side真尋
「―で、さっきポロッと言ってた『次元振動』って何だよ」
場所は変わってリビング。
インドミナス(仮定)は
「……少年、ルビと本文が一緒」
「平然と地の文にツッコんでんじゃねぇよメタいよ。
で、結局なんだよ30字で説明しろ」
「いやぁ、流石に30字じゃぁ……」
「はぁ………分かった。 じゃあ90字な」
「次元振動というのは、ハッキリ言って私たちにも正体が掴めておらず、分かっていることは、それが発生すると異次元の存在や世界―
創作物だったり自分自身だったり―が現れるという事だけです」
「わざわざジャストにしなくていい。
……ていう事は何だ? ゲームや映画の世界は別世界で実在するっていう事か?」
「そうなりますね。
『神様に合わないで転生してソッコーで死んだww』とか、『ドッペルゲンガー』とか、『幻想入り』とか呼ばれるモノの原因とも言われていますよ」
「マジかよ」
……でも考えてみれば、
それに比べれば、最初から潜んでいたか、後から異世界のスキマから来たかの差だしな。
「……あれが『本物』だとして―
「えぇと―監視、害になるようなら即、処分ですね」
「怖っ!?」
「……多分、処分は無い。 映画のあの10メートル強のサイズならまだしも、あの状態なら危険は無い―」
「みぃー!? みぃー!?!?」
「ぐるるるる」
「ちょっ?! シャンタッ君はご飯じゃないよ!?!?」
「……危険が、何だって?」
「……あれは多分幼体。 成長したら大変」
「ならさっさと処分するとしましょう。 クー子、非常時用に支給されたのがあったでしょう。 出しなさい」
「……ニャル子のは?」
「売りました」
クー子がスカートの内側からビンに入った飴状の物体を取り出す―って、
「お、おい、何やって―」
「はい、アーン」
「聞けよ人の話!?」
ツッコんでる間にインドミナス(仮定)が、飴状の物体を一粒どころか何粒も食べる。
「……なにって、このタイミングでは毒薬以外にありえない」
「………………………だよな」
情に負けて育てれば、間違いなく、手に負えなくなる。
それは分かってるのだが……目の前で命が消えていく事に耐えられず、背を向ける。
「………少年、」
「分かってる。 誰も悪く無い。
……行こう、ハス太」
「ふぇ?」
状況が分かって無いらしいハス太とシャンタッ君を連れてリビングを出る。
どんな毒薬なのか分からない以上、ショッキングな映像になるかもしれないのだ。
映画の人死にのシーンにですら毎回驚いていたハス太が見るには、早過ぎる。
「……結局、何も出来なかった………」
「……で、どうしてこうなった? 3行で答えろ」
「クー子が間違えて、通販で買った薬を渡した。
薬の中身は前にシャンタッ君が飲んだ擬人化薬の改良版。
結果こうなりました。
おのれインジェン社!!」
「インジェン社は関係無いだろうが!!」
「あべしっ!?」
状況説明。
Tシャツ一枚の銀髪幼女がソファーで焼いた肉にかぶりついてる。
いやーほんとおいしそうにたべるねーあはははははは(←現実逃避)
「かいりょうばん?」
「ええ。 なんでも、シャンタッ君が食べたヤツにハチミツを練り込んだら出来たようで。 ちゃんと人語を話せるようになったとか」
「……主成分がドキドキノコだからって、安易な発想。 レビューでも批判的なコメントが多かった」
「ならなんで買ったんだよ!?」
「……チャレンジ精神?」
「僕に聞くな!!」
「はうっ!?」
眉間にフォークを突き刺してやる。
……まあ、結果としては、一つの命が救われたからいいとして。
「………もういい。 それよりもあいつをどうするか決めないと」
振り向く。
銀髪幼女が土下座状態で震えながら焼けた肉を差し出していた。
「………ゑ? ちょ、なんで?」
「む、むれのおさが、い、いちばんさいしょに、ご、ごはんをたべるから」
「群って……ラプトルの遺伝子か。
て言うかなんで僕?」
「お、おさが、い、いちばんつよい、から」
「oh………」
あれか? フォークでドーンのインパクトが強過ぎたのか?
試しにフォークをポッケから取り出す。
「ピィィっ!」
震えが一段と強くなる。
フォークをしまう。
震えが少し収まる。
フォークを取り出す。
震える。
フォークをしまう。
震えが収まる。
フォークを取り出して金属摩擦音を立てる。
失神した。
「もう辞めてあげてぇ!
その子のライフはもうゼロです!!」
「うお!?」
ニャル子が腕を広げて立ち塞がる。
……言われてみれば、なんて事をやっていたんだ僕は。
わざと幼女を怯えさせるなんて、最低n
「私たちの愛の結晶をっ!! 虐めるだなんてっ!!」
「さっきまで毒とか処分とか物騒な事をやってた奴が言うな!!」
ニャル子の目玉にフォークでドーン。
……完全に怯えた目で見られた。
なんだろう、この罪悪感。
この後、メチャクチャ必死に誤解を解こうとして失敗した。
取り敢えず「おさ」は止めてもらうことには成功したが。
「―そういえば、コイツが本物の『インドミナスレックス』だとして、パークは大丈夫なのか? モグモグ」
「本人に聞いてみればいいじゃないですか。 どうせ私達には分かりませんし。 ガツガツ」
「それもそうだな。
……なぁ、どこから来たんだ? ムシャムシャ」
「んぐんぐ………わからない。
わたし、おねえちゃんとごはんのとりあいになって、けんかして、きがついたらここにいた」
「お姉ちゃん………インドミナスは二頭いたのか? バクバク」
「……ゴクゴク、そう言えば劇中で、獰猛さの説明で『二頭の内一頭がもう片方を殺した』って言ってた気がする」
「じゃあストーリーは繋がるのか。
………て言う事は、映画のアレとは別個体なのか。 モグモグ」
真っ昼間からの焼肉パーティーをしながら話し合う。
なにせこの幼女、最低でも僕が何か食べてないと何も口にせず、なのにお腹を鳴らしながら涙目で見上げてくるのだ。
どうして無下に出来よう。
誰だってそーする。
真尋だってそーする。
「チッ………まさか真尋さんがロリコンだったとは」
「フォーク封印解除しようか? バクバク」
「なんでもありません」
「……少年。 そろそろ食べるのを止めてもいいと思う」
「ん? 何で―まぁあれだけ食べればそうだよな」
草食恐竜の遺伝子の効果もあってか、米や野菜までバクバク食べまくった結果、どうやら眠たくなってきたようだ。
「悪い、クー子、運んでやってくれないか? ニャル子だとコッソリ亡き者にとか考えそうだし、ハス太はとっくにダウンしてるし」
「信用!?」
「……おさ、分かった」
「だから長は辞めい」
「スルー!?」
「今なら視線を気にせずフォークを投げれるけど?」
「ゴメンナサイ、オッシャルトオリデス」
生肉はタッパに入れ、冷凍庫に放り込む。
余り物もラップで包んで冷蔵庫に放り込み、焼いた肉はダウンから復帰したシャンタッ君に幾らかあげ、残りをニャル子と2人で根性で胃に詰める。
ちなみに母さんは買い物で不在だ。
「うぷ……食べ過ぎた」
「休んでる暇は無いです。 今後どう対処するか決めなくては……おうふ」
「もどすなよ? 絶対もどすなよ!? フリじゃないからな!?」
「ゲロインになるつもりはないので……で、対処ですが、」
「あれ、お前らのことだから、強引に飼うとか言い出しそうなのに」
「そうしたいのは山々ですが……
やはり成長後を考えると。
私の契約カプセルは5メートル程度が最大収納限界ですし、メタフィールドの拡張限界も精々30㎡ですし。
それに、劇中の時点での戦闘力が事実なら、我々3人の戦闘力では搦め手でも使わないととてもとても」
「ウソだろ、そんなバグった奴なのかよ……戦闘力?」
「宇宙インターネットで、映画の登場キャラの戦闘力を数値化しまくってる物好きな連中がいましてね。
ゴジラ対ガメラとか、夢の対決を全部数値で処理したと
「……まじかよ」
ソファーでクー子共々爆睡している銀髪を見る。
「……ドリームランド―は、本体ごとあっちに行く訳じゃないから無理か」
映画の中での暴れっぷり―
人の裏を平然とかき、罠を仕掛け、組み合わされた遺伝子の元になった生物の能力を的確に使う程の知能を持ちながら、殺戮を楽しむ本能を持つ。
他の生命体に会わずに成長した結果として、自分の立ち位置を探っていたとも言われていたけど………
あの脅威は、本物だ。
……助ける事は、出来ないのか?
「……ダメだ、頭がモヤモヤする。
僕も一眠りしよう」
「そうですか。 では一緒のベットで
「却下。 熟睡するつもりは無いし、
身体を痛めちゃいますよ!?」
「心が痛むよりマシだ。
じゃあ、みょんなことはするなよ?」
そのまま背もたれに体重を預けて目を瞑る。
今朝の睡眠不足もあってか、すぐに睡魔が―
「―う……ん?」
なにやら妙に暑い気が―
「真尋さん! やっと起きましたか!?」
「うん………なぁ!?!?」
目を覚まして真っ先に目に映ったのは、特撮で出てきそうな、真っ黒な衣装。
ニャル子のフルフォースフォーム。
「おまっ、なんでそんな格好してるんだよ!?」
「敵襲です! あの子が狙われました!!」
「はぁ!?」
慌ててリビングを見ると―
本気モードのクー子とハス太が、黒フードを被った奴と対峙していた。
その黒フードが右腕で抱えているのは、幼女化したインドミナスレックス。
左手には、拳銃。
「おやおや、やっとお目覚めか。
随分グッスリと寝てたねぇ」
「その声………女だからって油断すると思うなよ!!」
ノーモーションでフォークを投げつけ―
「真尋さん、危ない!!」
ギィンッ!!
「………は?」
フォークが、
「あの敵、こっちの遠距離攻撃を、全部ああやって跳ね返してくるんですよ」
「宇宙CQCは?」
「グレネード型のジャマーを放り込まれました!」
敵の足元を見ると、等間隔に引かれた横線の部分が点滅している、缶のような物体が転がっていた。
「くっ―」
「八坂真尋……いい殺気だ。
やっぱり、私に脅威を感じさせてくれるのは、
「? どう言う意味だ!?」
「さぁ?
さて、さぁて―
―また会おう!!」
バチンッ!
「「「「!?!?」」」」
黒フードが、その場で1回転したかと思うと―
そのまま消えた。