戦利品を獲得出来る様に誘導したりな。」

 

そうだったのか。あのトロールの死体、TWPFに差し金なのか。あの謎がようやく解けたよ。

 

「今頃、メンバーの1人がレストレンジの金庫にあった品を、ハリー・ポッターに手渡している所だ。もう、俺の後継者たるハリーはどうするべきで、どう行動すべきか分かっている筈だからな。非生物分霊箱は、間違いなく全滅しているぞ。」

 

「何だと!?」

 

ヴォルデモートは、このボクでも分かり易い様に動揺していた。そして、ルシウス・マルフォイを睨み付けた。

 

「もう1つ!力を隠して、お前達に従うふりをするって手も考えたわけだが……」

 

言葉を繋げようとするマクルト。だけど、その表情はかつてない程の怒りの感情を表面に出していた。タダならぬ気配を感じ、言葉を出す事すら許されないヴォルデモート。

 

「貴様等みたいなこの世のクズ共に従うって言うのは!たとえ演技でも我々TWPFの誇りが許されないのだ!!!ましてや、俺から大切な者を理不尽に奪った貴様ら如きに!!!苦しめ(クルーシオ)!!!」

 

ヴォルデモートの悲鳴がこの墓地全体に響き渡る。ヴォルデモートはジタバタしている。

 

「永久に、この無間地獄を味合わせてやりたい。そう言った思いで使ってこそ、この磔の呪文は最大の力を発揮するのだ。敵を本気で苦しめたいと言う加虐心が必要になるのだ。エリナ・ポッター、聞こえているな。磔の呪文を使いたい時は、俺の今の言葉をよーく思い出すと良い。」

 

磔の呪文から解放されるヴォルデモート。もう、立つ事すらままならなくなっていた。

 

「ジュニア。行くわよ。もう彼らに戦意なんて無いわ。」

 

シモンズがジュニアに言った。2人で仲良く、夜のティータイムを堪能している。

 

「良いんですか?」

 

「最初は100人いたのに、今はもう20人にも満たないからねえ。」

 

ゾンビ軍団は、もう棺の中に納まっている。そして、地中へと沈んでいった。

 

「これだけ減らしておけば十分だろ。」

 

マクルトが杖を振り上げる。

 

「姿くらまし防止呪文を解除したぞ。皆殺しにしようかと思ったが、惨めに生きて、生きて生きて生き延びて、我々の力に永久に怯え続けるが良い。そして、近い未来に起こる究極の地獄にも。これからは、お前達に安息の日など来ないと思え。あの世に行く以外はな。」

 

マクルトの言葉を聞き、一目散に姿くらましする死喰い人達。マクルトは、ヴォルデモートを見つめる。まだやる気か、そんな視線を送っていた。

 

ヴォルデモートは息絶え絶えになりながらも、舌打ちをして姿くらましした。ヘビを引き連れて。流石にこれだけの力の差を見せつけられて、勝機は全く無いと感じたんだろうね。そして、殺したかった筈のボクはもう2度と死ななくなったのだから尚更だね。

 

あの予言が、不思議と脳内で再生された。『時を同じくして、神をも恐れぬ者と滅びを司る者も動き出す。神をも恐れぬ者は、この世の摂理を冒涜し、滅びを司る者は、圧倒的な力を振るって災いを齎す。気を付けよ、闇の帝王と決して相容れる事はないが、その者達も汝の敵なり。』

 

闇の陣営以上の脅威が動き出したなんて。今はまだ、それを闇の陣営だけに向けている。だけど、いずれは敵対する事になるんだ。そう思うと身の毛がよだつ。

 

闇の陣営が去って残ったのは、殺された死喰い人達の惨殺死体だ。それを、ジュニアがカプセルみたいなもので収納している。

 

「それではエリナ・ポッター。さらばだ。兄に宜しく伝えておけ。」

 

マクルトは、姿くらましをした。どうしてハリーを強く意識しているんだろうか?あのゲブラーって人も、ハリーを後継者と呼んでいたし。

 

「シモンズ様。たった今、死喰い人達の遺体を全て回収しました。」

 

「良い仕事をするわね、ジュニア。私達も行きましょう。グラント。もっと強くなりなさい。私の最高傑作。」

 

シモンズとジュニアも姿くらましをした。それと同時に、ボク達を覆っていたバリアーも解除された。

 

全てが終わった。残っていたのは、ボクとグラント。優勝杯。そして、見るも無残な姿となった墓地と、特大サイズの石鍋だけだった。

 

*

 

俺とロンは、互いに対峙している。

 

「最後までしつこいんだよ。他人の癖に。」ロンが毒を吐いた。

 

「……」

 

「ハーマイオニーにも言ったけど、もう僕に構うなよ。僕の人生だ。僕が決めるんだ。」

 

「……何で、何でそんな風になっちまったんだよ!!」

 

「いつも……いつもいつもいつもいつも!!!君は僕の先を行っている!僕がどんなに努力をしたとしても!!僕の気持ちなんて分かる筈が無いんだ!!僕と違って何でも出来て!!僕と違って天才で!!ロイヤル・レインボー財団の御曹司で!!ポッター家の当主は確定!!将来と全てを約束されている切札様は言う事が違うなぁ!!!」

 

お前までそうなのか。思わず肩が震える。

 

「お前までそんな事を言うのか……」

 

「だったらどうした?本当の事じゃないか。」

 

「俺は……俺は、決してそうじゃなかった。生き残った女の子の兄、実は生き残っていた男の子、グリフィンドールの切札、ここまで培ってきた努力…………そんな物の代わりに、理不尽に父様と母様を殺され、その上エリナと生き別れる事になったんだ!どんなに保護してくれた人達が愛情を注いてくれようが、本当の家族と一緒にいたかった!エリナと暮らしていたかった!父様と母様には生きて欲しかった!!富や名声、力なんてどうでも良かったんだ!俺にとっては!!!お前には分かる筈が無い!孤独と言う痛みとは無縁で!!いつも暖かい愛情を注いでくれる家族が待っているじゃねえかよ!」

 

「あんな奴ら、僕にとっては足枷に過ぎない。ここもね。でも、ありのままの僕を認めてくれて、その上力までくれたPWPEには感謝しかないけどね。」

 

ロンが笑う。それも、狂気と残虐に満ちた笑いを。

 

「皆、命がけでお前を追って来たんだぞ!イドゥンも!!」

 

「おめでたい奴らだね。ご苦労な事だよ。だけど、強力な足止め要員を配置したのにも関わらず、君は来たんだ!いつもそうだ!僕の気持ちなんて分かろうともしないで!僕のやる事なす事全否定してくるッ!1年生の時からそうだ!」

 

俺を指差すロン。俺は、何も言い返せなかった。

 

「だけど……今の僕は今までの僕じゃない!!今こそッ!ハリー!君の五体をズタズタに引き裂いて殺して!!!君の引き立て役で、おまけ扱いで、添え物扱いだった過去に決別をしてやるッ!!!」

 

そう言い終わったと同時に、ロンは両腕を交差させる。ロンの身体が浮いた。一気に腕を広げる。すると、凄まじいエネルギーが放出され、ロンの身体全体を覆った。しばらくそれを見守ると、エネルギーは収束。白を基調とした天使を思わせる強化アーマーらしきものを装着していた。そして、黒と紫の混じった禍々しいオーラを放っている。

 

「今の僕は全知全能の存在。僕の様な、選ばれた人間に相応しいアルテミットアーマーの力と、嫉妬の感情を極限まで高めて手に入れた覚醒した魔法使いの力で君を殺してやる!!!」

 

『何て莫大な魔力だ!これが、覚醒って奴なのか?これじゃ、ゲブラーとかキットと同じじゃないか!!』

 

「あの世で僕に詫び続けろハリーーーーーッ!!!!!」

 

『来る!!ウイルスモードで行かないとヤバい!!』ウイルスモードを発動した。

 

「ノヴァストライク!!」空中体当たりを仕掛けて来た。

 

麻痺せよ(ストゥーピファイ)!!」

 

咄嗟に失神呪文で応戦する。だが、いとも簡単に呪文を破って来た。神秘の光竜(アルカレマ・ルメンリオス)を使うべきか。イヤ、まだそのタイミングじゃないな。他の魔法で、応戦するしかない。

 

「今までの僕じゃないぞ!!!」ロンの攻撃が俺に当たった。

 

「グハッ!」意識が飛びそうになったぞ。本当に……お前は……

 

「…………」

 

ウイルスモードが無かったら、即死だった。口から血が出ている。それでも、立ち上がる俺。その直後に、ロンは俺の胸倉を掴み、持ち上げた。

 

「ウッ……グゥ……アァァッ!!?」

 

「フフフフフ。」ロンが手を離す。

 

「死ね。」

 

俺の腹に拳を振るってきた。吹っ飛ばされた。500メートル先まで。

 

『……殴られた辺りの骨。ヒビが入ってるかも。』

 

腹部を押さえつけながらも、何とか立ち上がる。ウイルスの力による回復能力なら、すぐに直せる。一方のロンは、今の自分の力に対して優越感に入り浸っていた。

 

「凄い……この力。あのハリーを一方的に痛めつける事が出来るなんて。それどころか…………力がどんどん湧いて来る!!」

 

まるで、新しいおもちゃに満足しているガキだな。ミラクルガンナーのチャージを開始する。

 

「素直にあいつらが、お前に力をくれるなんて思ってるのか!?」

 

フルチャージショットを発射した。

 

「うるさい!!」

 

腕の部分を銃砲に変化させるロン。あのアーマーの力なのか?俺のフルチャージショットと同等のバスターを発射した。相殺した。

 

ミラクルガンナーをしまい、凶嵐に持ち変える。ロンに近付き、斬撃を与える。

 

「龍炎刃!」碧炎を纏わせた刀を空中へ切り上げる様にして技を放つ。

 

「クッ!しつこい!」炎は掻き消されているが、初めてダメージを与えられたみたいだな。

 

「全部の骨を砕いてでも……お前を行かせるかよ!目を覚まさせてやる!!」

 

「目なんてもう、とっくに覚ましたさ。」

 

「何だと!?」

 

「この腐り切った魔法界で、いつまでも惨めに生きるという幻想から。それを良しとしてきたバカな僕からね。」

 

この国の魔法界が腐敗してるのは本当だ。だから俺は、卒業したらさっさとオサラバして、日本に移住しようと思ってたんだ。でも、こんな形で見限ろうと思った事は全く無いんだ。

 

「だからこの世界を捨てる。力を手に入れる。何者でもない、僕と言う特別な存在を、刻み込んでやるのさ!」

 

そうだったのか。いつの間にか遠ざかっている。そうだと思ってた。実際は違ったんだ。俺達が、勝手にロンを無視して突き進んでいた。だから今の状況になっている。俺も、今回の事の原因を作ってたのか。これじゃあ、まるで…………

 

「それでも……ハー子と約束したんだ。お前を連れ戻すって……一生のお願いだって。」

 

「下らない。それこそが!繋がりこそが、人を弱くするだけだって。何故分からない!?繋がりを断ち切った僕は、究極の力を手に入れた!!そして君を圧倒している!!ハリー。君は復讐を口にする割に甘過ぎるんだよ!!!」

 

「黙れ……」

 

「そんなんじゃ守りたい者も守れない。勝ちたい者にも勝てずに犬死にさ!!友情とか絆とか繋がりとか、脆くて崩れやすいのは分かり切ってるのに……もう、友情ごっこは終わりさ。」

 

「だったらハー子はどうなんだよ!?俺よりもずっと前にお前の異変を察知して、それでも何とかお前を救おうとしたアイツの思いまで踏みにじる気か!?」

 

ハー子が心配していたんだ。俺以上に。だからこそ、怒鳴る様に問いただした。

 

「言った筈だ。惨めなまま、友と言う枷に縛られて生きていくと言う夢からはとっくに覚めたって。今までのは、全て幻だったのさ。」

 

俺は、思わず愕然した。そんな……。幻だと?偽りだと?やめてくれ……もうたくさんだ……見たくない……聞きたくない……誰か、これは夢だって言ってくれ!!!

 

「11月の最初の日。決闘をしたじゃないか。あの時は邪魔が入ったけど、今度は誰もいない。2人だけ。あの時の続きを……始めようじゃないか!!!重力弾(グラビボム)!」

 

重力を凝縮した紫の球を杖から生成するロン。俺に向ける。

 

天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)!」

 

黄金の雷を発射した。それは、重力弾の大部分を消失させるだけだった。まだ、その力は残っている。

 

「チィッ!」重力弾を避ける。

 

「遅いよ。」後ろにロンがいた。振り向いた時には遅かった。首元を掴まれたのだから。

 

「これで……最後だ。」

 

ロン。お前、本気で俺を殺す気なのか。友達だって思ってたのは、俺だけだったのか。悲しくなってきた。今まで信じていた絆を全否定されて、悲しくなってきたんだ。それは、これから殺されるという絶望よりも強かったんだ。

 

「今更遅いのさ!!ハリー!!」

 

だったら、この俺がダサいだけじゃないか!ロナルド!!でも、しょうがないだろう!お前は俺を妬んでいたけど、俺だって本当はお前が羨ましかったんだ!いつでも兄弟がいて、そのうえ家に帰れば愛情を注いでくれる両親だっている!だから……だから……尚更PWPEに行かせるわけにはいかねえんだよ!家族と無理矢理引き裂かれるこの悲しみを!お前やウィーズリー家の人達にも味合わせたくないから!!!

 

*

 

「気づいた?」

 

俺とそっくりの声がした。もしかして……

 

「ダブル……なのか?」声の主に問いかける。

 

「うん。3年ぶりになるかな?」ダブルは、笑顔を見せている。

 

「俺は、死んだのか?」

 

「挨拶を僕はしたのにさ。いきなり質問かい?まあ、君らしいと言えばそうなる訳だけどね。」

 

ダブルが苦笑している。

 

「まだだ。終わってない。君が物思いに耽っている間に、僕が少しだけ身体を借りたよ。いやあ。あれは君の中にいて、自分の中でも結構なファインプレーだったね。ギリギリ左手で防いだよ。体は思いっ切り貫かれたけど、僕の力でそれについては問題無いさ。安心して。」

 

「……」

 

「それにね。どうやら君の中の『悲しみ』が、その感情が心の中で極限まで高まったみたいだ。」

 

「何が言いたい?」

 

「もしかしたら、君の親友を取り戻すチャンスが増えた。と言えば納得かい?」

 

「悲しみの感情が、ロンを取り戻す事と何の関係がある?」

 

「余り詳しくは無いんだよね。でも、これだけは確実に言える。君は、PWPEに対抗しうる力を身に付けた。連中と同じ土台で戦える。それは本当だよ。」

 

「!?」何を言ってるのか、さっぱりだった。

 

「良いかい?今は何も考えないで。考えるんだったら、今やるべき事を必死にやり抜いたその先でするんだ。成功しようが失敗しようが、足を掻くんだよ。」

 

「分かった。助けられたのは2回目だな。いいや。お前がいなかったら死んでいた場面何て沢山あったんだ。」

 

「気にしないで。さあ、君の親友が待っている!行って来るんだ!ハリー・ポッター!!」

 

*

 

「しぶとかったけど、こうなったハリーは長くないだろうね。」

 

心臓を狙うつもりが、僅かに逸れちゃった。僕の左の拳で、ハリーの胸部を貫いた。でもまあ、流石にこれで生きてはいない。だけど、念には念を押しておこう。とどめを刺してやる。

 

「終わりだ!」右手に杖を持つ。

 

「アバダ…………」

 

死の呪文を詠唱しようとしたその時、僕の両腕が強い力で掴まれてしまった。余りの強さに、激痛が走った。すぐに掴んでいた腕を振り払い、後ろに下がる。

 

「な、何なんだ!ハリーの奴!一体どうなって!?」

 

奇妙な光景だった。僕が貫いた、ハリーの右胸辺りの穴がみるみる塞がっていたのだ。それだけじゃない。今までの傷が嘘の様に無くなっている。バカな!あり得ない!それに、ハリーの様子が今までとはまるっきり違っていた。今のハリーは、白金のオーラを纏っていたのだ。

 

「ロン!俺は言った筈だ!!お前を、連れ戻すって!それに、PWPEにはやらないって!」

 

何と、僕と同じ位の力を解き放っていたのだ。どこまで食らい付くつもりなんだ。僕は、思わず舌打ちしたくなった。

 

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