side真尋
「……ダメ。 全然足取りが掴めなかったって」
「こっちも、しはんされてる宇宙CQCジャマーだったよ」
「むむむ………想像以上に手詰まりですね」
「マジか、お前らでもかよ…」
インドミナスを連れ去られた後―
クー子は惑星保護機構に犯人を聞き、
ハス太は件の手榴弾を調べたが、手掛かりは無かった。
「本当ですか、クー子? ちゃんと調べたんでしょうね?」
「……入星記録がある邪神全員の移動ログを確認してもらった。
引っかからなかったって事は、不法入星者か―
アレも次元振動で迷い込んだか」
「でも、僕の名前知ってたんだぞ。
その説明はどうなる?」
「むぅ……問題はそこなんですよねぇ……」
「……でも、その逆ならあった」
「「「―逆?」」」
シャンタッ君も首を傾げる。
逆って、何が逆なんだ?
「……宇宙歴最大の戦死者を出した、『デストロイヤー戦争』」
「ウッソ、アレって伝説じゃ無かったんですか!?」
ニャル子がアホ毛を真上にピンと立てながら驚く。
「おい、なんだそのふざけた名前の戦争は?」
「……次元振動が、異世界へのゲートだと分かった一件。
文字通り、『デストロイヤー』が現れた」
「いやだからなんだよそれ?」
「……スターウォーズの、戦艦」
「……は?」
「つまり、想像上の存在が実在して、襲い掛かってきたって言う戦争なんですよ。
敵の規模こそ
兵装見たさに自滅しながら接近する奴、自ら捕虜になりに行く奴、ベイダーに会ってくると逝った奴。
最終的には、ヨグソトス率いる、原典で言う『外なる神』達がチリ一つ残さず殲滅した所為で証拠が残らず、伝説扱いされてるんです」
「」
つまりアレか?
こっちが一方的に向こうを知ってた例があるから、その逆もあるってか?
「……そういう意味では、インドミナスレックスにも同じことが言える」
「……映画か」
……この状況―何気に今までで1番ピンチじゃないか?
今までは、結局のところニャル子達のチートっぷりでゴリ押し出来たが、今度の相手は、その裏をかいてくるのだ。
「―取り返せ無い、のか……?」
「―えっと、ちょっといい?
さっきのしゅりゅうだん、分解したら、こんなのが出てきたんだけど……」
そう言いながらハス太が渡してきたのは、一枚のメモ用紙。
「ん? ……なんだこれ? 座標、か―」
メモには、「南緯47.9 西経126.43」とだけあった。
……また
「―ニャル子。 どうやら向こうはこっちを呼んでるみたいだな」
「は……こ、この座標は!?」
「……間違いない。
―ルルイエ」
メモを見せただけで、察したようだ。
じゃあ、―出発だ。
―太平洋 海底 ルルイエ付近
何時ぞやと同じ様にネフレン=カーでルルイエに向かう。
ルーヒーの時とは違い、深き者ども達の迎撃こそないが―
アレ単騎での実力が桁違いだ。
目的はどうせくだらないだろうから考えないようにして、相手の戦力を測る。
クー子の予想が正しければ、相手はこちらの手札を全て知っている可能性がある。
しかも
悲観するなという方が難しいワケで―
「―さん。 真尋さん!」
「うお!? ニャル子か、なんだよ?」
「だから、そんなに深く考えなくても良いですって。 きっとなんとかなりますよ!」
「……それもそうだな」
―いつも通り、こいつらの理不尽過ぎる暴力が相手を半殺しにして解決する。
きっと、大丈夫だ。
「―ところで真尋さん。 この戦いが終わったら結婚してくれませんか?」
「なぜ今死亡フラグを立てた!? 」
―ルルイエ
「……なぁ、ニャル子。
確かルルイエって遊園地だよな?」
「……えぇ」
「……じゃあ、あそこに見えるデカイビーカーの中身はなんだろうな?」
「……新しいアトラクション用の怪獣ですかね?」
「「アハハハハハハハハハハハ」」
「……少年、ニャル子。 現実を見よう」
「お前には言われたくねぇ!」
何事もなくルルイエに侵入し、真っ先に目に入った物。
シロナガスクジラが入りそうなくらいデカイビーカーに入った、モノスゴク見覚えのある白くてデカイトカゲらしきモノ。
「―随分と遅かったねぇ。 もう私の用事の9割は終わったよ」
ビーカーの陰から現れる黒フード。
「! 見つけましたよ下手人!
さあ、半殺しにされてさっき攫った子を返すか、全殺しにされて返すか、選びなさい!」
「勝つ前提かい?
クッケケケケケケケケ!!」
黒フードはひとしきり嗤ったあと、無造作にビーカーを引きずり倒した。
「ほらよ。 返す」
「? 私は、さっき攫った子と―」
「ああ、言い忘れてたよ。
―そのビーカーの中身、成長を異常促進させるんだ。 タダでさえ成長の早いインドミナスレックスがンなモンに浸かってたら……
後は分かるな?」
「「「「ゑ………
えぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」」
こ、こいつ、ざっと10メートル弱はあるぞ!?
「どうだよ?」
「……ものすごく……おおきいです」
「だろ? コピーするのに最低限必要なサイズにするのは大変だったんだぞ、オイ」
「―まて、コピー?」
さらっと妙な単語が奴の台詞に紛れた。
コピー? クローンでも作って売りさばく気なのか?
「クケケ……
「達? 共犯者がいるのか?」
「あぁ。 とっておきのな。
―だろう、インドミナス・レックス」
「「「「!?!?」」」」
黄色の瞳が開かれる。
地響きを起こしながら、白く、堅い巨体が立ち上がる。
生え揃った爪と牙が顔を覗かせ、明確な死のイメージを敵対者に植え付ける。
「急激な成長に中枢神経が持たなくてな。 目に映るモン全部敵だと思ってるから、正確には共犯者じゃねえな。 唯のバケモンだ、三つ巴の戦いだ」
「おいおい………
おいおいおいおいおい!?!
自分でも制御出来なくなるって分かってやったのかよ!?」
「制御……?
クッケケケケケケケケ、クーっケケケケケケケケケケ!!
―制御?
出来るわけねぇだろうが!!
―あァおかしい! イィギャグセンしてるよ、ヤッベェ、笑いが止まんねェ。
ついでにテメェじゃァ私も止められねェなァニャル子ォ!!」
ガキンッ!
ニャル子が振り下ろしたバールを、腕一本で防ぐ。
「!? 気が付きましたか!?」
「不意打ちくらいしか私を斃す手はねェからなァ。
モチロン対策はバッチリに決まってんだろうがよォ!」
そのままバールがニャル子ごと吹っ飛ばされる。
バールは折れ、只の鉄棒となったが、ニャル子は空中で回転して勢いを殺したようだ。
「ほら、ほぉら。 『反射』は切っといてやるから、さっさと来な。
でないと―喰われるぞ?」
「―ガァァァァァァァァァァァアアアア!!!」
白き竜の咆哮が響き渡る。
「さぁ、最強のハイブリッド種よ!
今のお前のパワーで、あいつらをブチ殺してしまえ!」
巨大な爪が、叩きつけるようにして襲い掛かる。
「doooor!?」
「「「「…………ハァ?」」」」
あの黒フードに。
「イデデ……やっべ、ひ、避難だぁ!!」
「グルォォォォォォォォォオオオオオ!!!」
「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌ててその場から離れる黒フードと、それを追い掛けるインドミナスレックスと一瞬でフルフォースフォームに変わったニャル子。
「ガァァァァァァァアアア!!」
「ちょ、だから、私はエサじゃないぃぃぃぃぃいい!!」
「腐☆腐。 お笑いだなぁ!
精々やるだけやって、仲良くインドミナス・レックスの腹の中にでも行くんだなぁ!」
インドミナスがターゲットをニャル子を変えた隙に、黒フードが、鉄で覆われたジャイロスフィアのようなモノに乗り込む。
「!? テメェ!! クー子、ハス太!!」
「……とりゃー」
「ふっ!」
「クケケケケ、無駄無駄無駄ぁ!
その程度の攻撃では、改良版1人用ポッドを破壊することは出来ぬぅ!!」
本気モードのクー子とハス太の攻撃がジャイロスフィアモドキに炸裂し、そこそこの規模の爆音と閃光が発生する。
「…あー、2人とも。 もう攻撃を辞めていいぞ」
「……でも少年、アレはまだ生きてる」
「大丈夫だ。 あのバカ、たった今自分で死亡フラグ立てたから」
「「………あぁ」」
「―よし、じゃあさっさとおさらば
「グォォォォォォォォォォ!!」
!?!? まさか―や、ヤメロォ!?!」
ジャイロスフィアモドキはインドミナスに噛まれて、メキメキと異音をたて始める。
「ちょ、これマジでヤバイヤツ!?
あ、明日まで! 明日までお待ち下s
『メギョッ!!』
マジで待ってぇぇぇぇぇえ!?!?」
「逆に明日になったら潰されてもいいのかよ!?」
邪神達の攻撃をくらい、傷一つ無かった球体が、メキメキ潰れて逝く。
黒フードも観念したのか、絶叫が止み、なにやら悟ったような事を口にし始めた。
「……やはりポッドは、圧倒的な力を持ったモノに潰されるSA☆DA☆MEなのか」
「分かってて死亡フラグ立てたのかよ!?」
「だってわざと死亡フラグを立てると効果が反転して、むしろ生存フラグになるって聞いたんだモnキーパンチィィィィィィィィィィィイイイイイ!?!」
グチャァア!!
悲鳴、異音と共に、遂にポッドが真っ平らになった。
で、そのポッドを咥えたまま回転、
「グォォォォ―ォォォォオオ―
―グガァァァァァァァァァァァアアアアアアア!!!」
ソォォォォォォォォォォイ!!
地平線の彼方の向こう側に吹っ飛ばされる―って、
「ちょっと待て今の投擲音はどっから出た!?」
「へ? 何かみょんなところありましたか?」
「……特に無かった」
「ああそうだな」
「よく聞こえるようにお前らの耳掃除してやろうか? フォークで」
「さぁ、後はインドミナスだけです!!
……ボコれば戻りますかね?」
「お前らの本気モードと違って、成長でああなっちまったんだろ?
となると……クー子、例の薬は?」
「ん……はい」
「いやどっから出してんだよ!?」
クロスファイアシークエンス状態で臀部まで大きく開いた背中の下の方から出したんだけど!?
そこスペースすらないよね?!
「じゃあ、まずはコレを食べさせてみますか! クー子、幾つか手に持って構えてなさい! アンタごとインドミナスに喰わせます!!」
「……ニャル子、流石にそれは痛いじゃ済まない」
「あぁ? なに言ってるんですかんな事分かってますよついでにアンタごと亡き者にしようとしてるんですよ察して下さいよ」
「……二人共、喧嘩を辞めろ」
「ワァット? ハス太あなたこんな脳味噌固形燃料の肩持つk」
ニャル子とクー子すらフリーズする。
僕らは、インドミナスとバッチリ目が合っていた。
アレだ。 映画のシーンでもあった、恐竜が片目でコッチを見てくるシーン。
あのまんま。
―て、言う事は、
「ガァァァァァアアアァァァァァアアアァァァァァァアアアァァァァァ!!!」
「―逃げるぞ!」
ニャル子とクー子はそのまま一気に離れ、ハス太だけが僕を抱えて逃げる。
……この差は一体? 取り敢えず彼奴らは後でフォーク投げの新技の練習台にしてやる。
―ピィピィ! ピィピィ!
「!? このタイミングでか!」
「? ハス太、なんだこの音?」
なんか胸元の辺りから聞こえるような……
「今回の敵、次元振動で現れた可能性を考え、その余震を察知して警報がなるアプリをiAiAPadにインストールしておいたのだ」
「余震なんてあるのか?!」
「極僅かにだが。 だから、次元振動の発生する場所は
「……ていうか、アレがそうか?」
「」
ニャル子とクー子の向かう先の景色が、突如歪む。
あまりに突然の事で、ニャル子とクー子は止まり切れずそのまま入ってしまう。
「―ままよ!!」
「オイオイ僕らも突っ込むのかよォォォォォォォオオオオオ!?!?」
「ガァァァァァァァァアアア!!」
続いて僕らと、邪神達の脚について来れてたインドミナス・レックスが、空間の歪みに飛び込む。
そこは――