今回は記憶消去系の転生者です
「俺はディミトリエ・ヴァトラー、通称『霧雨』のヴァトラーだ」
無人島ルスカイナの森の中、そこに二人の男がいた。一人はモンキー・D・ルフィ、『麦わら』のルフィとも言われる麦わら海賊団の船長だが、現在は修行中である。そしてもう一人はディミトリエ・D・ヴァトラー、『冥王』シルバーズ・レイリーの一番弟子であり、ルフィの兄弟子でもある。
「だぁー!」
「はぁ、もう音をあげるのか。まあいい、飯にするか」
「ホントか!?」
「お前が負けたんだから、二人分用意しろよ?」
「ちぇ~」
現在二人は実践訓練ということで、食事と睡眠以外のほとんどの時間を模擬戦をして過ごしている。だが、ルフィは本格的に模擬戦をし始めて半年近く経った今でも、ヴァトラーを追い詰める事は出来ても勝つことが出来ない。そのせいで、若干だが食事を用意する時の手際がよくなった。
「全然勝てねぇな……」
「当たり前だろ。俺は幼い頃から師匠と一緒にいて、常に力の使い方を学んでいたんだ。(というかそうしなきゃ死んでただろうしな)」
ヴァトラーは当時の事を思い出して身震いした。いくら親代わりでも、レイリーがヴァトラーに優しかった事など片手の指で足りるほどだけしかない。強くなければ、この大海賊時代は生き残れない。それを考えると、あの辛い日々もレイリーなりの優しさだと思える。……死んだ方がましだと思った回数は数え切れないが。
「刀使わせないように出来てんのに何で勝てねんだ?」
「ルフィ、俺は素手の方が強いぞ?」
「マジでー!?」
「マジだ、刀を手に入れたのは七年前位だからな」
現在ヴァトラーは27歳、二十年近くは素手だけで生き延びて来たのだ。とは言っても、悪魔の実を手に入れた10歳からは楽になったと思う。……その分修行は辛くなったが。
「しかしルフィ、もうすぐ二年だろう? 大丈夫なのか?」
「おう、ヴァトラーも仲間になってくれるからな」
にしし、と笑うルフィに肩を竦めるヴァトラー。このやりとりはこの二年で一体何度目だろうか。
「何度も言うが、俺は師匠に呼び出されてこの二年付き合っただけだぞ。それに俺にも目標がある」
「そういえば、ヴァトラーの目標って聞いたことないよな」
人の話を全く聞かないルフィ。最初こそ度々青筋を浮かべていたヴァトラーだが、今では肩を竦める程度になっている。慣れとは恐ろしいものだ。
「そうだったか?」
「ああ。ちなみにオレは海賊王になることだ」
「それは何度も聞いたよ」
『海賊王』になる、思ってはいても誰も口に出して宣言はしない。それもそうだろう、この大海賊時代に『海賊王』を目指さない奴の方が珍しい。しかし、誰もがどこか諦め気味の中で、ルフィは本気で目指している。というより、そうなれない事なんて想像もしていないのだろう。
「(師匠が認め、海賊王を本気で目指しているルフィなら……)」
「どうした?」
いつもおちゃらけているというか、真面目に見えないルフィだが、ヴァトラーが真剣なのを見て雰囲気が変わる。
「ルフィ、俺の目標っていうのはな、師匠みたいになることだ」
「?」
「分かりやすく言えば、海賊王の右腕になる、つまり海賊王になる奴の船の副船長になる。いや、俺がそいつを海賊王にするってことだ」
「なら丁度いいじゃねぇか、オレの仲間になれ!」
ルフィの言葉にヴァトラーは思わず苦笑した。
「そうだな、それがいいかもしれない」
「ホントか!?」
「ああ……。しかし分からんもんだな、二年前なら絶対こんなこと思わなかったのにな」
二年前、その頃のヴァトラーはレイリーの元を離れて、修行の旅をしていた。そんな中レイリーに呼び出されたのだ。……アラバスタに着いたときに丁度呼び戻すための手紙が来たときは恐怖したが。
「ヴァトラーが仲間になるのは頼もしいな!」
「しかしいいのか? 俺は副船長になるために、お前の仲間に認められる程度の事はするつもりではあるが……。船長とはいえ勝手に仲間を増やしたら、船員から何か言われるんじゃないか?」
「大丈夫だ!」
ヴァトラーは何となく文句なんて言われない、ではなく文句なんて言わせない、という意味だと理解して苦笑した。
これが、後の海賊王となる『麦わら』のルフィ率いる麦わら海賊団の副船長、『霧雨』のヴァトラーの始まりの物語である。
名前:ディミトリエ・D・ヴァトラー
容姿:平和島静雄
誕生日:12月31日(年齢25→27)
身長:189㎝
能力①:キリキリの実(霧人間)
自然系悪魔の実。レイリーをして、最強の悪魔の実と言わせる程の力を持つ。
自身の霧化は勿論だが、周囲のものも人・物の区別なく霧化させられる。
だが最大の特徴は海楼石以外のどんな能力(覇気、ヤミヤミの実等)をもってしても攻撃する事が出来ない特殊性である。
加えて、霧化させた自分以外のものは、ヴァトラー本人に海楼石を使っても、ヴァトラーの意志でなければ解除出来ない。
霧化して空中を漂えば海でも関係ないため、ヴァトラーは乗り物を利用することは滅多にない。
能力②:加速
母親の家に伝わる不思議な力。
自身の時間を100倍速~100万倍速までの間で加速させることが出来る。
能力③:戦闘能力強化
肉体(が産まれてから5歳の間に成長し)ベース
、つまり初期値が(原作の)平和島静雄。見た目は不審がられないように通常。
そのほか身体能力、動体視力、反射・反応速度、知能もだいぶ上がっている。
覇気、六式、念能力を一流レベルで扱う才能ももっている。
武器:妖刀・霧雨
ヴァトラーが20歳の時に武器屋で見つけたもの。刀身も柄も鍔も白い。刀の銘はヴァトラーがつけた(元々無銘だったため)。
不思議な力を感じて手に取ったその刀を気に入って買った。(値段は驚きの500ベリー)
この刀は覇気を纏わせなければ本来の力を発揮出来ない。
覇気を使える、刀に主として認められる、この二つを満たした者だけが、最上大業物であり『鷹の目』のミホークの持つ長刀・夜に匹敵するレベルで使える。
真の力を発揮した『霧雨』は空間ごと切断するという規格外なことができる。ヴァトラーが編み出した「秘技・絶刀空閃」の全力は最大距離が100kmを超えたため、レイリーに制限された。
実はゴール・D・ロジャーの息子であり、エースの腹違いの兄。元は航海の途中に立ち寄った島で、医者だったヴァトラーの母がロジャーに一目惚れをし、島民の反対を押し切り船医として船に乗った。ロジャーも押しに押されて断りきれなかった模様(レイリー談)。
ロジャー海賊団の解散直前にヴァトラーが産まれるが、難産だったため母親は亡くなってしまった。ロジャーは産まれたばかりのヴァトラーをレイリーに預け、海賊団を解散した。レイリーも当初は断ったが、ロジャーに『最後の頼み』と言われて断りきれなかった。恐らくこの時には既に自首を考えていたとレイリーは推測している。
なので本来ゴール・D・ヴァトラーなのだが、レイリーにロジャーの息子である事は隠せと言われ、母方のディミトリエと名乗っている(知っているのはロジャー海賊団の船員のみ。バギーは何故か知らない)。
ヴァトラーは転生者だが、記憶が無いため転生者であるということは知らない。ちなみに、彼が決めたのは平和島静雄の肉体だけなので、他の能力は神のせい。