ツイッターでどなたかが呟いていた病弱な叢雲をネタとして拾って書きました。
今回はとにかく早く仕上げることに力を入れた為、推敲もかさ増しもしてません。

※Pixivに同時掲載。

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先のある生活は

「アンタが新米の司令官ね。私は叢雲。ま、これからよろしく頼むわよ」

「ああ、よろしく頼む」

 

──今思えば、初めて会った頃から、兆候はあったのかもしれない。

 

「ちょっと、何をしているの?」

「いや、ちょっとな……アッハッハ」

「その後ろ手に隠してるのは何よ」

「これはー……そのー……」

「見せなさい!」

「あーっ! 赤城が資材保管庫に走ってった!!」

「なんですって!? ……って、うちに赤城さんはいないでしょ!!」

 

──普段はその強気な性格で内面を見せることはなかったが、彼女は確実に──。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……何よ。私を笑いに来たの?」

「違うさ。今日は大事な用事があって来たんだ」

 

鎮守府に隣接されている、艦娘寮のとある一室。

俺はその部屋のベッドへ横たわる彼女を見ると、その傍の椅子へ腰を下ろした。

 

「いつも疑問に思うんだが、長い髪の人って、寝る時髪まとめたりしないのか?」

「そんなの、私に聞かれても困るわ……」

 

彼女──駆逐艦叢雲──は銀の長い髪が印象的で、前髪をぱっつんと切り揃えている。

普段なら顎ほどの長さのもみあげを赤い糸で括っているが、今日は括らずに放置されていた。

 

「それにしても……さらに細くなった?」

「……そうね。内臓からの収入がないから、栄養価は大赤字よ」

「ハッハッハ、まだまだ大丈夫そうだな」

「人の気持ちも知らずによく言えるわ、全く……」

 

そんな彼女の四肢は青白く──足先のみ青く──やせ細っており、お世辞にも健康体と言えるものではなかった。

 

「……それで?大事な用事って何よ」

「ああ……」

 

彼女は力が上手く入らないであろう体を、こちらへ振り向くためにフル稼働させる。

俺はポケットから四角く折りたたまれたハンカチを取り出す。取り出したハンカチを掌の上で広げる。

 

「叢雲」

「なっ……何よ」

「俺は、またお前と歩みたい。だから、落ち着いて聞いてくれ」

「……分かったわ」

 

広げたハンカチを叢雲の前へ差し出しながら、俺はこう言った。

 

「……足を、切り落としてくれ」

「……………………」

 

──お互い、これ以上の言葉が出なかった。

俺の広げたハンカチの上には、透明な液体の封入されている一つの注射器があった。

 

 

 

◇◆   ◆◇

 

 

 

「叢雲!? 大丈夫か!? 叢雲!!」

「叢雲ちゃん!? 大丈夫!?」

 

ある日、叢雲が鎮守府内で突拍子もなく倒れるという出来事があった。

それは昼休憩を取るために、食堂へと移動している最中の事だった。この時、作戦完了の報告をするために来ていた吹雪も共に居た。

初めのうちは作戦のことなどを話し合っていたが、途中で吹雪と話し合っている時は、後ろを無言でついてきていた。その話の途中で、彼女の倒れる音を聞いた。

彼女は倒れたということを自覚しておらず、ベッドの上で目を覚ましたことに疑問を抱いている様子だったが。

俺と、その場に居合わせた一人の艦娘だけは覚えている。

 

「先は……長くナイ……カナ」

「叢雲……?」

「叢雲ちゃん……?」

 

 

 

◇◆   ◆◇

 

 

 

注射器を叢雲の手へと渡し、ハンカチをポケットへと戻した。

 

「……叢雲。ホントは分かってるんだろ?」

「何をよ」

「自分の身に何が起きてるのか」

「…………」

 

叢雲はバツが悪そうに目線を逸らし、俺の背後にあるドアの方を向く。

注射器の筒を握りこむと、叢雲は再び視線を戻した。

 

「逆に聞くけど、司令官は知っているのかしら?」

「……ああ。どういう状態だけは、明石に聞いた」

 

結論を言えば、深海化。それも進行の遅いもの。

明石の検診によると、建造された段階で艤装に不純物が混入していたらしく、艤装リンク時にごく微量の異物が流れ込むようになっていたらしい。

つまり、出撃するたびに深海化が進行していた、というのが今回の概要となる。

 

「……そう」

「なんで……なんで、早く言ってくれなかったんだ!?」

「…………」

「もっと早く言ってくれれば、対処方法だって……!」

「対処方法なんて、存在しないわ」

「な……!?」

 

叢雲は、俺の意見を真っ向から否定した。

 

「司令官、アンタ、何を勘違いしてるかわからないけど、一つだけ言わせてもらうわ」

「……なんだよ」

「私は、艦娘よ?」

 

叢雲は、しっかりとした意識をもって、俺の目をのぞき込んでいた。

その目はいつも通り琥珀色に透き通っており、まっすぐに俺を映していた。

 

「……ごめん」

「いいえ。司令官は昔からそうだもの。もう慣れてるわ」

「それで、叢雲はどうするんだ……?」

「そうねぇ…………」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「よう、元気か、叢雲」

「……何よ。私を笑いに来たの?」

「んなわけあるか」

 

鎮守府に隣接されている、艦娘寮のとある一室。

俺はその部屋のベッドへ横たわる彼女を見ると、その傍の椅子へ腰を下ろした。

 

「じゃあ何しに来たのよ」

「大事な大事な秘書艦様に大事なご報告をする必要があってね」

 

彼女──駆逐艦叢雲──は銀の長い髪が印象的で、前髪をぱっつんと切り揃えている。

顎ほどの長さのもみあげは、赤い糸で括っている。

 

「秘書艦様って……今はローテーションで秘書艦が変わってるじゃないの。今日の私は秘書艦じゃないわ」

「いやいや、秘書艦様だぞ」

 

そんな彼女の四肢は砂丘のような肌色だが、足先は存在しないので、お世辞にも五体満足と言えるものではなかった。

そんな彼女に、ドアの方を向くように指を差す。

 

「ほら、今日から秘書艦様復帰だ」

「叢雲ちゃん! 車椅子、持ってきたよ!」

 

そのドアの先には、無人の車椅子を押す、吹雪の姿があった。

 

「いやー、中々申請が通らなくてさー。大変だったよ」

「……全く、アンタって人は」

 

車椅子を見た叢雲の表情を伺う。

──そこにあったのは、どこか呆れている、足のない銀髪少女の笑顔だった。




書き始めから書き終わるまでにかかった作業時間:165分(2時間45分)

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