ハイスクールD×D ―魔法使いと龍―   作:shellvurn 次郎

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どうも、センター試験を受けた方、お疲れ様でした。ここからですので、受験最後まで頑張ってください。
今年のセンターまたもやカオスな問題が出たそうですね。


No,XLIX ~ロキ戦~

 時を少しさかのぼり、場所は日本神話と北欧神話の会談の場。 

 会議は滞り無く進んでいた。

 北欧側と日本側での主張は一致とは言えるものではないが、消して完全に食い違っているというわけでもなかった。日本神話側はとにかく慎重だった。北欧側としてもこれ以上日本神話との溝を深めたくないのだろう。

 会議は順調化に見えたが、少し会場内がざわつき始めた。オーディンの護衛の一人が何やら通信をしていた。それと同時に顔色が悪くなっていた。オーディンの護衛の人はだれかとの通信を終えると、ただちにオーディンに接近し耳打ちをし始めた。オーディンはそれを聞き終えると、こちらに顔を向き直した。

 

「天照殿・・・・実は困ったことになってのぅ」

 

「困ったこと、といいますと?」

 

「ふむ、実はロキのやつがな・・・・・」

 

「そのことに関してはそちらの迎撃部隊が応戦したのでは?」

 

「それなんじゃが、困ったことにどうも戦況が悪いらしいのじゃ。それどころか、突破されてここへやつが襲撃してくるのも時間の問題じゃと」

 

「左様ですか・・・・・それは困りましたねぇ」

 

 天照はオーディンに当たり障りのない返答をした。しかし、内心では予想通り、といった感じで呆れているだろう。天照は主に三大勢力で構成された迎撃部隊を全く信用していなかった。

 

「仕方ないわね。イッセー、ヤト。出番よ。行ってあげなさい」

 

「了解したでござる」

 

 ヤトは待ってましたと言わんばかりに前に出て天照の命に従う形で応えた。本当にフェンリルたちと戦うのを楽しみにしてるな。神と手を組んだとはいえ、戦いを求めるドラゴンという本質は今も健在というわけだな。

 

「というわけで、我々は自衛行動に入りますが、よろしいですか?オーディン殿?」

 

「ふむ、それに関して儂が拒否することはなにもないぞよ。もともとこちらの不手際ということもあるからの」

 

 オーディンの了解も得たことなので俺は早速ヤトと一緒に現場に向かおうとした。と思ったのだが・・・・・ヤトはもう行ってしまっていた。なんとも行動が速いことか。

 

「イッセー、私達の部隊も連れて行っても構わないわ。実践としては良い訓練になるから」

 

「分かった。」

 

 天照がそのように言うと、ぞろぞろと集団がこちらの部屋に入ってきた。天照直属の戦闘部隊らしい。天照いわく、このご時世に実戦経験があまりにも乏しいから連れてって欲しいらしい。とはいえ、いきなりフェンリルとロキ相手とか天照もだいぶ鬼畜なもよう。

 こいつら、これから戦う相手分かっているのだろうか。俺はとりあえず、ともに行く日本の戦闘部隊のやつらに確認を取る。

 

「なあ、今回の相手ははっきり言ってレベルが違うぞ?相手は北欧のロキ、そしてフェンリルだ」

 

俺が問うと、連中の一人が行った。

 

「イッセー殿、我々は全員覚悟の上です。それに、団長がいち早く行ったのならば我々が行かなくてどうするというのです」

 

 ヤトが行ったから、か。ヤトはずいぶんと慕われているらしい。ドラゴンでここまで人望があるというのは本当に凄いことだ。彼らは人間であるにもかかわらずだ。タンニーンはドラゴンから絶大な信頼を得ている。対してヤトは人間たちから信頼を得ている。状態は違えど、二人はウマが合いそうな気がする。

 

「じゃあ、さっそく行くぞ。乗れ」

 

 俺は転移魔法陣を発動させ、そのうえに全員をのせる。

 全員が乗るのを確認して直ちに敵のいる方へと飛ぶ。

 

「ここか」

 

 到着すると、そこは何もない場所。人の気配のない場所だった。ここなら、安心して戦えそうだ。

 すると、ヤトと北欧のヴァルキリーの姿が確認できた。確か、ロスヴァイセさんだったけな。ロスヴァイセさんの前にでてフェンリルたちから守っていたのだ。早く行って正解だったようだ。俺たちはヤトの方へ近づく。

 

「どうやら間に合ったようだな」

 

「イッセーさんに、みなさん」

 

 俺たちが近づくとロスヴァイセさんはこちらに気が付いた。今の時点でかなり消耗しているようだった。

 

「フハハハハ!!!皆さんお揃いで。して?貴殿たちは何をしにここへ?」

 

 俺たちを見下ろすようにして高笑いしながら言う人物が一人。これが、北欧きっての悪神、ロキか。それにフェンリルたち。なんと四体もいるではないか。ロキの奴、増やしやがったか。

 

「貴殿がロキ殿でござるな?拙者は日本神話、夜刀神。貴殿たちと戦いに来たでござる」

 

「なに?日本神話か・・・・・・・・・ククク、面白い。貴殿は気配から察するにドラゴンだな?ドラゴンと神が手を結んでいるとはな。つくづく面白い存在だ。とはいえ、貴殿ら日本神話が出てくるとは思わなかったな。」

 

「降りかかる火の粉は払う、当然の行動でござるよ。貴殿らが今会談中のオーディン殿や天照殿にを襲撃しようとしているのは分かっているでござるよ。さらには、貴殿らが先程まで相手していた連中では物足りなかったのでござろう?」

 

 確かに、ヤトの言う通り奴らは全く涼しい顔をしていた。傷一つなかった。対して、したにいる奴らはみんな消耗しており、重症のやつもいるようだ。まあ、助ける義理も理由もないのでそのまま放置しておく。 

 

「いいだろう!面白い!我も先ほど程度の相手では物足りなかったところだ!」

 

「そうこなくては・・・」

 

 ヤトは笑いながら自身の武器となる紅桜を抜いた。紅桜も強敵が目の前にいるということを分かっているかのように多大なる妖力が溢れ出している。

というか、俺さっきから忘れられている気がするな。

 

「フフフ・・・・さあフェンリルたちよ!!新たな敵を一掃するぞ!!」

 

フェンリルたちは一斉に俺たちに襲いかかる。

 

「イッセー殿。悪いでござるがイッセー殿はあの赤いフェンリルとロキをお願いするでござるよ。拙者はフェンリル。みんなは子フェンリル二体を頼むでござる。」

 

「分かった」

 

「了解しました!」

 

「おまかせを!」

 

「ロスヴァイセ殿、あなたは休んでいてください。ここは拙者ら日本神話が受け持つでござる」

 

 俺たちは分担して対処にかかる。

 ヤトはロスヴァイセさんのこともきっちりとフォローしていた。流石だ。 

 

[イッセー、わかっているな?]

 

「ああ。今回は神とフェンリル。強敵だ。制御は第二段階まで解く」

 

 俺は自身にかけた制御魔法を二つ解除する。これで、俺は今までの比ではない力を出せる。

 俺が先行して赤いフェンリルを叩く。

 ドゴッ!!!

 赤いフェンリルの周りから魔力が感知できた。ミドガルズオルムの言ったとおり、本当に魔法を放つことができるらしい。

 

「せやぁっ!!!」

 

 キィン!!!!

 俺の後ろでヤトとフェンリルがぶつかる。紅桜でヤトはフェンリルの攻撃を受け止める。流石に紅桜と言えどもフェンリルの爪は切り裂けないらしい。

 

「フッ、重いでござるな。流石は最強の魔獣・・・・」

 

 ヤトはフェンリルの爪と力比べをしながらそうつぶやいた。

 そして、フェンリルとヤトは凄まじい速度で斬り結んでいる。フェンリルの速さについていっているようだ。

 

「フム、我の相手は貴殿か?」

 

「そのようだ」

 

 赤いフェンリルを体術で翻弄していると、親玉のロキが出てきた。

 

「やるではないか。貴殿は人間だな?人間でそのような動き。その年でそこまでとは、恐ろしい限りだ」

 

 実は、俺見た目通りの年齢ではないんだけどもねぇ。まあ、それはいいや。

 北欧のロキ。その強さを見せてもらおうかな。

 

「いくぞ」

 

「来い!」

 

 赤いフェンリルとロキに向かって距離を詰める。

 赤いフェンリルの周囲から魔法陣が出現した。本当にフェンリルが魔法を放つとは。流石はミドガルズオルムの姉というだけはあるのか。しかし、あのフェンリルは何か違和感がある。あの虚ろな目、焦点が合っていない。

 俺はフェンリルの異変を感じながら多種多様な魔法避ける。一発一発の威力は流石に高い。だが、避けられないほどでもない。単調な攻撃だ。

 

「我を忘れてもらっては困る」

 

「もちろんだ」

 

 バリバリバリィン!!!!!!!!!!!

 凄まじいほどの雷が俺目がけて突き進んでくる。だが、それは俺には届かない。俺の防御魔法陣がその雷を阻む。

 

光を制する魔槍(レイ・ヴァルグ)

 

 カッ!!!

 魔槍をフェンリルとロキへ向かって放つ。

 ドドドドドドドォォォォン!!!!!!!!!!

 凄まじい轟音がこのあたり一帯に鳴り響いた。しかし、撃った感触からするとすべて防がれているだろう。

 

「なるほど・・・・・・貴殿は魔法使いであったか。」

 

 煙の中からロキと赤いフェンリルの姿があらわになる。流石北欧式と言ったところなのだろうか。やつの魔法は俺の知らないもので構築されていた。北欧の魔術並びに魔法の知識は未だ未知なるものだ。

 

「ああ。一魔法使いとして北欧魔術の使い手と戦うのは良い経験になる」

 

「フハハハハ!!貴殿は中々いい性格をしているな!面白い!今日はとことんやりあおう!!貴殿を抹殺し、必ずオーディンの元へ行ってやろう」

 

「さあて、果たしてそううまく行くかな?悪神ロキさんよ」

 

「なに、直ぐに現実にしてやろう」

 

 ロキはすぐさま魔法陣を出現させる。やはり、流石は神という存在。魔法も俺から見ても一流だ。魔法陣の中身は俺の知らないことだらけ。これは解析のしがいがありそうだ。 

 俺は雨のごとく降りかかって来る攻撃を避ける。

 

「盟友よ、今だ!」

 

 そこに赤いフェンリルが攻撃を仕掛けてくる。二対一では当然の戦法だろう。

 カッ!!!ズビィィ!!!!!!

 フェンリルが大きく口を開ける。そこからとてつもなく太い閃光が放たれた。あれもいわゆる魔法の一種だな。俺の魔道収束砲と同類の魔法だ。避けるのは簡単だがロキの攻撃をよける事もあって動きが制限されている。このままでは当たるのは確実だ。

 魔道収束砲を防ぐため、直ぐに防御魔法陣を展開する。

 ドォン!!!!!!!

 魔法陣に攻撃がぶち当たる。だが、フェンリルは更に魔道収束砲に力を込めてきた。先ほどの攻撃から威力が上がっている!?

 バキッ!!

 魔法陣にひび割れが生じる。これは長くはもたないな。

 

「フハハ!チェックメイトだ」

 

 ロキがさらに攻撃を強めてきた。この止むことを知らない波状攻撃はついに展開した魔法陣を破壊した。どうやら、ロキの攻撃によって壊されたようだ。

 

「ちっ!!」

 

 ドォォォォォォン!!!!!!!!

 ロキとフェンリル、両方の攻撃が同時に俺に届いた。

 凄まじい轟音が鳴り響いた。

 直前に倍加で自身を強化したおかげでダメージは少ない。少々傷を負った程度だ。あのフェンリルの攻撃・・・・・間違いない。間違いなく戦前のドライグと同程度のレベルだ。

 

「イッセー殿!?」

 

 俺の後ろの方からヤトの声が聞こえた。攻撃を受けた俺を気に掛けている。俺は姿の見えないヤトに聞こえるように言った。

 

「問題ない!!そっちはそっちの相手に専念しろ!」

 

「!了解でござる」

 

 俺はヤトの方をちらりと見る。案の定、ヤトはそうとうやられていた。対するフェンリルは想定よりも元気で居やがった。ヤトでもやはり食らいついていくのが精一杯ってところか。やはり、俺が引っ張ってやるか。本当は手の内をあまり見せたくなかったがな。とくに・・・・・・

 

「フハハ!!あの攻撃は力の低い神なら消し飛んでも可笑しくない攻撃だった。それをくらってその程度の傷とはな!恐れ入ったぞ、人間」

 

「そりゃ、どーも」

 

「しかし、その余裕もここまでだ。確かに貴殿は強い!認めよう。だが、貴殿の仲間はそうでもない。いつ死んでもおかしくないぞ」

 

 ロキのような魔法に精通した神がいるのだ。この場で俺の魔法を使えば魔法の中身がばれるということも十分あり得る。相手がロキでなければまだどうとでもなっただろう。しかし、ロキの言う通りだ。ヤトもだいぶ消耗している。だが、それ以上にヤトの部下たちだ。力の低いフェンリルとはいえ、やはり危機的状況だ。あいつらを死なせるわけにはいかないからな。

 

「ああ、だから早めに終わらせるさ」

 

「ほう?この状況でか?やってみるがいい!策があるようだが、所詮はハッタリだろう!」

 

 ロキは再度、自身の周りに魔法陣を展開させる。それは赤いフェンリルも同様だ。下級魔法ではだめだ。ならば、魔法の弱点を突くまで!

 

「はあっ!!」

 

 俺は右手に魔力を集中させ、一気にそれを爆発させてロキの方へ放った。

 パキパキパキパキパキパキパキィン!!!!

 

「なんだと!?」

 

 俺が放った魔法はロキが展開していた大量の魔法陣を全て綺麗さっぱりと消し去った。対魔法用対抗魔法、術式破壊(グリム・レイザー)。魔法に対して最高の効果を発揮する。相手の魔法陣を破壊してしまう代物だ。

 ロキはこの事態に目を丸くしていた。

 ドゴォン!!バチバチバチ!!!!

 俺はその隙にロキ目がけて蹴りを入れる。しかし、ロキはギリギリのところで俺の蹴りを防いだ。魔法陣とぶつかり、凄まじいエネルギーがあふれている。

 

「先ほどのあれは、一体なんだ?何をした?」

 

「さあね、あんたも魔法を使うものならば、解き明かしてみたらどうだ?もっとも、できないだろうがな」

 

 ドゴッ!!!バチッ!!!

 俺は構わず連打を入れていく。ロキは北欧の防御魔法陣で俺の打撃攻撃を防いでいるが、それも時間の問題だ。だんだんと、ロキは押され始めていた。

 

「グッ!」

 

「もういっちょ!」

 

 バキィン!!ドゴォ!!

 

「ぐほぉぉぉ!?」

 

 遂にロキの防御魔法陣が破れ、俺の拳がロキの顔に突き刺さった。俺はロキに攻撃をしている間、常にドライグの能力を魔法化した倍加を自身に掛けていた。例えロキの神クラスの魔法陣でも破るのはたやすい。

 俺は拳に魔力を込め、さらに連打を与えていく。

 ドゴォ!!

 

「グハァッ!!!」

  

 ズガアァァン!!!

 そして、最後にかかと落としを食らわせ、地面にたたきつける。

 

「そら!そっちもだ!」

 

 パキパキパキパキパキパキパキィン!!!!

 赤いフェンリルが展開させた魔法も全て無効化する。赤いフェンリルは魔法を全て無効化されたというのにも何も感情を示さない。機械のようだった。

 バッ!!!

 フェンリルは魔法の攻撃を諦めたのか、こちらに超スピードで迫ってきた。思考は停止していないらしい。

 シュッ!!

 

「!!」

 

「こっちだ!」

 

 俺は瞬間移動でフェンリルの背後を取る。

 俺はフェンリルに向けて光速の槍を放つ。

 

「ガウゥッ!?」

 

 オレが放った魔法の槍はフェンリルには当たらなかった。いや、わざと当てなかった。ミドガルズオルムの頼みだしな。槍はフェンリルの背中ギリギリをかすめていった。それだけなのにフェンリルは空中から地に落ちた。実は、やつの神経を凄まじい圧力で圧迫した。たとえ魔獣とはいえども、身体の構造は生物上にいているものだ。神経を麻痺させて行動不能にしているのだ。

 ここで、オレの魔法を使い捕獲する。

 

戒めの鎖(レージング)!」

 

 紫色の魔法陣から鎖が出現し、赤いフェンリルの体に巻き付いていく。この鎖は久しぶりに使ったな。今となってはドライグやティアには直ぐに引きちぎられるだろうが、この相手ならば問題ない。強化も施している。

 

「・・・・・・・・」

 

 赤いフェンリルは生気のない虚ろな目でオレを睨んでいる。やはり、違和感があるな。あっちで生き生きと戦っているフェンリルや子フェンリルとなにかが違うのだ。少し調べてみるか。

 オレは戒めの鎖(レージング)を倍加でさらに強化して動けないようにしたのを確認してから赤いフェンリルに近寄った。

 

「・・・・・これは・・・?」

 

 赤いフェンリルに近づき、解析魔法でよ~くみてみるとなにやら魔法の痕跡が見て取れた。赤いフェンリルに書けられていた魔法を解析してみる。

 すると、答えが見えた。

 

「なるほど、一種の催眠の術・・・・・・・ロキのやつ、これでこのフェンリルを・・・・」

 

 ロキはこの魔獣を使役に近い形に置いていた。どおりで目に最強の魔獣の一角であるはずなのに覇気がないわけだ。

 にしても、このことをミドガルズオルムが知ったら怒るだろうなぁ。

 オレはそんな事を考えながら、赤いフェンリルにかけられた魔法を術式破壊(グリム・レイザー)で消し去る。魔法の反応が消えた。

 

「悪いな。とりあえず、お前は邪魔だから眠っといてくれ」

 

 更に、これ以降こいつが相手にならないように眠らせる。おもに獣によく効く精神干渉魔法。安息(サクラメント)。精神干渉を起こし、睡眠を誘発させる。しかし、フェンリルクラスの魔物にこれほどうまくかかることはそうない。おそらく、この赤いフェンリルも眠ることを受け入れた、そんな気がする。オレが相手二体を封殺。そのようすをヤトは感じ取ったようだった。

 

「フフフ・・・・・流石はイッセー殿でござるな。拙者も、やられてばかりではドラゴンとは名乗れないでござるよ。ここで一矢報いるでござる。紅桜、もう少し力を出すでござるよ」

 

 紅桜はヤトの意志に答えるように更に妖力を蓄積していった。あの妖刀、紅桜。本当、剣いうよりも一つの生命体の様に見える。なんというか、ヤトに使ってもらえるのが嬉しそうだ。その力の集まりようにあのフェンリルも興奮し、ヤトに向かって超スピードで突進した。

 ヤトはそれを迎え討つ気だ。

 

「・・・・・・・一斬必殺・・・・・華羅紅(からくれない)

 

 シュバッ!!!!

 フェンリルとヤトが切り結ぶ。両者、お互いが背を向けている状態だ。

 ブシュゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぎゃうぅん!!!」

 

 ドスゥゥン!!! 

 フェンリルの左脇腹から大量の鮮血が吹き出した。

 ヤトのやつ、やるじゃねぇか!!あの居合斬り、凄まじいキレと速さ。フェンリルと対峙する瞬間にスッパリと斬りやがった!あの分厚くて頑丈なフェンリルの体表にあんなにデケェ傷を付けたのだ。フェンリルの傷は深く、ここから見てもよく分かるくらいの大きさだ。フェンリル相手にこれは大金星ではないだろうか。

 地表に落ちたフェンリルは意識は失っていないようだった。だが、出血とあの剣戟のダメージで動けないようだ。ヤトの技の名のとおり、紅の花が咲き乱れたな。

 

「グッ!」

 

 とはいえ、ただで地に落ちるフェンリルではなかった。ヤトにもダメージを与えていたようだ。

 

「グハッ!!!」

 

「ゴボッ!!!」

 

「うわあぁぁぁぁ!!!」

 

 と、そこに悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴が聞こえてきたほうを見ると、ヤトの部下たちであった。子フェンリル二体を相手にして今までどうにか持ちこたえていたらしいが、そろそろ限界が来ていた。

 ザシュ!

 

「ぐぁ!!」

 

 フェンリルの爪できりさかれた、牙で貫かれたものも出ていた。

 

「今助けるでござる!!」

 

 それを察知したヤトはいち早く救援に行った。オレも後に続く形で急行する。

 

「はあっ!!」

 

 ザシュッ!!

 

「ぎゃうぅ!?」

 

 ヤトは子フェンリルの一体を斬りつける。顔の左側面から鮮血が飛び散る。フェンリルはヤトの部下の一人を吐き出してすぐに俺たちから距離をとった。

 

「くらえ!!龍帝の豪炎(アラストール)!!」

 

 赤色の魔法陣から飛び出る特大の炎をもう一匹の子フェンリルに放つ。

 

「ガゥッ!?」

 

 炎が子フェンリルを灼く。本来ならば、この魔法ではなく、ドライグの技である燚焱の炎火でもよかったがこの状況ではそうはいかないからな。フェンリルどころかヤトやヤトの部下たちまでみんなまとめて消し炭にしてしまうからな。『燚焱の炎火』よりもかなり威力は落ちるとはいえ、これでも子フェンリルならば十分だ。死にはしないがダメージは見込めるだろう。

 案の定、子フェンリルが苦しむ悲鳴を上げる。

 

「イッセー殿!!かたじけないが、今のうちに治療を!!」

 

「わかった」

 

「わ、私も手伝います!!」

 

 俺はすぐさま取り掛かる。ロスヴァイセさんも協力してくれるようだ。

 とにかく、時間が惜しい。悪いが重傷者からやらせてもらう。

 見たところ、だいぶ被害を受けている。四肢の欠損、腹に風穴が開いている奴もいる。とにかく、そいつから治癒魔法をかける。魔法をかけるとデカい風穴があいていたやつの傷が無くなる。

 

「な!す、すごい・・・・・この重傷をこんな一瞬で・・・・・・なんて魔法の完成度なんですか・・・・・!?」

 

 ロスヴァイセさんが軽傷の治療をしながらこちらに愕いている。

 俺が治療をしていると、比較的軽傷の一人が懺悔のようにヤトに言った。

 

「すみません、団長。俺たち、何もできませんでした・・・・・・」

 

「気にする必要はないでござるよ、拙者もみての通りこのざまでござるから」

 

 そうヤトは自分の状態を強調した。たしかに、ヤトもボロボロだ。やはり、いかにヤトが龍王の上位クラス、否もはやそれを超えつつあるとはいえ、さすがにフェンリルは一筋縄ではいかなかった。

 

「イッセー殿も、申し訳ない」

 

 と、治療中のヤトの部下の一人からそういわれた。

 

「気にするな、今回は天照の鬼畜命令だからってことにしとけ」

 

 さすがにいきなりすぎたのだ。フェンリルを相手にするのは。

 

「イッセー殿は別格でござるからな。今回、イッセー殿は本気を出していないのでござろう?拙者に気を使って」

 

「そ、そうなのですか?さすがはイッセー殿」

 

「まあな」 

 

 たく、余計なことを。たしかに、ここで対()()用の魔法を使えばこの空間がヤバいことになるんだけどな。

 

「・・・・まったく、神を素手で殴り、あまつさえ足でけり落とすとは、なんと罰当たりな」

 

 こうしているうちにロキが復活していた。

 

「魔法使いであるというのに体術とは・・・・・・」

 

 ロキは傷の部分をさすりながら厭味ったらしく言った。

 

「わかってないな、悪神ロキ。魔法を使うものこそ体術を高めるべきだ。だから魔法も有用性が上がるってものだ」

 

 俺は逆に皮肉を込めて言った。

 

「まあいい。第二回戦と行こうではないか!!」

 

 ロキがどこかへ向けて魔法を放った。

 それは俺たちに向けてではないのはすぐわかった。

 フェンリルたちが復活していたのだ。子フェンリルとフェンリルだ。ヤトの一撃を受けたフェンリルの傷は傷口が塞がれていた。しかし、傷跡は消えていないな。

 

「なるほど、我が盟友を倒したか」

 

 よく言うぜ。精神、もしくは催眠系魔法を使って操っていたくせによ。

 

「では、こちらも追加の戦力を出そう!!」

 

 ロキが指をパチッっと鳴らす。

 すると、巨大な魔法陣が出現する。そこから現れてきたのは見覚えのあるドラゴンであった。

 

「イッセー殿!?あれは!」

 

「ああ、ミドガルズオルム・・・・・・に似ているがあれは本人じゃない。おそらく、ロキが作り出したドラゴン、コピーに近い存在だろうな」

 

 俺はそう推測した。ミドガルズオルムにしては力が弱かった。とはいえ、あの数だ。ミドガルズオルム擬きが15体か。骨が折れるな。あっちは計19体に対してこっちはヤトと俺の二人だ。

 

「イッセー殿。申し訳ない。拙者はフェンリルを相手にするのが精いっぱいでござる」

 

「ああ、気にするな。ヤトは十分戦っている。ほかのやつらは俺がまとめて相手してやる」

 

 と奴らを相手取ることを決めた時だった。この空間に何やら違和感が生じた。何者かがこちらへ転移してくるような気配を察知した。しかも、この感覚。どこかで・・・・・・・・・まさか、まさか!?

 ドォォォォォォォォン!!!!

 なんと、いきなりロキへすさまじい光の攻撃が放たれたのだ。ロキはおそらく魔法陣でガードしただろう。

 

「イッセー殿、これは・・・・」

 

「ああ、今のは俺じゃない。だとすれば・・・・・」

 

 俺は攻撃したやつがいる方向を特定し、目を向けた。

 

「やあ、また会ったね」

 

 そこには、白龍皇がたたずんでいたのだった。

 




というわけでした。ではまた。
そうそう、自分が投稿しているもう一つの作品もよろしくお願いします。あちらも同時に並行して投稿できればと思っております。そちらの作品も、我がHSDDプロジェクトの一環です。


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設定ミニコーナー

龍帝の豪火 『アラストール』

*絶技にしてジョーカーの一つ、燚焱の炎火の弱体化版。

安息 『サクラメント』

*主に獣の興奮状態を抑えて眠りにつかせる魔法。
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