Harry Potter Ultimatemode 救済と復活の章   作:純白の翼

64 / 65
第35話 果たせなかった約束

次の日の朝日が昇っている。だが、この場にいた者達の心を癒す事など出来なかったのだ。

 

「ハリー。申し訳ありません。あなた方の寮監でありながら、この事態を止められず、挙句に引き裂いてしまった私の責任です。」

 

マクゴナガルは、意識を失っているハリーに謝罪した。

 

「ミネルバ。あなただけの責任ではありませんよ。目の前だけの状況に注目していたあまりに、別の危機を直前まで察知出来なかった。それによって、結果的に生徒に押し付ける事となった我々教師の不甲斐無さが原因です。」

 

フォルテが、すかさずフォローに回った。

 

「皮肉なものだ。こんな所でポッターとウィーズリーが戦うとは。まるでこれは、ゴドリック・グリフィンドールとサラザール・スリザリンの決闘そのものだ。」

 

「そうですね。セブルス。この場所を訪れると、後世に伝えられている決闘が永遠に続いている様な感じになります。」

 

スネイプが呟いた言葉に、マクゴナガルが返した。

 

「ロンの杖か。」

 

フォルテは、ロンの杖を拾った。それは、自分が持つことにした。その後、ハリーの持つ杖を、彼のローブの裏にしまい込んでやった。

 

「間に合わなくて、ゴメンね。ハリー。何て詫びたら良いか…………君の事だ。必死だったんだろ?」

 

フォルテは、ハリーをおぶった。すぐにスネイプとマクゴナガルに目を合わせ、この場を立ち去った。その2人も、戦いの舞台を最後に見て立ち去った。

 

*

 

エリナ視点

ボク達は、地面に叩き付けられた。グラントも。目を開いた。帰って来たんだ、ホグワーツに。試験会場の、迷路の入り口。皆、ようやく帰って来たと言わんばかりの歓声を上げた。今はそれどころじゃないんだよ。

 

真っ先にダンブルドアが駆け寄って来た。ボクは、藁にも縋る思いでしがみ付いた。

 

「あいつが……あいつが……ヴォルデモートが帰って来たんです!!」

 

「分かっておる。そして、それだけではない筈じゃ。」

 

「アルカディアと、終わりを生み出す者も動き始めたんです!ヴォルデモートの一味の殆どを皆殺しにしました!!!」

 

「やあやあエリナ。それに、リドル君。同時優勝おめで……ヒィッ!滅多な名前を出さないでくれ!もうあの人は死んでるからね。」

 

ファッジ大臣が後から来た。ヴォルデモートの復活を認めなかった。ハリーから保身に走る性格だと聞かされたけど、ここまで酷いなんて。

 

「取り敢えず、この子達を医務室へ連れていかねばならん。授賞式は中止じゃ。エリナ、グラント。歩けるかね?」

 

医務室へ行く事になった。と、その前に校長室へ。

 

「な、何だろうな?エリナちゃん。」

 

「多分、迷路の事について聞かれると思うよ。」

 

ダンブルドアが、後ろから付いて来たボク達に対してこう言った。

 

「部屋に着いてから、何があったか話してくれないかね?シリウスもおる。」

 

校長室に入るや否や、シリウスがボクにハグして来た。

 

「エリナ!!!」

 

「シリウ……キャア!心配なのは分かるけど、苦しいよぉ……」

 

「良かった!無事で良かった!本当に!ハリーが重傷を負って、君にまで何かあったら、俺はジェームズとリリーに顔向けが出来ない!」

 

「う、うん。分かったから……平気だから……」

 

「エリナちゃんって、本当にシリウスさんが好きなんだな。」

 

「感動の再会の釘を刺すようで悪いのじゃが、エリナ。グラント。時間が無いのじゃ。何があったかを、わしは知らねばならん。」

 

「失礼ですがダンブルドア。」シリウスが、ダンブルドアを睨み付けた。

 

「この2人は、夜に辛い目に遭ったばかりなんですよ!どうしてあなたは、エリナを苦しめる事ばかりしかしないんですか!14年前の事、忘れたとは言わせませんよ!あの時私は反対した!ダーズリーの所に連れていく事を!その結果、ハリーは10年間行方不明になったんだ!ロイヤル・レインボー財団が拾わなかったら、あの子は死んでいただろう!!」

 

「別に苦しめる為に言ったわけではないのじゃ。じゃが、後になってもっと酷い事になるじゃよ。だからこそじゃ。エリナとグラントには夜に示した勇気をもう1度わしに示してほしいのじゃよ。」

 

「エリナちゃん。言おうぜ。俺達2人なら大丈夫だ。怖くねえ。」

 

「うん。そうだね、グラント。ハリーをすぐにでも探さなかった事については怒りたいけど、今は言おうよ。」

 

「エリナ。」

 

「大丈夫だよシリウス。ボクは、1人じゃない。ここには、シリウスもグラントもいる。怖くなんて無いよ。」

 

「そうか。強いな、君は。それならば、俺は何もいう事は無いさ。」

 

ボクとグラントを安心させる様な顔を向けるシリウス。それでも、ダンブルドアを睨み付けていた。

 

ボク達は話す。優勝杯に触った瞬間、リトル・ハングルトンに飛ばされた事。そこで、ヴォルデモートの復活の儀式を目の当たりにした事を。

 

「復活の儀式……のお。」

 

「あの厨二野郎。エリナになんて事を……だが、妙だな。ピーターの奴、どうしてエリナを必要最低限にしか傷つけなかったんだ?今更になって罪悪感が生まれたのか?」

 

「分からない。それでも、ボクの血を入れたんだ。」

 

「俺が代わろうと思ってたのによぉ。あのネズミ野郎。今度出会ったら、タダじゃおかねえ。ボコボコにぶっ潰してやる!!!」

 

腕をポキポキ鳴らすグラント。

 

「君の血を……確かに入れたのじゃな?」

 

「あれ?校長先生って、認知症なのか?エリナちゃん、散々言ってるぜ。」

 

「わしはまだ113歳じゃ。」

 

「十分歳がいってるぜ。」グラントがボソッと言った。

 

「……はい。それが、あいつを強くするって自分で言ってた。実際、そうだった。あいつがボクに触れられもしなかったもの。正確にはクィレル先生だけど。ヴォルデモートは平気な顔で、ボクの額を触って来たんです。」

 

「…………」

 

何か、ダンブルドアは勝利確定して勝ち誇ったような表情をした気がする。という事は、あの話は本当って事なのかなぁ。もう2度と、ボクを殺せないって話は。

 

「エリナ。続けてくれんかの?」

 

また話をした。100人くらい集まった死喰い人に対して演説を行った事。

 

「ひゃ、100人だと!?」シリウスが驚いた。

 

「後で説明するけど、殆ど見掛け倒しだったよ。シリウス。」

 

「カルカロフはおったのかな?」

 

「あの人ならいなかったぜ。お辞儀ハゲはそれについて、殺してやるって言ってたよ。そうだよな、エリナちゃん。」

 

「うん。」

 

「そうじゃろうな。彼は消えてしもうた。」ダンブルドアが言った。

 

「え?消えたって?」ボクが思わず聞いた。

 

「逃亡したんだよ。闇の印の焼けつく様な痛みを感じてすぐに。1年逃げ切れば大したものだろうな。」

 

すぐ、くたばるさという表情をするシリウス。

 

「それで、その続きを話しておくれ。」

 

グラントと協力して、出来る限り思い出して話して聞かせた。次に、決闘の話に移った。杖に起こった現象を話した。

 

「杖がつながった?どうして?」シリウスは分からないという顔をしている。

 

「直前呪文、じゃろうな。」ダンブルドアが呟いた。

 

「呪文巻き戻し効果が?死の呪文を使う相手にどうやって?」

 

シリウスが鋭い声でそう言った。

 

「エリナとヴォルデモートの杖の芯はの。フォークスの尾羽根が使われておる。兄弟杖と呼ばれるのじゃよ。」

 

フォークスを指差しながら、ダンブルドアが言った。

 

「つまり……兄弟杖に出会ったとすると、自分の片割れに、それまで使った呪文を吐き出させる。それが出来ると?」

 

「そうじゃ。シリウス。ギャリックから聞いた話じゃがのお。兄弟杖とは本来、対決した場合はお互いに正常に作動しないのじゃ。一説によれば、一方がもう一方にとっての天敵にもなる場合もある様じゃ。おお、話が逸れたの。それでも無理に戦わせると、非常に稀な現象が起こる。」

 

「校長先生。」グラントが話に参加して来た。

 

「どうしたのかね?グラント。」

 

「もし、その兄弟杖が共闘したらどうなるんだよぉ?」

 

「ううむ。断言は出来んが、単体で使うよりも何倍もの力を発揮する……すまん。そこまでは考えがつかんのじゃよ。」

 

「そっかぁ。」

 

「あの光。そういう事だったんだね。マグルのお爺さんにバーサ・ジョーキンズ、それにパパとママが……」

 

「ジェームズにリリー?一体どういう事なんだい?エリナ。」

 

「木霊。若しくは、あ奴が殺めた魂の霞。それが、ヴォルデモートの恐れる形となって現れたのじゃろう。エリナ、少しご両親と話せたかな?」

 

「はい。ハリーやシリウス、リーマス、メリンダさんに宜しく言ってくれって言ってました。」

 

「そうか。あの2人。そんな事を。」感傷に浸るシリウス。

 

「もっと長く繋がりを保っておったら、さらに多くの者が現れたじゃろう。さて、話は終わって……」

 

「待って下さい!!そのまま帰って終わりじゃないんです!!」

 

「そ、そうなんだ!どんでん返しの展開が待ってたんぜ!先生!」

 

帰ろうとした時に、無数の隕石が闇の陣営を襲った事を話し始めた。アルカディアと終わりを生み出す者が現れた事、計画の乗っ取り、グラントの正体、ナルシッサ・マルフォイが確保された事、その強さを以って100人はいた死喰い人を30人にまで減らし、その内10人はアルカディアに確保され、ヴォルデモートも重傷を負わされた事を話した。

 

シリウスは、流石に青ざめてしまった。そうだよね、そんな敵に出会いならも誰1人死んでいないこの状況が奇跡だよ。

 

「なんて奴らだ。死の呪文を受けて、また立ち上がってくるとは。終わりを生み出す者にアルカディア。そいつらの方が化け物染みているぞ。それに、マルフォイ家がこうも呆気なく家庭崩壊してたとは。」

 

複雑そうな表情をするシリウス。どんなに嫌っていても、従姉の家族がそんな状態になったら言葉を失うもの。

 

「何て事じゃ。リチャード・シモンズ。人道的に許されない魔法を使うとは。あ奴、堕ちたな。じゃが、不幸中の幸いなのは、互いが互いを敵対しあっている事かの。それに、エリナの前でヴォルデモート陣営の敗北が確定した事を本人の前で話すとはの。」

 

「やっぱり本当なんですか!?ボクの血を入れた事で、あいつの存在がボクをこの世に繋ぎ止めるって話は!」

 

「全てが確信に満ちているわけではないのじゃ。さっき、ガッツポーズをしたくなる程には、勝利決定来たと思ったのじゃよ。依然、状況は厳しいが。」

 

「…………終わりを生み出す者を名乗る人。銀色の髪で虹色の目。ハリーをオートバイから突き落とした張本人は、どういうわけか闇の陣営に深い憎しみを持っていたんだ。」

 

何で突き落とそうとしたのか分からないや。聞くどころの状況じゃなかったし。でも、終わりを生み出す者ってハリーを強く意識する様な振る舞いをしていた。ひょっとして、ハリーを引き抜きたいのかなぁ。

 

「片や無限復活して来る天虹眼の能力者、片や死んだ者すら蘇らせて好きに操れる神をも恐れぬ男。ヴォルデモート率いる闇の陣営だけでも手一杯なのに――何たる事じゃ。」

 

ダンブルドアは、今にも倒れそうになっている。

 

「それだけじゃない。アルカディアは新旧を問わない改造人間とあの世から呼ばれた不死身のゾンビ軍団がいる。そしてTWPF。主要メンバーは、全員が覚醒の領域に達した魔法使いであるうえに、超古代のオーバーテクノロジーを復活させて作り出されたレプリロイドの軍団もいる。」

 

シリウスが静かに呟いた。それを聞いて、正義と呼ばれる勢力は、果てしなく無力である事を突き付けられたような感じがした。覚悟はしていたけど……

 

勝つ方法なんてあるのだろうか。そうボクは思った。全てを乗り越えないと、英国魔法界は暗黒を通り越して滅亡や虚無だけの未来になるのは間違いない。それどころか、世界の全てが滅ぼされるかも知れない。

 

「それでも、ヴォルデモートについては問題無いのか。不死鳥の騎士団以外にも、敵対組織がいるからな。」

 

「唯一の救いは、その3つの組織が協力しているのではなく敵対し合っている事だよね。」

 

「それよりもだ。俺は、グラントの正体に驚いたよ。」

 

シリウスが、グラントを見ながら言った。

 

「俺は、生まれついての悪魔だ。人間ですらねえ。その内の1人、父親はあのクズ野郎だ。ヴォルデモートがな。そいつも、吸血鬼もな。誰の血も願い下げだ。」

 

自分を卑下するグラント。それをボクは、じっくりと聞いていた。シリウスも、ダンブルドアも。でも、絶望の余り死のうとしないだけまだマシだった。

 

「グラント。」

 

「……極悪人の血を引いて生まれて来た君の心情、完全に分かるわけじゃないさ。俺もさ、若い時はブラック家なんてクソ食らえと思ってた。両親の血なんて願い下げだと思ってた。でもレギュラスの真実を知って、もっとちゃんとした目線で話し合っていればと思うと……これはな、グラント。最終的に君自身で答えを出すべきだ。勿論、助言は惜しまないさ。」

 

シリウスは、グラントの肩にポンと手を置いた。少し、落ち着いた様だ。

 

「ヴォルデモートと何かしらの関係があるとは思っておったが、まさか。予想の斜め上を行く真実が潜んでいたとは。わしでも予想がつかんかった。」

 

「エリナちゃんがいなけりゃよぉ、俺は正気を失ったままだったぜ。エリナちゃんが励ましてくれなかったら、俺はずっと化け物のままだったんだ。」

 

「そうかのお。ヴォルデモートとは違い、君には励ましてくれる仲間に恵まれて幸せ者だと、わしは思っておる。」

 

「そうだよ。ハリーも、ゼロも拒絶はしないよ。あの2人、ある意味グラントと似た者同士だから、ね?」

 

「お、おう。」

 

「わしとしては、グラント。君にはこのまま学校生活を続けて貰いたいと思っておる。どうかね?」

 

「い、良いのか?先生よぉ。」

 

「学ぶ意思のある者は、誰でも平等に受け入れるつもりじゃ。」

 

「良かったね、グラント。」

 

「エリナ。そしてグラント。昨晩、君達はわしの予想をはるかに上回る勇気を示してくれた。闇の時代に生きた魔法使いにも劣らぬ勇気でヴォルデモートと真正面から向かい合った。君らは今夜起こった我々が知るべき事を全て話してくれたのじゃ――さて、今度こそ医務室へ行こう。シリウス、付き添いをお願いしても良いかの?」

 

「初めからそのつもりですよ。」

 

こうして、医務室まで行く事になった。

 

*

 

俺は、目が覚めた。ここは、どこなんだろうか?誰かが俺を背負ってるのか?

 

「ウゥッ!」小さな唸り声をあげた。

 

「気づいたか。ハリー。」フィールド先生だ。

 

「ロンは?」まさかとは思うが聞いてみる。フィールド先生は、静かに首を横に振った。

 

「おーい!」声がした。

 

振り向いてみると、リーマスにキット、アドレー義兄さんが合流して来た。

 

「ミネルバ。ハリーの様子はどうなんですか?」リーマスが言った。

 

「大丈夫です。問題ありませんよ、リーマス。」

 

「重傷を負っているが、命に別状はありません。」

 

フィールド先生も言った。合流してきた3人は、一先ず安心する。

 

「ルーピン。ブラック姉弟にディゴリー、テイラー、ゼロ・フィールドはどうなったのか、簡潔にまとめて言うのだ。」

 

「君は相変わらずだね。セブルス。」

 

「早くしろ。」スネイプがイラつく様に言った。

 

「イドゥンは軽傷、マリアは右腕を負傷、ゼロは顔以外の全身に火傷を負ってるけど命に別状は無いよ。」

 

「但し、エックスとセドリックは意識不明です。スネイプ教授。」

 

アドレー義兄さんが続けて言った。

 

「あいつら、今回は命懸けだって承知の上で戦ったんだ。ハリーを責めるのはお門違いだぜ。スネイプさんよ。」

 

キットが言った。

 

「分かっている。今回の一件で最も肉体的、精神的共に深い傷を負っているのはポッター自身だという事もな。」

 

『皆…………』俺は、また目を閉じた。

 

*

 

「ハリー以外、全員脱落ってわけか。」

 

「そうですわね。後は、彼がウィーズリーを連れ戻してくれる事を願うばかりです。」

 

ゼロ、イドゥンはベッドに横たわりながら会話していた。マリアは、熟睡している。ゼロに至っては、顔以外ミイラ男となっていた。

 

「シリウスとフリットウィック教授が来なかったら、俺達今頃あの世にいただろうな。」

 

「ええ。ですが、今回の出来事はかなり良い経験になりました。今の強さでは敵わない敵がいる事、身を以って知りましたからね。」

 

「ああ。俺も、本格的に兄さんから修業の付き添いをしてくれって頼み込むつもりだ。」

 

「エックス。セドリック。どうか……どうか。」イドゥンは祈った。

 

しばらくしていると、マダム・ポンフリーが入って来た。ゼロとイドゥンに飲み薬を持ってきたのだ。

 

「さあさ。2人共。薬を飲む時間ですよ。」

 

素直に指示に従う2人。余りの苦さに、思わず吐き出しそうになってしまった。

 

「良い知らせと悪い知らせがありますよ。どちらから聞きたいですか?」

 

マダムが、2人にそう言った。

 

「どうせ落ち込むのは確実だから、良い話からお願いします。」

 

「分かりました。エックス・ブラックとセドリック・ディゴリーの2名が意識を取り戻しました。安静にしていれば、完全に動けるようになるでしょう。」

 

ゼロとイドゥンは、顔を合わせた。そして喜んだ。イドゥンはその後に泣き崩れた。

 

「次に悪い知らせです。」喜ぶのをやめた2人。

 

「ハリー・ポッターだけが帰還します。医務室に収容されますよ。」

 

「ま、まさか……」ゼロは、当たるなという思いを心の中でした。

 

「フィールド。あなたの言いたい事は分かります。帰還して来たのは、ポッターだけ。ウィーズリーは、いなかったそうです。彼の家族には、程無く報告されるでしょう。」

 

つまり、自分達の目的は失敗した。ゼロは、項垂れてしまった。

 

「確かに、何かをする時は犠牲やリスクは付いて回る。そんな事は分かっている……だけど……」

 

ゼロは顔を伏せる。だが、その場にいたイドゥンとマダム・ポンフリーには、今のゼロの心情が不思議と分かったのだ。

 

「俺はあいつらに、ハリーとハーマイオニーになんて声を掛けたら良いのか分からねえよ…………!」

 

医務室に、ゼロの悲痛な叫びが響き渡る。その直後、静かに医務室のドアが開いた。

 

「……それでも――皆生きているんだ。それが何よりだよ、ゼロ。あの状況で、誰も死人が出なかった。今は、それで良いじゃないか。」

 

ゼロが振り向く。ハリーを背負っている自らの兄、フォルテが穏やかな表情でそう告げた。その後ろには、スネイプ、マクゴナガル、リーマス、アドレー、キットがいた。

 

「本当に、無事で良かったよ。ゼロ。」

 

「兄さん!」

 

「今は休むんだ。ゼロも、イドゥンも、マイアも、エックスも、セドリックも、ハリーも、皆無理をし続けてたんだ。」

 

その言葉に従い、またゼロとイドゥンは眠る事にした。

 

*

 

目が覚めた。ここ、医務室なのか。

 

『そうか……俺。失敗したんだったよな。』

 

ウイルスモードの酷使、覚醒した力の初使用、そして光竜。そう簡単に動けないだろう。数日は。

 

「あ、ハリー。起きたんだ。」

 

反対側のベッドから声がした。エリナだ。

 

「エリナ……俺、お前に言いたい事があるんだ。ジュニアの計画を知りながら、敢えてそれを無視した。お前を悲惨な目に遭わせてしまった。今更、謝って許して貰おうなんて思ってない。永遠に許さなくて良い。だから…………」

 

「良いの。気にしないで。これで、ヴォルデモートの負けは決まったって分かったから。怪我の功名だよ。」

 

申し訳無いが、ちょっと心の中を覗いた。本当に気にしてもいないし、腹も括っている様だ。それに、今置かれた俺の状況に心を痛めている。いっその事、突き放してくれた方がどれだけ楽か。

 

!?え?どういう事だ?開心術で心の中を覗いた事は多くある。だけど、こんなのは見た事が無い。エリナ。お前、まさか…………そうか。そういう事だったのか。

 

「それよりも、ハリーも災難だったね。ロンがいなくなるなんて。」

 

意識を現実世界に戻した。

 

「何があったのか、話そうと思う。」

 

「ボクも。」

 

情報共有し合った。帰ろうとした時に乱入のやり取りには驚いた。

 

「そうだったのか。これで、あいつの動物変化能力と若い頃のヴォルデモートに瓜二つだった謎が解けたわけか。」

 

ダンブルドアのジジイは、ただ単にグラントに救いの手を差し伸べるわけがない。こう思ったんだろうさ。目には目を。ヴォルデモートには、同じヴォルデモートの力と。それに、エリナを守らせる為に駒にしたかったんだろう。そんな危険な力は、相手に渡すよりかは自分が持っていた方が良いと。俺を従わせようとして、挙句ロイヤル・レインボー財団を手中に収めようとした時と言い、とことん食えないクソジジイだって思ったよ。

 

納得したな。という事は、蘇りの石を持つのに相応しいのは、俺ではなくグラントという事になる。あいつの誕生日は4月16日。成人したら渡そうか。

 

それにマクルトか。神を自称していたようだが、どうやらその表現に嘘や偽りは無いみたいだな。

 

「ねえ。ハリーはそれを聞いても、グラントを拒絶する?」

 

俺は首を横に振った。

 

「それを言っちゃえば、俺の身体だって普通の人間とは根本的に違うんだぜ。寧ろ、シモンズならやりかねないなという納得の感情しか来ないよ。」

 

「そう言えば、シモンズで思い出した。マリアちゃんがあの人の所で改造人間にされてたって聞いたんだ。」

 

「うん?ああ……その事か。」

 

「え?知ってたの?」

 

「あいつを拾った時に、俺は全ての事情を知ってたよ。黙ってたのは、聞いた内容が凄惨過ぎた事と、本人から言わない限りは心の中に閉まっておくと決めてたからだよ。」

 

「……確かに、マリアちゃんの事を考えると誰にも言いたくない筈だよ。」

 

「俺としては、もっと人に関わっていって欲しいと思ってるんだ。他の人間は、シモンズみたいな悪い人間ばかりとも限らないんだよって意味でね。でも、こればっかりはどうしようもない。スピカだけだからな。ここに来て出来た親友って。それにしても、スピカとコーヴァスも災難だよな。たった一夜で、家庭崩壊するなんて。」

 

アルカディアへ諜報活動を行っているドラコに代わり、俺があの2人を守らなきゃ。ルシウス・マルフォイの失敗の落とし前は、あの2人がさせられるだろう。そうなる前に、先手を打たないと。

 

「どう慰めれば良いのか分からないよ。ボクも。」

 

「ロイヤル・レインボー財団と話をしていたよ。今後についてね。」

 

*

 

どこかの空き教室。アドレー・ローガーとキットは、スピカとコーヴァスを呼び出していた。

 

「「失礼します。」」2人が入って来た。

 

「悪いね。2人共。いきなり呼び出してしまって。」アドレーが言った。

 

「あのう。その、話って何ですか?」スピカが聞いた。生気が消えかけている感じだ。

 

「スピカ。そして、コーヴァス。今、君達の家の状況がどうなっているかは分かってるかな?」

 

アドレーが問いかけた。

 

「お兄様は痣を付けた張本人の所に行って、お母様は2年前のクリスマスパーティーに襲い掛かって来た人達に連れ攫われて。それにお父様は、例のあの人の配下で……もう、何が何だか…………」

 

「どうしてこうなったのか、僕にも見当が付きません。父のやって来た事へのツケなんでしょうか?」

 

「いきなりの事で心の整理がつかないのは良く分かる。だけど、あまり時間は残されていない。だから、君達の選択肢を話し合おうと思って、この空き教室の呼んだんだ。」

 

「言っておくぜ。このまま家に戻っても、ヴォルデモートに散々利用されて、それに加えてTWPFの力にも怯えて生きていくだけだ。だが、お前達2人ならまだ間に合う。」

 

「僕達だけって……」

 

「ロイヤル・レインボー財団に助けを求めるかのどっちかだ。親は兎も角、お前ら2人と兄貴だけはまだ何とかなるかも知れねえからな。」

 

キットが、アドレーに続いて言った。

 

「え?どうして?」スピカが泣きそうになりながら言った。コーヴァスは堪えている。

 

「早かれ遅かれ、お前らの父親はヴォルデモートの怒りを買う事になるだろう。2年前、お前らの父親はご主人様からの大切な預かり物を私的な目的で使い、挙句破壊する事態を引き起こしたんだ。」

 

「……お父様が?」嫌な予感しかしないと察するスピカ。

 

「……分霊箱をですね?」

 

「そうだよ。懲罰として、家族が苦しむところを見せつけてやろうと何でもする。ヴォルデモートはそう言う奴だ。そうなる前に、君達を保護しよう。そして、お母上の姉一家の所に行ける様に何とか手配しよう。君達の従姉とは、僕は同期で定期的に連絡を取り合っているから。」

 

スピカとコーヴァスは、もう何も言えないようだ。家にはもう、彼ら2人の居場所なんて無いのだ。

 

「ハリーがね、君達のお兄さんから『自分に何かあったら、妹と弟をよろしく頼む。自分の家よりも安全な場所に保護してくれ』って言われたんだ。」

 

アドレーが、穏やかな笑みでスピカとコーヴァスにそう言った。

 

「お兄様は、ポッターさんにそう言ったの?」

 

「兄さん。どうして……」

 

「証拠なら見せるよ。その時のやり取りをね。」アドレーが言った。

 

記録の水晶玉で、そのやり取りを見せる。確かにドラコの言葉だ。嘘や偽りなどではない。ちゃんとハリーにそう告げている。

 

「今なら、まだ間に合う。ロイヤル・レインボー財団は、闇の陣営に負ける事はまずない。それは、ダンブルドア以外でヴォルデモートが敵わない数少ない魔法使いである私のお祖父様がトップをやっているからね。そして、不死鳥の騎士団と違ってTWPFやアルカディアに対抗出来る。前に、主要幹部を何人か仕留めた事もある。」

 

「…………」アドレーの言葉をしっかりと聞いているコーヴァス。スピカもだ。

 

「我々は、君を確実に助け、安全を確保する事が出来る。後はどう選択するのか、それは君の意思次第だよ。スピカ。コーヴァス。」

 

アドレーが優しく2人にそう言った。その言葉を聞いて、スピカは号泣しながら、コーヴァスが何とか泣くのを堪えながら無言で頷いたのだった。

 

*

 

「つーわけで、スピカとコーヴァスの保護は出来たぜ。」

 

「ドラコからの依頼、第一段階はクリアだな。」

 

キットからの報告を聞いて、思わず安堵の表情を浮かべる俺。ちなみにエリナは寝ている。

 

「そういやハリー。お前の戦いの記憶を見せて貰ったぜ。ロナルド・ウィーズリーとの戦いで覚醒の境地に達したんだっけな。」

 

「あんま嬉しくないけどね。」気怠そうに返した。

 

「少なくとも、TWPFに多少なりとも抵抗出来る様になったわけだな。」

 

「そんな力よりも…………あいつに戻って来てほしかったよ。」

 

「だよなぁ。普通は。だけどよ。ハリー。そう言うわけにもいかねんだ。お前はこれから、ヴォルデモートよりも厄介な奴らを相手にしなきゃいけないんだからな。」

 

「分かっているさ。腹は括っている。」

 

「逆に言えば、あいつらを追えば自然とお前の友達にも辿り着けるし、囚われの身になっているスピカの母親も救い出せるチャンスはある筈だ。」

 

「……ハー子、ネビル、フレッドにジョージ、それにジニー。いるの分かってるんだ。出て来てくれ。」

 

俺が静かに言った。すると、その通りに5人が俺とキットの前に現れた。

 

「俺、皆には顔向け出来ないや。」

 

自嘲気味に言った。5人共、俺の言葉を無言で聞いている。

 

「ハー子。ごめん。約束したのに、守れなかった。」

 

「……」

 

「フレッド、ジョージ、ジニー。申し訳無い。俺、3人には何て言ったら良いのか……」

 

「バカ言うな。」フレッドが言った。

 

「俺達は少しも気付けなかったんだ。でもハリー、君は気づいた上で止めようとしてくれた。実の家族なのに、ロンの変化を見抜けなかった。俺達の方が悪いんだ。」

 

「そうよ!あまり自分を責めないで!」ジョージもジニーも言った。

 

「ハリー。あなたが謝る事なんて何1つ無いわよ。謝るのは私の方。どうしようもない時には、いつもあなたに物事を押し付けちゃって。賢者の石の戦い時から変わろうと思ったのに、何1つ変われていない。だから今度は、私も一緒にロンを連れ戻すわ。」

 

ハー子は、次は自分もやるからという決意を露わにした。本来何の関係も無い筈のネビルも然りだ。

 

「分かった。で、ウィーズリーおばさんはどうなったんだ?あの人の事だ。正気ではいられないだろう?」

 

「大当たりだよ。ロンの事を聞いて、お袋は泣き崩れちまった。」

 

「とても聞けるような状態じゃなくなったから、続きはビルが聞いてるぜ。マクゴナガルからな。」

 

フレッド、ジョージの順番で俺にそう教えてくれた。何て声を掛けたら良いのか分からなかった。でも、今は完治する事を優先して寝る事にしようと心に決めた俺であった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。