Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

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第34話 心の支え

もう、ここに用は無い。帰ろう。戻ろう。誰かに、その惨状を知らせないと。

 

「グラント……帰ろうよ。」ボクは、優しく言った。

 

「…………」何も答えないグラント。

 

「皆待ってるよ。ホグワーツに。ね?」

 

「俺は帰れねえ。ここでのたれ死ぬんだ。エリナちゃんだけで帰ってくれ。」

 

「出来ないよ。そんな事。」

 

「俺は化け物なんだぞ!構わないでくれ!」

 

正直、先程の出来事の方が余りにインパクトが強過ぎるんだ。グラントを化け物呼ばわりするつもりも、迫害するつもりは全く無いんだ。だって。だって、これじゃ余りに不憫過ぎるから。

 

グラントだって被害者なんだ。リチャード・シモンズの利己的な理由で勝手に生み出されて、ある日自分は人間じゃないと突き付けられる。とても正気を保てるとは思えないよ。

 

「ボクは……今までずっとグラントを見てきた。ちょっと乱暴な所はあるけど、気の良い人だって感じたんだ。スリザリンにも素晴らしい魔法使いがいるんだって思えたんだ。そう思えたのはね、グラントのお陰なんだよ。」

 

「良いんだ。俺は……生きていく価値なんかない…………」

 

いつもと違って、酷く弱気になるグラント。

 

「でも、ボクはちっとも気にしてない……」

 

「気にしないで帰ってくれ!そういう問題じゃねえんだ!エリナちゃんも、ハリーも、ゼロも、ハーミーちゃんも、ロン。皆はそう言ってくれるかも知れねえ。だけどよぉ……俺はどうしようもねえんだ。俺は生まれついての化け物なんだ!普通の人間じゃない!まともじゃねえんだ!」

 

前にダーズリーが言った言葉を思い出した。まともじゃない。両親も変人だった、と。

 

「まともじゃない……か。それならね。ボクもそう言われた事はあるんだよね。」

 

「え?」

 

「ダーズリーから暴力は振るわれた事は全く無いけれど、言葉の暴力は酷かった。ただ、露骨なのが伯父さんだけで、伯母さんとダドリーは影でフォローしてくれたけど。」

 

「……エリナちゃん?」

 

「グラントの背負う物に比べたら、ボクのそれなんてちっぽけな事かもしれない。無視される時もあったんだ。だから、少しでも自分の目を向けさせる為に色々騒ぎを起こしたんだよ。叱られるのは当たり前だったけど、それで自分の存在を知らせる位ならどうでも良かったんだよ。」

 

「……」

 

「ある時ね。後になって魔女だって分かったんだけど、『ママみたいに綺麗ね。将来が楽しみだわ』って言ってくれたんだ。初めてだった。その言葉にどれだけ救われたか。それから騒ぎを起こすのはやめて、色んな事に打ち込んだ。伯母さんとダドリーは、そこを表だって評価してくれた。伯父さんも口では言わないけど、そこだけは認めてくれた。」

 

今までの事を話す。更に話を続けた。

 

「魔法使いだって知った時は更に嬉しかったし、11歳の誕生日に死んだと思われてたハリーとも再会出来た。欲しかった本当の兄弟がいた。まだ家族が生きてた。それが、ボクの新しい道標にもなったんだよ。いつか一緒に暮らしたいって。」

 

ボクは、話を終えた。グラントは、黙りこくっている。

 

「グラント。あなたは1人じゃない。自分を信じられない、生きる事に絶望しているなら、グラントを信じるボクを信じて。」

 

「エ……エリナちゃん…………」

 

「生きて。そして戦って。こんな…………こんな…………究極の生命体とか、覇王になる為とか……そんな理由じゃないよ。グラント自身の運命と!宿命と!そして何より、グラント自身の幸せを掴み取る為に!ボクは!本当は分かってる!グラントは、本当は生きたいって願ってる事を!」

 

「お、俺は…………」

 

「本当は生きていたいって思うのなら!生きる為に戦って!!自分が本当に何者なのかを知りたかったら!!その答えを探す為に戦って!!1人で無理ならボクも……ボクも一緒に戦うから!!!」

 

声を出していないが、号泣しているグラント。お願い。立ち上がって。いつものあなたに戻って。

 

「あなたは、ボクにとってはかけがえのない友達だよ!化け物だろうと、究極生命体だろうと、ましてや覇王なんて関係ない!ハリーやゼロたちもそう言ってくれるよ!!!さあ!生きたいって言って頂戴!!!」

 

ボクの言いたい事は全部言った。後は、グラントの答えを待つだけ。

 

数分後、グラントが口を開き始めた。

 

「お、俺は……俺は…………生きてえ!生きて帰りたい!戻りたい!ホグワーツに!……スマイルに!!……頼むエリナちゃんよぉ…………一緒にこの……この俺を……連れ帰ってくれ!」

 

グラントの答えが返って来た。ボクはそれを聞いて、ニッコリと笑った。

 

「うん!当たり前だよ!最初からそうするに決まってるじゃん!!帰ろう!ボク達の家に!ホグワーツに!!」

 

「おう!」

 

ボクとグラントは、優勝杯の取っ手を一緒に掴んだ。もう朝日が昇り始めている。掴んだ瞬間、ヘソの裏側がグイッと引っ張られる感じがした。移動キーと化した優勝杯が作動し始めたんだ。風と色の渦の中を、優勝杯はぐんぐんボク達を連れ去った。そうしてボク達2人は、帰っていく。

 

*

 

ダアト、ゲブラー、ティファレトの3人を迎え撃っているのは、ダンブルドア、マクゴナガル、スネイプ、フォルテの4人である。だが、その戦局は前者3人に傾いていた。

 

『あ奴の力、全く分からぬ。』苦渋の表情を見せるダンブルドア。

 

ダアトとダンブルドアの戦い。世界最強の魔法使い、アルバス・ダンブルドアの力を以ってしても、彼のいかなる魔法は全てダアトの前にはすり抜けてしまっているのだ。

 

「ゲブラーと名乗る男の目を直接見るなとフォルテは言いましたが……」

 

「そうですな。ミネルバ。我輩も同意見ですぞ。そんな芸当は、とてもではないが我輩は出来ませんからな。」

 

マクゴナガルとスネイプは、ゲブラーの相手をしていた。教師陣の中でもトップクラスの実力を持つ2人の連携でも、ゲブラーは終始圧倒していたのだ。

 

「フッ。所詮この程度か。ぬるま湯に浸かっていたお前等が、傭兵や暗殺、その他諸々を散々行って来た俺達に太刀打ち出来るとでも?」

 

ティファレトとフォルテの戦い。こちらは、ほぼ互角である。互いに覚醒の力を使っている。

 

「嬉しいですよ。敵対勢力に、あなたの様な我々と同じ境地に達する者がいるなんて。これだから戦いは楽しくて仕方ないんですよ。」

 

「消えろ。」フォルテが杖を振るう。

 

「おっと。いけませんね。遊びが過ぎましたよ。」

 

ティファレトも、杖を振るって応戦する。その時だった。その場にいた7人の動きが止まった。膨大な魔力を突然感知したのだ。

 

「!?」ダンブルドアが何かに気付いた。

 

「何なのだ?これは?」スネイプが狼狽えている。

 

「ポッターとウィーズリーのいる方角になってますよ!」

 

「これって……覚醒か?私と同じ。ロンがその領域に辿り着いているのは、あの3人の証言から確実視しても良い。もう1つの覚醒の魔力。まさか、これは…………ハリーなのか!?彼も、覚醒の領域に……」

 

フォルテは、冷静に状況分析をしている。

 

『ここにいる全員。魔力の感知に優れているわけじゃないのに、この魔力を感じ取ってやがるな。覚醒した魔法使いの魔力を…………フフフ。お前か。本当に飽きさせないな。リーダーがどうして、お前を気にかけて特別視するのかが分かった気がするぜ。なあ、ハリー・ポッターよ。』

 

不敵に笑うゲブラー。それを見た者は、誰もいなかった。

 

*

 

「お前の手足の骨、全部へし折ってでも止めてやる!」

 

ロンを指差して、そう宣言した。これが覚醒って奴なのか。大きな力を手に入れた感覚だ。だけど、チンタラしていられないな。初めてその力を使うからか、結構負担が来るし。

 

「これが……ハリー。君なのか。ようやく僕が一歩リードしたと思ったら、すぐに追いついて来て。どこまで……どこまで僕をコケにすれば気が済むんだよ!!!君は一体何なんだ!!?」

 

ロンの言葉を聞いて、俺は言葉を返す。

 

「友達だ!!だから、行かせない!一線を越えさせてたまるか!武器よ去れ(エクスペリアームス)!!」

 

武装解除呪文を唱える。威力も大きさも早さも、それまでとは何もかもが桁違いだった。

 

「そ、そんな!今までとは別物じゃないか!」

 

ロンはそう言うと、アルテミットアーマーの機動力で俺の呪文を回避した。だが、それは読んでいたんだ。だから、次の攻撃が行える。

 

「ぼ、僕と同じ力……どうやって…………」

 

「考える時間なんてあるのか?」

 

羽織っているマントの奥義、瞬間移動でロンの後ろまで来る俺。

 

「し、しまっ…………」

 

「遅い!」ロンの腹に、キックをお見舞いした。

 

「ガッ!」血を吐き出すロン。

 

「まだまだ!!」

 

右手、左手、右手、左手の順番で腹パンをする。マントを形態変化させての攻撃もした。そして最後に、腹部目掛けて蹴り上げた。ロンは、吹っ飛んだ。俺は、ミラクルガンナーを右手に持つ。

 

「当たれ!」フルチャージショットを放った。

 

「グアァッ!」続け様に攻撃を食らって、這いつくばる様に地面についたロン。

 

「ハァッ!」凶嵐のチャージ攻撃を仕掛ける。後ろに倒れた。

 

俺は、倒れているロンに近付き、胸倉を掴んだ。

 

「目が覚めたかよ?まだ下らねえ事グダグダ言ってると、本当に骨全部へし折ってやるぞ!」

 

強くそう言い放った。もう終わりにしたい。こんな意味のない戦いは……もう……

 

「うるさい。何もかも手に入れている癖に、何も持ってない平凡の、この僕の気持ちが分かってたまるか!!!ファイアーショット!」

 

ロンは、腕を銃砲に変化させて炎を発射した。咄嗟に避けた俺。だけど、その炎は曲線を描く様に進んでいった。

 

「クソが!」紙一重で回避する俺。当たった木が、燃えた。

 

「ウォーターショット!ウィンドショット!ソイルショット!」

 

水鉄砲の弾と、空気の弾、勢いの付いた泥団子を発射するロン。ウイルスモードの眼で、それらを確実に回避する。

 

暖かな光よ、生命を守りたまえ(カリルチェン・ケストディマム)零界の翠氷(アブソリュス・グラキジェイド)!!!」

 

環境適応呪文を唱え、どんな環境でも問題が無い様にする。零界の翠氷を使い、3種類の弾を凍てつかせる。

 

「お返しだ!」

 

それを全て蹴り飛ばした俺。

 

「もう許さない!!!レイジングエクスチャージ!!!」

 

ロンは、光のオーラを上空に放出する。すると、たちまち全身に刻まれた傷を全て癒やしたではないか。ついでに、俺が蹴りで跳ね返した弾も消滅した。

 

神の怒り(デイ・デイーラ)!」

 

回復直後に破壊光線が当たる様にコントロールをした。

 

「カットワンウェイ!」

 

ロンを一文字斬りにした。

 

「Vシャイン!」続けてV字斬りを行う。

 

「ゴハッ!」出血するロン。

 

「ハンマーパワー!!」凶嵐の側面を、ロンに叩き付けた。彼は、思わず跪く。

 

「しつこいな!ハリー!諦めが悪過ぎるんだよ!!!」

 

回復を終えたロンが逃げようとする。だが、僅かにかすってしまった。

 

「ああそうさ。生憎、諦めの悪さは筋金入りでね。天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)!!!」

 

俺は、すかさず言葉を返した。黄金の電撃は、ロンに直撃した。倒れそうになるロン。

 

「何でだよ!?ハリー。何でそこまでして僕に構うんだ!」

 

ロンの張り裂ける様な叫びが響き渡る。

 

「ハア……ハア……俺さ。この国に戻ってから、やっといつでも一緒にいられる繋がりが出来たんだぜ……エリナといられると思ったら、寮は違うし。汽車のコンパートメントで一緒になった奴で、同じ寮になったのはお前だけだからさ……俺と違っていつでも家族に囲まれているお前が羨ましかったから……」

 

「…………」

 

「……だから!もう理不尽な出来事で、俺と同じ様に突然大切な人達と引き離される苦痛を味合わせたくなかったからなんだよ!!!」

 

生きていても、いつも一緒にいられない。そんな歯痒い思いは、俺の大切な人には経験して欲しくないんだ。

 

「お前が抱え込んでいた羨望や嫉妬、それがどれだけ大きいのか。俺には全く分からない。だけどよ!お前が思ってなくても!どれだけ否定しても……俺は……俺は…………お前を友達だって思ってるんだ!!!」

 

涙が出そうな状態で叫ぶ。ふとロンを見る。彼は動けないでいた。そして、少し身を震わせていた。俺は息を飲んだ。あれだけ俺に憎悪の表情を見せていたロンが、穏やかな笑みになっていたのだから。

 

「……もう、遅過ぎさ。少しでも早く、その言葉を聞いていれば思い留まっていられたかも知れない。」

 

少し哀しそうな笑顔でそう言ったロン。だけど、また元の表情に戻った。

 

「でも僕には、僕自身を見てくれる人達が出来た!確かに利用されて捨てられるだけかも知れない!それでも!僕は行く!!」

 

右手の杖から、黒い弾を作り出し始めるロン。それは、徐々に大きくなり、既に11月の決闘時よりもそれは大きくなっていた。

 

「……分かったよ。それがお前の決意でも、俺は何が何でも連れ戻す!その先に行きたいなら…………俺を殺してから進め!!!」

 

天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)では無理だ。アセビの杖で、ここまで温存していた、あの呪文を使おう。

 

『覚醒したばかりだから、負担が重過ぎるな。でも、それはロンも同じ。いや、俺以上に負担が来ているみたいだ。でも……』

 

ロンはフラフラになっている。覚醒したばかりってのもあるけど、あのアーマーも相当な負荷をかける代物みたいだな。

 

覚醒してから思った事がある。神秘の光竜(アルカレマ・ルメンリオス)を使おうとするこの異様な感じ。使わない方が良いと本能が言っている。だけど……どっちにしても、これで最後なんだ。悔いは残さない。この戦いを!俺達の戦いを!今!終わらせるんだ!

 

*

 

「……興が削がれたな。」

 

ゲブラーが、突然戦闘を中断した。ティファレトに、ダアトもだ。

 

「これ以上の戦闘はナンセンス……すか?」

 

「ああ。ダアト。」

 

「わし達が、お主達を逃がすと思うかの?」

 

ダンブルドアが静かに言った。

 

「逃がすじゃなくて、捕まえられないの間違いだろ?それにな。お前達とやり合うのは、まだ早過ぎるのさ。」

 

ゲブラーは静かに言った。まるで、お前等なんて眼中にないと言わんばかりの表情をしている。しばらくして、ダアトの摩訶不思議な力が発動した。ゲブラーにティファレト、ダアトを吸い込む様に消える。

 

「言っておきますが、これ以上のラッキーは続きませんよ。もうそろそろ、校門の前でハリー君とロナルド君の決着がつきそうなんですから。」

 

「何ですって!?」マクゴナガルが驚いた。

 

「早く行ってあげた方が良いぜ。生き恥ばかり晒して来たホグワーツ教員共。じゃあな。闇の陣営とアルカディアを完全に潰したら、思いっ切り相手してやるからよ。」

 

3人は、完全に消えた。

 

「早く行きましょう!」フォルテが3人に言った。

 

「わしは、一旦城に戻るとしよう。エリナ達を迎えなければならんからのお。」

 

そう言ってダンブルドアは、城へ急ぎ足で戻って行った。

 

マクゴナガル、スネイプ、フォルテの3人は、校門の前まで向かう事となった。

 

『2人共、間に合ってください!今行きますから!!』

 

そう心の中で叫んだマクゴナガルであった。

 

*

 

重力弾(グラビボム)!!!」

 

建物を破壊出来るほどの重力を凝縮した巨大な球体が現れた。あの時の決闘よりもデカいな。

 

「俺の全ての魔力を注ぎ込む!だから頼む!出て来てくれ!!……出やがれ俺の最大攻撃呪文!神秘の光竜(アルカレマ・ルメンリオス)!!!!!」

 

光の飛竜は出て来てくれた。覚醒前での使用とは、別次元の力強さを引っ提げて降臨した。元々の赤でも、これまでの修行によって強化された蒼でも無かった。目の色は同じだが、金属質の光沢を放つ白銀の外殻と肉体を持った飛竜だった。明らかに別物だった。

 

「な、何だあの術は!ハリーの奴、まだあんなのを隠し持ってたのか!!」

 

ロンが狼狽えている。

 

【ゴァ゛ガァギャア゛ァオォォーッ!!】

 

光竜が咆哮を上げた。そして、ロンが出した巨大な重力弾を簡単に食らいつくしてしまった。

 

「クッソォ!重力弾(グラビボム)が!!」

 

光竜は、そのままロンに襲い掛かった。勝ったのかな?だが、その後も暴れまわるかのように光竜は動き始めたのだ。

 

「どうしたって言うんだよ?コントロールが出来ねえ……力も抜けてく。」

 

『ダメだ……ここで俺がしっかりしてなきゃ。俺がこの力に呑み込まれたら、誰が止めるんだ!このままじゃ、ホグワーツどころじゃない!英国が滅んじまう!だから……意識を強く持つんだ!無差別破壊を止めるのが精一杯だけど……』

 

神秘の光竜(アルカレマ・ルメンリオス)……イヤ。光竜……ワイバーン。もう良い!破壊しなくて良いんだ!やめてくれ!」

 

俺は、力いっぱいに叫んだ。

 

【グ……オオ……オ?マイ……マ……ス…………ター。ワタシは……】

 

俺の言葉が届いたのか、光竜は大人しくなった。俺と同じ眼は、俺をじっくりと見つめている。しばらくして、消え去った。それと同時に、俺も意識が遠退いた。

 

*

 

11歳ほどのハリーとロンがいた。2人は、偽りの無い笑みで互いを見ている。そして、握手をした。

 

*

 

立っていたのは、ロンだけであった。重傷は負っているが、命に別状は無い。

 

「あれだけの力を発しながら、誰も死んでない。どうして……?」

 

ロンは、何故なのか分からなかった。ふとハリーを見る。彼は眠る様に気を失っていて、倒れている。顔つきは、非常に穏やかだ。それをじっくりと見つめるロン。彼が纏っていたアルテミットアーマーは完全に破壊されて、その残骸が散らばっていたのだ。

 

「……」杖を落としたロン。だけど、全く気にしていない。

 

「ハリー……僕は…………」

 

そう言いかけた瞬間、左胸を押さえつけるロン。跪いてしまう。ハリーと顔の距離が近くなった。

 

「…………」

 

それでも、立ち上がるロン。校門を出た。

 

「良いのか?」

 

ゲブラーが聞いた。呼び寄せ呪文で、アルテミットアーマーの残骸を回収している。

 

「もう、繋がりさえ切れてしまえばこっちのものさ。」そう告げるロン。

 

付き添い姿くらましで、その場を去ってしまった。そこにいるのは、倒れているハリーだけだった。もう、朝日が昇り始めている。

 

*

 

「近いな。」フォルテが言った。

 

「2人はどうなってますか?」マクゴナガルが聞いた。

 

3人が現場に向かって言っている途中、黒い巨大な球体が見えたのだ。マクゴナガルは、即座にロンが術を出した事を見抜いた。

 

だが、それだけでは無かった。少し後に、白銀に光る神々しい飛竜も現れた。黒い球体を簡単に喰らい尽くし、暴れ回った後に急に大人しくなって消え去ったのだ。

 

「まだいますね。」

 

「急ごう。」スネイプが促した。

 

3人は校門の前まで突き進んだ。そして、到着した。

 

「これは!?」スネイプが声を上げた。

 

周りの木々が破壊され尽くされている。その光景は、激しい戦闘を物語っていた。

 

「ハリー!」

 

マクゴナガルが、倒れている愛すべき教え子の元へ駆け寄る。もう教師としてではない。重症で意識の分からない息子、或いは孫を呼び掛けているかの様だった。

 

「遅かったか……!」悔しそうな表情をするフォルテ。

 

『…………』

 

その光景をぼんやりと見るスネイプ。ハリーのみならず、ジェームズと言い、メイナードと言い、何故ポッターの一族は自分の危険を顧みずに、仲間や愛する者の為に見返り無しで行動出来るのか。そう思ったのだ。

 

『それに、あの竜……』

 

その竜の眼は、リリーと同じ眼をしていた。自分が思いを寄せていた彼女と同じ眼を。力強くはあるが、神々しい。そして、暖かい。また会ってみたい。スネイプは、心の中でそう願ったのだった。

 

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