ハイスクールD×D ―魔法使いと龍―   作:shellvurn 次郎

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皆さんおはようございます、こんにちは、こんばんわ。
前書き、書くことが無くなってきました。
そうそう。皆さんハイスクールDDで好きなキャラって何ですか?
自分は魔源の禁龍アジ・ダハーカと魔龍聖タンニーンと三日月の暗黒龍クロウ・クルワッハです。


No,XXXV ~会談その三~

 イッセーSIDE

 

 俺が敵対する意思を言う瞬間だった。普段感じたことのない波動が俺のところまで届く。

 三大勢力のトップ陣たちもこれに意識が向いていた。

 周りを見てみると、この波動が起きたときから、停止している奴がちらほらいる。主に悪魔たちだ。魔王レヴィアタンの妹とやらも停止している。しかし、その悪魔たちの中でも停止せず、ピンピンしている奴もいた。もちろん、三大勢力のトップ陣たちはもちろんのこと、そこに涼しい顔を崩さない白龍皇も停止していない。そして、そとの三大勢力の護衛隊の軍勢も全て止まっているな。発生源は・・・・・ここから離れたところだ。

 

 「・・・あら?」

 

 「おっ、紅焔龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)が復活したようだぜ。」

 

 ここで、ドラゴンの力を宿している紅焔龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)が停止から復活した。なるほど、自力は低いとはいえ、ドラゴンの力を宿しているから停止されてもそれの影響がほかの停止している連中よりも少なく済んだのだろう。

 

 「何かあったんすか?」

 

 状況が理解できていないようだ。いまだにきょとんとしている。その問いに、堕天使総督が答えた。

 

 「周りを見てみな、紅焔龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)。」

 

 「周り?えっ!?朱乃さんに、アーシア、小猫ちゃん!?みんな、止まってるのか・・・・・?」

 

 微動だにしない仲間を見て驚く紅焔龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)

 

 「私たち眷属で動けるのは、セーイチと裕斗、ゼノヴィアだけのようね。」

 

 「・・・・・・・俺たちは、ドラゴンの力。そっちの連中は、おそらく聖剣の力で停止を防いだんだろう。」

 

 白龍皇が停止を免れた説明をする。聖剣というものはある意味、理を外れた武具だ。そして、様々に強力な能力が付加されているのだ。俺のもつ剣もそうだ。それを持っているのなら、並大抵の力ならば無効化することが出来るだろう。

 

 「そして・・・・・・」

 

 白龍皇がこちらに目を向けた。

 

 「魔法使い。あんたは、どうやら停止させられることはなかったようだな。」

 

 「まあな。」 

 

 そう白龍皇が言うと、全員がこちらに目を向けた。

 まあ、あの程度の波動では俺を停止させることはできない。俺や、白龍皇を停止させるには力不足だったわけだ。それに、俺には二つあるうちの片割れ、地上最強の聖剣の力もあるからな。

 

 「ますます、キミの力が面白くなってきたよ。」

 

 白龍皇はまた笑みを浮かべる。

 

 「特別な力があるってわけじゃねぇのに防いだのかよ。つくづく規格外な魔法使いだ。さてと、それはそうとしてテロが起こされたか。おい、外を見てみろ。」

 

 堕天使総督がやれやれと言った口調でそう言った。堕天使総督はあごで窓の方を示す。悪魔の奴らは会議室のガラス窓に近づく。

 俺も改めて窓の方へ視線を向け、外の景色を見る。

 カッ!!閃光が絶え間なく広がっている。この建物も揺れている。恐らく外にいる奴らが攻撃をしているのか。

 

 「もうすでに攻撃されているようだな。いつの時代も全くかわりゃしねぇ。勢力と勢力が和平を結ぼうって時に、それをどこぞの集団がそれを嫌悪して邪魔をしようとするもんさ。」

 

 堕天使総督は知ったかのような口ぶりで言う。まあ、長い時を生きてきているこいつは、長い歴史をその眼で見てきているのだろう。

 外には、空中に浮いている無数の人。人間だ。それに、見たことのある黑いローブを着込んでいる。魔術師か。その魔術師が、そとで停止させられている三大勢力の軍勢、そしてこちらの校舎に攻撃してきている。攻撃手段は魔法とはいいがたい魔力弾みたいなものだ。しかし、そんなちゃちな攻撃でも、停止させられ、防御も回避もすることもできないやつらには十分な攻撃だ。魔術師たちの攻撃は確実に軍勢を仕留めていった。防御魔方陣も機能しているようだが、流石に何回も攻撃をくらうと壊れる。しかし、この校舎にはダメージはないようだ。流石は三大勢力のトップ陣と言ったところか。

 堕天使総督は窓の方へ歩いていき、不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

 「そとで攻撃してきているやつらも、いわゆる魔法使いだな。悪魔の魔力体系を伝説の魔術師、【マーリン・アンブロジウス】が独自に解釈して再構築したものが魔術、魔法の類だ。・・・・・放たれている魔術の魔力から察するに、一人一人が中級悪魔クラスの魔力を持ってやがるな、こりゃあ。」

 

 堕天使総督が魔術について語る。たしかに母さんは魔術、魔法を生み出した。しかし、それは表、知られている話だ。裏の顔は、そんなものじゃない。悪魔に対抗する力を編み出したり、最高の魔法を編み出した、研究者。俺が受け継いだ魔法をカモフラージュするために、世に伝えたのだろう。

 

 「神器(セイクリッド・ギア)所有者が魔術を覚えていたりしていると、非常に厄介なものとなる。まあ、ここは俺たちで強力な結界を張ってあるから安心できるさ。だが、もう一つ厄介なのがハーフヴァンパイアの小僧だ。」

 

 「ギャスパーが!!??」

 

 「ああ。おそらく魔術、もしくは力を譲渡する系の神器(セイクリッド・ギア)でハーフヴァンパイアの小僧の神器を強制的に力を引き上げて禁手(バランス・ブレイカー)状態にしているんだ。停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)。それだけでも恐ろしいが、視界に移したものの内部、それに外にいる軍隊すべてを停止か。恐ろしいほどの潜在能力だ。ともかく、その小僧をまずどうにかしないとこちらが動くことはできん。」

 

 停止能力。これについては、魔法でも一応そのようなことはできる。しかし、それは中々の困難を強いられる。そもそも時間を操る魔法は少ない。他の生物に干渉してその者の時間を止めることもそうだが、時間を止めること自体に難がある。俺も、時間を操る魔法には苦労した。まあ、分解魔法よりは楽だったが。 

 神器(セイクリッド・ギア)。なるほど、堕天使総督が没頭する理由がわかる気がする。停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)といったか?それは、訓練が必要だが停止させることができるのか。いやはや、凄いな。聖書の神は。そんなものを無数に作ることのできる力か。

 俺の魔法、時間操作(クロノ・アルター)に匹敵する力を持つものがポンポンいるってことだ。まあ、俺の時間操作(クロノ・アルター)は停止だけではないが。

 にしても、相手の術者も相当な実力者だ。このトップ陣たちが共同で構築した結界はもちろん相当な強度を持つ。それを掻い潜ってその中に転送魔法陣を展開させている。おーおー、まだまだ出てきやがるな。こいつら、あの魔法装束から見るにたしか魔法組織の一つ、魔女の夜(ヘクセン・ナハト)だ。この魔法組織で有名なのは、高名な魔女、アウグスタといったところだ。にしても、三大勢力に何ら関係していないこいつらが何故この三大勢力を攻撃するかは知らんが、うまくすれば俺との利害が一致して、共闘関係になるかもしれんな。まあ、そのことは置いておこう。まだ出てくるな。あちらには、よほど腕のいい魔法使いがいるのだろうな。今すぐそれを破壊してもいいが、面白くなってきたのでこのまま様子を見よう。

 俺が外の方を見ている横で、紅い髪の悪魔が名乗り出た。

 

 「お兄様、私が、ギャスパーのところへ行きます。」

 

 「しかしリアス。こちらの魔方陣は封じられている。外は魔術師だらけだ。」

 

 「旧校舎――――部室に未使用の戦車(ルーク)の駒が残っています。」

 

 「なるほど、キャスリングか。」

 

 悪魔たちが何やら話している。どうやら、ここから悪魔特有の力を用いてこの停止世界を生み出しているヴァンパイアを助け出すとか。キャスリング。たしか、チェスのルールの一つだ。悪魔の駒は、そんなことも実際にできるのか。しかし、あの駒はあってはならないものである。絶対にだ。来たるべき時、あいつらと協力して悪魔の駒を排除すべきか。

 

 「わざわざそんなことをしなくても、旧校舎にいるテロリストともども問題になっている吸血鬼を吹き飛ばせば済む話じゃないか?」

 

 と、せこせこ準備している悪魔たちに白龍皇が笑みを浮かべながら言った。

 同感だな。

 白龍皇の考えに同調して俺も口を開いた。

 

 「いいんじゃねぇか?なんなら、俺がここから遠隔魔法陣使ってぶっ放してもいいぜ?」

 

 俺が笑いながら言うと、アザゼルは少し焦って言う。

 

 「おいおい、お前ら少しは空気読めよ。それは最悪の手段だろ。助けられるのならば、助けたほうがいいだろ。」

 

 「じっとしているのは苦手なのさ。」

 

 先ほどからこの状況を楽しんでいるように見える白龍皇からしたら、退屈なのだろうな。まあ、俺もだ。

 

 「なら、ヴァーリ。お前が外に出て敵をかく乱しろ。白龍皇であるお前が出れば、少しは敵の作戦も乱れるはずだ。」

 

 「ふっ、了解。」

 

 大役を任された白龍皇はニヤッと笑みを浮かべた後、神器(セイクリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を展開させ、この部屋を飛び出していった。

 白龍皇は超速で空を駆け抜け、一瞬であの魔法陣のすぐそばへ移動した。中々の速さだ。しかも、あれでまだ本気ではない。流石、その昔名をとどろかせた最強にして魔の王、ルシファーの末裔だ。末裔だというのにここまでの力があるというのならば、他のベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウスの子孫たちもここまでの強さなのだろうか。

 白龍皇はこちらに一瞬目を向ける。

 

 「ふっ・・・・・・見せてやろう。禁手化(バランス・ブレイク)!!!」

 

 『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!!!!!』

 

 やつの体の表面に、とてつもないエネルギー、パワー、オーラが集まっていく。そして、それは白き美しい鎧の形となって顕現する。全身を覆いつくしていくその鎧。最後に頭部を覆い、やつのバランス・ブレイカーが完成した。

 

 「あれが・・・・・・・・・」 

 

 思わず、俺も息をのんだ。

 何故ならば、久しぶりにこの目に映った禁手(バランス・ブレイカー)だからだ。しかも、白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)は初めて見るのだ。これは心が躍るってもんだ。おれとて、赤龍帝として、何度も禁手(バランス・ブレイカー)を発動させたものだ。しかし、それはドライグの復活とともに長らく禁手(バランス・ブレイカー)を使っていない。今、もしドライグが神器として戻ったとしても禁手(バランス・ブレイカー)を発動できる自信がない。

 

 〈久しぶりに見るじゃねーか。あの白い鎧はよ。〉

 

 俺が白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)に目を奪われていると、歴代赤龍帝、ベルザードさんが懐かしむように言った。

 

 「(ベルザードさん。あなたがこれを見るのは四度目だね。)」

 

 〈ああ。だが、俺が戦った三人の白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)とは比べ物になんねぇぞ。自力の時点で分かっていたが、あそこまでのものか。すげぇな。流石はルシファーってことか。〉

 

 ベルザードさんがここまで言うのか。なんて野郎だ。もし、あいつがもっと昔に誕生していたら、ベルザードさんもやられていたかもしれない。

 

 〈ええ。ベルザードの言う通りね。私が戦った白龍皇とも別格だわ。恐ろしい限りね。〉

 

 エルシャさんも恐ろしいものを見るように言った。

 俺もだ。()()俺ではおそらく勝つことはそう容易くはなさそうだ。

 白龍皇が出てくると、案の定魔法使いたちの気が奴に集中した。四方八方、全方位から魔法使いたちは攻撃した。ざっと、五百は超えている。ちゃちな魔法でも、五百人以上の同時攻撃なら、威力もその分増大する。しかし、やつにその攻撃など全く聞いていない。奴には届いていない。

 カッ!!

 白龍皇は反撃とばかりに手のひらに魔力を発現させ、魔法使いたちに攻撃をした。

 おいおい、何だあれは?魔法使いたちが血の一滴も残さず消滅していく。あんな攻撃、体も鍛えていないひ弱な魔法使いたちにする攻撃じゃねぇ。過剰攻撃(オーバーキル)もいいところだ。手加減してもあれか。なるほど。先ほどの魔力もおそらくルシファー由来の魔力。やるじゃねぇか、あいつ!!

 

 「あんな簡単に禁手(バランス・ブレイカー)に!?しかもあの攻撃・・・・強ぇ・・・滅茶苦茶強ぇじゃねぇか・・・・」

 

 あの圧倒的なさまを見ていた紅炎龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)は奴の強さを目の当たりにしてそう言った。あの強さへの恐怖と、驚きの目で白龍皇を見ている。

 当然だ。至極当然の話だ。人間とほぼ変わらないやつと、白龍皇はもうスタート地点も何もかもが違うんだ。俺の見解としては、もし紅炎龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)禁手(バランス・ブレイカー)に至ったとしてもおそらく白龍皇には届かない。それどころか、禁手(バランス・ブレイカー)なしでも白龍皇は勝てるだろう。それほどの実力差がある。それを埋めるには、紅炎龍児(エヴォリュシオン・ドラゴン)は白龍皇の百倍は鍛錬しないとな。

 

 「アザゼル。一つ、聞いておきたいことがある。」

 

 「ん?なんだ、サーゼクス?」

 

 魔王ルシファーが思い出したように言った。

 

 「何故、神器所有者を集めているのかは理解した。それで、その先に何をしようとしていた?聞けば、神滅具(ロンギヌス)所有者も数人集めたそうだな。神もいないのに、神殺しでもするつもりでいたのか?」

 

 「それは私も聞きたかったことです。」

 

 天使長と魔王はアザゼルを警戒する。

 

 「備えていたのさ。」

 

 「備えていた?」

 

 「どういうことです?戦争を否定したあなたがさっそくそれでは不安ですね。」

 

 天使長は怪訝な眼差しを堕天使総督に向ける。

 

 「違う違う。言ったろ?お前らとは戦争をしない。無論お前たちに戦争を仕掛けない。しかし、かといってこの世の中だ。自衛手段は必要だとは思わないか?」 

 

 「では?」

 

 「それはな―――――――」

 

 ん?なんだ?

 堕天使総督が言う瞬間だった。

 この部屋に魔力が発生する痕跡を俺は察知した。

 そして、案の定この部屋の床に見慣れない魔方陣が浮かんだ。

 

 「これは、レヴィアタンの魔方陣!!」

 

 「しかも、これは旧魔王レヴィアタンのものだ!」

 

 その言葉に俺は反応した。

 なるほど、これが魔王の末裔か。

 

 「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿、セラフォルー殿。」

 

 「これは、なぜ彼女が!?」

 

 魔方陣が展開されて間もなく姿を現したのは、これまた奇抜な格好をした悪魔だった。こいつが、真の魔王の末裔、か。

 

 「なんだなんだ。旧魔王が介入するか。全く。お前たちは様々に敵を作っているなぁ。」

 

 俺は皮肉を込めて三大勢力のトップ陣たちに言ってやった。

 

 「ん?なぜここに人間などがいるのです?」

 

 俺に気づいた旧魔王はこちらに視線を向ける。しかし、すぐに視線を魔王たちの方へと向けた。

 

 「まあ、いいでしょう。三大勢力のトップ陣ともども消し飛びなさい!!!」

 

 旧魔王レヴィアタンは杖のようなものの先端に魔力を出現させた。俺はすぐさまそれの正体を探る。魔力を大爆発させる気だな。

 それに気づいたトップ陣たちも防御結界を張る魂胆らしい。

 しかし、俺はこいつらに守られる気はない。それに好機だ。俺はこの教室にかけられた転移を無効化する術式を速攻で破壊して転移する。

 カッ!!!ドォォォンンンン!!!

 部屋を出ると外に出て、宙に浮いた状態になる。

 そして、爆音のした方向を見てみると、先ほどまでいた教室が木っ端みじんだ。しかし、あれであのトップ陣たちをやれたとは思わないがな。

 

 「なんだ、貴様は!?」

 

 すると、またしても俺の背後で声が聞こえた。

 振り返ると、先ほどの魔法使いたちが俺を囲んでいた。

 

 「こいつ、悪魔じゃない。天使でも堕天使でもない!!そしてその魔法陣、人間だ!!」

 

 俺を取り囲んでいる多くの魔法使いの一人が叫んだ。

 おそらく、俺が今宙に浮かんでいるために展開している魔法陣を見て気づいたのだろう。

 

 「ああ、そうだ。俺はお前たちと同じ魔法使いだ。」

 

 「なんだと!?」

 

 「私たちと、同じ・・・・・・・」

 

 にわかには信じられないようだ。

 しかし、俺が魔法陣を展開し、操っている以上そう見るしかあるまい。

 

 「お前、あの悪魔や堕天使どもに協力するというのか!?」

 

 「心外だな。俺が、あいつらと手を組むだと?冗談じゃないな。俺があいつらと手を組むなど。」

 

 俺はとんでもない言いがかりに心底呆れる。溜まったものじゃない。あの三大勢力の仲間ととらえられては。

 

 「だが、お前らが俺と戦いたいというのならば、相手になるぜ。魔女の夜(ヘクセン・ナハト)の魔法使いたち。」

 

 「こいつ!?私たちのことを!?」

 

 俺を取り囲んでいる奴らは、正体を知られていることに驚く。

 

 「別に、不思議でも何でもないだろ?俺も、お前たちと同じ魔法使いに定義される人間だ。故に、魔法組織を知っていてもなんら不思議ではない。まあ、先ほどの魔法を見る限り、お前らは全く大したことないな。」

 

 「なんだと、貴様!!!」

 

 俺の挑発に対して、声を荒げる魔女の夜(ヘクセン・ナハト)の魔法使いたち。

 

 「やれ!!!」

 

 激昂する魔法使いたちは俺に向けて一斉に攻撃する。

 俺はため息をついた。さっきから同じ魔法しか撃ってこない。一辺倒の攻撃だ。

 もちろんそんな攻撃は俺には届かない。防御魔法陣など必要ないな。

 カッ!!!ドォォン!!

 攻撃が俺に当たって爆発を起こし、煙が立つ。

 

 「やったか!?」

 

 「残念、全く効いていないな。」

 

 「なにぃっ!?!?」

 

 「バカなっ!!」

 

 「私たちの攻撃は、確実にやつをとらえたはずだ!」

 

 俺の声を聴いて自分たちの攻撃が通じていないとわかって焦る魔法使いたち。これが、魔女の夜(ヘクセン・ナハト)か。大したことない。なさすぎる。

 

 「ひるむな!やれ!!数ではこっちが勝っているんだ!!」

 

 強気な魔法使いが檄を飛ばした。

 確かに、戦争の法則の一つ。数で勝ることすなわち勝ちに繋がる。しかし、それは一人一人の戦力価値が同じ場合のみ。

 俺は先ほどと違って奴らの攻撃をよけながら、反撃していった。

 

 「グアァッ!」

 

 俺の格闘が魔法使いたちに炸裂する。 

 

 「教えてやろうか?お前たちが弱い理由を。」

 

 「何だと!!!」

 

 俺は相手の攻撃を避け、反撃を加えながら言う。

 

 「お前らのことだ。自分自身を鍛えていないだろ?そんなんだから弱いのさ。お前たちの体が、魔力に耐えきれないから結果的に使える魔力量も魔法もその程度だ。それか、ただ単にお前たちの勉強不足だ。どちらにせよ、お前らは戦闘に立つのが速すぎたんだ。そんなことなら、はなっから出てくるな。一生研究してろ。」

 

 「クッ!!」

 

 俺の言葉を聞いてもなりふり構わず攻撃してくるやつら。

 

 「ハッ!!」

 

 俺は攻撃方法を変更し、魔力を用いて奴らを攻撃した。

 こいつらに魔法なんぞ必要ない。ただ魔力を当てれば終わりだ。

 

 「グッ!!」

 

 「なんだ!?この威力は!?」

 

 俺の攻撃が命中した魔法使いたちはなすすべなく地に落ちていった。

 

 「言ったろ?身体を鍛える事をすれば、ただの魔力でもここまでの威力になる。」

 

 「クソッ!!舐めるなぁ!!!!」

 

 頭に血が上っている魔法使いたちはそれでもなお、攻撃をしてくる。その執念だけは買ってやろう。

 俺は、この世界におそらく一つしかない魔法を使う。

 

 「何だとっ!?!?」

 

 「バカなッ!!??」

 

 「私たちの魔術が!?」

 

 俺が放った魔法は、奴らの術式を破壊した。これで、やつらの術式が意味のない文字の羅列と化した。奴らの魔術はあの不思議な魔法装束に刻印されている形態だ。それならば、それを破壊すれば使えなくなる。

 これが、俺が完成に至らしめた対魔法、魔術用の魔法。術式破壊(グラム・レイザー)。魔法や魔術に対しての最強の対抗魔法。

 魔術が破壊されて動揺する魔法使いたち。

 

 「そうそう。そういえば、アウグスタのやろうは元気してるのか?今日はお前たちと一緒にここには来ていないのか?」

 

 俺は魔女の夜(ヘクセン・ナハト)で最も腕の立つ魔法使いのことを聞いた。

 

 「アウグスタ様だと!?」

 

 「あの方はもういない!」

 

 何だ。あいつ、もしかして死んだのか?まあいいや。

 

 「んで、どうする?魔法も使えない、近接攻撃も出来ない。今のお前らは一般人と同レベルだ。今なら、見逃してやってもいいぜ?」

 

 俺は相手に情けをかける。

 勿論、あいてが悪魔だったら皆殺しだが、奴らは俺と同じ魔法使い。別に逃がしてもよいと俺は判断した。

 

 「情けをかけるというのか!」

 

 「そうだ。」

 

 プライドが許さないのか。俺に対して激昂する魔法使い。しかし、それとは逆に冷静な奴もいた。そして・・・・・・・・

 

 「・・・・・・・・私はここで失礼させてもらいます。」

 

 たくさんいるうちの一人が、俺にも、そして他の魔法使いたちにも聞こえる声で言った。それは、若い女性だった。

 

 「なんだと!?お前、ここで逃げる気か!」

 

 プライドの高い魔法使いがそれを咎める。

 だが、先ほどの女性は堂々と言った。

 

 「ええ。その通りです。私は、そこにいる素敵な方には遠く及ばない。ここで、無暗に命を散らす事こそ、無駄でしょう?それに、私は力不足だと思い知らされました。ここで、死にたくはないのです。」

 

 その子は確固たる信念を持って言っているようだった。なるほど、俺が言ったこと、理解してくれているようだ。

 

 「確かに・・・・・・」

 

 「あのかっこいい人の言う通りだよね・・・・・・」

 

 その一人の女性の言葉に、ゆらいでいる魔法使いたち。どうやら、一枚岩ではなかったな。

 

 「お、お前たち!」

 

 先ほどから徹底抗戦をしようとしていたリーダー気質の女性だが、ここから撤退しようとする動きが広まって焦っていた。

 

 「私は、魔女の夜(ヘクセン・ナハト)を抜けます。今まで、ありがとうございました。」

 

 一番にここから撤退することを宣言した彼女はそう言った。まさか、魔法組織を自身から抜けるのか。凄いな。

 そして、驚いたことに、その子は俺の元へ近づいてきた。

 そして、顔を隠していた魔法装束のフードみたいなものを脱いだのだ。茶髪の綺麗な子だった。しかも、俺と同い年かその下だ。

 

 「あ、あのっ!わたし、リリーナって言います!また、会えるでしょうか!?あなたに是非!魔法を教えてもらいたいですっ!」

 

 その子は顔を少し赤くしていった。

 しかも、魔法を学びたいと言った。この状況。恐らくニトラがブチキレるし、ドライグにもこのことが伝わったら怒られるだろう。しかし、魔法を教えるというのなら許してくれるだろう。

 

 「ああ、いいぞ。アポ取ってくれるのなら構わない。」

 

 「ありがとうございますっ!」

 

 俺はそう言って、連絡先を渡す。パアッっとほっこりするような笑顔をする魔法使いの女の子。

 

 「必ず伺いますねっ!()()()()()()()()()()()()さま♡」

 

 「っ!!??」

 

 彼女は、そういって転移魔法で去っていった。しかし、なぜ、俺の名前を知っていたんだ・・・・・・・?

 それだけが、謎であった。

 彼女の転移を皮切りに、どんどんここから去っていく魔法使いたち。

 

 「それで、あんたはどうすんだ?」

 

 最後に残ったのは、さっきのリーダー気質の魔法使いだ。

 

 「・・・・・・・覚えていろ」

 

 なんだかんだ言って、彼女もそう吐き捨てて去っていった。

 そして、これ以上もう魔法使いたちが出てこないようにおれは発動され続けている相手の転移魔法陣を術式破壊(グラム・レイザー)で破壊した。 

 

 

  

 




はい、いかがだったでしょうか?
この本作が恐らく初めてではないでしょうか?会談を襲撃した魔女の夜(ヘクセン・ナハト)の魔法使いが重要人物となるのは。しかも、生き残って帰っていっています。
とにかく、長くなってしまったのでここで切ります。
どんだけ長引かせるんだ!って思うかもしれませんが、展開が速くなるのもどうかと思ったので。



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設定ミニコーナー

魔女の夜 ヘクセン・ナハト

*皆さんご存知、階段を襲撃した魔法使いの一派
*高名な魔女、アウグスタが首魁
*これで事実上この組織は崩壊。

術式破壊 グラム・レイザー

*魔法、魔術の類を全て破壊する分解魔法の派生系。
*魔術、魔法に対して最強の魔法。
*また、悪魔や堕天使たちが扱う魔方陣にも無類の強さを誇る。
*破壊できる数は、一回の発動につき複数。同時に破壊できる上限は百万。

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