人理修復を終えた人類最後のマスター。

彼らの前に、新たな特異点「外伝特異点」が出現する。

第四の特異点、それは「魔法」が存在する、次元世界

並行世界が産み落とした「厄災」が動き出す―――





現在、友人の作者さんと企画している作品の読み切り短編です。
なので、内容は連載する場合と違っていると思います。っていうか違うと思いますので、そこはよろしくです。

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昔からの知り合いの作者さんとコラボって作った作品の短編です。
タイトルを見ると分かりますが、FGOとなのはのクロスですね。
時系列は「一応」Stsですが、あくまで舞台となる世界の時系列はですので、そこはご了承を。
で。なんか別の型月の人もいますが、そこはまぁ……暖かい目で。

そして。今回初めて、別作品のキャラを鯖化していますが、かなり設定弄っている半オリジナル系のキャラになってます。多分、読んでると何系になっているか分かると思います。
クラスは作中で語られるもので、スキルは……ワリとぶっ飛んでます。

本編となるコラボでは、この短編の他にいくつかの自分たちの作品が混ざったごちゃ混ぜの作品となります。多分、これ書いて分かるのは書いた自分たちと昔から見ている人、過去の自分たちの作品を見た人でないと難しいと思いますので、場合によっては過去の自分の作品を見てからお願いします。……ま、あの後かなり設定弄ったので、質問してくださってもOKです。っていうか、絶対にして下さい。多分、自分だけ分かってるような雰囲気になってしまってます。


最後にですが、本編となるコラボは別サイトで連載する予定です。
投稿するサイトは「TINAMI」の予定。一応、昔から使ってるサイトで過去の作品も置いてます。ただし、始めたばっかの時のものばかりなのでワリと酷いです(汗
質問、疑問等は感想やメールで受け付けます。解答できるものは活動報告などでご報告させていただきます。

それでは、短編ですが、お楽しみください。


Fate / Grand Order × NANOHA = Strike Breaker’s =

 

 「―――人は、成長すればいずれは大人になる。けど、それは外見だけで、もしかすれば精神的にはまだ子どもであるかもしれない。童心を分かるからこそ、大人たちは子どもの気持ちをわかってやれるのだからな。

 けど、問題はそこだ。精神。つまり大人と子どもの線引きだ。体だけが、外見だけが大人になっても、中身が子どものままということもある。だから大人たちは揃って「大人になればわかる」「お前も大人になれ」と相手の精神が子どもであると指摘する。けど、その当人が子どもだって言われることもある。

 なら、子どもと大人。この精神の線引きはどこで行われるのか。

 そんなものは実はありはしない。私たちは一定の間隔と平均は知っているが、明確なラインは引いていないんだ。人によって大人と子どもの線は違っているのだからな。

 だから「大人と子どもの線」というのに絶対的、明確な線はあり得ないんだ。それを自分の引いたラインこそが絶対。全世界共通の基準だと考える者は……正直言って馬鹿だ。だってそうだろ? 人間とはそれぞれの基準、考えがあるからこその千差万別さだ。それが無くなれば意味はなく、過去の歴史で提唱されてきた哲学や理論なんてものは全部一つになっちまう。一方通行。曲がり角どころか、方向転換もできない永遠の単一。

 そんなものは存在しない。だから人間は幾つもの理論を提唱し、哲学を唱え、学論を話し、打ち立てて来た。単一による消滅、他の選択肢を考えるという思考を停止させないためにな。

 ……長話になったな。が、これで最後だ。では、その複数へと枝分かれした大人と子どもの線。これはそれ以前の問題だ。

 

 

 

 もし。大人と子どもの線引き。それすらもなく、子どもの意識だけが成長すればどうなるか。大人にもならず、永遠と子ども的な思考であればどうなるか。

 ま。想像するのはしょうもないものだが、それはそれで恐ろしいものだぞ?

 子どもの思考というのは、自分が強請れば誰もが従ってくれる。自分の思い描いた世界になってくれる。そういった夢物語を本気で信じ、叶えようとするのだからな」

 

 だから子供の思考は時として恐ろしいものになる。

 そういって蒼崎橙子は再びタバコの煙を燻らせる。煙はやがて、小さな塵となり、そして無へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ひとりの少女の話をしよう。少女は最初、それは何処にでもいる普通の少女だった。普通とはどこか違うが、ありきたりな家庭の中で、少女は平和を謳歌していた。

 だが。ある日、あの時の出会いが少女の全てを変え、運命の歯車を動かした。

 少女は偶然にも摩訶不思議な力を手に入れた。それは俗にいう魔法と呼ばれる力で、注の力によって少女は様々な事件に巻き込まれ、解決し、そして新たな友を作って来た。

 魔法によって彼女の周りは変わった。魔法のお陰で、彼女は自分の存在意義を知った。

 魔法があったからこそ、今の自分がある。

 だから。魔法が無くなれば、魔法から目覚めてしまったら最後。

 彼女の周りから、全てが消える―――

 

 

 

 目蓋を開き、意識が働き出すとも麻痺していた感覚が動き出して全身に激しい痛みが駆け巡る。秒間すらもなく感じた痛みは、体を叩き起こすには十分なもので、開いた目蓋は一度強く締められると、重かった筈が少し軽くなって開かれた。

 まるで、その強く目蓋を閉じたのは目の前の光景を遮り、逃避するためのようであると後から感じて。

 

「がっ……ぐっ……」

 

 目の焦点が合わず、視界がぼやけている。目の周りにあるゴミも少し邪魔をしていてはっきりと様子を見ることが出来ない。だが、頭のほうで段々と視界の調整がされていき、目の前の景色が見えてくる。

 

「―――ッ!」

 

 そこに映る光景は、目の前の現実を受け入れたくなかったという無意識から起こったことなのだと、無理にでも納得させるようなもので、それを見た刹那、目は大きく見開かれた。

 映し出された光景、自分の目が捉えた現実(景色)。一言でそれを言い表すなら、まさに地獄としか言えなかったからだ。

 ああ。だから、見たくなかったのかもしれない。閉じたくなるような光景は、そう思わざるえないような惨状だった。

 燃え盛る炎が至る所で燻り、鉄骨や残骸が各地に散らばっている。硝子の破片は、炎にやかれて小さく砕ける音を響かせていた。辺りは残骸の山となり、そこにあっただろう草や土からは焦げ臭いニオイが鼻に入ってくる。

 しかし、それ以上に鼻を刺激するのは、そこら中から臭ってくる焦げた肉のニオイだった。しかも肉のニオイは生々しく、血が付いたままの生の状態で焼かれているので鉄分のニオイがキツイ。おまけに焼かれ続けているせいで焦げ臭さが、乱れている呼吸を更に乱す。

 それもその筈だ。目の前だけでない、至る所に人間の死体が散乱し、それぞれ原型をとどめないほどの無残極まりない姿になっていたのだ。果たして原型をとどめている人間、生きている人間はいるのだろうかと考えてしまう地獄絵図だが、地獄絵図であるだけに生存の確率は絶望的だろう。

 

「けほっけほっ……」

 

 せき込んだ喉から、黒い煙とともに小さな赤い液体が喉の奥からせり上がってくる。止まる事の無さそうな咳の中から飛び出した液体は、黒く濁った色のまま地面に飛び散った。

 鮮血の血は、それだけで辛うじて自分が無事ではあるが、動ける状態ではないのだろうと考えさせてくれる。実際そうなのだろう。意識を取り戻してからというもの、体を動かす気にはなっても動いたためしはない。どうやら、全身のダメージがあるようだと薄れつつある意識を回転させ、冷静に分析する。こんな時まで冷静なのは、生き意地が汚いのか、それとも体が丈夫だからか。いずれにしても、辛うじて自分の周りに防壁(・・)を張っていた事が功を奏したようだ。

 

(ああ……ダメか)

 

 だが、体が思うように動かない。全身が激しい痛みを訴えて動かそうとしても痛覚が呼び寄せてくる痛みによって体が動かない。そして、恐らく守っていた体も、中はかなりぐちゃぐちゃにされているのだろう。

 そう思えると、自分の体が実はどれだけ非力だったのかというのを改めて実感できる。周りから見てもそこそこの体力と身体能力を持っていると思っていたが、それは間違いだったらしいと、掠れる意識の中で小さく笑い飛ばす。

 そんな時だ。

 

「―――――あ」

 

 明確になってきた意識が次第に朦朧としはじめ、頭の中がかき回されたかのように揺れ動く。視界はぼやけ、回り、崩れていく。体のダメージと失血の多さで、どうやら十分な血が頭に行っていないようで、その証拠に体からは赤い血が漏れ出ていた。

 だが、そんな状況でも目はしっかりと目の前に映る光景、そしてそこに立っている、たった二人の少女(・・)の姿を捉えていた。

 

(……何故だ)

 

 紅蓮の炎、冷たい鉄。冷え切った死体。燻り、焦げたニオイの中。その少女たちは立っていた。その姿を見て、最初は疑いを持っていた。だが、直後にそれは確信へと変化した。

 彼女たちは容赦も手加減もなく、自分たちを殺しに来たのだと。自分たちへ、復讐をしに来たのだと。

 だが。それは直ぐに納得できることではなかった。確信は持てても、それが納得へと至る理由が分からなかった。

 

(どうして……?)

 

 そう。どうして。どうして、こんな事をするんだ。

 ぼやけていく景色に、不意にそんな言葉が脳裏に浮かぶ。なぜなら、それが信じられないという理由の一番の根拠だからだ。

 

「な………ぜ………」

 

 残された力で掠れた声を喉の奥から絞り出し、言葉として発する。その疑問の声はか細く、力のない弱々しい声だが、低い声が空気を震わせていたからか、声に反応して少女たちが顔を振り向かせた。

 混ざり、揺らぎ、そして定まらない視界だが、炎の中をゆっくりと歩く少女たちの姿だけは、色の違いから捉えられた。

 白い服に栗色の長髪を揺らし、もう一人は黒い服にマント、薄い(・・)金髪の髪を纏めていた。流石に見えたのはこれだけで、表情や詳細は見て取れないが、それだけでも十分だった。

 

「―――ああ。やっぱりまだ生きてた。一瞬、魔力を感じたので誰かがバリアで生きているって思ってたけど」

 

「………。」

 

 栗色の髪の少女がぽつりと呟くように口を動かしながら近づいて来る。どうやら、爆発の中で生きていたことを気づいてはいたが、同時に少しは驚いていたようで、その判断には彼女も関心を持っていた。

 

「凄いね。あの一瞬で、自分だけでも守れるなんて。……いや、自分だけ守った、かな。だって、あの場で全員救う、なんて馬鹿馬鹿しい考え、できる筈ないもんね」

 

「な……」

 

 その隣で、金髪の少女は口を開くことなく眼下を見下ろす。そこに倒れる者、少女が話をつけるまで、しばらくは待っていようというらしい。

 

「だってそうでしょ? あの攻撃、爆発で全員を覆うバリアなんて、最初から攻撃を知ってなきゃできる筈がない。それに、それだけのバリアを展開するためには当然、比例した魔力も必要。

 けどね。そうやって、みんなを助けるってことを、果たしてあなた達がするか、って聞かれれば、私は直ぐに答えられる。

 それは、それだけは絶対にないってね」

 

 淡々と告げられる冷たい言葉は、今まで聞いたことのなかったセリフ。言うはずのない物ばかりだった。今まで、聞いてきた中で、知っている範囲では、彼女は絶対にそんな言葉を口にしない。考えもしなかったハズだ。

 隣に居る金髪の少女は、変わらず冷たい視線を向けている。逃がさないように凝視しているらしい。

 

「なん……」

 

「そう。助ける以前に、貴方たちは他人を助けようって思わない。だって、人間、最後は自分の命が大切だし、その為の術を持っている。であれば、人間は無意識に自身の保身を第一にして、行動を起こす。だから自分を助けることに全力を注ぐ。他人を助けるのなんてその後なんだよ」

 

「ち……がっ……」

 

「でもね。貴方たちはそれ以上に生き意地が汚い。他人がどうの以前に、自分だけが生き残ることしか考えていないの。他人を蹴落として、生贄にして。それで生き残る。だから、周りがどうなろうと知ったこっちゃない。自分が生きていればいい。自分が幸せであればいい。言い訳なんていくらでもできるんだからね?」

 

 そう。生きていれば、自分さえよければいい。そんな姿を今まで何度も目にしてきた。何度も聞いてきた。それが、人間の生き方、生き残り方なのだ。生き残る術があるのなら、それを使って生き残るだけ。誰が死のうが、蹴落とされようが、知った事ではない。自分が生き残る。それだけが大事であって、みんなの為になるんだ。極論、そんな思考を持つ者もいる。そして、少女はその思考に、思想によって落とされ、奪われた。

 

「ちがう………!」

 

「………。」

 

 声が絞り出され、せめてもの反論をする。体の中がぐちゃぐちゃで頭も回らないが、それでも声だけは出せる力は残されていた。だから、その力を使って精一杯の反論を、言葉を返すのだ。

 

「違わない。いえ、貴方は違っても。他が違わないの」

 

「ちがっ……がっ……がはっがはっ!」

 

「……貴方のような人だったら。もしかすれば、変わっていたかもしれないけどね。もう遅いんだよ。色々と」

 

 段々と意識が遠のき、体中に力が入らなくなってきた。視界もぼやけていたのが次第に黒く、色のない世界へと塗りつぶされていく。全身の感覚も薄れ始め、末端から消えて行く感じだ。どうやら死期が近づいていると、残った意識が悟る。

 小さな金属の音が聞こえてきた。軽くも重量感のある音は、何度も聞きなれた音で、残った意識の中でその音の正体だけは情報として入って来た。

 

「道を誤り、思想を間違え、やるべきことをしなかった。出来る事を、やろうともしなかった。苦労を知りたくなかった。だって、自分たちが苦労したから、その対価としての幸せだって、考えていたんだから。苦労の対価としての幸福は当たり前。だけど、だからってそれが他人の幸福を奪う理由にはならないよ」

 

 違う。違うんだ。それは断じて違う。そう言いたいのに、体がいう事を聞かない。朽ちていくように、体中が動かない。意識はまだ残っているというのに、口が動かない。

 伝えたい言葉が、伝えられない。

 

「あなた達の幸福は他人から奪ったもの。他人から奪った幸福。

 だったら逆に、奪われる覚悟は、できてるよね?」

 

「ッ……まて、なの―――」

 

 ―――最後に、名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 一瞬、何か言いたかったという顔で叫んだ男の顔は、今はもうない。少女が突きつけた杖から放たれた高圧縮体の魔力が砲弾となって彼の頭を抉り取ったのだ。

 頭という主を失った体は、やがて力もなく地面へと倒れ、同じ死体となって伏せた。もう生気などある筈もなく、絶命した体からは生暖かい血が流れ落ちていた。

 

「………」

 

「……大丈夫?」

 

 動くハズのない死体を見つめる様子に、今まで口を閉ざしていた金髪の少女が語り掛ける。余程の顔をしていたのだろう、希薄な顔で心配そうでもなさそうな声だが、気にかけてくれているという気は確かに感じていたらしく

 

「ん。平気だよ。少し、昔を思い出しただけ」

 

「昔……」

 

「そう。昔。でも……あんまりいい思い出でもないから」

 

 話を区切り、後ろへと振り返った栗色の髪の少女はそのまま二度と、その死体へと振り向くこともなく小さな足取りで歩き出した。

 それを金髪の少女は追う様に後ろを付いて行く。

 

「ここにもなかった」

 

「うん。でも大体の目ぼしはついてるし、ここも正直半信半疑だったから仕方ないよ」

 

「……次は、どうする」

 

「そろそろ、一旦本丸へと行こうと思ってるけど、その前に少し、情報を集めておきたいの」

 

「情報?」

 

「これで、私たちが持つ有益情報は無くなってしまったからね。あとは、本丸かどこか別の場所か、それともになってるけど、確率的に本丸か他の場所の可能性があるから、それを調べにね」

 

 彼女の中で、探し物の情報はこれが最後だった。しかし、情報は嘘だったようで、彼女が捜していたもの。求めていたものはここには存在しなかった。

 なので、ふりだしに近い状態に戻った彼女たちは、再びその探し物を探し当てるために情報を集める必要があった。

 

「わかった。付いて行く」

 

「お願いね。今回の件で向こうも相当警戒するだろうし、情報収集も楽に行かないと思うから。その為には、少しでも人手が欲しいの」

 

「うん。いいよ。手伝う。それが、私とあなたの取引だから」

 

「取引……なんて言わないで」

 

「………」

 

「だって、私たちは共犯者(・・・)なんだから

 ―――ね。フェイトちゃん」

 

「……わかった。ゴメン、ナノハ」

 

 それを最後の会話にして、二人はその場から姿を消した。片や少女というにはいささか合わないような狂気に満ち満ちた笑顔で、もう一人は最後まで無表情を崩すこともなく。異常としか言えない二人の顔には、共通していたものがあった。

 周りの惨劇、惨状についてなんとも思ってないという無関心さ、そして少女とは思えない殺気を周囲に放っていた。

 

 

 

 その日、とある次元世界で集結していた時空管理局の艦隊約四十隻がたった二体のサーヴァント(・・・・・・)に殲滅された。

 無論、生存者は存在せず、死者は数千人。艦隊が集結していた地域は完全に消滅し、焼野原となって何も残らなかった。文字通り何も残らなかったというこの事実は、管理局にとって回避することのできない事態であると同時に、自分たちの汚点であり失敗でもあるという事から、総力をもって対処を行った。

 凶悪という言葉の度を越した悪魔の二人。なんとしてもこの二人を処理(・・)しろ、と。その為にはどんなことをしても構わない。まるで、赤点のテストを隠す子どものように焦り、慌て、恐怖した彼らはその存在を消す事に尽力したのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 観布子市。

 某所にあるその都市は、一言でいうのなら、都市としては極めて一般的な大都市のひとつだ。JR観布子駅があり交通の便では問題はなく、その駅を使って地方に帰る者も多い。その為、人の通りは大都市となんら変わりはない。

 例外的な点があるとするなら、数年前に取り壊された高度成長期に建設された、飛び降り自殺が連続したビル群。完成間近に謎の崩壊事故を起こし、崩壊したブリッジ。新しい建築方法を取り入れ、一時は入居者受け入れをしていたビルなど。裏の面で言うのなら、この街には様々な怪奇現象的事件が多く存在している。

 

「……で。そんな危なっかしい街を、待ち合わせの場所にした理由はなんや?」

 

 観布子市の中で、大通りから少し外れると洒落た喫茶店がひとつあった。アーネンエルベと呼ばれるその店は、アンティークな内装と僅かな電灯だけを灯していて、非常に静かな雰囲気をしている。都会の喧騒というやつも、この小洒落た店の中では流石に小さく聞こえてしまう。

 

「危ないっていうのは少し違うな。その怪事件だって、今はもう一件も起こってないんだし、危なかったというのが正しいよ」

 

「……ま。事件の内容から、大体のことは察すれるけどな。問題は、なんで態々ここにしたかっちゅう事や」

 

「……うん。それは、まぁ色々と便利だから?」

 

「変な間もあるし、疑問形のところを見ると、何の気なしかいな」

 

 呆れてものも言えない、という表情で目の前のテーブルに置かれた紅茶に一口をつけるのは、ボブカットの髪に関西弁を話す年若い青年女性。彼女は、今回の話のためだけに、態々ヒートアイランドの中をこの店へとやって来たという、なんとも苦労を感じる経緯があった。というのも、彼女は呼び出しを受けて、この店にやってきたので場所を指定しなかった彼女にも非はあると言える。

 その彼女を呼び出した者……の代理人が、今、彼女の目の前で同じく紅茶を飲んでいる金髪の若い青年だった。整った顔つきとスタイルは、横を通っただけでも女性たちが胸をときめかせて振り向いてしまうほどだ。

 

「ごめんよ。僕も、こうしてゆっくりと話せる場所というのをあそこ以外知らなかったからね」

 

「……ま、あの雪山やったらしゃあないな。誰も他所モンが居らんからええけど、代わりにどこへも足を運ぶこともできんからな」

 

 無理もないと言いたいが、せめてもう少し安心して茶を楽しめる場所はなかったのか、と言いたかったが、彼女も喫茶店の雰囲気がよかったからか、あまり詰め寄ったことは言わなかった。

 

「で。話って何なん」

 

「……そうだな。率直に言わせてもらうよ。君に、ある組織の内偵を手伝ってほしい」

 

「内偵? そんなん、そっちでも出来るやろ?」

 

「できるんだけど……なんせ、向こうは魔法を使う組織だからね。魔術を扱う僕らにとっては、かなりやりにくくって、中々情報を集められないでいるんだ」

 

「魔法……組織……時空管理局か」

 

 肯定だ、金髪の青年は首を縦に振る。

 

「彼らが、どうやらこちら側のことに気付いたらしくってね。力への警戒か、それとも服従を狙っているのか、かなり干渉してきている。今はまだ、現地にいる彼らだけにだが、いずれはシステムに気付いて、あそこも狙われる。そうなれば、あとはどうなるか……」

 

「適当な大義名分を作って攻め入る。管理局の常套手段や。今、表立って次元世界の管理、なんていうのを言っているのは管理局だけやからな。向こうさんはやりたい放題しているようやけど、世の中甘くはないっちゅうか……」

 

「組織体。その根底から既に腐り始めているということか」

 

「せや。上層部だけならまだしも、一般の局員たちの中にも上のコネで威張るだけっちゅのが多く居るし、その所為で迅速な対応が出来てない状況や。自分たちのことだけで頭がいっぱいで、他人の足を引っ張ることしかできひん」

 

「辛辣だね。君も以前は所属していたんだろ?」

 

「旧体制時代からな。今も席は置いてる。けど、御覧の通りや」

 

 といって、両腕を広げる少女の様子は、正に自由であると表現しているように広々と手を伸ばしていた。かなり自由にやっているらしく表情もかなり生き生きとしている。職場と地位を聞く限り、どうやらデスクワークを放り出して、外での活動がメイン、いや専らのようだ。

 

「随分と楽しそうだね。けど、いいのかい?」

 

「向こうは大丈夫や。残業手当もしっかりしてるようやし、勤務体制もかなり変わってるようやからな。ま。昔のうち等やったら、仕事が楽しければそれでよかったけど……」

 

「………」

 

「……話を戻そか。なんで内偵が必要や。魔法とかだけが理由とちゃうやろ」

 

 そんな理由だけだったら、彼らだけでも問題は無かったハズ。それなりの情報収集能力とそれを実行する人員が居る筈だ。なのに、それでも彼女への要請があったということは、彼女でなければならない理由があるという意味になる。

 であれば、その適任者であるのが自分である、という時点で彼女の中ではいくつか理由は絞れていた。

 

「……時空管理局、本局データベース。って言えば、分かるって」

 

「……そらまた、デカいものを出してきおって」

 

「あまり機械関係は、僕は得意じゃないからね。意味は少し分からなかったけど、大体の意味は把握している。とても厄介なことだって」

 

「なら。手短に説明したるわ。管理局には陸と海の二大勢力がある。地上本部と本局。その中で空戦などをメインにしているのが、本局や。一般的に管理局って言ったらコッチを刺すことが多いな。

 で。その本局が管理しているデータベース。恐らく、あの天才さま(・・・・)のお願いは、その中でもトップクラスの機密情報が保存、保管されている所。通称「パンドラの箱」。多分、そこの事を言ってるんやろうな」

 

「組織の最高機密……なるほど。表には出せない情報だね」

 

「それだけやない。組織の汚職、賄賂、密輸、密売、禁術実験、非人道的、非合法、違法実験の結果等等々……管理局がどうしても隠したい秘密の数々。表に出れば厄災どころか自滅すら確実な情報と真実の塊。それがパンドラの箱や。

 ……なるほど。そこで情報かっさらってこいってか」

 

「そういった情報は厳重に守られてるっていうのがセオリーだけど、入る方法は?」

 

「多分、向こうも同じやろうから、まぁアクセスには問題ないやろうな。問題はそれまで、つまりデータベースのある場所に行くまでやけど……ま、問題ないやろ」

 

 なにが大丈夫で、問題はないのかという疑問点はあるが、既に彼女の中で計画が組み上がっているようで、それ以上の突っ込んだ追求を青年はしなかった。彼女が大丈夫である、ということは大丈夫なのだろうというのを知っているからだ。

 

「できる、って事でいいんだね?」

 

「そっちから情報貰っとるからな。そろそろ、代金払えって言われる頃やと思ってたさかい。それに……」

 

「………」

 

「この件、ウチにとっても降りる事なんてできひん話やからな」

 

 と、ぽつりと呟くと目線が少し下に下がり、声が小さくなる。他にも思う所があるという様子だったが、青年はあえてそこまで踏み込まずに聞かないフリをしていた。

 

「……後悔……いや抵抗はないんだね」

 

「ないっちゅうたら嘘や。けどな……まぁ、自分と戦う(・・・・・)なんてことは、もう経験済み(・・・・)やからな」

 

 紅茶を飲み干して皿の上に置くと、深いため息をつく。

 何か思い出していたのか、目は下を向いている。

 

「今回の異変。いや、特異点ちゅうんか。相手が相手や。一筋縄じゃいかんで」

 

「……それは、経験者からの警告かい?」

 

「いんや。勘や。けど、同時に予感でもある。だから、君のマスターさんに、よろしく言っといてな。聖剣使いさん」

 

 椅子から立ち上がり、未だ紅茶を飲んでいる騎士王、アーサーに対して小さな笑みを作って言う。

 アーサーはその言葉に、彼女の身を案じて答えた。

 

「わかった。君も気を付けてね、はやて……いや、夜天の主」

 

 

 

 

 

 十数分後。

 未だアーネンエルベにいたアーサーは、先ほどはなかった紅茶のお供としてパイを一切れ頼んでいた。それと紅茶を飲んでのんびりしていたのは、彼がまだ別の人を待っているからだ。

 そして、その待ち人が姿を現した。

 

「―――あれ。はやてのヤツ、もう帰ったのか」

 

 薄い水色の着物を着て、ブーツを履いているという現代では少し風変わりな少女。ふらふらと猫のような雰囲気を醸す、両儀式はアーサーの座る席に近づき、はやての姿を探していた。だが、ニアミスしたようで、彼女に用があったのか、式は頭をかいて面倒そうにしていた。

 

「チッ……入れ違いとはな。橙子の使いが長引いちまった」

 

「遅かったね、式。君も用事があったのかい?」

 

「まぁな。橙子に頼まれた品をアイツに届けろって話だったんだが……ま、居ないなら仕方ない」

 

「っていうけど、その品物は?」

 

「ここにはない。俺の部屋だ」

 

「大事な品なんだろ? 持ってこなくてよかったのかい」

 

「必要なのはアイツじゃないからな。それに、別段急ぎの用事でもなかったようだし」

 

 橙子。つまり、蒼崎橙子が見繕った品ということなら、自ずと品の中身は予想がつく。建築、医療。そして人形師としての実力。その中で別段急ぎのものでないというのなら、あり得るのは人形師としての彼女。つまり、それに関係するものだ。

 

「ところで。俺から()聞いていいか?」

 

「……いいよ」

 

「なんで待ち合わせをここにした。別に、アイツの知ってる、行きやすい場所でもよかったんじゃねぇか?」

 

「それもあるけど、それだと今は都合が悪い」

 

「………」

 

 何の都合が悪いのか。式も、鎌掛け程度に訊ねた質問はブラフだと見抜かれるのは分かっていた。なにせ、彼女の質問ははやての立場上、得策とは言えないからだ。

 彼女は今、管理局の外を自由にしている。それは別に問題ではない。が、問題は彼女がいる(・・)という事実だ。それだけで、彼女との待ち合わせをここにした意味は幾分かあった。

 

「観布子から海鳴(・・)まで、距離はそこそこにあるし、行きやすくもあるからね。それに、こっちに来て、新聞かニュースかを見たかい?」

 

「見ると思うか?」

 

「だと思ったよ。だから、ホラ」

 

 アーサーはそういうと、自分の隣の椅子に置いていた新聞紙を式に手渡す。まるで織り込み済みだったかのような手際の良さに苛立ちを感じた式は、妙に彼の笑顔がうっとおしく感じた。今日の朝刊、どこにでもある新聞だったが、一面の記事を見るや式の顔はしかめ面になる。

 

「……なるほど。これが理由か」

 

「ああ。どうやら、この世界に来たらしい」

 

『海鳴市、沖合にて謎の爆発』

『ミサイル、爆弾の兆候はなし。原因は依然として不明』

 

 そう。表立っては謎の爆発だったのだろう。だが、今の彼らの間では、その爆発の原因が恐らくこれだろう。という確信めいた可能性があった。

 いくら周りのメディアに話そうとも絶対に信じられない、笑いとばされて終わりという可能性だが、それを真に受ける者たちもいる。アーサーと式も、一応こちらに部類されるだ。彼らのように、真に受けて信じるもの。それは今の時代を支配している科学技術。それが台頭したことで消えた神秘の一端。魔術を知っている者たちだからだ。

 

「ってことはなんだ。こっちでドンパチしてたってことは、こっちに居るってことか」

 

「いや。あの後、アサシンたちが捜索に出たけど、反応は消えていた。多分、戦いの中で移動したんだ。それが偶然か、計画していたことかはわからないけど」

 

「……全く、穏やかじゃねぇな」

 

「ああ。全くだ……」

 

 各所で戦いの狼煙が上がっている。そして、それによる被害も出始めていた。ということは、すでに敵は動き始め、事態も動き出している。しかもアーサーたちのマスターが掴んでいる範囲の情報では、まだ管理局はその犯人たちの姿を捉えきれていない。今まで被害だけは出ているが、奇襲に近かった攻撃のせいなのか、彼らが攻勢に転じた様子はなく全て一方的だった。

 つまり、彼らは敵の実態を知れていないということだが、同時にだからこそその正体を知る為に動き出すだろう。

 

「で。アイツ(マスター)はどうするって」

 

「拠点に居るけど、さっきまでアサシンたちと一緒に海鳴で調査していたよ。それで、一つだけ分かった事がある」

 

「なんだ。敵が核爆弾でも持ってたのかよ」

 

「……と言った方が正しいかもね。あの暴力性は」

 

「……面倒だな。全く」

 

 暴力というワードに、式はため息をつく。そのたった一言が彼女の中で仮説が可能性として組み上がり、考えたくもないというような可能性を脳内に投影していた。

 海鳴での爆発は、確実に魔術が関係している。その証拠に、化学兵器ならではの放射能やら残骸、空気中への影響が皆無だ。しかも、その爆発が前触れもない突発的なものであるならいよいよ非科学的な物が起こったと考えてもおかしくはない。新聞ではやれ放射能だ、なんだと科学的根拠を立てているが、所詮は科学だけでしかない。

 

「あの破壊力、そして周囲のことを考えないところを見ると、サーヴァントの方に問題があると見ていい。しかも、あれだけの魔力を使えるということはキャスターか、セイバーか、アーチャーか。それとも……」

 

「あのな。そういう意味での化け物案件なら、俺は降りるぜ。マスターの奴にもそう言ってるし」

 

「そこは多分、僕や新宿のアーチャーの仕事だ。あの火力相手にはそれだけの火力で対抗するっていうのが、マスターの考えだからね」

 

「あのメルトって奴も候補なんだろ。なら、俺は要らねぇんじゃねぇか」

 

 それだけの高ステータスのサーヴァントを連れて行くのであれば、出番もないだろうと考えていた式だが、それは予想済みだったようでアーサーが意地悪く返した。

 確かに名を挙げられた英霊たちはそれぞれ高いステータスとスキルを持つが、だからといってそれだけでいいハズもない。

 

「でも。君の目と、そのスキル。対人戦の能力はマスターも太鼓判を押している。呪腕のアサシンだけじゃ、対人戦はカバーしきれないからね。それに、暴力だからといって技が効かないわけでもないだろ?」

 

「………」

 

 既に先読みはされていたらしく、沈黙した式はそれ以上の言葉を返さずに無言のまま振り返り、出口へと向かった。

 

「……アイツ、クラスの事は知ってるのか」

 

「ああ。僕らや孔明の推測を聞いたからね。あの状況から見て、ほぼ間違いないから、彼もそれを前提に作戦を組み立てているよ」

 

「………。」

 

 その会話を最後に、式は顔を振り返ることもなく店を後にした。

 残されたアーサーは、まだ残っているパイを食べつつ、独り言のようにぽつりと呟く。

 

「……バーサーカー、か。いや、あの狂気は危険だ。何もかもを破壊するという衝動。そして苛立ち。だから、それに最も近いクラスは……復讐者(アヴェンジャー)か」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 人理継続保障機関カルデア。その中で、カルデアスの置かれた司令室では人類最後のマスターである青年。藤丸立香と、そのサーヴァント、マシュ・キリエライトが司令代理であるダ・ヴィンチによるブリーフィングを受けていた。

 

「さて。第二次のレイシフトだけど、ここでもう一度おさらいを兼ねて説明しておこうか」

 

「はい。かなり事態が混乱していたので、再整理とそれによる新しい推察はこの場合必要です」

 

「そうだね。では、最初から。新たな特異点、並行世界という私たちの世界と本来関わりを持たない世界。そこに新たな特異点が出現した。私たちはこうした外伝的、私たちの人類史となんら関わりのないようで、関わりを持つ並行世界の特異点を『外伝特異点』と呼称することにした。

 その中の四つ目。第四外伝特異点が発生し、このカルデアのある世界に近づいているということを観測した」

 

「外伝特異点の特徴は、並行世界ではありますが、私たちの世界の影響を少なからず受け、しかも聖杯が存在する。そして、それによる英霊召喚が行われる特異点、ですね」

 

「そうとも、だから仮に外伝特異点が崩壊しても、直接的なダメージはこちらの世界には来ないが、外伝特異点は観測されると同時にこちらの世界に密接してくる。つまり、外伝特異点が破壊されれば、それだけでこちらにも余波が来るということ。それが大であるか小であるかは……ま、場合によるけどね」

 

「その今回の外伝特異点ですが……」

 

「ああ。前代未聞さ。第四外伝特異点は、その世界だけで他の世界に跳躍する技術を持っている。科学、魔術的な意味で我々を超越していると言ってもいい。おまけに、科学と魔法とやらが融合して、なんかメカメカしくなってるからね。エジソンたち科学者が目を輝かせていたよ。けど、問題はそれと同等に『魔法』という力が、この世界では一般的であること」

 

 ただし、特異点でいう『魔法』と、立香たちの世界の『魔法』は意味が違っており、前者、つまり特異点での魔法は魔力を行使することで発動するもの全般。対して、立香たちの世界では、魔力を行使することでも、科学的に説明可能なものは魔術、科学的に実現が不可能なことを魔法と呼んでいた。

 特異点で一般的になっている魔法とは、中身がかなり違っているのだ。

 

「けど、大抵の魔法はサーヴァントたちの持つ対魔力のスキルで対処可能だから、問題は物理的な戦闘能力だ」

 

「はい。サーヴァントに対して拮抗するほどの力量を持つ人たち、向こうでは魔導師と呼ばれていましたが、その人たちが何人も居ましたね……」

 

「しかも、向こうは向こうで魔法の強化で攻撃力、防御力を上乗せしてるっていうんだから、大概ずるっこいよねぇ」

 

「いずれにしても、あの人たちをどうにかしない限り、こちらは聖杯に近づくことすらできません……」

 

 魔導師というから、杖をもって戦うと思っていたが、実際はサーヴァントのように武器をもって戦う者たちが居た。立香たちはそういった魔導師たちと既に何度か交戦しており、一度、情報収集と整理を兼ねてカルデアに帰還していた。何気に、カルデアに任務中に戻るというのは珍しいことだ。

 

「戦力の増強って手もあるけど、こっちからの支援は御覧の通りだ。だから、可能性として召喚された敵サーヴァントや野良のサーヴァントたちを味方に付けることが策の一つとしてあるけど……」

 

「確認されたのは、メフィストフェレスさんだけ。しかも、私たちが倒してしまいましたし……」

 

 他のサーヴァントが召喚されている可能性はあるといってもいいが、だからといって直ぐにサーヴァントたちが顔を出すわけもない。向こうは組織の切り札、兵器のように扱われているので、出すタイミングが計られている筈だとマシュは推測する。

 しかし、実際であるメフィストフェレスはどちらかと言えば野良のサーヴァントのように出現し、攻撃を仕掛けて来た。彼が野良であるということはまず間違いないだろう。

 

「恐らく、他のサーヴァントはいるが、別のことをやらせたり、自陣防衛のために置いていたか。はたまた、キャスターのように自陣防衛に特化したサーヴァント。そして、そもそもメフィストフェレス以外、誰も召喚しなかったか」

 

「最後の選択肢はないと思います。事実、こちらからは複数体のサーヴァント現界を確認しているのですから」

 

「となると、残るのは自陣防衛型のサーヴァントか。それともサーヴァントに別件をやらせているか、だね。けど、場所が場所だしキャスターの線は薄いね」

 

「では、残るはサーヴァントたちが外に出ていた……ですか」

 

「なくはないだろ? 霊体化の出来るサーヴァントたちなら、パスを維持しているし、ある程度の距離までは離れても問題はない。何かあれば令呪で戻せばいい」

 

「油断できないのには変わりありませんね」

 

「特異点はいつも油断できないけど、今回も今回で別の意味で油断できないからねぇ……その気になれば向こうだってこっちに介入してくる可能性だってあるんだし」

 

 過去に数度、カルデアへの侵入を許してしまっていることから、カルデアに侵入、侵攻されると弱いのは露見している。しかも、相手は次元空間についての技術と強みを持っているので、カルデアの位置を発見すれば攻めて来る可能性もある。

 以前の遭遇で、向こうから一方的に難癖をつけられているカルデアは、同時に一方的に敵対されてしまっている。なら、管理局側はいい加減な理由をつけて攻めて来る、ということもあり得るのだ。

 

「その場合はサーヴァント総出で防衛戦ですね……」

 

「その時が来れば、の話だがね。その前にこちらが聖杯を手に入れる、特異点を修正するかをすれば問題は無くなる。こちらは向こうをそう何度も追い返せる余裕もないからね。必然的に、時間との勝負になるし早期解決は元からだ」

 

「わかっています。準備が整い次第、もう一度レイシフトをします」

 

「頼むよ、二人とも。第四外伝特異点。今回は特に時間が鍵になる。なんとしても、聖杯の回収と特異点の原因修正をしてくれ」

 

 

 

 

 

 2016年。

 人類史、魔術世界では「人理」と呼ばれる人類の航海図。その未来が突如として消失した。

 百年先まで、人類の存続を保証する特務機関カルデアはこの事態が、人類史による特異点の発生、人類史の改変が問題であると見て、解決と終息に乗り出した。

 第一から第七まで発生した特異点。それらには、聖杯をめぐる戦い、聖杯戦争が行われ、その聖杯戦争によって召喚されたサーヴァントたちが居た。

 過去の英雄、偉人たちが座に招かれたことで、召喚可能となった者たち。彼らは人理を修復するため、そして焼却された未来を救うために特異点へとレイシフトする人類最後のマスターと共に死地へと赴く。

 そして。その七つの特異点を修復し、人類は無事に2017年を迎えた。人類は無事、未来へと進んだのだ。

 

 ―――が。それとは別に、新たな特異点が二種(・・)現れる。

 

 ひとつは特異点から出た余波によって生じた「亜種特異点」

 もう一つは、別の何らかの原因で発生し、共通して並行世界、カルデアの世界とは大幅に違う世界に出現した「外伝特異点」の二つがある。

 亜種特異点は、比較的観測がしやすいが、早期に対処しなければ彼らの人類史に影響を及ぼす。また、自ら真名を明かすサーヴァントが少ないというのも例の一つだろうか。

 外伝特異点は、それに対して特異点そのものが接近してこなければ観測されにくく、聖杯の所在も分かりにくい。また、並行世界ということで一般常識や認知、知識の差が浮き彫りになってしまう。また、並行世界へのレイシフトという無理をしなければいけない。特異点が破壊されても影響が少ない可能性があるというのは唯一の救いか。また、外伝特異点は修正がされると余程の事ではない限り、揺り戻しなどの影響はカルデアのある世界には到達しない。余波や揺り戻しは、全て並行世界の方で行われるのだ。

 

 

 

 第一外伝特異点。

「門」によって繋がった現代と異世界。そして、その「門」の暴走、制御から離れてしまったことで並行世界にも特異点が出現した。

 

 第二外伝特異点。

 命を燃やし、奏でる歌。そこには一人の男に憧れ、その身を世界に売った女が居た。

 そして、影と理想郷から死者が蘇る。

 

 第三外伝特異点。

 在るはずのない「蒼の物語」。終息したハズの「神の視る夢」その余韻によって、作られた世界。一人の男が閉じ込められた世界。

 

 そして。今回の第四外伝特異点。

 魔法が全てを支える世界。人も、文明も、命も、精神も。

 しかし、魔法によって万事全てが解決することなど、あり得るはずもない。

 だからこそ、生まれてしまった「厄災」がある。

 これは「厄災」によって引き起こされた、あり得るはずのない出来事。異世界を渡れることで生じてしまったイレギュラー。

 そして。並行世界の彼ら(管理局)が生んでしまった、二人の『悪魔』。

 

 魔法が全てを制する近未来都市。

 あり得る筈のない可能性は、現実となって警告を鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fate / Grand Order × NANOHA = Strike Breaker’s =

 

 第四外伝特異点 「乱立世界線 魔道世界ミッドチルダ」

 

 それは「魔法」によって進まなくなってしまった、二人の少女の物語―――

 




今更だがあらすじ。

人理を無事に修復した立香たちカルデア。しかし、新たな特異点として「亜種特異点」と「外伝特異点」が出現。その一つ、並行世界、パラレルワールドに発生する外伝特異点の四つ目が観測され、カルデアはその世界の聖杯の回収、特異点の修正を試みる。
しかし、そこは「魔法」と呼ばれる力が一般的になり、さらに次元間を航行する技術が確立された世界だった。
「時空管理局」と呼ばれる勢力から、一方的に敵対され、さらに聖杯を自分たちの物だと宣言されたカルデアは、やむなく敵対の道を選ぶ。

聖杯を求め争う両陣営。すると、そこにサーヴァントとなった魔導師の少女二人が姿を現す。並行世界の同一人物、しかし彼女たちは疑似サーヴァントとなって聖杯の奪い合いに乱入する。
果たして、聖杯は誰の手に……?

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