ハイスクールD×D ―魔法使いと龍―   作:shellvurn 次郎

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みなさんどうもこんにちわ。作者のマユです。
最近こっちの作品よりも、新作のほうのアイデアばかり勝手に浮かんできて苦しいですね。
まあ、今苦しいのは京都偏であとはプロットは固まっているんですよね。
新作はもちHSDDですよ。てか、新作はいま3話だけ投稿して止まっている作品のことなんですけどもね。


No,LIV ~英雄の子孫たち~

「誰だ?お前たちは?」

 

九重たち一向と合流した直後、俺たちの目の前に立ちはだかる集団に遭遇した。京の由緒ある建物の屋根に堂々と立っている集団は少し数が多い。おそらく幹部だと思われる6,7人の後ろにもまだ2,30人いた。

京の都に住み、この京を守らんとする九重たちはこの京に侵入した異邦人たちに完全に敵意をむき出しにしていた。

 数十人の集団を代表するかの如く俺たちの前に立ちふさがる連中。その中の一人が俺たちに声をかけてきた。

 

「やあ、初めましてだね。魔法使い。いや、僕たちの同業者(おなかまさん)。ここに来てくれたということは、僕からのささやかなる手紙を読んでくれた、ってことでいいのかな?」

 

 落ち着いた雰囲気で話し始めた男。見た目は俺と変わらないくらい。そんなことはどうでもいいが、それよりも気になるのは奴の格好だ。とんでもなく分厚い書物を抱え、魔法使いを思わせるようなあのローブ。あの分厚い書物。おそらくは魔術関連のものだ。どこか見覚えのあるものだった。いや、ただの魔術書ではない。魔術書はこの世界にありふれているものだ。あれはそこら辺にある有象無象とは違う。高位魔術書(グリモワール)だ。有名な魔術師が執筆した可能性が高い。そんなものを持っているということはやつは並みの魔術師ではないはずだ。奴の後ろにはほかにも何人も魔術師がいやがる。よくこんな人数を集めたもんだ。

 

「手紙?そんなものは知らん。知らん奴から送られてきたものには覚えはないな。俺が最近受け取った手紙は京の八坂からのものだけだ」

 

「おや?おっかしいなぁ。結構苦労して調べたつもりなんだけどなぁ。もしかして間違ってたのかなぁ?まあ、曾おばあ様の書物にもかろうじて載ってたくらいだしなぁ」

 

 どうやら手違いがあったようだ。

 というか、俺の家がそう簡単に特定されたら困るってもんだ。

 

「まあいいや。仕切り直してだ。改めて初めまして。僕たちは英雄派と名乗っているよ。一応、禍の団(カオス・ブリゲード)に名を連ねている」

 

 どんな集団かと思ったら、一度耳に入れたことのあるような名前だったのだ。おそらく俺の教え子から聞いたものであった。

 

「へぇ、お前らが禍の団(カオス・ブリゲード)か。最近耳にする三大勢力に敵対する奴らを集めた不穏分子たちだったな。たしか、魔女の夜(ヘクセン・ナハト)やニルレムも加担してた組織だったような気がするが」

 

「その通りだ。さすがというべきかな?」

 

「そんなことはさして重要なことじゃないだろ。お前らは何をしにここへ来たんだ?」

 

 俺が奴らに目的を尋ねる。こんどは魔法使いではなく、そのとなりの東洋人っぽい男が答えた。衣服を見ると中国特有の漢服を身にまとっている。

 

「俺たち英雄派がこの京に訪れた目的はおおまかに言うと2つだ。まずひとつは、この地でとある実験をすること。もう一つは君だよ、魔法使い」

 

 どんな実験かも気になるが、俺が狙いだということのも気になった。

 

「俺だと?なぜ俺のようなただの人間に、お前らみたいな連中にとって用がある?」

 

 俺はまじめに言っているつもりだったが、東洋人はあきれたように言った。

 

「ははは!謙遜にもほどがあると思うがね。第一、君のような存在がただの人間だと言われたら、それこそほかの末裔たちはだたの人間以下に成り下がることになるだろう」

 

「その通りだよ。そうだろう?偉大なる大魔法使い、マーリン=アンブロジウスの末裔よ」

 

 幹部らしき魔法使いが放った言葉に俺は衝撃を受けた。ほとんど俺の存在という存在を看破されていた。ま、唯一相手が勘違いしていたことは俺が正しくは末裔ではなく、その子供だということだ。しかし、末裔というのはほぼ合っているようなものだった。

 今まで俺のことはこの裏世界において全くと言っていいほど知られなかった。いや、なるべくそのように仕向けていたはずだ。どこで知られた?これには流石に俺も警戒を強めざるを得なかった。

 

「・・・・・・どこで、それを知った?」

 

 相手の目を見るに、ハッタリでもカマかけているわけでもなさそうだ。ここで言いつくろっても駄目だろう。おれは大人しく認めることにした。

 

「ははは、これだよ」

 

 魔法使いは抱えていた分厚い高位魔術書(グリモワール)をとりだした。

 

「魔術書だと?」

 

 俺は怪訝な目でその魔術書を見た。

 

「そうさ。これがなければ、僕はおそらく君のような存在にきがつけなかっただろう。あ、そうそう、申し遅れたね。僕の名前はゲオルクと名乗っている。ファミリーネームはファウストだ」

 

 ゲオルク、ファウストだと・・・・・・・・・

 聞き覚えのある名前どころじゃない。奴はこの界隈では大物中の大物であったのだ。

 

「おまえ、ファウストということは、あの偉大なる大魔術師、ゲオルク=ファウストの末裔か」

 

「その通りだよ。まあ、僕と曾おばあ様では実力差がありすぎて、ファウストと名乗るのは申し訳が立たないけどね」

 

 曾おばあ様、奴はそういった。つまり、あいつはファウスト四世だということになるな。

 ゲオルク・ファウスト。本名はヨハン。昔、俺と切磋琢磨し、技を研鑽しあってきたおれの良きライバルだった。それでいて、聡明な女性であった。ヨハンはその後、めちゃくちゃでかい魔術結社の創設に携わった、と聞いた。そのあとのことは知らないが。

 ちなみに、なぜか現代ではゲオルク・ファウストは男という風に伝わっている。どこでどのようにしてこうなったのかは知らない。だが、過去の偉人には男装女装など転装は珍しくない。このおかげで性別が異なって伝わることも少なくはない。もしかすれば意図的かもしれないが。

 にしてもなぁ。ヨハンのやつ、いつのまに子孫なんて作ってやがったんだ?知らなかったなぁ。あのやろうそんなそぶりは見せていなかったが。

 

「俺たちはそんな集団だ。おれは曹操と名乗っている。三国志、魏の皇帝曹操の末裔だ」

 

 昔の良きライバルのことを懐古していると、隣の東洋人が名を名乗る。

 

「曹操・・・・・・・・、ということは、CAO,CAOか」

 

「そうだな、それは英語での読みだが、一応曹操よりもそちらのほうが正しいがな」

 

「僕はジーク。北欧の剣士、ジークフリードの末裔だ。同じ西洋人同士、よろしく」

 

 隣の東洋人はまたもや大物の末裔だった。そして、皇帝、曹操のとなりにいる禍々しい西洋の剣を帯刀した男は名を名乗る。ジークと言った。こいつもまた、歴史に名を遺す英雄だった。剣一本で龍を滅ぼした英雄中の英雄だ。

 そして、やつらが名乗ると同時に彼らが手にしている武具に目が行った。

 

「曹操の末裔・・・・・・・、それは神滅具(ロンギヌス)か。そちらは魔剣らしいな」

 

「その通り。わが身に宿りし神器(セイクリッド・ギア)黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ」

 

「さすが、博識だな。これは魔剣の帝王。魔帝剣グラム」

 

「ちなみに僕はこれ、絶霧(ディメンション・ロスト)だ」

 

 ヨハンの末裔が自身の周りに紫色の濃い霧を出した。あれではっきりわかった。こいつ、ゲオルクの子孫でありながら神滅具(ロンギヌス)を持っているとは。

 

「まさか、新滅具(ロンギヌス)や伝説の武具までも持っているってのか。さすがは英雄ってところか」

 

 やつらの神器(セイクリッド・ギア)に目が引き寄せられる。黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)絶霧(ディメンション・ロスト)。どちらも今確認されている十三ある神滅具(ロンギヌス)のなかで上位四つと言われているものだの二つだ。あの伝説の偉人、イエスを貫いた血に濡れた聖槍。結界に関しては最強かつ最悪の能力を有する神器。どちらも極めれば手が付けられない上位神滅具(ロンギヌス)だ。

 正直、新滅具(ロンギヌス)だらけの集団など、厄介極まりない

 

「そんなことはない。これが宿ったのは単なる偶然さ」

 

「まさかとは思うが、全員神器(セイクリッド・ギア)を所有しているのか?」

 

「その通りだ。俺たちは世界中の英雄たちの子孫や神器所有者(セイクリッド・ギア・ホルダー)たちをかき集めたんだ。ほかにも、神滅具(ロンギヌス)神器(セイクリッド・ギア)所有者はいるさ」

 

「ほう、それはさぞ面白そうな集団だな。にしても、よくそんなに集めたな」

 

「ははは、おほめにあずかり光栄だ」

 

「というわけだ、アンブロジウスの子孫よ。早速本題に入ろう。単刀直入に言おう、我々は君を勧誘に来た」

 

「勧誘だと?」

 

「そうだ。我々、英雄派に加わらないか?キミには正真正銘、英雄の血が流れている。キミは僕らの同胞となるに相応しい」

 

「俺を加えてどうする気だ?お前たちにメリットがあるのか?」

 

「当然だ。メリットでしかない。君のような伝説の偉人の末裔が仲間になれば、さらに我々は行動の幅を広げられる。どこもかしこも人材不足でな。それは我々も例外ではない。人員は多いに越したことはないさ」

 

 こんどは勧誘か。

 そういえば、俺の生徒もこいつらに勧誘されたって言ってたな。それも相当しつこかったとか。

 

「いきなり勧誘されて、俺が首を縦に振るとでも?」

 

「ははは、だろうな」

 

「うぬぬぬ・・・・・貴様ら、黙ってい聞いていれば!母上をさらったのは貴様らじゃな!?母上を返せ!!!!」

 

 先ほどからずっと相手にされていなかった九重がついに堪忍袋の緒を切らした。

 ちいさな女の子とは思えない怒号を英雄派のやつらに突き付けた。

 

「おや、仲間外れにしてしまって申し訳ありません、小さな姫君よ。ですが、安心してください。お母上どのは一切傷つけないと約束しましょう」

 

「貴様らのような輩の言うことなんて信用できるわけないじゃろ!」

 

「まあ、それならば仕方ありませんね。しかし、我々としても、スポンサー様がいるのでね。どうしても八坂姫にはご協力してもらわないといけないのですよ」

 

「き、貴様ら・・・・・・・」

 

 残念だが、こいつらがいまどこに八坂を誘拐しているかわからない。言葉ではああいっているが、最終的に人質にする可能性もなくはない。大妖怪である八坂は龍王の下位クラスの実力はあれど、こいつらの力量は今のところ未知数。簡単にはやられはしないだろうがもしかするということもありうる。今の時点では下手に動けないということがわからない九重ではないだろう。

 

「おたくらがどこでどうしようと俺が口を出すことではないんだがな、ここで暴れるのは遠慮してくれないか?京は数十年前に邪龍によって壊滅的被害を受けてな。それでいろいろ今もそういったことには敏感なんだ」

 

「なるほど、それであれほど殺気だっていたと。しかし、安心してくれ。できる限り、我々は悪魔たちのような破壊活動はしないと約束しよう。それは、我々の目的から外れるからな」

 

 曹操の末裔は俺たちに破壊活動はしない、とに言った。いわゆるテロリストと定義されるであろう奴らにしてはなかなか話の分かる奴ららしい

 

「お前らがこうして活動する目的はなんだ?仮に俺を構成員にして、その先に何を見据えている?」

 

「我々がこうして活動する目的は単純明快だ。人間として、異形たちを相手にしてどこまでやれるか。人間の限界とやらに挑戦したいのさ」

 

「アンブロジウスの子孫よ、ドラゴン、天使、悪魔、神、吸血鬼。数多の異形たちを退治してきたのは人間―――――――そうだろう?そうてあるならば、我々は英雄を目指す者たち」

 

 やつらが見るからに用意周到なものだから、どんな目的があるのかと思ったが意外と簡単な話であった。簡単だが、それは壮大なものでもあった。人間として、か。おれはそんなこと、考えもしなかったことだ。

 だが、気持ちは分からんでもない。ただこいつらは戦いを求めているのだと。100パーセント相いれないと思っていたが、少しは通ずるものがあると思う自分がいることに俺は少し驚いた。

 

「なーるほど。お前らようするに戦い好きな集団か。あの白龍皇とさして変わらないな」

 

「ははは、確かにそうかもしれないな。言われてみれば彼とも似通った部分はあると思ったよ。やり方は違うけどね」

 

 こいつらの目的は理解した。

 だが、こいつらがいろんなところに勝手にケンカ売るのと、俺の古き友人とその子供を巻き込むことはまた別の問題だ。俺はそのことだけは、認めることが出来ない。その静かな怒りも含めて目の前の奴らに忠告してやる。

 

「そうか。お前らの考えは分からなくもない。だがな、俺はそのやり方には賛同しない。聞けば、様々な神話勢力に喧嘩を売っているようだな。超常の存在と戦うのはいいが慎重に行動しなければ、我が身を滅ぼすことになるぞ?英雄派。俺は、俺のやり方でやらせてもらう」

 

「そうか、キミの考えは分かったよ、アンブロジウスの末裔よ。ならば、少し手合わせ願おうか。同じ、英雄として」

 

「いいだろう。お互い戦いを求めるもの同士だ」

 

 話し合いも結論は出た。ここからは言葉は不要だ。

 俺とやつら、英雄派は互いに戦闘態勢に入る。

 と、その前にやることがあった。

 

「京の警備隊、九重を頼むぞ」

 

「はっ!」

 

 俺は残り少ない護衛たちに九重を任せた。

 それに納得がいってなさそうな九重は俺に反対した。

 

「イッセー殿!無理じゃ!あの人数を一人で相手にできるわけがない!ここは我々も!」

 

 九重は俺の身を案じてくれているのか、共に戦ってくれると言ってくれた。

 しかし、正直九重たちが相手どることができるとは思えない。ここは九重を守るという選択をとる。

 

「九重。気持ちはありがたいが、敵わないということはじぶんでもわかるだろう?」

 

「じゃが!」

 

「気持ちは嬉しいよ。それなら、九重。月夜や鞍麻たちを呼んできてくれ。あの人数だからな」

 

「お姉さまたちをか?」

 

「ああ。お前はまだ戦闘に慣れていないだろう。ここで無理に戦う必要は無い。現状、お前が出来ることはすぐにこのことを京の主戦力に伝えるべきだ。これはお前たちの町を守るためでもある」

 

「しょ、承知した!それまで、無事でいるのだぞ!」

 

「ああ」

 

 そういって九重たちはここから離れていった。

 

「話はすんだか?、アンブロジウスの子孫よ」

 

 俺は英雄派の方へ向きなおした。正直、こうしている間にも攻撃を仕掛けてくるかと思ったが、律儀に待ってくれいてたようだ。

 

「ああ、すまないな。ああそうだ。一つ聞いていいか?」

 

「ああ。俺たちの持ち得る拙い知識で答えられることならば全て答えよう」

 

 戦いにはいる前に俺は先ほどから少し引っかかっていることを尋ねた。

 

「先ほど、お前らはスポンサーとか言っていたな。背後に何がいる?バックには誰が付いている?」

 

「済まないな。悪いがそれだけに関してはこちらもお答えしかねる。スポンサー様のことは口止めされているからね」

 

「そうか、だったらいいさ」

 

「では、始めようか」

 

「ああ」

 

 こうして、戦いの火ぶたが切られる。

 今回は同じ人間が相手。同族だ。今まで異形たちと戦ってきたが、ここで同じ種族と戦うことになるとは。

 まずは、英雄派たちがどう動くか、見極める。

 ついでに、やつらの手の内というカードを切らせることが出来れば上等だ。

 

「ゲオルク様!!私たちに相手をさせてください!!」

 

 戦いはすでに始まっている。しかし、連中は大隊クラス以上の団体さん。誰が俺の相手をするかでもめているところだった。

 

「わ、我々こそ!あの魔法使いに一太刀浴びせます!ジーク様!我々に行かせてください!!」

 

「キミたちがか?やめておいたほうがいい。今の君たちでは彼の相手は務まらない」

 

「それでもつ!」

 

「こんな機会は貴重なんです」

 

「やれやれ困ったものだ」

 

 しかし、流石、英雄の末裔と言ったところなのだろうか。慕う人間も多いらしい。やはり、なんだかんだ言って人を引き付けるカリスマ性というものがあるのだろうか。ヨハンの末裔の周りには主に女性の魔法使いらしき群衆が、そしてジークフリードの末裔の周りにもこれまた主に女性剣士が群がっている。ホント、英雄の末裔たちは異性を引き付けるのか。

 結局、彼らの制止を振り切って集団が俺に向かってきた。

 

「大魔法使いの末裔!」

 

「覚悟!!」

 

 三流の台詞を吐き捨てながら彼らはこちらに向かってきた。

 魔法使いたちはこちらに魔法を放ってくる。魔法陣を見れば、そこそこ勉強はしているらしい。連携もなかなか形にはなっている。そこらへんの奴らになら通用するだろう。よほど、こいつら末裔たちが鍛えているのだろう。しかし、俺から言わせてみれば厳しいだろうがまだまだだ。

 彼らの攻撃をすべて無力化し、全員に攻撃を叩き込む。俺の攻撃をくらった英雄派の構成員たちは全員のびている。

 

「ふむ、やはり彼女等では相手にもならんか」

 

「いうまでもないけど、全員気をつけるべきだよ。気を抜けば一瞬でやられるよ」

 

「あっ、おい!ゲオルク!抜け駆けは汚いぞ!」

 

「早い者勝ちだ」

 

 ヨハンの末裔、もとい、ゲオルクの末裔は格好の敵を見つけたような笑みを浮かべる。後ろでなにやら文句を言っている大柄な男を背にして軽快なステップで建物から飛び降り、俺と同じ高さ、地面に着地した。

 

「ここからは僕が相手をするよ、アンブロジウスの子孫」

 

「いいぜ、こいよ」

 

 ここで会ったのは宿命ともいうべきか・・・・・・・

 我がライバルの子孫と戦うことになるとは思いもよらない。ましてや、ゲオルクの子孫がいること自体知らなかった。

 楽しませてもらおう。

 

「ふっ・・・・」

 

 奴は即座に攻撃をこちらに放つ。それを跳躍して躱す。ヨハンの奴がかつて極めたのは魔法と似ているようで似ていない魔術。

 奴が放ってきた攻撃は魔法とも見れるが少し魔術のものが混じっている。

 

「なるほど、この魔法。見たことない術式が混じっているな」

 

「流石だ。わかるのか。ではこれはどうかな?」

 

 余裕そうな表情をし、さらなる攻撃を放つ。やつの魔法、視てみても俺にもわからんところがある。流石、ファウストの末裔ってとこか。

 

「いけっ!」

 

 俺の放つ光槍が暗黒色の奴の魔法を撃ち落としていく。魔法同士が衝突し合うたびに騒音と粉塵が舞う。

 

「そら、お返しだ。龍帝の豪炎(アラストール)!!」

 

 子フェンリル相手にその威力を証明した炎をやつに放つ。

 

「っ!!これはっ!?」

 

 自分に向かってくる魔法の威力をある程度把握したのか、驚きの声をあげる。だが、ヨハンの末裔だと名乗るのなら、この程度では倒れてくれるなよ。

 炎がヨハンの末裔に直撃した。フェンリルのその身を焼いた炎を喰らって、生きていられる人間などいない。だが・・・・・・・・・・・

 

「ふぅ・・・・・・・流石の僕も走馬灯が見えかけたよ。ほんと、凄まじい魔法を見せてくれる」

 

 ヨハンの末裔は冷や汗を垂らしながら言う。奴がおれの魔法を防いだカラクリを見定める。 

 

「へっ、その神器、そんなことも出来んのかよ。器用すぎるだろ」

 

 ヨハンの周りには紫色の霧が浮かんでいた。

 

「これも、僕の神器絶霧(ディメンション・ロスト)の一つの能力さ。これがなかったら危なかったよ」

 

 結界系の神器だったか?だとしたら、自分の周りの空間を隔絶させたのか?

 そんなことをされたら、いくら強力な魔法でも届かない。

 

「ほんとに厄介な神器だ」

 

「まだまだこれからさ」

 

「っ!」

 

 俺の周りを取り囲むほどの魔法陣の数。なるほど、この威力のものをこの数生み出せるとは中々研鑽をしているようだ。

 

「北欧式、ルーン魔術、黒魔術、白魔術、etc・・・・・・・・。よくもまあそんな種類取得したな。」

 

「まあね。結構しんどかったよ」

 

 たしかに、ヨハンを思わせるこの才能。魔法使いとして、魔術師としては世界でも最高の逸材の一人かも知れない。

 だが・・・・・一つ年長者からアドバイスを送ってやるとするか。少し大人げないかもしれないが。

 

「・・・術式破壊(グラム・レイザー)

 

 俺は自身の最も得意な魔法の一つを唱えた。

 俺の魔法が発動した瞬間、この空を覆いつくしていた魔法陣が全て無に消え去った。

 

「なっ・・・・・・・・」

 

 ヨハンの末裔は何が起こっているかわかっていない顔だ。自分の発動した魔法陣が一期に消え去った状況に理解が追い付いていないようだ。

 

「なんだと・・・・・・?何が起こっている・・・・・?グハッァ!!」

 

 隙だらけであるやつの顔面に俺の拳がクリーンヒットする。やはり、魔法にはたけているよだが、武術に関してはからっきしらしい。

 

「確かに、流派の全く異なるものをあそこまでやっているのは驚いた。だが、練度も強度も足りないな。あの程度の強度なら簡単に無効化できるさ」

 

「くっ・・・・・・・」

 

 ヨハンは苦虫をかみつぶしたような顔をする。少し厳しかったか?

 

「ん?」

 

 奴の魔法を無力化した瞬間、背後から気配がした。大柄な男が俺の背後から襲い掛かってきた

 

「はっ!相手してもらうぜぇ!魔法使い!!」

 

「なっ!?邪魔をするな、ヘラクレス!!」

 

「はっ!固いこと言ってんじゃねぇよ、ゲオルク。俺も混ぜろってんだよ!」

 

「・・・・」

 

 大柄な男の背後から繰り出される攻撃。確かに力が込められた重い攻撃だ。だが・・・・・・・・・・・隙だらけだった。

 俺は大柄な男の攻撃を躱し、鳩尾にするどい肘撃ちを浴びさせる。

 

「ごほっ・・・・・な、なんだそりゃ・・・・・・・・・」

 

 ドッ、という人体にとってよろしくない音がしたと同時に大柄な男が後ろに吹き飛んでいった。だが、思ったよりも飛距離が出ていなかった。やつはどうやら少しはダメージを軽減させたようだ。

 

「ほう・・・・ヘラクレスは我々のなかでも武術に関しては達人級なのだが・・・・・・不意打ちを完全に返り討ち、か。魔法使いだというのに、武術にも精通しているとは・・・・・・化け物だな。いや、さすがというべきかな」 

 

 高みの見物を決め込んでいる曹操は驚きを隠せていなかった。

 

「へっ、不意打ちなんざ想定の範囲内さ。不意打ちなんざ、戦いにつきものだろう?」

 

「おや、君は不意打ちなどといった卑怯な手は好まないと思っていたが」

 

「勝手なことを。これは戦いだ。スポーツじゃない。最後に立っていたやつが勝つんだ。反則技なんて普通だろ?というか、反則技なしで神やドラゴンに挑もうなんて考えてないよな?それだったら認識を改めることをお勧めする」

 

「・・・・・そうだな、愚問だったな。」

 

「では、僕も参加させてもらおう。」

 

 と、曹操と会話が途絶えた瞬間、俺上方に気配を感じた。

 鋭い斬撃が俺のもとへ届く、そのような予感がした。俺はそれをかろうじて避ける。俺の感覚に刷り込まれた剣戟の感覚だ。

 

「ふ、やるね。今のも避けるかではこれは?」

 

 白髪の男が間髪入れずに斬りかかってくる。奴の手には魔帝剣グラム。使い手が券を選ぶのではなく、剣が使い手を選ぶ魔剣の頂点に君臨する剣。おそらく、聖王剣、真聖剣とは対になるような存在だ。それを軽々とこのスピードでふるって来やがる。兄さんほどではない。速さも鋭さも重さも。しかし、それでも俺の剣より遥かに上だ。

 剣が俺により届くようになっていた。自身が剣を持たずに相手の太刀筋を見切るのは剣戟において難しいのだ。俺は限界を感じ、即座に切り札を取り出した。

 

 刃と刃が交錯する音が鳴り響いた。白髪の男は初めてうれしそうな顔をした。

 

「へぇ、なんだ。君、魔法使いであるのに剣も持っているんだね。面白いよ。アーサーも面白かったけど、君もだね」

 

 笑みを浮かべた白髪の男は俺から距離をとった。その直後、奴の周りからは7本の剣の柄が出てきた。

 

「僕は魔剣を集めるのが趣味でね。今はグラムを合わせて8本だ。まだまだ少ないけどね。ああ、今回はグラムしか使わないよ。こいつも、君と戦いたがっている。正確には、君のその()とね」

 

 奴が意味ありげに言う。俺はため息をつき、この剣に施された秘匿技術を解除した。

 

「・・・・・顕現せよ(フル・クリア)

 

 俺が呪文を唱えると、光が俺の剣へと集まっていく。そして、何もなかった虚空から聖剣が現れる。

 

「真聖剣エクスカリバー」

 

 完全に正体を表す切り札、エクスカリバー。これを表に出すのはこれで2回目か。

 この聖剣をみた正面の白髪の男は非常に興奮していた。

 

「っ!これは・・・・・・」

 

 英雄の子孫たちはこの剣の全貌を目の当たりにし、驚愕した。

 

「ははっ!はははは!!!!それは!こんなものに出会えるとは!!まさかあの伝説中の伝説の武具、もはや宝具といっても過言ではない最強の聖剣のもう一つの片割れ(真聖剣エクスカリバー)に出会えるとは!!こんなにうれしいことはない!!道理で見つからないわけだ!だが!アンブロジウスの子孫の手に渡っていたのなら、納得がいくな!!」  

 

 そんなに雄弁するほど、うれしいのだろうか。クールな雰囲気だった魔帝剣の使い手は別人かと思うほど熱くなったいた。

 

「これなら本気になれるよ!行こうか、グラム」

 

 魔帝剣はそれに呼応するかの如く、禍々しい力が増す。

 

「はっ!!」

 

 再び、刃と刃が交錯する。

 剣に関する才能はからっきしの俺だが、流石にわかる。間違いなく剣術に関しての技量は相手が圧倒的に勝っているのは間違いなさそうだ。

 相手の剣戟に合わせ、エクスカリバーで防ぐ。やはり得物があるとないとではやりやすさがちがった。

 

「ふぅん、なるほど。さすがのアンブロジウスの子孫も剣術までは完全に体得してはいないようだね」

 

 北欧の英雄ジークフリードの末裔は勝ち誇ったように言う。だが、その勝ち誇った表情もすぐに消えた。

 

「技量はこちらが勝っているだが・・・・・・武具に関してはそちらのほうが上のようだね。この魔帝剣をもってしても真聖剣には及ばないようだ。」

 

 その通りだった。俺は完全に真聖剣の性能だよりだ。 剣術の才能がかけらもない俺は真聖剣でなければ負けているだろう。

 俺は魔法を交えた戦いに切り替える。

 

「なにっ!?魔法か!」

 

 突然地面に魔法陣が現れ、太い針のようなものがジークフリードの子孫を襲う。

 しかしさすがは英雄といったところか。ギリギリのところで攻撃をよける。

 

「はっ!!」

 

「グゥッ!!」

 

 俺はその隙を見逃さず、エクスカリバーを振り下ろす。先ほどの攻撃の分、反応が鈍かった。

 

「グ八ッ!」

 

 蹴りをやつの顔に叩き込んだ。こんなのはもはや剣術でも何でもない。何でもありの戦いだった。

 蹴りを食らって吹き飛んだジークフリードの末裔はよろよろと立ち上がり、恨めしそうにこちらをにらんだ。

 

「くっ、蹴りと魔法とはやってくれるな・・・・・」

 

「悪いなぁ。こちとら剣術はお話にならないほどだからな。はなっから剣の戦いをするつもりはねーよ」

 

 みたところダメージはあるようだ。

 

「ジークフリードは龍を滅ぼし、その肉体は堅く、不死とまで言われたそうだな。みたところ、子孫を名乗るお前にはその特性はないと見た」

 

「くっ・・・・よく知っているじゃないか」

 

 英雄にはあった特性がないと看破された子孫は悔しそうに言う。もしもそんな特性があれば厄介極まりないものだ。

 

「苦戦をしているようだね、ジーク。わるいが、退屈していたところだ。参加させてもらおうかな」

 

 俺の背後に曹操の末裔が凄まじい跳躍で降り立った。今まで俺の相手をしていたジークフリードの末裔は納得していない様子であった。

 

「さて、ではいくとするか」

 

 神滅具(ロンギヌス)である黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)を構え、戦闘態勢に入る。前後の警戒を俺は強めた。前には魔帝剣、後ろには聖槍。どちらも真聖剣には劣るとはいえ、伝説の武具だ。油断は許されない。

 互いに相手の出方をうかがう。その刹那―――――

 

「なんだ―――――?」

 

 この戦いのなか、唐突に金色(こんじき)の魔法陣が俺と英雄派たちを遮るようにして現れた。

 その現れた魔法陣から、英雄派に向けて攻撃が放たれた。俺にとって援護という形になるかのように。

 英雄派たちはその攻撃をことごとくよけていく。

 また新たに魔法陣が現れる。しかし、今度は攻撃を放つ魔法ではない。転移魔法陣であった。その魔法陣から現れたのは一人の可憐な少女とそれに追随している巨大なゴーレム、そして因縁のある見たことのある獣であった――――――――――

 

 

 to be continued~~~~~




ほんとうにお待たせしました。
夏休みだとおもって書けるだろうと油断していたら結構時間がたってしまいました。
少し文章から離れていたので思ったように進まなかったです。新作のことばかり考えてしまっていました。
リハビリが少し必要ですかね

今執筆中の小説に加えて、新作を同時並行するか、もしくは一本に絞るか。参考までに意見を。

  • 同時並行でもよい
  • 今の小説に絞る
  • 今のを少し停止して新しい小説を投稿
  • まかせる

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