救いのカタチ   作:神話好き

5 / 12
七月

顔が隠れるように深く帽子をかぶり、体格がばれないように大きめな黒い外套に身を包む。七月に入り一週間が経ったが、未だに久慈川りせが救出された様子はない。それはまずい、非常にまずい。至極、利己的な理由になってしまうが、ここで彼らが倒れてしまうと、僕の約束を果たすことが出来なくなってしまう。

「それだけは認められない」

救いたい、と言う欲以外を持たない僕は、言い換えるならば欲のそのものだ。他へと向かう部分が全て一つに集中しているに過ぎない。自らでさえ制御が難しいモンスターだ。

「こっちのことがばれるのは極力避けたいんだが、こうなってしまってはそうも言ってられない。直接的な援護、最悪の場合は僕が片を付けよう」

愛用の槍を携えてテレビの前に立つ。

「必ず救おう」

その一言は、僕の体に深く浸み込む。目を深く閉じ、再び開けた時、僕は三年前の僕へと戻っていた。

「隠すのは大変なのに戻るのは一瞬とはね」

自嘲するように笑うとテレビの中へと入っていく。落下するような感覚が終わると、いつも通りに塔の頂上にいた。もう一度自分の格好を入念にチェックし、りせのいるダンジョンへと向かって移動する。最上階の手前をマーキングしてあるため、移動は一瞬だ。

「願わくば、着いた瞬間に遭遇しないことだな」

瞬きする間に目的の場所へと到達し、あたりを見渡すと、ピンク色の怪しい雰囲気の扉は開かれている。

「これは、接触しないのは無理だな」

こっそり中をのぞいてみると、すでに進化したりせのシャドウと、それに翻弄される鳴神達がいた。なるほど、りせのシャドウの力はアナライズらしい。弱点も動きも見事に読まれている。あれでは苦戦するのも当然だろう。ならば弱点がなければいい。

「ダイコウフショウ」

以前にも使ったことのあるこのペルソナ。十種類の現世での利益と四種類の来世での果報をもたらすとされる観音だ。僕が持つペルソナの中でも、最も防御に秀でている。

「さあ、行こうか」

低く身をかがめ、スタートする。攻撃を何とか凌いでいる鳴神君たちの間をすり抜けると、誰もが反応する間もなくりせのシャドウに一撃を入れる。

「きゃああぁぁぁぁー!」

予想外の一撃にりせのシャドウは怯み、攻撃の手が止まる。その隙を逃さずに槍をもう一閃し離脱する。

「誰クマ―!?」

案の定、鳴上君たちは突然現れた僕を見て混乱しているようだ。まあ、あからさまに怪しい恰好で来た僕も僕なんだけど。とりあえずカラフルなぬいぐるみの問いに首を横に振って答え、シャドウへと向き直る。

「ステージの上に手ェだすなんて、なんてことしてるか分かってるの……?」

黙ったまま槍を器用にくるっと回し、あいてに突き付け、宣戦布告をする。

「いい加減にしなさいよね……マハアナライズ!」

目の前でパラボラアンテナの顔をしたカラフルな巨人が、ポールダンスを始める。高度なアナライズが僕を襲う。しかし、すでに手は打ってある。

「嘘っ、あなた弱点がないの!?」

驚愕の声をあげるシャドウ。

「ダイコウフショウ!」

僕の声とともに十一の顔を持つ観音像が現れる。こいつを打ち崩されたら僕もお手上げなところだった。

「いいわ!だったら、フルパワーで吹き飛ばしてあげる!食らいなさい!」

カラフルな肢体が発光する。弱点に関係なく吹き飛ばそうという意図が丸わかりの攻撃だ。力の桁が跳ね上がっていく。

「あれは!?」

「俺たちがやられた奴だ!おい、そこのアンタ!急いで逃げろ!」

今、僕が逃げたら自分たちが危ないだろうに。本気で僕の身を案じてくれているようだ。

「大丈夫だよ」

安心させるために一言だけ告げると光が僕を覆った。

「ああっ!?」

息をのむ鳴上君たち。

「きゃはは!ざんねーん!おさわりしたお客さんには、きつーい罰を受けてもらいましたー!」

「テメェ!よくもやりやがったなッ!」

「嘘でしょ……こんな」

完二が激高し、雪子は嫌だと首を横に振る。

「タケミカズチ!」

怒りを原動力に完二が跳びかかるも、やはりすぐに撃墜されてしまう。

「次はあなたたちの番ね―――っ!?」

「フドウミョウオウ―――火生三昧!」

僕が死んだと思って完全に油断した所に、今こちらが持てる最大火力を打ち込む。火生三昧、欲望や煩悩すらも焼き尽くす炎の世界。フドウミョウオウが持つ莫大な威力の炎魔法スキルだ。轟々と燃え盛る炎の中でシャドウの断末魔だ響き渡る。

「終わったか」

未だに辺りの温度が下がらないあたり、やはり相当な威力だな。

「君の影だ、行ってくるといい」

先ほどまでの力を失い、爆心地に倒れこむりせのシャドウを指さして言う。

僕の言葉に頷いて返すと、鳴神たちに支えられながら移動する。

「起きて……」

その言葉を受けてりせのシャドウが立ち上がる。もう大丈夫だろう。僕は少し離れた所の壁に移動し、もたれかかりながら様子を窺う。少し考えるべきことがあったからだ。まあ、この後どうするかって事なんだけども。

「このまま逃げたりしたら余計に話がこじれそうだしなぁ……どうしようか」

向こうのやりとりを遠目に見ながら観察していると、ぬいぐるみ君の様子がおかしい。

「本当の自分なんて…いない…?」

いけない、この声は。

「お、おいクマ…」

「ダメ、下がって!あの子の中から、何か…!」

自分と向き合い取得したペルソナ能力の関係か、りせにはぬいぐるみ君の状態が分かっているようだ。

「本当?自分?ククク…実に愚かだ…」

禍々しい影がぬいぐるみ君の背後の現れる。

「何だよあいつ!?」

「ま、まさかもう一人のクマくん?クマくんの内面ってこと!?」

「多分、そう…でも何かの強い干渉を…」

十中八九、出雲の干渉だ。これは、いわゆる一つの試験なのだろう。

「な、何がどーしたクマ!?」

会話が続いているうちに戦闘の準備を整える。シャドウが出ている以上、まず間違いなく戦いになるだろう。りせが先ほど獲得したペルソナを召喚し、戦いが始まろうとする直前に僕も戦列に加わる。人間を試す試験ならば、僕にも受ける権利があるはずだ。

「手伝おう……」

言葉少なにそう言うと、僅かながらに警戒心が薄れていく。

「誰だか知らないけど、助かる」

鳴上君が言うと同時にシャドウが巨大化する。下半身は地に埋まり、いたるところがボロボロになっている。

さて、本日第二戦目だ。

「我は影…真なる我…、お前たちの好きな真実を与えよう…。ここで死ぬという、逃れ得ぬ定めをな!」

「こんな不気味なのが…あのトボけたクマくんの中に?」

「クマのやつ…見かけよりずっと悩んでたみたいだな…。俺たちで救ってやろうぜ!」

花村君の言った言葉が僕を打ち抜く。落ち着け、今、暴走するわけにはいかないのだ。

「プラジューニ」

カードを握りつぶすと、三眼にして六臂の菩薩が現れた。それぞれの腕は異なる印を結んでいる。

「流石に力を使いすぎた。申し訳ないが、サポートに回らせてもらう」

「サポートまでできるのか」

鳴上君は感心したようにこちらを見ている。

「あまり得意とはいけないけど、力を合わせればどうにかなるだろう」

僕はりせちゃんを見て言葉を続ける。

「彼女も大分弱っている。出来るなら早めに決めてくれると助かる」

「ああ、任せろ!」

意志の強い言葉と同時に、巨大なシャドウへと向かって駆け出した。

「やっぱりいい人だな、鳴神君は。こんなに怪しい人、普通信用できないだろうに」

一人で苦笑していると、りせちゃんが話しかけてきた。

「あの、私、まだよく分からないですけど、助けてくれてありがとうございました」

「気にしなくていい。好きでやったことだ」

「……その話し方、なんかおかしくないですか?」

不意を突かれてギョッとする。

「やっぱり。なかなかうまい演技でしたけど、私、これでもアイドルやってたんですから」

しまった、と思ったがもはや後の祭りだ。

「黙っててくれると助かるよ。僕にも目的があるからね」

「目的?」

「その時が来れば話すさ。きっと話さざるおえなくなると思う」

出雲を救おうとする僕と、真実を求める鳴上君はきっと衝突することになる。いや、必ずそうなると僕は確信している。あらゆる困難をはねのけて、やがて僕の前に立ちはだかる最大の壁になるだろう。

「今は戦いに集中しよう」

不満げな顔をするりせを尻目に、僕は目の前の戦いに全神経を集中させた。

 

・・・

巨大化したクマのシャドウが雄たけびをあげて倒れる。ペラペラになって倒れているクマにみんな一斉に駆け寄る。

「あれは、クマさんの一面なの…?」

「けど、まさかクマくんにも、抑え込んでた心があったなんてね」

クマが振り返るとそこには自身のシャドウが、力なく立っていた。

「クマ…クマは、自分が何者か分からないクマ…。ひょっとしたら、答えないのかも…なんて、確かに時々、そんな気もしたクマ…」

クマのシャドウは無言のままクマの言葉を聞いている。

「だけどクマは、今ここにいるクマよ…。クマは、ここで生きてるクマよ…」

「クマは一人じゃない」

泣き出しそうな声をあげるクマに鳴上が声を掛ける。

「それじゃあクマはもう…一人で悩まなくても、いいクマか…?」

「しゃーねーな、一緒に探してやるよ」

「この世界のことを探っていくうちに、クマさんの事も、きっと何か分かると思う」

雪子の言った言葉に全員が頷く。

「み、みんな!クマは…クマは果報者クマ!およよよ…」

うれし泣きをするクマの後ろでシャドウが輝きを放つ。

「これって…」

「ペルソナ…?」

振り返り近くまで近づくと、シャドウがミサイルを持って青いマントを付けたペルソナへと変化した。

「これ、クマの…ペルソナ?」

「それ…すごい力、感じるよ…よかったね、クマ…」

最期の力を振り絞っての言葉だったようで、言い終わると同時にりせが崩れ落ちる。

「わ、大丈夫!?そうだよ、いきなりだもん!ゴメン、無理させて…すんごい疲れてたのに…」

「大丈夫…あの人が手伝ってくれたから…」

「ん?そういや、あの怪しさビンビンの助っ人は?」

「あれ?さっきまでそこにいたんスけど……」

「逃げたのか?」

「逃げたわね」

数秒の沈黙が流れる。

「と、とにかく早く外に出よう!」

花村の一言で、とりあえず外に出ることになった。

「悪い人ではなさそうだったな……」

鳴神のの呟きは霧の中へと消えていった。

 

・・・

それからしばらくの間、特に大きな悩みもなく平和な日常を過ごした。一番大きな悩みが、この前使った変装道具を処分するか否か、な辺り平和さがにじみ出ていると思う。なんてことがある訳もなく。

「諸岡先生、か……」

無事にりせちゃんを救いだしたすぐ後、三人目の被害者が出た。諸岡先生だ。生徒からは嫌われていたが、個人的には嫌いではなかった。まあ、僕に嫌いな人間なんか存在しない訳だけど。そして今、僕の目の前ではマヨナカテレビが流れている。ゲームに出てくるような雪子の時とは少し違う城をバックに、ホクロが特徴的な色白の少年が映っている。

「それなら捕まえてごらんよ」

はっきりとそう言う。これで合点がいった。諸岡先生の死は不自然だったからだ。

「最も霧が濃くなったあの日。僕は限界ぎりぎりまでテレビの中にいたけど、誰も入ってきていない。諸岡先生はテレビに入れられてない」

すでに光を失ったテレビを前に、顎に手を当て、ぶつぶつ言いながら一人で推理を展開する。

「足立さん、鳴神君、そしてもう一人は運送業者の誰か。あの少年はどう見ても未成年だ。出雲に選ばれた三人の一人には、有り得ない。あの少年が諸岡先生を殺し、鳴神君以外のどちらかが、彼をテレビに放り込んだ。うん、これが一番しっくりくるかな。それにしても―――」

窓を開け空を見上げると、ぱらぱらと降る雨が顔に落ちる。

「都合のいい真実か……どうやらここが、一つのターニングポイントみたいだ」

それからしばらく、弥勒は雨を浴びながら未来に思いを馳せた。

 

・・・

翌日、ようやく夏休みが始まり夏季限定のバイトが入ったので暇が出来た。商店街の本屋に向かった後、ついでにジュネスのフードコートで昼食を取ることにした。

「あ、畦倉先輩。こんちわッス!」

振り返るとそこには、完二が、と言うか鳴上君たちがいた。りせちゃんの姿は無い。あっちの世界でいろいろ探っているのかもしてない。りせちゃんには、見破られかねないので、僕は内心ほっとする。

「やあ、久しぶりだね。調子はどうだい?」

差し障りのない挨拶をする。里中さんの反応が少し暗い気がする。

「里中さん、どうかしたのかな?」

「いえ、その…」

「ああ、なるほど。完二君から聞いたのかな?」

うっ、と声を漏らし後ろに反る。ものすごく分かりやすい。隠し事とか絶対にできないタイプだ。

「無理もないよ。あの時のことは、僕から見ても普通じゃないからね」

あはは、と宥めるように言うと。

「そんなことないです!」

っと、むきになったように大声を張り上げた。

「あの、うまく言えませんけど、その…人の為に頑張れるのは良いことだと思います!でも、あたし、そこまで出来るかなって考えたら……」

「それでいいんだよ、里中さん。自分の出来る範囲で出来ることをやればいいんだ。僕はそれが他人より少しばかり広いだけの話さ」

本当は広いなんて話じゃないんだが、嘘も方便である。にっこりと笑いかけると、ようやくいつもの里中さんに戻ったようだ。

「畦倉先輩やっぱすげーわ。俺があんなセリフ言ったら蹴り飛ばされるって、絶対」

「その光景がはっきりと浮かぶようになった自分が嫌ッスね……」

花村君と完二君が二人そろって項垂れている。

「せっかく会ったんだし、ここは僕がもつよ。バイト代、使い道無くて腐らせてとこなんだ」

「いいんですか?」

「遠慮なんかいらないよ。本当にお金余ってるんだ。いくらでも頼んじゃってよ」

バイト代以外にも、シャドウが死ぬほど落としていくし。

「じゃあ、私。りせちゃん呼んでくるね」

「あ、あたしも行くー」

雪子ちゃんと里中さんがそう言い残し、フードコートから出て行った。少し早まったかもしれない。

「いくらでも……ホントにいいんスか?」

そう言えば完二君、大食いだったっけ。ちょいちょい、と手招きをしてこっそり財布の中をみせてあげる。

「うおっ!?マジっすかこれ!?花村先輩何人分だ?」

「ちょっと待て!なんでお前が俺の懐事情を知ってんだよ!」

「細かいことはいいじゃないッスか。そんなんだからモテないんスよ」

「ぐっ!地味に痛いとこ突くのやめろよな、お前…」

「それよりも早く食い物頼みに行きません?」

わいわいと騒ぎながら、花村と完二君もテーブルを離れて行った。

「鳴上君も何か頼んで来たらどうだい?」

「俺は、皆が帰ってきてから行くことにしますよ」

「……もしかして気を使わせちゃった?」

「そんなことないですよ。ただ、じっくり話してみたいと思ったんで」

なるほど、そりゃ確かにいい機会だ。

「どんな話をしようか。僕としてはそっちから話題を振ってくれると助かるよ」

「三年前のこと、伯父さんに聞きました。完二たちが知らないその後のことも」

その後のこと、堂島さんとの取り調べの時のことで間違いないだろう。僕の普通と、世間一般の普通の摺合せを手伝ってもらったのだ。よく投げ出さないでいてくれたと思う。

「あの時以来、堂島さんには頭が上がらないよ」

「俺も、いつも世話してもらってばかりなんで気持ちはよく分かります」

「面倒見がすごくいいんだよね、あの人」

「ええ。それに意外とおっちょこちょいなところもあったりなんかして」

「それすごく分かるよ。僕と初めて会った時なんてね―――」

二人で笑いあいながら堂島さんトークに花を咲かせた。

「そうだ、みんなが帰ってくる前にこれだけは言っておかなきゃいけません」

「なんだい?」

急に鳴上君が改まった顔をした。

「完二を助けてくれてありがとうございました」

予想外の一言に度肝を抜かれてしまう。

「堂島さんから話を聞いたんだろう……?」

「それでも、完二を助けてくれたことに変わりはありませんから」

「……君にはかなわないな。人たらしって言われないかい?」

そんなことないですよ、と言って笑う鳴上君だが、目が泳いでいる。

「せんぱーい!食べ放題ってほんとですかー!?」

「りせちゃんってば意外とゲンキン?」

りせちゃん達が帰って来たようだ。

「お疲れ様」

「このくらいなんでもないですよ~ってアレ、こちらの方は?………!?」

「久しぶりだね、りせちゃん」

「あれ、知り合い?」

「ここに住んでた人で知り合いじゃない方が珍しいと思うけど……」

「えっ?私高校に上がるまで知らなかったよ」

「それは千枝が特殊なだけだよ」

この集団は会話が弾むとすぐにコントみたいになるな。ボケ比率が多いのだろう。花村君がいないと延々と続きそうだ。

「み、みみ、弥勒さんどうしてこんなところに?」

「たまたま会ってね。まさか、りせちゃんとも知り合いだとは思わなかったけど」

大嘘である。

「へーそうなんだーへー知らなかったなー私飲み物取ってきまーす」

顔色を青くしてこの場から離脱しようとするが、

「お、みんないるっスね。飲み物取ってきましたよ」

「気を利かせて全員分取ってきたぜ」

何とも間が悪い。

「ははーん」

里中さんが物凄く悪い顔をしている。

「雪子、りせちゃん確保!」

「分かった」

阿吽の呼吸で両脇からりせちゃんを捕まえた。暫く抵抗していたが、やがて観念したようだ。

「畦倉先輩って、りせちゃんと知り合いなんですよね?」

みんなが興味津々で耳を傾ける中、りせちゃんは、女の子にあるまじき量の冷や汗をかいている。

「そうだね。とっても完二君や雪子ちゃんと同じように、小さいころ遊び相手になってたってだけだよ」

「りせちーの子供の頃か…どんなだったんすか?」

地雷原をぐいぐいと突き進んでくる花村君。隣では里中さんが元気に親指を立てている。

「家ではとても真面目な子だったね。その反動で外では少しばかり暴走気味だったけど。まあ、本人が知られたくないみたいだから、言わないでおくよ。その代わり、りせちゃんが迷惑かけたら僕のところに来るといい。いくつか面白い話をしてあげるよ」

女王様ごっことか、その他もろもろの黒歴史がある。

「うぅ~。忘れてください~」

「りせちゃんにもそういう時期あったんだ。なんか意外」

「笑ってるとこ悪いけど、雪子ちゃんと完二君のもあるよ」

ピシリ、と空気が凍った。僕は出来るだけ清々しい笑みを浮かべる。この人に逆らうのはやめよう。特別捜査本部全員の思いが一致した瞬間であった。

 

・・・

弥勒が帰った後、特別捜査本部では謎のペルソナ使いについて話し合っていた。

「俺たちのこと、助けてくれたみてーだし。犯人ってわけじゃなさそうだけど、と言うか犯人今テレビの中にいるし、一体何者なんだ?」

「すごく強かったよね。りせちゃんのシャドウ、簡単に倒しちゃったし」

「そうそう。ペルソナも鳴上君みたいにたくさん持ってるみたいだったし、仲間になってくれれば戦力大幅アップ間違い無しなのになー」

頬杖を突きながら千枝が言う。

「でも、難しいんじゃないッスか?俺たちの味方なら、別に姿を隠す必要とかない訳だし……」

「あの人、目的があるって言ってた。それさえ聞き出せれば、協力し合えるかも」

「違ってた場合は敵対することになる。それはできれば避けたい」

なかなか意見がまとまらない。

「確かに、あんな攻撃されたらひとたまりもないぜ……」

辺り一面がじゅうじゅうと焼け爛れる光景を思い出して、花村が顔を顰める。

「でも、話した限りだと良い人っぽかったけどな」

「俺もそう思う。なんとなく、悪人ではない気がしたよ」

「あ、やっぱり。先輩もそう思いました~?」

「お前、真面目な空気ぶち壊すなよな…」

「空気読む不良……ぷぷっ」

本当にシリアスな空気が長続きしないメンバーだ。

「とにかく、次会ったらとりあえずお礼を言おう。助けてくれてありがとうございますって」

さんせーい!と全員の声が重なる。件のペルソナ使いと再会するのは、この十日後の事である。




プラジューニ(般若菩薩)  物 火 氷 雷 風 光 闇
              弱 ― ― ― ― 無 ―
サポート専用ペルソナ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。