サイコなカネキケン   作:Crescent Moon

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9月から学校が再開&そろそろ再来年のための受験勉強を始めなければいけないので更新速度が大幅に落ちると思います。


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 金木が13区で喰種(グール)を狩ってから1週間。金木は毎日13区に赴いて喰種(グール)を狩っては喰うのが日課と化し、既に十数体の喰種(グール)がその犠牲となっていた。そして、金木は今日も13区に向かうため雨の中傘をさして歩いていた。

 

 「やはり、強い喰種(グール)ほど美味しいんだよな」

 

 金木は歩きながらそうひとりごちる。喰種(グール)を十数体喰った金木には分ったことがあった。喰種(グール)の味はその強さと比例しているということだ。基本的に喰種(グール)の強さは赫子の強さで決まることが多く、赫子の強さはRC値によって変わる。つまり、強い喰種(グール)はRC値が高いということだ。

 

 「どうせ、喰うんだったら美味しいものを喰いたいな」

 

 とはいえ、RC値や赫子の強さなんてものはパッと見でわかるものではない。

 

 「霧嶋さんなんてどんな味がするんだろう…」

 

 かつて戦った時の霧嶋の赫子の威力を思い出し、恍惚とした表情を浮かべる金木。

 

 「うわ!?」

 

 「キャッ!?」

 

 霧嶋の味を想像する事に夢中で前を見ていなかった金木は、前方から走ってきた中学生くらいの少女とぶつかってしまう。

 

 「大丈夫かい?」

 

 金木はぶつかって倒れた少女へと手を伸ばす。金木が少女をよく見ると、少女は雨が降っているのにも関わらず傘をささず、その顔は雨だけではなく少女自身の涙でぐちゃぐちゃになっており、ただならない様子だった。

 

 「お兄さんは喰種(グール)ですか?」

 

 少女は金木へと問いかける。

 

 「…そう聞くってことは君も喰種(グール)なのか?」

 

 「はい!お願いします!お母さんを助けてください!」

 

 少女は身体が濡れるのも構わずに地面に土下座をする。

 

 「君のお母さんに何があったのかは分からないが、僕にできることならばしてあげよう」

 

 金木の返答を聞いた少女は、金木の手を取り元来た方向へと走り始める。勿論、金木は善意から少女の母を助けると答えたわけではない。確かに、ここでこの喰種(グール)の少女を食べるのは簡単だ。しかし、この少女は弱い。少女の母に何が起きているのか金木に知る由はないが、少女がある程度の強さを持つならばその何かを自分で解決することができるだろうし、見も知らぬ赤の他人に解決をお願いする必要はない。そして、少女の母が喰種(グール)に襲われているのならば、その喰種(グール)を喰うことができるし、もしその他の何かであったとしても、少女の母をその何かから助け油断しているところを喰らうのは簡単なことだ。

 

 「大人の喰種(グール)なら少なくとも子供よりは美味しいだろう」

 

 金木は自らの手を引いて走る少女に聞こえないように呟いた。

 

 「そろそろです!」

 

 少女の言葉と共に、赤黒いものを囲む男達の集団が金木の視界に入る。

 

 「隠れてッ…」

 

 物陰に身を隠した金木と少女はその集団を覗き込む。

 

 「お母さ…」

 

 男たちが囲んでいたのは女の死体だと思わしきもの。無残にも首は斬り落とされ、その胴体も血に染まっている。母親のそんな姿を目にした少女はショックで言葉を失う。

 

 「行くよ…」

 

 金木はそんな少女を担ぎあげると、喰種(グール)の身体能力をフルに利用して、その場から離れる。金木は自分が男たちと戦っても勝算がほとんどないことを理解していた。現状、金木の戦闘能力はそれほど高くない。CCGの基準で言うBランクに届くか届かないかというところだ。一般の喰種(グール)より戦闘能力は高いものの、ある程度戦闘経験がある喰種(グール)には苦戦してしまう。実際、13区で喰種(グール)を狩っていた時、窮地に陥ることも多々あった。そして、金木の見立てによるとあの男たちはおそらく本部捜査官。金木のかなうはずがなかった。

 

 「ほら」

 

 取りあえず、少女を自分の家に連れてきた金木は少女にタオルを渡す。

 

 「…ありがとうございます」

 

 少女はタオルを受け取ると、濡れた髪や身体を拭き始める。

 

 「そういえば君の名前を聞いてなかったね、僕の名前は金木研。君の名前を教えてくれるかい?」

 

 「笛口雛実です…」

 

 雛実はタオルをおいて金木に尋ねる。

 

 「金木さんはなんでここまでしてくれるんですか…?」

 

 「君を食べたいから」

 

 金木の返答に雛実の動きが止まる。

 

 「え…?」

 

 動きの止まった雛実の手首にガチャリという音と共に武骨な手錠が嵌められる。

 

 「暴れ出すと面倒だからね、喰種(グール)に効くのかは分からないけど睡眠薬を打たせてもらうよ」

 

 首筋にチクリという痛みを感じたのを最後に雛実の意識は途絶えた。

 

 「…ん」

 

 雛実が目を覚ますと、そこは薄暗い地下室だった。相変わらず手首には手錠が付けられている。それどころか、首にも首輪が付けられそれから伸びる鎖は壁に打ち付けられている。雛実は全力を振り絞って手錠を壊そうとするが、身体に全く力が入らず手錠はびくともしない。

 

 「無駄だよ、かなり強めの睡眠薬を打ったからね。しばらくは、満足に身体を動かせない筈だ」

 

 部屋の隅から雛実に声がかけられる。雛実が声のした方向を見ると、そこには自分を眠らせた張本人である金木が大きな皿を持って立っていた。

 

 「なんで…こんなことをするんですか」

 

 「僕は喰種(グール)を食べるのが大好きだ。喰種(グール)はとっても美味しいからね。ただ、RC値が高くて美味しい喰種(グール)は僕の手じゃ倒せない。ならば、作ればいいという結論に達したのさ」

 

 「そんな…」

 

 雛実は金木の言葉に絶句する。あまりにも歪んだ思考、両親に愛され健やかに育った雛実に金木の考えは理解できなかった。

 

 「人肉と喰種(グール)の肉、どっちがRC値をより高めてくれるのか分からないからね。今回は合いびきにしてみたよ」

 

 ごとりという音を立てて、雛実の前に置かれる皿。その皿の中には生の肉が大量に入っていた。

 

 「さあ、食べるんだ」

 

 雛実の頭が皿の中に押し込まれる。雛実は涙を流しながらも、それを食べるしかなかった。金木は血で汚れた雛実の口元を丁寧に拭うと、また雛実に睡眠薬を打つ。

 

 そして、雛実が目覚めるとまた大量の肉を食べさせられる。トイレには行かせてもらえるし、何回かの食事に1回はRC細胞抑制剤と呼ばれる、金木が裏ルートで手に入れてきた薬物を打たれ風呂にも入らせてもらえる。

 

 何度も強力な睡眠薬を打たれ。正常な思考ができなくなった上に、1度は死を覚悟したものの金木のおかげで生き続けることができているという思考が芽生え始めていた。

 

 ストックホルム症候群という精神医学用語がある。誘拐事件や監禁事件などの被害者が、犯人と長時間過ごすことによって、犯人に対して過度の好意を抱いてしまう事例だ。

 

 雛実はまさにそのストックホルム症候群になっていた。自分を生かし続けてくれることや、トイレや風呂を許してくれることへの感謝。それらが積み重なり、雛実は金木への愛情を抱くようになったのだ。

 

 だが、こんな歪んだ環境の中で培われた愛が歪んでいない訳がない、金木はとんでもない存在を生み出してしまったことを後に思い知ることになる。

 

 雛実を監禁し始めてから数日後の夜、金木は何か違和感を感じ目を覚ました。金木は元々気配などには敏感な方だったが、喰種(グール)になってからはそれがより顕著になっていた。

 

 金木が気配の方を見ると、暗闇に爛々と光る紅い赫眼。

 

 「なっ!?」

 

 金木は咄嗟に赫子を出そうとするが、それよりも早く金木の身体がベッドへと押さえつけられる。耳元で聞こえるはあはあという息の音。金木は遂に死を覚悟した。

 

 「僕もここまでか…」

 

 だが、いつまでたっても攻撃が来ない。金木が自らを押さえつけている喰種(グール)の方を見ると。

 

 「研さんの匂い…」

 

 金木を押さえつけていた喰種(グール)、雛実は金木の身体の匂いを嗅ぐことに夢中になっていた。

 

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