ハイスクールD×D ―魔法使いと龍― 作:shellvurn 次郎
少し遅れました。
さて、今回で原作五巻は終わろうかと思います。
◆◇◆
「これでよしっと」
セ-イチはサタンの家で一泊した後、グレモリー家へと戻ってきていた。
そして、使用人から渡されたスーツに身を包んだ。
そこに、金髪の少年が現れる。
「やあ、セ-イチ君。ずいぶん様になってるね」
「お前に言われてもうれしくねーよ。木場」
タキシード姿の少年、木場裕斗に褒められるセ-イチ。しかし、それは気にくわないのか、そっけなく返した。
「アハハ・・・そうかい」
「よお、相変わらずだな。布藤、木場」
そこに、スーツに身を包んだ男、匙元士郎が現れる。
「匙」 「匙君」
「お前ら、相当鍛えてきたようだな」
「おうよ」
「お互い様だね」
三人とも、修行の成果が表れていた。発している気配が修行前とは明らかに高まっている。
「負けないぜ、二人とも」
闘志をみなぎらせる元士郎。しかし、それはセ-イチや裕斗もおなじであった。
「望むところだよ、匙君」
「匙、俺たち龍王を宿すものとして、どっちが強ぇか決着を決めようぜ」
セ-イチは龍王アグニル、元士郎は龍王ヴリトラ。ここで、伝説に名を遺す龍王同士の対決がもう始まっていた。
「お待たせ、セ-イチ、裕斗」
バチバチと闘志をむき出しにしている三人のもとに、ドレスなどでめかし込んだ女性陣が現れる。
「おおぉっ!!!皆さん見合ってますよ!」
「そう?ありがとう、セ-イチ」
「あらあら、褒められてしまいましたわ」
「そ、そんな・・・・・セ-イチさん・・・可愛いだなんて・・」
「・・・・・あ、ありがとうございます・・・・」
みな、女性陣はそれぞれ顔を赤らめていた。しかし、その中に一人、セ-イチが不審なものを見るような目で見ている人物が一人。
「んで?ギャスパー、お前なんでそんな女の子が着るようなドレス着てんの?」
「だって・・・・・可愛いドレスが来たかったもん!!」
「もん、じゃねぇよ・・・・・」
セ-イチはもうあきらめた。
「おい、お前ら、いつまでそうしてんだ。」
「もういくよー、みんな!」
そこに、桜色の髪をもつ三人、サタン家の兄弟たちが来た。
「あ、はい」
「ただいま行きます」
こうして、シトリー眷属、グレモリー眷属、それに加えてサタン家の三人兄弟たちは悪魔のパーティへと向かった。
―――◆◇◆◇◆―――
パーティは華やかであり、滞りなく進んでいた。
会場に着いたセ-イチはあいさつ回りなどで疲れ、会場の隅で休んでいる。慣れている木場と女性陣はほかの女性悪魔たちとの談笑を楽しんでいる。
そんな様子を見ていたセ-イチだが、突如その表情が険しくなった。
「(小猫、ちゃん?)」
セ-イチは後輩である小猫の様子がおかしいことを察知した。案の定、小猫は会場を抜け、一人で森の中に入っていった。
後輩が単独行動することに疑問を抱きつつも、心配するセ-イチは後を追ったのだ。
会場を出て、森の中に入っていくセ-イチ。そして、そこで見た者は木の枝に腰かけた妖艶な美女であった。セ-イチはその見た目に飛びつきそうになるのを我慢して、木の陰に隠れながら小猫と謎の和服美女の話を聞く。
「久しぶり、白音」
「黒歌、姉さま・・・・・・・」
その言葉がセ-イチの耳に入ると、セ-イチは驚きを隠せなった。小猫に姉がいたこともそうだが、それよりも、この雰囲気だ。黒歌も小猫も姉妹に向けるような目をしていなかったのだ。
「おうおうおう、こいつがお前の妹で、グレモリー眷属か?それと、そこの木の陰に隠れてるやつ出て来いよ、
そこには、会談に現れた猿の妖怪にして、孫悟空の末裔である美猴もいた。そして、すぐにセ-イチは場所を悟られてしまう。ばれていたとは思っていなかったセ-イチは驚きを隠せない。だが、これ以上それを貫くこともできないのでおとなしくそこから出てきた。
「よお、美猴。ヴァーリはどうしてんだよ?」
「あん?ヴァーリか?あいつは今頃特訓に燃えているんじゃねぇか?なんでも強敵を見つけたからな。」
「けっ、そうかよ」
セ-イチはヴァーリがまるで相手にされてないことにむかつきながらも、目の前の敵に集中した。
「姉さま・・・・・・何しに来たのですか?」
「そうね、まあ・・・・暇だったから見に来たってとこにゃ♪」
「・・・・・・・」
姉妹二人の間に沈黙が流れる。ただならぬ過去があるのだろうかとセ-イチは推測するが、すぐにその考えをやめる。
「セ-イチ!小猫!!」
「部長!!」
するとそこに、紅髪の悪魔、リアス・グレモリーが現れる。これによって、三対二。数では勝っていた。
リアスは黒歌をにらみつける。
「黒歌・・・・・小猫は、あなたに渡さないわ。この子は、私が守ると決めた。私の大切な眷属よ」
「それは、上級悪魔様が決めることではないにゃ。それに、白音は私の妹にゃ。私と一緒に来るにゃ」
「それも、姉さまが決めることではありません。私は、姉さまのもとへは行きません。私は、部長と、先輩と、みんなと、一緒に行きます!」
小猫のまっすぐな決意はゆるぎないものに見える。その決意に黒歌は悲痛な表情を浮かべようとしていた。しかし、それはだれにも気づかれることなく引っ込め、すぐにニコニコした表情に戻した。
「そう・・・・・・・・もう、不可能なのかもね」
お互いは敵同士だ。すでにセ-イチは籠手を展開させて戦闘態勢に入っている。黒歌、猿の妖怪美猴も戦闘態勢になろうとしていた。そこに、黒歌たちにとってさらに悪い状況になる人物が登場してくる。
「リアスにセ-イチに小猫、無事か!?」
「ベオグラードさんに、ソフィアさん!!」
ここで、伝説の悪魔の一角、サタン家の姉弟が黒歌と美猴の前に立ちはだかる。先ほどまで余裕という雰囲気を浮かべていたがサタンの家の者が出てきたとあっては、さすがに慎重にならざるを得なかった。
「ちっ、マジかよ。サタンのやつらだぜ」
「ちょ~と、マズいことになったわね」
実力者である二人も最強の最上級悪魔二人を前にして冷や汗を垂らしている。
「おまえらか、侵入者ってのは」
「ああ、そうだぜぃ」
「悪いけれど、あなたたちを捕縛させてもらうわ。ハアッ!」
ソフィアが先手を打つ。手のひらから放たれた凶悪な魔力。それらを避ける美猴と黒歌は互いに撤退する算段をたてていた。
「おい、黒歌。もう引き時だぜぃ。さすがにこの姉弟が出てきたってのはな」
「そうね・・・・」
「言ったはずだ、逃がさないと!!」
ベオグラードが猛スピードで接近する。最上級悪魔最強の一角であるベオグラードのスピードは冥界でもトップクラス。流石の美猴や黒歌といえども反応が少し遅れてしまっていた。
「くっ!?」
「黒歌!」
「捉えたぜ、黒猫!!」
ベオグラードが黒歌に迫ろうとして時だった。ベオグラードに対して極大の光が放たれた。
「クソッ!!」
光は悪魔にとって脅威。それはサタンでも例外ではない。ベオグラードは死角から放たれた光を避け、素早く体勢を立て直した。
「危なかったですね、黒歌。もう少しでやられていましたよ?」
「・・・・助かったわ、アーサー」
そこには、金髪の美青年と同じく金髪の美少女がたたずんでいた。男の方は眼鏡をかけ、神々しいほどの気配を放っている美しい聖剣に加え、腰には別の聖剣を帯刀している。少女の方は同じく聖剣を手に持っている。ベオグラードに攻撃を放って黒歌を助けたのはこの新たに表れた二人で間違いない。
「なにもんだ?」
ベオグラードは新手に問う。問われた紳士的な男は素直に答えて見せた。
「始めまして、サタン家の子息の方にグレモリー眷属の皆さん。私は、ペンドラゴン家の者です。周りにはアーサー、と名乗っていますがね。」
「ちっ、全員。奴の持っている聖剣には気を付けろ。聖王剣コールブランド。二つある地上最強の聖剣の片割れだ。いいか?触れることさえ、俺たちには許されないぞ」
ベオグラードが冗談抜きに本気で警告を出している。それほどまでに悪魔にとっては危険なのだ。聖王剣コールブランド。またの名は、カリバーン。英雄、アーサー・ペンドラゴンが使ったとされている最強の聖剣だ。その格はもう一つの最強の聖剣とならんで、ほかの聖剣とは比較にならない性能を持っている。
「ええ、その通りです。私は、現白龍皇であるヴァーリと行動を共にしています。以後、お見知りおきを」
「厄介ね。聖王剣コールブランドが白龍皇のもとに・・・・」
ソフィアは苦笑した。
「私は、ジャンヌ=ダルク。同じくヴァーリと行動してるわ。よろしくね?」
「なんてこと!?聖人の子孫がテロに加担しているというの!?」
その名を聞いてその場にいる悪魔一行は驚く。リアスは驚きのあまり、アーサーとともに現れた少女、ジャンヌ=ダルクに問う。
「当然じゃない・・・・・・あんな仕打ちをした奴らなんか、私は嫌い、大嫌い。だから私は、あいつらを許さない」
ジャンヌはこの世のすべてを恨むような目を向ける。その憎悪には息をのむしかなかった。
「ジャンヌ、落ち着いてください。安心してください、悪魔の皆さん。私は二人を迎えに来ただけです。ジャンヌ、美猴、黒歌、帰りますよ」
「ええ」
「つーわけだ。またやろうぜぇ。機会があったらな」
アーサーは聖王剣コールブランドで空間を斬る。すると、空間が裂け、人が容易く通れるくらいまで広がる。そして、冥界に襲来した四人はこの裂け目へと消えていった。
――――◆◇◆――――
イッセーSIDE
「にいたん!!ただいま!!」
「おにーさん、ただいま!!」
「ただいま帰りました、おにいさま」
俺、ティア、ドライグ、伽耶のもとに妹たちが帰ってきた。妹たちはそれぞれ親の元へと帰っていた。そして、今日は妹たちが帰ってくる日でもあったのだ。
「みんな、おかえり。お父さんとお母さんにちゃんと会えたか?」
「「「「うん!」」」」」
「バッチリだよ!」
「はい!」
「もちろん」
「・・・」
皆の反応を見ると大丈夫そうだ。そして、皆のために計画していたことを実行する。
「みんな、今日はここですごす最後の日だ。最後にちょっとしたパーティだ」
―――――――◇◆◇◆◇――――――――
現在時刻はグリニッジ標準時、九時だ。
現在、俺たちのダイニングは慌ただしい。全員分の椅子をならべたり、テーブルを用意したり、食器を用意したりとでみんなせっせこと準備をしている。
「うぅ~ん、よいしょっと」
「ルル、気を付けてね」
「は~い」
妹たちや、ドライグ、ティアも忙しそうだ。無論俺も例外ではない。収穫したリンゴを使った昼食を準備している。まあ、これもいつものことではあるがな。おれは黙々と作業を進ませ、料理を完成させる。
「わぁ~~~~~」
「美味しそうです」
完成した料理を皿に盛りつけ、テーブルの方へ持っていくと、妹たちが顔を覗き込むようにして料理を見る。今回はドラゴンアップルを使ったアップルパイである。それらを人数分に切り分けて、全員にいきわたらせる。
「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」
全員で手を合わせてから食事に手を伸ばす。妹たちに加えて、アーシャ、タンニーンも招待している。そして、意外なことにアジ・ダハーカがここと少し離れて部屋の隅で座っていた。多分アーシャが無理やり引っ張ってきただろうな。
「ん~~~~~~~」
「お兄様、美味しいです」
「・・・・・・美味」
「とってもね!」
妹たちが美味しそうに食べてくれている。あんなに愛らしい笑顔をしてくれるのならうれしいものだ。
「イッセー、とっても美味しいわ」
「そうね」
「ああ、このような嗜みもいいものだ」
「とっても美味しいです!!イッセーさん!」
アーシャ、ドライグ、ティア、伽耶も同様にそう言ってくれた。
「ああ、それは良かった。それに、タンニーンがドラゴンアップルを改良したんだ。それのおかげでもあるさ」
俺がそういうと、タンニーンの方へと視線が向く。
「そうなの」
「すまないな、タンニーン」
「構うことではない。しかし、それを抜きにしても見事だ。ドラゴンアップルにこのような食べ方があるとは」
タンニーンにとって人間よりの味覚は物珍しかったらしい。不思議そうに食していっている。
「しかし、アジ・ダハーカ。貴様がこのようなことに興じるとは思わなかったぞ」
そして、タンニーンはこの部屋の隅でただ一人で座るアジ・ダハーカにじろりと視線を向けた。タンニーンは龍王、アジ・ダハーカは邪龍。因縁のある関係でもあるのだ。ゆえにこんなことはよくあるのだ。
そのタンニーンにそう言われたアジ・ダハーカは手で料理を食いながら答えた。
「けっ、別に俺はアーシャに連れられて来ただけだ。テメーにいわれたこっちゃねぇ。それに、これはついでだ。ほかに目的があんだよ」
「ふっ、そうか。アポプスやクロウ・クルワッハは俺の食客として住処にいるのだがな」
タンニーンは以外そうにしていた。タンニーンは意外にもクロウ・クルワッハやアポプスと気が合うようで、ともに過ごしているとも聞いている。逆にあいつらアポプスとクロウ・クルワッハもタンニーンのところへよく言っているらしい。そして、俺とアジ・ダハーカはともにいることもある。同じ魔法を使うものとして気が合うこともあるし、アジ・ダハーカは妹のアーシャともいることが多い。同じ妹持ちとしてもやはり通ずるものもある。そういえば、アジ・ダハーカに会った当初もこんなだったような・・・・・・しかし、アジ・ダハーカの目的とは何だろうか?
俺が回想していると、俺の中にいるドラゴンが声を掛けてきた。
[いいな、いいなぁ~~~。私もイッセーの料理を食べたい]
「ふむ。ジルニトラ殿、私としても是非そなたに食していただきたいのだが、イッセーの中にいるとなっては・・・・どうしようもありますまい」
同情したタンニーンがそう言う。珍しいことにタンニーンが畏まった口調で言った。龍王であるタンニーンがこのような口調で話す相手はニトラ以外存在しない。もちろん、タンニーンも
「仕方ないだろ?ニトラ」
[うぅぅぅ~~~~]
ニトラは時々子供っぽくなるところがある。そこがいいんだけどね。
「ほら、ニトラ。魔法で感覚共有するから。それで我慢してくれ」
[わかった・・・・・・・ん!?美味しい!!!!これ!!]
俺がアップルパイを口に運ぶと、俺の味覚がニトラにも共有される。それによって、ニトラにもその味が伝わる。ニトラの様子を見ると口に会ってくれてよかった。
「良かったな。タンニーン。タンニーンの開発したドラゴンアップルは
俺がそういうとタンニーンは満足そうに行った。
「そうか、ジルニトラ殿の口にも合ってくれたか」
[ああ。タンニーン、ドラゴンアップル、素晴らしかったぞ。もちろんイッセーもな]
「光栄ですぞ、ジルニトラ殿」
こんな感じで今年のアルトリアとアーサー兄さんの墓参りは終了を迎え、俺たちは日本へと帰還したのであった―――――――――――――――
―――――◇◆◇◇◆◇――――――
日本に戻った後、俺たちは眠りについた。イギリスと日本は大体九時間くらの時差がある。イギリスから日本まで一瞬で行けるとはいえ、時差があれば生活リズムは狂うわけだが。
そして、俺の視界には真っ白でとてつもなく広い空間が広がっている。ここに来るには時間が空いてしまった。
[来たか、イッセー]
「ああ、久しぶりにニトラのその姿を見たな」
白い空間から現れたのはジルニトラ。俺の中に宿るドラゴンであり、神でもある存在。この世界の外からきた存在だ。そして、生まれたころからともに生きている。
[全くだな。もう、イッセーがあまりにも相手してくれないから寂しかったんだぞ?]
「す、すまない、ニトラ。このところいろいろあったんだ」
ニトラは頬を少し膨らませてご機嫌斜めになっている。普段はきりっとしていて、綺麗でかっこいいニトラだが、時にはこのような可愛らしい表情をする。このギャップが凄いのだ。
その時だ。この空間に本来はいない気配が感じられた。それも三人。
「来たか・・・・・」
姿があらわになってくる。邪悪なる気配を周囲に放ち続けている。
「ああ。邪魔するぜ」
そこに現れたのは邪龍三人だった。アジ・ダハーカ、アポプス、クロウ・クルワッハ。しかし、この三人がこの世界、俺の精神世界に来たのはこれが初めてというわけではない。実はちょくちょく不定期で来ている。精神を意識体として俺の精神世界に接続する。もとよりスペックの高いドラゴンたちだ。これくらいは普通にやってのけている。
つまり、あのパーティの時アーシャに連れられてきたのはこういうことだったわけだ。クロウもアポプスもついてきたわけではあるが。
[おお、来たか。わんぱく三人組]
ニトラもこいつらが来たことによって愉快そうな表情をする。
ニトラはいつも邪龍三体のことをまとめて『わんぱく三人組』と呼んでいる。この伝説に名を連ねている邪龍たちをまるでどこにでもいる有象無象のように呼ぶことが出来るのはこの広い世界といえど、ニトラだけだろう。ニトラは龍霊界のドラゴンの一体。その強さは俺でさえ未知数。いまだ全力を見たことなんて一度たりとも無い。俺が見ているニトラの強さはその片鱗にしか過ぎないのだ。
だが、そんな呼び方をされた本人たちは当然我慢ならないわけで・・・・・・
「おうよ、来たぜジルニトラ。てめぇをぶっ飛ばしにな」
アジ・ダハーカは相変わらずだが、今回に限っては違った。血管が浮き出ているほどだった。態度には出ていないが、そうとう頭に来ているのがわかる。
[ほう?今までそう宣言してきて、一度たりとも実行できたことがあったのか?]
ニトラも楽しそうに煽り返す。
「して、ジルニトラ殿。貴殿はいつまでそのような呼称で我々を呼ぶのだ?」
常に冷静であり続けるアポプスでさえもこれは見過ごせない問題らしい。
[さあな。もしかしたら、永劫にお前たちはわんぱく坊主のままかもしれないな]
ヒュン!!
「む?」
ドゴォッ!!!
ニトラが挑発をした瞬間、ニトラを鋭い打撃が襲った。しかし、ニトラは当然のごとく防ぐ。
「ならば、実力を見せつけてわからせるしかあるまい」
ニトラを一番乗りで攻撃したのはクロウ・クルワッハであった。止めれられることはわかっていたようだった。
[やってみろ、わんぱく三人組ども!!!」]
ニトラはニヤリと笑みを見せつけ、クロウ・クルワッハの腕を振り払う。
「フンッ!!!」
クロウ・クルワッハは身をひるがえして肉弾戦による攻撃をニトラに仕掛ける。
[フッ・・・・・]
ニトラはさも当然のようにクロウ・クルワッハの猛攻を完全に受け流している。
ニトラは、魔法を主体にして戦うドラゴン。格闘戦は本職ではないはずだ。しかし、それだとしてもこのクロウ・クルワッハの攻撃を涼しい顔をしながら受け流せるこの実力はいまだそこが知れない・・・・・・・・。ほんとに、どうなっているのやら、この強さは・・・・・・・・。
「グッ?!」
ドスッ!
クロウ・クルワッハがニトラの攻撃を受けて膝をつく。その様をニトラは空中から見下ろしていた。
[どうした?この程度では、当分このまま坊やのままだぞ?]
「グッ!まだだっ・・・・」
クロウはボロボロになりながらも立ち上がって向かってゆく。
その様子をただじっと見ているアポプスとアジ・ダハーカ。例え相手との力の差が強大であったとしても、決して手を組んだりしない。ドラゴンとは、常に一対多数での戦闘を好む。邪龍はよりそのような戦いを好む。己の戦いを邪魔されることが最も嫌いなのだ。
[別に、お主一人でなくとも、わんぱく三人がかりでもいいんだぞ?私はそれでも負けはしないがな]
「・・・・断る」
[フフフ、強情だな]
ニトラがあのようにして促しても頑なに受け入れようとしない。たとえ、今の相手がアポプスやアジ・ダハーカでも同様にそう言っていただろう。
俺はこの戦いをずっと見物する。クロウが倒れたら次はアポプス。アポプスが倒れたら最後にアジ・ダハーカ。その順番で魔法神、ジルニトラに戦いを挑んでいった。
[どうした?お主の父親であるアンラ・マンユは比較にならない強さであったぞ?]
「ちっ!!うるせぇ!!」
アンラ・マンユ。ゾロアスター最強最悪の悪神にして、ドラゴンと化した怪物。そして、アーリマンと同一の存在。ライバルと対決し、その末に龍霊界へとたどり着いた存在だ。その強さは、今となったらグレートレッドさえも超える可能性もある。
アジ・ダハーカにとっては父親のような存在だ。伝説のドラゴンで数少ない親という概念を持つ。それゆえにアジ・ダハーカ本人は並々ならぬ思いを抱いているわけで・・・・・・・・。
「ハァァァァァ!!!!!!」
父親と比べられることなどを嫌う。それをわかっていてニトラはわざと挑発させているようだ。
それにしても――――――――――――
「グオォッ!?」
「グッ・・・・・・」
ニトラの強さだ。
あの三体がまるで歯が立たない。結局三人を同時に相手にしているが、全く変わっていない。ニトラにとって赤子同然のようにことごとくやられている。今や俺と同レベルまでになった三体が足元にも及ばないとなると、俺もしかりだ。
[ま、いっちょあがりというところか?]
気づけばもう邪龍三体は地に倒れていた。ニトラは傷一つなく、邪龍を軽く捻りつぶした。血祭り状態である。
本当に・・・・・・俺はこの人を超えることが出来るのだろうか?
軽く邪龍を倒したニトラは俺のもとへとやってきた。
[さて、イッセー。今度は、お前の番だな]
俺は冷や汗を垂れ流す。
このすべてを貫くような鋭い瞳を向けられる。正直あそこらへんに無様に倒れている邪龍三体と同じ未来が見えるが・・・・・・・
まあ、もちろん戦うのだがな
「ああ、もちろんだ」
[フフフ・・・・・最近、イッセーとはご無沙汰だったからなぁ。スキンシップやらじゃれあいもなくて寂しかったぞ?今日はとことんやろうじゃないか]
あれ?いつになくやる気ですね、ニトラさん。やべぇよ。手首をボキボキとならせている。
[さあ、準備運動も先ほど終わったことだし、ゆくぞ!!!]
「クソッ!!」
ドゴォッ!!!
ニトラの重い拳が俺の手をビリビリと伝わってくる。魔法を一切使わないニトラ。それでも俺は遠く及ばない。だから、俺はニトラに魔法を使わせることが、第一の目標だ。俺は、至近距離で魔法を放つ。
「ハアッ!!!」
[フッ、甘いな]
だが、ニトラは素手で俺の魔法陣を破壊する。相変わらずの規格外さだ。
俺はめげずに格闘戦を仕掛けていった。
しかし―――――――――
「ぐっ!!」
俺の攻撃はニトラに届くことは無く、俺は地に落ちていく。よくよく考えれば、ニトラに魔法は通用しない。魔法神相手に魔法は意味ないのだろう。
[チェックメイトだ、イッセー]
俺はあおむけに地面に倒れ、ニトラに馬乗りをされる。脳天に人差し指を当てられ、完全に封じられてしまった。
「ま、参りました・・・・・」
俺は降参の意を伝える。
それを聞き届けると、ニトラは指を俺の脳天から離した。
俺は、ふと思ったことをニトラに言った。
「あの・・・・・ニトラ・・・・・」
[なんだ?]
「この格好・・・・・はたから見ればいろいろマズいと思うんだけど?」
[ん?どこがだ?]
ニトラは気づいていない・・・・・・この格好、どう見てもあれをやっている絵にしか見えない。だって馬乗りだから・・・・・
しかも、ニトラは意味ありげに妖艶な笑みを浮かべている。
く・・・・・マズい。マズいぞ・・・・・
「い、いや・・・・・」
[ん?もしかして、やらしい気持ちになったのか?イッセーのエッチ]
「ち、違う!」
[ふっふっふ・・・違うのなら、こうしていても構わないよな?]
ック・・・・ニトラの奴・・・・わざとだな?この確信犯め・・・・・
だが、幸運だった。これが精神世界での出来事で。これがもし、現実でお互いに現実の肉体であったら更にまずいことになってた。
[イッセーよ、今日はとことん私とスキンシップを取ろうじゃないか]
「ニトラのそれは少し過激じゃないか?」
[細かいことは気にしない。ホレホレ]
今夜は、どうやら逃げられそうにない。こうなったニトラは気が済むまで話してくれないからな。俺は、今夜は大人しくニトラの玩具となったのであった。
少し早足すぎましたかね。
早めにアーサーを出しておきたかったので。
にしても、バトルマンガでよくある年上の女性で綺麗で強くて主人公の師匠的そんざいのキャラがいいと思ったのは俺だけでしょうか?
例を挙げるとすれば、夜一さんとか
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設定コーナー
☆ジャンヌ=ダルク
・フランスで名をとどろかせた聖人。
・史実では、国に、国民に、友に裏切られて最後この世のすべてを恨みながら死を迎える
・その恨みという記憶だけを持って、その魂を引いている。
・設定を変更してヴァーリチームに移籍させました。
✯アンラ・マンユ
・史上最悪にして最強の悪神。
・アーリマン、アズラ・マーユと同一の存在とされ、ドラゴンと化した。
・二つ名を持つ。
・アジ・ダハーカを生み出した存在。
・現在はこの世界にはいない。