救いのカタチ   作:神話好き

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十一月

誰だか確認できないほどノイズが混じったマヨナカテレビに、幼い少女が映っている。見覚えがある気がするが…ダメだ、分からない。もやもやしたままに、テレビが暗転する。

「終わったか…」

暗転したテレビから目を切り、今日はもう眠ろうとする。すると、再びテレビが発光し始めた。

「なに…?」

不思議に思いながらもテレビに目を戻す。こんなことは初めてだ。そして、そこに映った人物に驚愕する。よく知っている人物だ、見間違えるはずもない。そこには、毎朝、鏡に映る姿。つまりは、

「僕も、次のターゲットか……」

犯人の動機は分からないが、ターゲットは事前にマヨナカテレビに映る。いや、映った人物をターゲットにする、と言い換えるべきか。

「丁度いい。僕はこの機会に、僕を完全に受け入れ、前に進もう。命の答えにたどり着くために」

弥勒にしては珍しく、自然と笑みがこぼれていた。出雲から授かったこの力。真に意味で自分と向き合い手に入れた力ではない僕は、未だ自らの全てを受け入れられてない可能性がある。ならば、それを経て、僕は命の答えへとたどり着こう。

「僕の約束を果たすために…」

筋道はできた。後は自分次第だ。ぱらぱらと降る雨を見ながら、僕は決意を新たにした。

「待っててくれ、出雲。もうすぐだ。きっと君を救って見せる」

僕の言葉は雨音にかき消られ、霧のように消えた。

 

・・・

マヨナカテレビを見た翌日。特別捜査本部のメンバーは、ジュネスのフードコートに集合していた。次こそは犯行を未然に防ぐ、その決意がひしひしと感じられる。

「マヨナカテレビ…皆さんに言われて、僕も見ました。探偵業の僕が、まさかこんな迷信に目を凝らす日が来るとは…驚きです。人影…確かに映りましたね。それも二人」

「二人っていうのは初めてのことだけどもよ。あれ、誰だか分かったって人、いる?」

一同、首を横に振る。あの映像では、よほどの特徴がなければ分からないだろう。本人であるならば、話は別かもしれないが。

「流石に無理っしょ、画面あんなザラザラじゃ」

「誰か、最近テレビに出て地元で有名になった人は?」

「すぐには思い当たりませんね…。最近では、政治家が一人、霧から来る風説を鎮めるために街へ来たと報じられましたが…。以前も同じ小学校に来たことがあるようですが、それでも可能性は低いでしょう。第一、すぐに中央へ帰りましたし」

「むむむ…」

ぬいぐるみのまま唸りだすクマに視線が集まる。

「ん?どうした?そういやお前、昨日は売り場のベットで爆睡した罪で、深夜棚卸しの刑だったっけか。テレビ、売り場のでいいからチェックしろって言ったけど、ちゃんと見たか?」

「失礼クマね!クマ、ナナチャンと約束もしたし、生きる事に真剣よ!?」

花村の言葉に反応し、クマがいきなり立ち上がる。プンプンと擬音が見えそうなように怒っている。とてもコミカルだ。

「クマが見るに…、最初に映った人、体格、細っこくなかった?」

「いやー、あんだけボンヤリで体格も何も無いっしょ。気のせいだって。もしくは寝オチか。それより、あっちに人は?」

珍しく真面目なクマの意見を、千枝がさらっと流した。

「それはナシ。まだ誰も来てないよ?」

二人目について話しても同じことだろう。早くも手詰まりのようだ。

「もう一晩様子を見るしか無いかも」

「みたいだな…。幸いこの雨、今日の夜まで降り続くみたいだ。今夜も忘れずにチェックな」

花村の言葉で、この場は解散となった。

そしてその夜。誰のものだか分からない手紙が届き、以前から事件への何らかの関与を疑われていた鳴上は、堂島に警察署まで連行されてしまった。

「さあ、話してもらおうか。お前、何に首を突っ込んでる?」

薄暗い取調室の中で、鳴神と伯父さんが向き合っていた。鳴上の背後には足立さんが立っている。

「あの警告状はなんだ?何故あんなものが届いた?」

正直に話すも、テレビの中でなんて話を信じてもらえる訳もなく。伯父さんに落胆されてしまう。信頼を裏切ってしまったようで心が痛い。

「…一晩、ここにいろ」

悲しそうに言い残すと、伯父さんは取調室を出て行ってしまった。足立さんと二人きりになる。焦ったように慰めの言葉を掛けてくれるが、耳に入ってこない。自分て思っているより、ショックが大きかったようだ。それからしばらくの間、呆然としながら過ごしていた。深夜零時だ。ふと顔を上げると、テレビが目に入った。そういえば、来るとき外は雨だった。マヨナカテレビに何か映るかも知れない…。立ち上がろうとすると体が重い。酷く疲れているようだ。それでもなんとかテレビの前まで歩いていく。

「これは…!?」

テレビに映った人影を見て愕然とする。はっきりと映っていないが確信する。

「なんで気づかなかったんだ!?毎日一緒にいたじゃないか!?」

自分でも信じられないほどに取り乱す。

「そうだっ電話を…!?」

電話は伯父さんに取り上げられてしまっていた。これでは連絡が取れない。途方に暮れている間に、テレビの画面は暗転し、次の映像に切り替わる。はっきりとした映像だ。そして、

「やあ、みなさんこんにちは。僕は畦倉弥勒です。知ってる人もいるかな?今日は、僕の話を聞いてもらおうと思ってね」

テレビには畦倉先輩が映っていた。もはや、驚きすぎて声も出ない。

「僕はね、今年の春にそれはそれは衝撃的な出会いをしてね。ある目的が出来たんだ」

画面の中の弥勒が苦笑する。

「そいつは永遠に救われないだなんていう、厄介なやつでさ。僕は、考える間もなく、口に出していたよ。『救いを欲してるのなら、その全てを救いたい。それが僕なんですよ』ってね。偽りのない本心さ」

いつもとまるで変わらない。ジュネスのフードコートで話している時と同じような声色で話している。

「衆生無辺誓願度。それが僕だから。永遠に救われない存在を僕は救おう。そう決めたんだ」

初めて見る真剣な弥勒の表情に息をのむ。画面越しなのに、どこまでも強固な意志をひしひしと感じる。

「まあ、もっとも。厳密に言うとあいつはその誓願の対象外なんだけどね。そんなこと、僕には関係ないか。救われたいあいつと救いたい僕、それだけの話だ。それじゃあ。長々と話してしまったけど、この辺でお別れかな。ご清聴ありがとうございました」

プツン、と音を立ててテレビは消えた。

 

・・・

「さて…後は鳴上君たちが来るのを待つばかりかな。君はどう思う」

いつもの塔の頂上で、二人の弥勒が槍を構えている。

「僕と君はほとんど一緒さ。ほんの小さなの差だよ。特に思考に差異はない」

そう言いながら、弥勒のシャドウは跳びかかってくる。真上からたたきつけるように振りおろし、その途中で槍を持つ腕を後ろに引く。その結果、槍は防御をすり抜け、首元まであと数十センチのところにぴたりと収まる。もはや阻むものはなく、突きを放てば弥勒は死亡するだろう。シャドウはためらいなくその一線を踏み越えて突きを繰り出す。弥勒は冷静に、槍から手を放すと、空いた手で相手の槍の蛭巻き部分を掴みとった。そのまま相手の勢いを使用し、槍ごと巴投げを食らわせた。投げられるのはまずいと感じたシャドウは自ら槍を手放し、弥勒が捨てた槍を確保すると離脱した。全くの互角。数秒睨め合ったのち、弥勒は構えを解いた。

「まあ、こうなるよね。自分同士の戦いなんて」

槍をぽいっと放り投げ、背伸びをするシャドウ。

「助けが来るには時間がまだ時間がある。出来ることも少なくて暇なんだ」

「瞑想でもしれば良いじゃないか…」

呆れたようにシャドウがこっちを見ている。僕の予想通り。僕と僕のシャドウにほとんど差異はなかった。だが、やはりほんの少しの違い。会ってみてようやく分かった。自分が好きか嫌いか。本当に小さな思いだが、僕は、異常な自分の事が嫌いだったみたいだ。

「って言うかさっさと受け入れてくれれば、戻れるだろうに」

「誰かさんが全部ぶちまけてくれたせいで、そうもいかないのさ。確実に僕が謎のペルソナ使いだとばれたし。それに、宣戦布告をする必要がある。僕は鳴上君たちとは、一度戦っておく必要があるからね」

「そうだね。そしてそうまでしても成したい事がある」

「ああ、今となってはそのために生きてきた気さえするよ」

霧にまみれたこの塔で、僕の力は完成する。後は旅の終わりを待つばかりだ。

 

・・・

それから数日。この世界から僕じゃない方の気配が消えた。鳴神君たちが助けたのだろう。僕は結局、シャドウと二人で瞑想をしていた。と、その時。

「来たね」

「うん」

僕たち以外の人の気配を感じ、同時に目を開く。

「さて、じゃあ行きますか」

ずぶずぶと体が床に沈んでいく。霧の世界でこの塔の中だけは、僕の思いのままだ。そのまま降りていき、数秒後には入口へと到着した。槍を持った状態で、

金剛力士像の様に扉の脇を固める。

「やあ、待ってたよ」

シャドウと声を合わせて言うと、鳴神君たちは驚いている。どちらがシャドウなのか、見分けがつかないのだろう。

「始めようか」

「そうだね。その時が来たみたいだ」

するべきことは分かっているようだ。まあ、僕なんだから当たり前か。軽い笑みを浮かべながら、僕は僕のシャドウに向き直る。

「君は僕だ。戻っておいで。共に約束を果たそう」

そう言ってシャドウの手を取り、握手をした。すると、僕のシャドウは笑みを浮かべながら、強く光り輝く。光が収まると、そこには依然と変わらぬ『マイトレーヤ』の姿があった。

「あれはっ!?」

里中さんが声を上げる。他の見たことがあるメンバーも渋い顔をしている。

「まだだ…その先へ…っ!」

らしくもなく声を荒げながら、祈る。ペルソナカードが頭上から舞い降り、一度は収まった光が、再び強まる。あまりの光に、弥勒以外の全員が目をくらませ、何も見えていない中。僕は僕のカタチを得た。

「―――――」

ああ、やはりそうなるのか。驚きはなく、そこにあった救いのカタチに僕はただただ目を奪われた。解脱した聖者。僕の救いの究極の到達点。自然と涙が零れ落ちた。光が明けると同時にまるで、幻であったのかのように消滅し、僕の心の中へと戻った。

「………さて」

涙をぬぐいながら、鳴上君たちの方に向き直と、緊張が走る。

「テレビの中で会うのは、確か夏以来だね」

いつもと変わらぬ口調で話しかける。

「やはり謎のペルソナ使いは、あなただったんですね」

「そうだよ。りせちゃんの時とホクロの少年の時、加勢したのは確かに僕だ。直斗君の時は行けなくて悪かったね」

もはや隠す意味は無い。後は、彼らが真実を得た時、僕が僕の為すべき事をするだけだ。

「だったらなんで言ってくれなかったんスか!?」

「前にも話したけど、目的があるんだ。きっと、君たちとは相いれないよ」

「そんなの、話してみないと分からないじゃないですか!」

鳴神君や、あまり交流のなかった直斗君以外、感情的になっている。参ったななんて説明しようか。

「例えば、君たちはシャドウについてどう思う?」

「どうって、シャドウはシャドウだよね…?倒さないといけない相手」

「なら僕がシャドウを救いたいと言ったらどうする?」

「えっ………?」

そこで黙ってしまうあたり、やはり本当の意味で僕を理解はできていないのだろう。僕の質問も、意地が悪かったのは認めるけど。

「ただの例え話さ。でも、実際に有り得たかもしれないことでもある。僕は普通を教えてもらったけど、普通になれたわけじゃないんだ」

事情を知っているため、悲しそうに顔をゆがめる。

「簡単な話さ。話さなかったんじゃない。話していいのか、僕には分からなかったんだ」

自嘲するように笑い、大きく手を広げる。

「それでも、僕は目的を果たす」

鳴神君たちから視線を切り、僕の真後ろにそびえたつ塔のてっぺんを指さす。

「懸けをしよう。僕はこの後数日間、この塔の頂上で待つ。見事登り切り、僕を打倒したなら。目的について話すと約束しよう。ただし、この塔はとても危険だ。無理に来いとは言わないよ。どうする?」

一人一人と視線を交わす。強い目だ。答えを聞く必要すら無いらしい。

「それじゃあ、待ってるよ」

そう言い残し、僕は塔の中へと入って行った。

 

・・・

畦倉先輩が塔に入っていき。追うように突入した鳴上たちだが、現在、ジュネスのフードコートへと戻ってきた。理由は簡単。千枝と完二がダウンしたからだ。

「ありゃ、キツイわ…。俺も結構ヤバかった」

「俺もだ。普通はそうなる」

項垂れる花村と話しながら、鳴神はダンジョンでの出来事を思い出していた。

『これでもう大丈夫だね!』

塔に入って少し進むと、映画館のような部屋に入った。席は人数分用意されている。画面を見るとどうやら子供の物語のようだ。しかし、

「なんだよこりゃあ…」

映っているものがおかしかった。小学生にも満たないような子供が、ぐちゃぐちゃになった腕を意に介さず。嬉しそうに笑っているのだ。平気な方の手の中には、一匹の猫が収まっている。身を挺して猫をかばったようだ。

『さて、どこかに困ってる人はいないかなー?』

映像の中の少年は鼻歌を歌いながら去っていく。フィルムが切り替わり、次に移った時、少年は小学校中学年くらいに成長していた。映っているのは、少年の一日の記録のようだ。

『次は、雑巾がけかな?』

辺りはすでに暗く、人っ子一人いない。そんな時間に、たった一人で体育館の掃除をしてる少年。きっかけは、誰かが呟いた、体育館って最近よく滑るよな。という一言だった。薄暗い中の作業で、足を滑らせてしまい顔面を強打する。顔を上げると鼻血がたらりと垂れ始めた。急いで体育館の外に出ると、少年はほっとしながら、

『汚れなくてよかった』

と呟いた。

「やめてよ…」

消え入りそうな声で千枝が言う。純真な千枝にはこれはそうとう酷なようだ。がくがくと震えると、青ざめた顔で座り込んでしまった。

「いったん帰ろう!」

これ以上ここにいるのはまずいと思った鳴上は、大声で指示を出した。そして今に至る。

「あれはきっと、畦倉先輩の記憶だ」

撤退しながらずっと考えていた事を口に出す。一番最初の時はともかく、小学生の時にはすでに、今の面影があった。間違いないだろう。

「話には聞いていましたが、予想以上でした…。自分のシャドウの時よりもきついような気すらします」

「同感だぜ。先輩がキツイって言った意味がよく理解できたわ…」

「とにかく、二人の回復を待とう」

重苦しい雰囲気に包まれたまま、今日の探索は終わった。

 

・・・

僕は塔の頂上から、鳴上君たちの様子を見ていた。何度でもへこたれずに挑戦し、もうすぐ僕のところに到達しようとしている。僕の記憶なんて、毒と同じくらいキツイだろうに。丁度今、最後の階段を上がったようだ。扉の前にいくつもの気配を感じる。ゴゴゴゴゴと重苦しい音を立てて、最期の扉が開く。

「来たね」

「ええ」

短く言い放つとお互いに武器を構える。今、この瞬間に言葉はいらない。

「ドゥルガー!」

「イザナギ!」

ペルソナを呼び出すと、相手へと向かって走り出す。イザナギの剣を紙一重で躱し、無防備な鳴上へと槍を打ち込む。あと少しのところで目の前を雷が奔る。完二のタケミカズチだ。状態を反り返らせると。上空から花村のジライヤが、腕を振りかぶりながら降ってくる。

「利剣乱舞!」

僕の後ろに現れたドゥルガーが、十本の腕をそれぞれ振り下ろす。

「ぐあっ!」

ジライヤを無事に撃退し上体を起こすと、目の前にいたはずの鳴上君がいない。驚愕を押しとどめるほどの嫌な予感がし、そのまま前方へと全力で駆けた。イザナギとの同時攻撃は空を切り、大きな隙が出来る。

「空間殺法!」

隙を突いた攻撃、のフェイントをかけると、案の定僕の進路上に氷の塊が現れた。攻撃が当たると思い、面食らった千枝の動きが固まる。同時に先ほど発動した空間殺法が襲い掛かる。

「スクナヒコナ!」

最も冷静に戦況を把握していた直斗が、ギリギリでカバー、しかし、多少のダメージは与えられたようで、速さが少し鈍っている。

「みんな、離れて!コノハナサクヤ!」

雪子の言葉を合図に爆炎が僕を襲う。

「マリシテン!」

間一髪、ペルソナの付け替えに成功し、炎を受けながらも突っ込む。狙いは、直斗を回復している雪子だ。

「キントキドウジ!クマ―!」

クマのペルソナが体を張って受け止める。

「いまクマよー!」

「花村先輩、完二!雷と風が弱点みたい!」

クマに攻撃を止められ動きの止まった僕を見て、りせの指示が響く。しまった、罠だ。

「躱せ、マリシテン!」

ゆらゆらと揺れる陽炎が体を包み込み、狙いをつけにくくする。結果、どうにか二人の攻撃をしのぎ、距離を取ると背後から雷が襲いかかってきた。

「イザナギ!」

不意の一撃をもろに受け、吹き飛びながら理解する。これを狙ってたのか!?吹き飛ばされた先にはすでに、千枝のペルソナが棍を振りかぶっている。

「生憎、物理攻撃は効かないんだ!」

しまった、という顔をする千枝にカウンターで石突きによる一撃入れ、距離を取る。

「強いな」

「こっちのセリフです」

自然と笑みがこぼれてしまう。負けられない戦いであるのに、こんなにも楽しい。それは相手も同じようだ。

「エンラオウ!」

カードを砕き、新たなペルソナを召喚する。三つの目に黄色い衣に冠、手には縄を持ち大量の屍を引き攣れている。圧倒的な死の気配。別名を、閻魔大王とも言う神格である。

「マハムドオン!」

広大な空間全域に紫の魔方陣が描かれる。削るのが無理なら、一撃で倒すしかない。技が発動し、花村が声を上げて倒れる。雪子が急いで回復しようとし、そこを狙って、動き出す。しかし、それは当然読まれている。こちらの動きを阻害するようにタケミカズチとキントキドウジが迫る。ペルソナで地面をたたき、煙幕代わりにすると、身を低くして駆け抜ける。

「ふっ!」

その先にはすでに鳴上君が剣を振りかぶっていた。計算通りだ。その一撃をあえて受けると、一瞬攻撃した側がひるむ。その隙をついで槍による横なぎで、鳴上君を吹き飛ばす。まずいと感じた全員が雪子を庇おうと近づいたところで、僕は自らのペルソナに自分の腹を攻撃させた。巻き込まれないようにするためだ。後方に吹っ飛ばされながら次のアクションを起こす。

「フドウミョウオウ!」

その一撃を目の当たりにしたことがあるメンバーの表情が固まる。

「火生三昧!」

耐性すら無視する煉獄が、あたり一面を覆いつくした。そのはずだった、

「なっ!?」

僕が放った煉獄は、跳ね返り僕自身を焼いた。耐性無視は僕も例外ではない。軽減されたとはいえ、かなりの大ダメージを負った。

「魔法反射か…いったいいつの間に?」

肩で息をしながら問いかける。服はすでにていをなしていない。

「……扉を開ける前ですよ」

「ここまで読んでいたのかい?」

「対策をしておいただけですよ」

「まいったな。本当に強いや」

「……降参してくれると助かります」

「それは、できない。それにまだ、切り札は残っているからね」

全員の警戒の色が強まる。不敵にほほ笑むとその名を呼んだ。

「マハー・ヴァイローチャナ!」

そこに現れたのは全一者。位階の違う力を持つペルソナ。

「嘘っ、こんなの反則じゃない!?」

アナライズを試みたりせが驚愕する。

「落ち着けりせ。とにかく情報をくれ!」

対策を立てるために、必要な情報を聞いた鳴上君だが、その結果を聞いて愕然とする。

「万能属性しか…効かないだって……?」

「そうだよ。これで僕に攻撃が通るのは、鳴上君と直斗君の二人だけだ」

僕が切り札と称する最大の理由はこれ。二人以外を一切無視して動ける。ただし弱点もあるが。

「降参してくれると、助かるんだけど」

「断る!」

この状況でも、未だに闘志は微塵も衰えていない。ああ、やはり彼らは素晴らしい。

「メギドラオン!」

圧倒的な破壊をまき散らし、後には僕を除く八人全員が倒れていた。

「それでも、僕には譲れないものが在るんだ」

戦いは僕の勝利で終わった。力を使い切り、今にも倒れそうだ。ここにいる訳にもいかないので、倒れたメンバーをどうにか外まで担ぎ出すと、僕もそのまま倒れ込んだ。




エンラオウ         物 火 氷 雷 風 光 闇
              ― 耐 ― 耐 ― 弱 反

マハー・ヴァイローチャナ  物 火 氷 雷 風 光 闇
              無 無 無 無 無 無 無

マハー・ヴァイローチャナは、使うと必ず倒れる感じの制限付きです。強すぎるけど、特別捜査本部相手に勝つには、これくらいするしかありませんでした。
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