ハイスクールD×D ―魔法使いと龍― 作:shellvurn 次郎
間が空いてしまって申し訳ございません。前話の投稿から位置文字たりとも書いていませんでした。ずっと勉学に勤しんでいました。
こんご、なるべく開かないように努力しますが、都合上アイてしまうこともあるのでそこは勘弁願いたいです。
というわけで、
どうも、コミケ3日間頑張った作者のマユです。
自分が書いているもうひとつの作品についてですが、同時並行しようか悩んでいます。あっちはあっちで別の話ですが、もう書きたいことはまとまっているというのが現状です。
北欧神話と日本神話の会談日。
俺は天照に指定された場所へとやってきた。そこは、最初にオーディンとの会談の打ち合わせに使用された神宮であった。そこにはもう既に人が数十人待機している状態であった。そこにはヤトの姿も見られた。
「イッセー殿、来たでござるか」
「ああ。ヤト?そっちのやつは?」
ヤトは俺の存在に気づくとこちらに近づいて来た。ただ、やってきたのはヤトだけではなかった。どこかで見たような少年を引き連れていた。
「なあ、ヤトの旦那。こっちのひとがもしや・・・・・・・?」
「おまえ・・・・・たしかコカビエルと一緒にいた・・・?」
「そうでござる。イッセー殿、紹介するでござる。あのコカビエルとの一件の後、日本神話の戦闘部隊に配属されたフリードでござる」
「ご紹介にあずかりやした、フリードでやんすよ。魔法使いの旦那のことはヤトの旦那や天照の姉御からたくさん聞いてるっす。よろしく頼むでやんすよ」
「ああ。こちらこそ。俺はイッセーだ」
フリードとか言ったな。少し前にコカビエルと行動を共にしていたはず。あの場面で血だらけで倒れてたが生きて、しかも日本神話に入っていたとは知らなかった。もとはキリストの戦士のはずであるが、他宗教の人間をも軍門に入れる・・・・・・・・・日本神話は本当に寛容というか、手段を選ばないというか。
とにもかくにも日本神話は着実に戦力を増長させつつある。来るべき戦いの為に―――――
「魔法使いの旦那、よかったらいいんすけど、俺っちに旦那の持っている聖剣を見せてくだせぇ。旦那の聖剣は、俺っちがこうしてここにいる理由の発端何です」
「何?では、お前は聖剣の真実を知っているのか?」
「そうっすよぉ。教会のクソ爺ィどもははなっから俺っちたちを全員騙してたんですわぁ。教会は聖剣を謳ってるすけど、俺っちは偶然旦那の聖剣が本物であることを知ったんす。俺っちは教会ではやっていく気が無くなって飛びだしたんすよ」
おどろいた。教会が聖剣を偽っていることに加え、世界各地から聖剣の類を強奪していること、俺が真のエクスカリバーを持っていることを知っているのは俺の身内以外基本いないはず。だとすれば、フリードはあの事件を偶然見たかもしれない。この存在を知らせるのは少々危険だ。しかし、日本神話に入っているのなら心配はなさそうだ。
「いいぞ」
「そうでやんすか!!ありがとうございやす!」
俺は魔法陣を展開させ、亜空間世界に保管してある真聖剣エクスカリバーを取り出す。
「|顕現せよ≪フル・クリア≫」
この聖剣には常時視界にとらえられなくするような術式を掛けてある。真聖剣エクスカリバーは紛れもない国宝級の武具、宝具である。これを持つだけでも箔が付くというもの。いろんな奴らがあわよくば手に入れてやろう、と思っている。よって姿を隠している。それをここでは解除する。
「スッゲェ・・・・・・・・これがモノ本かよ・・・・・俺っちが使ってたやつなんてこれに比べたらただの板切れじゃねぇか・・・・」
当然。いや、あんなものは比べる事すらおこがましいくらいだ。あんなものと真聖剣エクスカリバーは決定的に性能が違う。
フリードは真聖剣エクスカリバーを食い入るように見ている。まあ、絶対にお目にかかることは無いものだから当然だろう。
「皆様、そろそろお時間です。お二人は私についてきてください」
会談の前に聖剣のお披露目会をしていると、ここの巫女さんである白雪が部屋に入ってきた。俺とヤトは白雪についていく。白雪がとある部屋に案内してくれた。そこから、門を開いた。開かれた門をくぐると、そこに広がっていたのは人間界とはまるで違った世界―――――――――高天ヶ原であった。今回の会談、どうやらここでやるらしい。高天ヶ原は日本神話の神々が住む世界だ。ここにつながる門を開ける白雪さんは日本神話において重要な人間の一人ではなかろうか。
そして、いかにもVIPたちがいるような部屋に入り、今回の主役たちを待つ。それほど時間が経たないうちに今回の主役たちである北欧と日本の神々のご登場だ。
「それでは、始めましょうか」
北欧側はオーディン、日本側は天照。両者が席に座ったところで会談が始まったのだった。
――――◇◆◇◆◇――――
大きく開けた土地にロキ迎撃部隊であるグレモリー眷属、助っ人のソフィア、堕天使幹部のバラキエル、北欧のヴァルキリーであるロスヴァイセが今回の敵であるロキとともに転移された。岩肌がむき出しになっている古い採石場跡。周りは人気がなく、周りに配慮する必要のない場所である。
「逃げないのね・・・・・そうする余裕はあったはずなのに」
リアスが憎々しげに言うが、ロキは鼻で笑った。
「わざわざ逃げる必要などどこにある?貴殿らをここで一人残らず始末すれば済むことだ。遅いか早いかだけの話だ。まあ、会談の成功失敗に関係なく、オーディンにはご退場いただく」
「危険な思想にとらわれているようだな」
「そのことば、そっくりそちらにお返ししよう。本気で、各神話と協力するつもりなのか?今まで好き勝手やってきた三大勢力が」
「・・・・・・もはや、話し合いなど不毛か」
ロキの言葉が、バラキエルに突き刺さった。今の言葉は、正直耳の痛いものであったのだ。
交わす言葉がなくなり、お互いに戦闘態勢へと入っていく。バラキエルは雷光を手にまとわせ、十枚もの翼を展開させる。
『Evolusion Dragon Balance Breaker!!!!!!』
セーイチは
「いくぜ!!!」
セーイチはロキにかなりのスピードで特攻する。
ガキン!!!!
セーイチはスピードを上乗せした拳を振るうが、ロキの魔法陣を貫通することが出来ない。
「フハハ!どうした、炎の龍よ?この程度では我に攻撃は届かないぞ?」
「じゃあ、これならどう?はあっ!!!」
ソフィアが強大な魔力による攻撃をロキに向けて放った。凄まじい規模の攻撃であり、このフィールドの三分の一を包むほどの攻撃であった。
ドドドドドドォン!!!!!
ソフィアの攻撃がロキに炸裂する。
「――――フハハハ!!」
しかし、ロキは何事もなかったかのように高笑いをしながら姿を表した。ほぼ無傷であったのだ。
「なるほどな、流石は悪魔の象徴のサタンだ。良い攻撃だ。我が北欧の魔法陣を貫通してくるとは」
「くっ・・・・・・」
「無傷かよ・・・・・・だったら、」
セーイチは腰につけていたあるものを取り出した。それは、北欧神話に出てくる神造兵器、ミョルニルのレプリカであった。セーイチはそのミョルニルのレプリカをロキへと突き出した。
「・・・・・・・チッ、ミョルニルのレプリカ・・・・・なんとも危険極まりないものを持っているではないか。しかも、よりによって悪魔などに持たせるとは。オーディンめ・・・・・・」
ロキは何よりも、レプリカとはいえ、一介の悪魔にミョルニルを持たせたことにどうやら怒りが湧いていた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
セーイチはミョルニルを持ち、全速力でロキへと向かっていく。そして、渾身の力でミョルニルをロキへ振り下ろした。
ドォォォォン!!!!
しかし、ミョルニルは空を切り、地面を破壊した。ミョルニルはレプリカとはいえ、その力は絶大で地面に巨大なクレーターを形作った。しかし、セーイチは浮かない顔をしていた。
「な、なんでだ・・?雷が出なかった?」
セーイチは聞いていた話とは違っていたのか、首を傾げている。
「残念だったな、炎の龍よ。それは強く、純粋な心を持つものにしか十全に扱うことが出来ない代物だ。貴殿には邪な心があるのだろう。だから雷は生まれないのだ。本来のミョルニルならば、重さすら感じることはない、羽のように軽いはずだ」
「くっ・・・まじかよ」
「さて、こちらも本格的にいくとしよう」
ロキがパチりと指を鳴らすと、フェンリルが現れる。
「神を殺す牙。それを持つ我が息子、フェンリル。お前たちが我が息子を倒せるというのならば、遠慮なくかかってこい!!」
フェンリルを見たソフィアはすぐさま合図を出した。
「リアスちゃんたち!!」
「はい!!!」
グレモリー眷属たちは魔方陣を展開させ、巨大かつ太い鎖を出現させた。魔法の鎖、グレイプニルである。三大勢力たちはフェンリルの対策としてグレイプニルを作戦通り出現させる。
これを全員で持ち、フェンリルに対して展開させた。
「小賢しい。そんなもの、フェンリルに通じるわけが――――――――なに!?」
ロキの思惑通りとは行かず、グレイプニルはフェンリルの体に巻き付いていき、完全に動きを止めた。
「フェンリル、捕獲完了だ」
バラキエルが完全に動けなくなったフェンリルを見てそう口にした。
しかし、ロキはこれを見ても余裕な面構えをしていた。まるで、これさえも想定内であると言わんばかりであった。
「ククク・・・・やってやったと言わんばかりの顔だが、フェンリルは―――――――一匹ではないぞ?」
ロキの両サイドの空間がゆがみだしたかと思うと、そこから新たに獣が現れた。灰色とところどころ赤が混じった毛並み。鋭い爪。大きく避けた口。なんと、フェンリルがさらに二体出現したのだ。
「そ、そんな!!」
「一体じゃなかったのか!」
眼の前の現実についていけない三大勢力。
「この子達はフェンリルの息子だ。スコルとハティ。神殺しの牙は健在。貴殿らを葬るには十分すぎるだろう。さあ、行け!!スコル、ハティ!父を捕らえた者共を蹴散らせ!」
スコル、ハティは猛スピードで迫っていく。
やられまいと、セーイチたちは散開する。
「はあっ!!」
「雷よ!!」
朱乃、リアス、ソフィアがそれぞれ魔力による攻撃をするが、スコルとハティはそれを軽々と避ける。凄まじい速度を誇っていた。
「がら空きだぞ?」
フェンリルに気を取られている隙きにロキは七色の魔術攻撃をセーイチに放つ。
「クソッ!!」
バチッ!!!
セーイチは直撃は免れたものの、鎧をかすめていた。かすった部分は鎧が欠けていた。
「行けぇ!!炎よ!!」
セーイチは反撃とばかりに炎をロキに放った。火球が次々に生み出され、ロキへと向かってゆく。
ドォン!!ドォン!!
ロキはその火球を魔法陣で防いでいく。
「まだまだぁ!!」
セーイチは更に大きな火球を放つ。
その威力にはロキもだんだんと押されていった。
「ほう・・・・やるな・・・・しかし、いいのか?我ばかりに気を取られていて。分かっていると思うが戦っている相手は、我だけではない」
「何?ゴホッ・・・・・・」
その瞬間だった。
ブシュッ!!
セーイチの身体から鮮血が勢いよく吹き出した。
セーイチはロキに集中をするあまり、周りに気が行っていなかった。フェンリルの子であるハティの爪がいとも簡単に
「セーイチ!!」
「セーイチくん!!」
地に落ちたセーイチを心配したリアスと朱乃がセーイチに駆け寄ってくる。すぐさま、セーイチの懐からフェニックスの涙を取り出し、セーイチの身体に振りかけた。
「ぶ、部長・・・・すみません」
「いいえ、良かったわ無事で」
「はい」
セーイチは立ち上がり、もう一度
ドゴォォォン!!!!
セーイチたちが飛び上がろうとした瞬間、セーイチのそばに人が落ちた。
「う、ぐ・・・・ゴホッ、ゴホッ・・・・・」
「ソフィアさん!!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「え、ええ・・・・なんとか、ね」
ソフィアはヨロヨロとしながら立ち上がった。その美しい体は血だらけで、痛々しい大きな傷跡を残していた。フェンリルの爪によって付けられたものだった。ソフィアはフェニックスの涙を用いて傷を癒やした。とはいえ、傷が治っただけで戦況は依然として不利であった。
「ククク・・・・ここでダメ押しだ」
ロキが指を鳴らすと、また空間に歪みが出る。その歪みから現れた存在にはもはやセーイチたちに勝ち目などないといわんばかりの絶望であった。
「そ、そんな・・・・・・」
「四体目・・・・・・・」
「赤い・・・・・フェンリル・・・?」
「なんなんですか!?あれは!?」
出てきたのは赤きフェンリルであった。しかし、その瞳は少し覇気がなく、虚ろのようであった。北欧のヴァルキリーであるロスヴァイセすらも知らないと言っているようだった。
出てきた正体不明のフェンリルをロキは高らかに笑いながらセーイチたちに紹介した。
「紹介しよう!!今回我に力を貸してくれた盟友だ。ちなみにスコルとハティの母親でもある。盟友は一応フェンリルだ。しかし、普通のフェンリルとはひと味もふた味も違う。さあ、盟友よ。ともに我らの敵を打ち砕こうではないか!!」
『・・・・・・・・・』
ロキに反応することはなく、機械のように動く赤きフェンリル。
赤きフェンリルはセーイチたちに虚ろな目を向ける。そして、勢いよく前足を踏み出した。
「な!?魔法!?」
「あのフェンリル、魔法が使えるというの!?」
赤きフェンリルが足を空中に踏み出すと、なんとそこから魔法陣が出現した。ロキが扱っていたものと同じ北欧の魔術であった。魔獣であるにもかかわらず、魔法を扱えるこのフェンリルにはセーイチたちも目を見張るしかなかった。
「くっ!?」
フェンリルが放った魔法がセーイチたちを襲う。
ドドドドドドォン!!!!!
間一髪のところで避けるセーイチたち。
「きゃあ!!」
「部長!?」
「ぐうっ!!」
「裕斗先輩!!!」
「うあぁぁっ!!!」
「ギャスパーぁぁぁ!!!!」
しかし、あまりの数故にリアス、裕斗、ギャスパーに魔法が直撃。防御する間もなかった三人には有効打となってしまった。三人は地面へ一直線に落ちていった。ロスヴァイセは赤きフェンリルに対抗して北欧魔術を一斉に撃ちはなつ。しかし、その数も質も赤きフェンリルのほうが勝っていた。
朱乃が落ちていったリアスたちの救援に向かおうとする。しかし、それは悪手であった。魔法によってその道を阻まれ、そして朱乃に迫る驚異。フェンリルの子であるハティが迫っていた。猛スピードで大きく口を開いて牙で攻撃しようと接近する子フェンリル。その速さは尋常ではなく、朱乃のスピードでは到底避けきれるものではなかった。
「くっ!!」
「朱乃さん!!ぐっ!?」
セーイチは朱乃の救援に向かおうとするが、赤きフェンリルの魔術に妨害を受ける。フェンリルの牙が朱乃の肢体に突き刺さろうとしたその時だった。
ザシュッ!!
「ゴフッ!・・・・」
フェンリルの牙は朱乃、ではなくその父バラキエルの胴体をたやすく貫き、その傷口からは大量の血が流れ出ており、口からも血の塊を吐き出した。バラキエルが朱乃をかばう形でフェンリルから致命傷を食らったのだった。
助けてもらったのにもかかわらず、朱乃は困惑した表情で満身創痍のバラキエル視線を向けていた。
「そんな・・・・どうして・・・・?」
「親が子を守る・・・・・・・至極、当然のッ、ゴフッ・・・・こと、だ・・・」
バラキエルは苦しみながらも朱乃にそうつぶやいた。
「くっ!セーイチくん!!バラキエルを!!」
「わかりました!!」
まだ戦力として健在であるソフィアはセーイチにバラキエルの救援に向かわせる。
「そのひとを離せぇーーーーーー!!!」
セーイチは全速力でフェンリルに迫った。フェンリルは危険を察知したのか、すぐさまバラキエルをペッ、と吐き出した。フェンリルは知能が異常に高かった。危機管理能力、戦闘能力などが備わっている。まさしく最高クラスの魔獣である。
「うわっとと!」
吐き出されたバラキエルを救出し、すぐさまアーシアの神器で回復をさせる。それを見届ける間もなく、セーイチはすぐさま前線に復帰する。その様を見たロキは愉快そうに言った。
「堕天使バラキエルは戦闘不能・・・・・そちらには優秀な回復役がいるようだ。が、しかしフェンリルの牙をまともに受けたのだ。傷は治れどしばらくはダメージで動けまい。それと・・・」
ロキはソフィアに目を向けた。
「ハアッ!!!」
ドスッ!!
ソフィアの魔力のこもった強烈なケリがスコルとハティたちに炸裂する。濃密かつ大質量の魔力のこもった一撃を顔に食らったスコルトはティ。さすがのフェンリルといえども、この攻撃には体制を崩した。
その様子を見たロキはソフィアに向けて言い放った。
「フハハ!流石はサタン家の才女、ソフィア・ソルーネ・サタン!フェンリルの子供とはいえ、二匹を相手にしてそこまで立ち回るとはな。しかし、それがどこまで続くかな」
今回のロキ防衛戦において、最高の戦闘力を持っていると言っていいソフィア。ほとんど一人でフィエリルあいてに孤軍奮闘を続ける。
「ソフィアさん!!」
ドゴッ!!!
ソフィアに襲いかかってくるフェンリルの死角からスピードを乗せた拳を食らわせる。
「助かったわ」
「いいえ!!さっきからソフィアさんの負担は大きいですから」
セーイチとソフィア、ロスヴァイセ。三人だけで肩を並べ、ロキとフェンリルたちに目を向ける。
「さあ、やれ。フェンリルたちよ、盟友よ」
親玉のロキが支持を出した。フェンリルたちはすぐさま三人に襲いかかった。
カッ!!!
赤きフェンリルは更に威力を増大させた魔術を放つ。
「私があれを撃ち落とします!全てというわけにはいきませんが!申し訳ありませんが、お二人はフェンリルを」
ロスヴァイセはフェンリルの魔術攻撃を少しでも減らすことに専念した。
フェンリルには劣るが、人間としてはありえないほどの魔術で対抗する。
しかし、フェンリルたちも動く。赤きフェンリルが放った魔法に合わせ、超スピードで空中を駆ける。フェンリルたちはセーイチを目標に定めていた。
「くっ!!やっぱりセーイチくんを!!」
ロキの作戦をソフィアは読んでいた。魔法に専念したロスヴァイセを除き、力の弱い方を先に仕留める作戦だった。それを察知してセーイチの方に向かうソフィア。
「だ、駄目です!!ソフィアさん!!!」
「くそっ!!」
しかし、ロスヴァイセはそれを止めようとした。
「くっ!!」
ロスヴァイセの言ったとおり、フェンリルのはなった魔術攻撃がソフィアを襲った。ソフィアはその類まれなる身体能力と反射神経でそれを魔力で相殺させる。ソフィアに向かってきていた魔術攻撃は全て無効化された。が、そんな攻撃は単なる囮に過ぎなかった。
「あっ―――――――――」
ソフィアに向かって、フェンリルが襲ってきていたのだ。その距離わずか十数メートル。しかし、フェンリルのスピードからしたらそんな距離はあってないようなもの。
ソフィアは声にならない声をポツリとつぶやいた。いや、声を上げる暇さえなかったのだ。
ガッ!!!
ソフィアは死ぬんだと、あきらめて目を瞑る。しかし、ソフィアには何も起こらなかった。痛みがなかったのだ。ソフィアは恐る恐る目を開ける。
「う、ぐ・・・・ソフィ、アさん・・・・・・間に合って、よかった・・・・」
「え―――――――そんな・・・・セーイチ、くん・・・・」
ソフィアの視界には、フェンリルの牙で貫かれ、今にも死にそうな状態のセーイチが映っていた。ソフィアは目の前の出来事が信じられないのか、受け入れられないのか。そんな目をしていた。
「ゴフッ・・・・」
吐血し、大量の血が流れ出る。
フェンリルはこれまたペッ、とセーイチを吐き出した。もちろんセーイチはこの傷で動けるはずもなく、ただただ重力に引かれて地に落ちていくだけだった。
「セーイチくん!!!!!!!」
それをみるやいなや、真っ先にソフィアは飛び出していった。強者として、的に背を向けて傷だらけの仲間を助けに行った。涙を流しながら・・・・・
ギリギリのところでセーイチをキャッチして地面にそっと寝かせた。
「セーイチ!!!」
「セーイチさん!!!!」
あまりの出来事に思考停止していたリアスたちもセーイチのそばへすぐさま向かった。
「そんなっ!!私がっ!!私のせいでッ!!!」
が、最もショックを受け、自分を攻めているのはソフィアだった。ソフィアは敵の戦力に焦っていた。最初からロキはソフィアを狙っていたのだった。が、ソフィアはその焦りと恐怖とプレッシャーで選択を誤ってしまったのだ。
「フハハハ!サタンの娘をやるつもりだったのだがな。嬉しい誤算だ。どちらもノックアウトだ・・・・・。特に炎の龍は牙を二度食らった。あれでは助かる見込みは少ない。さあ、ヴァルキリーよ。残るは貴殿だけだ。貴殿を軽く捻り潰して日本の神々共々オーディンを屠ってくれるわ」
「ぐっ!!!」
フェンリルの魔術に押され、宙に浮いているのがやっとというロスヴァイセ。気づけば、戦力はもう彼女だけであった。セーイチが致命傷を負ったことによって、ソフィアさえもが精神的に崩れてしまっていた。
ロスヴァイセに向かって一斉にフェンリルが接近する。たとえブリュンヒルデに匹敵しようとも、この状況ではもはや絶望的であった。
魔法を重視するロスヴァイセにとってフェンリルのスピードはまさに欠点というべきもの。たとえ魔法陣を展開しても紙切れのごとく破られる。
「さらばだ!!」
バクン!!!!
誰もがロスヴァイセにとどめが刺されると思った。それはロキでさえも。しかし、実際はそうはならなかった。フェンリルの牙にロスヴァイセの姿はどこにもいない。
フェンリルは獲物を見失い、キョロキョロと周りを見ていた。
「大丈夫でござるか?ロスヴァイセ殿」
「な、あなたは・・・・・・・・」
ロキは声がする方に向いた。フェンリルも同様であった。
ロスヴァイセはフェンリルに噛み砕かれる寸前でとある人物に助けられていたのだった。
「どうやら、間に合ったでござるよ」
「ヤトさん!!」
その人物は日本の龍、夜刀神であった。
というわけで、48話でした。
感想を何卒宜しくお願いします。