よろしくおねがいします。
ちひろ「プロデューサーさんお疲れ様です。ところで友紀さん見てませんか?」
P「お疲れ様ですちひろさん。労っていただけるのはうれしいですが人並みの労働密度にしていただけたらもっとうれしいです」カタカタ
ちひろ「人並みの動きで200人近いアイドルをプロデュースできると思っているんですか?みなさんのために頑張ってください♪」
P「えっなにその殺し文句…。そんなんいわれたら反論できないんですけど。むりくぼなんですけど」カタカタ…
ちひろ「で、友紀さん見ませんでしたか?」
P「いや、ずっと事務室で企画書作ってたんで、ここには来てませんよ」カタカタ
ちひろ「そうですか」
P「なにかありました?」カタカタ
ちひろ「ああいえ、打合せの予定があったんですけど時間になってもいらっしゃらないしLINEも反応がないんです。そしたらプロダクションの方が社内で見かけたと教えてくださったので探していたんです」
P「なるほど。事務室に来たら連絡しますね」カタカタ
ちひろ「わかりました。わたしはまだ少しまわってきますね。本音を言うと来たら、っていうかむしろプロデューサーさんに探しにいってほしいくらいですけども」
P「ちひろさんに押し付けられた仕事さえなければ俺もいきたいところでした」
ちひろ「再見」バタン
P「出ていきおったがな」
*******
友紀「うぃーぃ…」ドアガチャー
P「おー友紀、ちひろさんが探してたぞ」
友紀「うーん、ちひろさん…」
P「…ってけっこう酒入ってるな?ほれ、水飲め水」
友紀「あーありがと…。もらうよ」コッコッコ
P「またなんでそんなになってんだ?ガッと飲んじゃうようなタイプじゃないだろーに。てかビールでよくそこまで酔えるな」
友紀「キャッツが……」
P「負けたと」
友紀「負けてないっ!あそこで一打出てたら大逆転の大勝利だったしー!」
P「負けとるやん」
友紀「ぐぇっ」
P「ほんとキャッツ好きな」
友紀「そりゃあまぁこどもの頃から応援してたし……。あっ!もしかしてPもキャッツのよさがわかってきた!?次の試合見に行こーよ!事務所のみんなも誘ってさ!!」グイグイ
P「ええい!大人の女性が簡単にだきつくんじゃありません!!」ウデホドキー
友紀「ははっP照れてる照れてるぅー、…ははっ」
P「ちょっとは酔いがさめてきたか?」
友紀「あー、そうかも。このびみょーな虚脱感がねー」
P「じゃあそんな姫川さんに仕事の話だ」
友紀「仕事……あーっ!あたしちひろさんと打ち合わせがあったんだ!ごめんこんなとこ居られない!」
P「自分から来たくせにこんなとこて。あーあーせっかくあの!あ・の・!キャッツからの直々ご指名の話なんだけどナー」
友紀「えっ……。うぇぇぇえええええ!?嘘!ウソだよねっ!?」
P「いやーウソじゃないぞ?てかそんなことしてたらプロデューサーの信用なくなるだろ」
P「んで内容なんだが来月のホームの試合で始球式を頼みたいんだそうだ。名物ファンのアイドルと球団のタイアップ…みたいな?」
友紀「やる!やりたい!!うっわぁーっ!ちょっとこれ夢じゃないかな!?ねぇねぇねぇちょっとあたしのほっぺつねってみてよ!!」
ちひろ「そんなに言うならわたしがさせていただきますね?」スッ
友紀「へ」
P「……見事な『絶』だ」
友紀「いぃぎゃぁぁあああっ!!ちぎれるんですけどおおお!?」
ちひろ「打合せをすっぽかす悪いほっぺはここですかぁー?」ムニムニ
P「ほっぺた関係なー」
友紀「ひぎぎぎぎぎぃぃ」
ちひろ「こどもじゃないんですからお願いしますね。ね?」
友紀「うぅ…申し訳ないでふ」ムニムニ
*******
数日後
スタッフA「『姫川 友紀』さん入りまーす」
友紀「よろしくおねがいしまぁーすっ!!」
P「以外といつもどおりだな?緊張とかしないの?」ツカツカ
友紀「まぁ少しはね。憧れの球団だもん」ツカツカ
P「憧れて、プロ入りでもすんのかい」ムナモトゴソゴソ
スタッフB(おっおい、本物だ…)
友紀「でもそれと仕事とはまた別で、あたしだってプロのアイドルなわけだし―――」スッ
スタッフC(どうしよ、サイン欲しいな…)
友紀「キャッツファンとしては選手に目の前でカッコいいプレー見せてほしいってだけかなー」キュポッ
P「なるほど」スッ
友紀「ほいほいっと」カキカキ
スタッフB・C(あれ?こっち向かってくる?)
P「本日の始球式を担当させていただきますプロダクションのPと申します。よろしくお願い致します」スッ
スタッフB「あ、ああ、これはどうもご丁寧に」メイシドウゾー
スタッフC「こちらこそよろしくお願い致します」メイシドウゾー
友紀「よろしくお願いします!」
P「では失礼いたします」ペコ
P「じゃあもしだれか選手に会えたら――つか絶対会うと思うけどどうする?」
友紀「そ、そこはほら!大人として?一時とはいえ仕事仲間として…みたいな対応を心がけてだね?」
P「ふーん」ツカツカ
スタッフB「……ん?」
スタッフB「おい!名刺の裏見てみろって!」
スタッフC「!」
P「いやー別に握手とかその辺までならよくね?」
友紀「……ホントっ?」
スタッフB・C「「『姫川 友紀』のサインやー!!」」
スタッフA(え。なにそれほしい)
友紀「ほい」カキカキ
P「本日はよろしくお願い致します。なにとぞ」スッ
スタッフA「あ、ありがとうございます…」
スタッフA(……2枚目の名刺に何らかの意図を感じざるを得ない)
*******
実況「さぁー!本日はキャッツスタジアムでの試合となります。解説さん、そしてお集まりのみなさん!本日はよろしくお願いします!」ワァーワァー!!
解説「よろしくお願いします。何でも今日の始球式はあのキャッツ名物ファンで有名なアイドルの姫川さんが投げられるとのことですね」
実況「はい!この球場全体もボルテージがすでに最高潮と言ったところでしょうか!」
ワァァァァァァ!!!
実況「では登場していただきます!『姫川 友紀』さんですー!!」ワァーワァー!!
友紀「どーもー!どーもー!」ペコペコ
ワァァァァァァ!!!
友紀「来月のライブはよろしくねーっ!今からチケットは…とれないかもしれないけどー!!」
ワァァァァァァ!!!
実況「ではお願い致します!」
友紀「ふっ」フリカブリ
友紀「う……んっ!」ヒュッ
バッター「あ、あたるっ」ギュィィーン
スパァッン
主審「スッッタライィーックゥ!」
友紀「うし!」
バッター「うそぉ」
実況「な、なんということでしょーう!?投球フォームはアンダースローから打者の胸元で鋭く落ちたシンカーにバットを振ることもできないぃーぃっ!」
解説「いやぁ、非常に高度ですよ、アンダースローとは…。そしてあれは目に解りやすいでしょう」
実況「みなさんあちらをご覧ください!なんとその球速136キロ!彼女はキャッツの呼んだ助っ人ピッチャーかー!?」
ワァァァァァァ!!!
友紀「あ、あははーどうもー」
*******
控室
P「いやーよかったぞ。あんなボール投げる投手なんてパワプロクンでも全振りしなきゃ造れん」
友紀「ゲームと一緒にしないでよー」
友紀「で、今日はもう終わり?」
P「まぁ仕事としてはそうだな」
友紀「と、いうことは?」
P「野球観戦、していこうぜ?」
友紀「やっりぃ!」
P「一応取るには取れたが外野席しかとれなくてな、内野の方が良かったか?」
友紀「内野席も外野席もどっちも好きだからだいじょうぶー!」
P「ま、あんまり騒ぎすぎないようにな。俺はちょっと挨拶回り行ってくるから後で向かうよ」
友紀「え、それならあたしも行くよ?」
P「あー大丈夫。プロダクションとしての挨拶だから友紀は楽しんでていいぞー」
友紀「んー、そう?」ワクワク
P「それに友紀が応援してないとまた負けるかもしれないしな?」
友紀「いーや!今日こそは絶対勝つって決まってるんだからー!」
P「ならちゃんと応援しててやれよな」
友紀「うん!」
P(さーてまずはーっと……)チラ
友紀「いっけー!今日こそこっちまで飛ばしてよねーっ!!」
オジサン「おー!友紀ちゃんさっきの始球式みてたぞ!」
オジサン2「なかなかいい球投げるじゃねぇか!」
オジサン3「ピッチャー交代!今日すでに被安打10のあいつから姫川友紀ってな!はははっ!」
友紀「いやいやそんなそんな~。って、そんなことよりもう10本も打たれてるの!?ピッチャー頑張ってるよ!みんなで応援!」
オジサン's「おおーっ!!」
P(…………)
*******
数時間後
実況「さぁラストバッターになってしまうのか第二球…投げて、おおーっと!!こーれは大き…いが三塁側に切れましたー」
ファールボールニゴチュウイクダサイ
P「わっ!あぶなっ」ゴーン
友紀「おっと…っ」グッ
P「だいじょぶか?当たんなかったか?」
友紀「う、うん。当たってはないから」ズキッ
P「そか?」
友紀「それより応援しないと!」
実況「あーっとひっかけてしまったー!セカンドキャッチ、からの一塁送球はー、アウトーッ!ゲェームセット!キャッツはシーズン初の連敗だぁー!」
友紀「むぅぅ!」
P「あー残念」
友紀「あんな大声で言わなくてもよくない!?」
P「それが実況の仕事でしょーよ」
友紀「応援してるよー!!次こそこっちに飛ばしてよねー!!」
P「さて、そろそろ……」
スタッフA「あ、よかった!まだいらっしゃいました!」
P(よーし)
スタッフA「本日はお疲れ様でした」
友紀「お疲れ様でした!」
P「お疲れ様です。今後ともよろしくお願い致します」
スタッフA「ええ、こちらこそ。……ところでそちらの姫川さんなのですが」
友紀「あたし?」
スタッフA「はい。アイドルになられる以前から我々関係者の内では有名な方でして、もちろん選手も名物ファンとして存じております」
友紀「やはは、なんか照れるなぁ」
スタッフA「そんな姫川さんがアイドルとして今回このような形で我々と一つのゲームを作ってくださったことにキャッツの関係者として非常に嬉しく思いました」
友紀「いや、そんな!あたしだって、今日はマウンドに上がれて、投げられてすごく嬉しかったです。だから、ありがとうございます!」ペコ
スタッフA「よろしければこちらをどうぞ」スッ
友紀「!」
P「おーこれは…」
スタッフA「今日のベンチ入り選手全員と監督の名前が入ったサイン色紙です。これは仕事としてではなく私個人からのモノです。ですのでもちろん受け取っていただかなくても構いません」
友紀「そ、そんな!…いただいていいんですかっ?」
スタッフA「はい、差し上げます」スッ
スタッフA「では、私はこれで失礼します」ペコ
スタッフA(……)ジー
P(……)グッ
スタッフA(……)ホッ
P「帰るか」
友紀「うん!」
*******
移動中車内
P「なんでキャッツがよかったんだ?」ブゥーン
友紀「あーやっぱりPも今日の試合で惚れちゃったかい?」
P「また負けてたな」
友紀「うるせいやい」
P「そこまで熱をいれられるのにはなにか理由でもあるのかなーと」
友紀「それは……わかんないかなぁ」
友紀「昔からそうだからーってしか言いようがないかも」
P「以外と漠然としてるんだな」
友紀「まぁそんなもんだって。きっかけは何かあったかもしれないけども実際にいまそれが好きならとっかかりなんて別に大したことじゃないでしょ?」
P「わかるっちゃわかる」
P「でもやっぱキャッツは成績いいからな。そういう目立つような活躍をしてた選手がいたからっていうのもあるんじゃないか?」
友紀「まぁいたねー、そんな選手。活躍はしてなかったけど」
P「なんだそりゃ」
友紀「なんていうのかな、目を引くって言うか、とくに何がすごいってわけじゃないんだけどさ…」
P「あーはいはい。いるわそーゆー選手」
友紀「ピックアップされるような結果もなくてさ、登板すればせっかくのリードを縮めていーい感じの接戦にするような投球するし。いやもちろんそんな気はなかったんだろうけど」
P「なかなかの言われようで」
P「でもそーゆー選手って不思議と会場盛り上げたりするよな?なんつーかムードメーカーみたいな」
友紀「そうだねー。実際その選手が出てたときは球場がドッカンドッカン湧くんだよね」
友紀「言っちゃえばスター選手っていう実力はなくて、それでも努力で必死に投げててさ、それがなんだかみんなを応援したくさせたんだろうね」
P「ふーんなるほど」
友紀「みんなふつうに投げてたのに一人だけ下手投げっていうのも、覚えてるなぁ」
P「いないわけじゃないけど珍しいよな」
友紀「小さい頃、連打あびてるときにさ?がんばれー!ってテレビの前で応援してたなぁ」
友紀「そしたらめずらしく次の回ピシャッと抑えたときがあってね、「なんか応援っていいな」って思ったんだー」
友紀「直接声が届いてた訳じゃないんだけど多分そのピッチャーも、そうやって声援を送るだれかを思って頑張れたのかもしれないし」
P「それはなんだか今の友紀に繋がってそうだな」
友紀「あー、確かに……うん、そうだね」
友紀「自分が変わりたいとか輝きたいからってアイドルになったって言う娘は事務所にたくさんいるけどあたしは逆かな」
友紀「あたしの応援でだれかを輝かせられたらなーって」
P「おう、知ってるぞ」
友紀「そっか」ニコ
P「んでもってついたぞ。話し込んでて気づかなかったろ?今日は遅いから部屋まで届けさせてもらったわ」
友紀「あー、うんありがと。…って言ってもわたしもう二十歳だよ?そんなに気遣いしなくてもいいのに」
P「うーん、でも俺からしたら二十歳の女性っていうか10個下の女の子って感じだからな。ここはお兄さんに気を使わせてやってくれ」
友紀「はいはいありがとねーオジサン」
P「そこまで老けてないー」
P「……それにファール避けるときちょっと足捻ってたろ」
友紀「…ははぁ、ホントよく見てるよね」
P「まっおまえたちを応援するのがプロデューサーだからな」
ありがとうございました。