side真尋
「「――グルオオオォォォォォォォォォォォォ!!!」」
「ギヤァァァァァァァ!?!」
2頭のインドミナスレックスの咆哮が響き渡り、殺戮衝動全開の怪獣決戦が始まる。
「でんじゃーっっ!!」
「おわ、あ、あぶ、ああ、あっぶねぇっっ!!」
払われた尻尾をなんとか躱して、走って逃げ出す。
「ぜえ、ぜえ、ま、待ってください、真尋さ〜〜ん。 私、もう体力が、」
「は?! 何時ものチート体力はどうしたんだよ?!」
「1年間もぶっとおしで逃げてちゃ、そりゃ疲れもしますyぉてぃぬすっ?!」
「メタいわぁ!! うおっ?!」
息絶え絶えなニャル子に振り返ってツッコんだ瞬間、横方向にすっ転ばされる。
「イッツツツ……
い、一体何が………」
「……少年、静かに。 ここも安全じゃない」
「クー子!? おま、何やって――
……ホントに何ヤッてるんだよ」
転んだ時にダウンしたのか、微妙に抵抗力の弱いニャル子のスカートに、頭から突っ込んでる
「……何って、人工呼吸」
「代わりにアンタの息を永遠に止めてやりましょうか!?」
両足でクー子の首をロック、180度回転させて地面に捻り込み、反動で跳ね起きるという無駄に高度な無駄な技術を使った技が決まる。
「全く、油断も隙も無いですね。
……まあ、私と真尋さんを救ってくれた恩に、すこ〜〜〜しだけ手加減しましたけど」
「えぇ……(ドン引き」
どう見てもオーバーキルな惨状に目を逸らすと、足元、ズボンの裾に赤いボールの様な何かがくっついてることに気がつく。
これって……
………まあ、ここだっていつまでも安全ってわけじゃない。 10メートルクラスの大型がガチ戦闘してるわけだから、それこそ今すぐにでも逃げないと。
「あ、ところでハス太ってどうした?」
瞬間、踏みつけるニャル子と悶えるクー子の動きがピタっと止まる。
「……………おい」
「な、ナニヲイッテルノカ、ワタシニハサッパリ」
「……邪神がそんな簡単にやられると思う?」
「声が震えてるぞ。 それに勝てねえって断言したのお前らじゃねえか」
「……………」
「……………」
「……………」
「………ほ、ほら! 友情、努力、勝利っていうじゃないですか!」
「いつからここはジャ○プの世界線になった思いっきりユニ○ーサルだろうが。 それに僕、お前らが努力する所一度も見たことないんだけど」
「……………」
「……………」
「……………」
「………殺られた所は見てないんで。 多分、きっと、メイビー、生きてるじゃないかと、うん、大丈夫デスヨ……」
「うおおおおい!?」
ニャル子の肩を掴んでガックガクに揺さぶる。
「そ、そもそも! そりゃあんなティラノと何処ぞの傘製BOWをフュージョンさせたようなヤツ相手に1年も鬼ごっこさせるうp主が全ての元凶ですよ?! そりゃひっそりと逝きもしますよてか1年ですよ、1年?! 放置し過ぎなんですよ!!」
「それには全面的に同意するが、お前らなら幾らでもやりようがあったろうが?! シャンタッ君で上に逃げるとか!」
「カプセルにしまっちゃったんで、また出すとなると数瞬無防備になるんですよ! その間にパックリ逝かれてジ・エンドです! それに上がったら上がったで翼竜が飛んでるんでカプコンヘリの二の舞になります!」
「そういえばそうだったァっっ⤴︎!?!」
バキィッ、という音と共に、僕らが隠れていた大木が頭上スレスレでヘシ折れ、インドミナス(2)が吹っ飛んで来る。
「グルルルルル………」
……メトメガアウー
「あ、あはは………
僕って、ほんとバカ」
「真尋さーん!? 気持ちは分かります! 分かりますけど、中の人ネタでそのセリフはやめて下さい色々とアウトです具体的には死亡フラグとかァ!!」
前から大口を開けたインドミナス(2)が突っ込んで来る。
振動からして、背後からも同じ様に来てんだろーなーあはははは(ヤケクソ)
あぁ、目の前が真っ赤に―――
――ドッゴォォォォォォォン!!!
「グギャァァァァァァ!?!?」
「グルォア!?」
突如、背後のインドミナス(1)の顔面で爆発が起きて、その巨体を地に叩きつける。
突進を強制キャンセルするだけの爆発に怯み、
『――邪魔だ、デカブツっ!!』
「グギャァァァァァァ!?!?」
見覚えのある、青と黒の頑丈そうなジープがそのドテッ腹に激突する。
これには堪らずインドミナス(2)は逃げ出し、先に倒されていたインドミナス(1)もその場から慌てて逃げて行く。
「……た、助かったのか………?」
呆然としていると、ジープの運転席と助手席の扉が開く。
運転席側はベストやショットガンで完全装備で、ヘルメットで顔は見えないけど、助手席側から出てきたのは――
「――まひろくん! ニャル子ちゃん! クー子ちゃん!」
「ハス太!? あんた無事だったんですか?!」
「うん! にげまわってたらこの人にバッタリあって、そのまま恐竜をおいはらえる隙をまってたんだよ」
「それならそうとハヨ言わんかい!」
ニャル子とハス太のいつも通りのやりとりをみて、ようやく落ち着ける。
「よ、よかった……」
「疲れてる所悪いが、いいか?」
「え、あ、はい」
座り込んでいたままだった僕に手を伸ばすヘルメットの人に助け起こされると、その細部に編まれた、"ティラノ骨格のマーク"が見える。
「――ジュラシック・ワールド警備部、ロバート・マルドゥーンだ。
アンタたちが谷に残ってた客で合ってるな?」
武骨なショットガンをスリングで下げたその人がヘルメットを外すと、3、40代くらいのオッサンの顔が映る。
「えっと、ハイ」
「ならいい。 先に車に乗っていろ」
そういって背を叩くと、インドミナスが大暴れしていた方へ歩いていく。
……それにしても、あいつら、妙に静かな気がするな。
具体的には、ニャル子とクー子がフリーズしてる。
「おい、どうした?」
「ばんな、そかな、」
「ああうん、話する気ないなお前。
クー子、そっちはどうだ?」
「……ロバート・マルドゥーン。
ジュラシック・パークのラプトルの飼育員」
「は? ラプトル? オーウェンさんじゃないのか?」
「……少年。 私は、『ジュラシック・パーク』って言った」
「いやだか、ら――」
そこまで言われて、あるワンシーンが脳裏に浮かぶ。
――枯れ木の上にテンガロンハットを置き、それを囮にする男性。
――ゆっくりと軍用ショットガンのストックを展開、頬付けして保持するも、真横から顔を覗かせるラプトル。
――『
思い出した。
マルドゥーンって、
「
「それは映画限定の話です」
いつの間に復活したニャル子が話を引き継ぐ。
「映画限定の話? どういう事だ?」
「映画版だとマルドゥーンはラプトルにサクッと殺られるチョイ役ですが、小説版、及びゲーム版シナリオだと生存組ですよ。 例のラプトルのシーンも、小説版ではフツーに撃退に成功してますし、ロケランとジープと麻酔銃で
「尚更なんでこんな所に?!」
よく思い出せば、抱えてたショットガン1作目と同じだし。 あの特徴的な折り畳みストックは見ればわかる。
「……助けてくれたのは事実。 生存していてもおかしくないならそれでいい。 幸い、向こうは私たちをゲストと勘違いしてるから、そこを利用しよう」
取り敢えずの方針を決めた僕らは、言われた通り、ジープに乗り込むことにした。
――しばらくして、深い熱帯の森をジープが走破する。
森を抜けると、舗装された道が姿を現し、閑散とした建造物群が見える。
すぐ側には、円錐状の茶色い屋根の、ワールド版ビジターセンター。
「よし、ここまで来れば大丈夫だ。
後はセンター内の連中に言えば避難域まで逃げられる」
そう言って僕らを降ろすと、「じゃ、うまくやれよ」とだけ告げて、さっさと何処かへ走りさってしまう。
「――さてと。 これからどうする?」
現在時刻は大体分かった。 余程のことがない限り、少なくとも船に乗り遅れることはないだろう。 脱出手段は確保済み。
とすると、
「そりゃもちろん、インドミナスを追いますよ。 ちょうどいい事にそこらじゅうにバギーが乗り捨てられてますし。
というわけでハス太、クー子を乗せてそっちのを使いなさい。 私はこっちを使います」
所々赤いものがこびりついてる青い四輪バギーを2台手早く調達すると、キーも無いのに針金1本でエンジンをかける。
「さあ真尋さん! トバしますから捕まってください! 具体的には私のバストを!」
「だ、そうだクー子」
「流石少年。 分かってる」
「ギャース!?! 熱い熱い焼ける溶ける!!」
乳繰り合ってる2人を放置して、付属品らしい無線機と睨めっこしているハス太のいる方のバギーに跨る。
「あ、まひろくん!」
「どうだ、何か分かりそうか?」
「うーん。 それが、インジェン社の、"危機管理部門"のひとたちの無線をきいたら、インドミナスがセクター5に入ってからのはんのうがないんだって」
「てことは、そのエリアにいるってことだよな」
リゾートエリアに来る途中、マルドゥーンさんから聞いた話によると、ジュラシックワールド内での恐竜の管理に使われている電磁フェンスは、本体に埋め込まれた発信機が一定区画ごとを囲ったセンサーに反応することで電気ショックを引き起こすことで機能するとのこと。
これを利用すれば、その範囲の出入りであれば発信機無しでも追跡出来るらしい。
だからこそ、管制室でもある程度インドミナスを追えたのか。 その結果が
「……ところでさ。
セクター5って、何処?」
「…………………あ"」
「マルドゥーンさーん! 地図! 地図置いてってぇぇぇぇぇぇええ!!」
当然の如くそんな絶叫が届く筈もなく、虚しくそよ風が吹くだけだった。
「しょうがないですねぇ真尋さんは。 地図がないと何も出来ないんですか?」
「……マップの暗記は鉄則中の鉄則」
「黙らっしゃいゲーム脳。 そんな言うなら先行けオラ」
「分かりましたよ。 ほらクー子、端末出しなさい」
「……ニャル子のは?」
「使い過ぎで電池がボンバーしました」
渋々と、クー子がスカートからスマホ――ではなく、なぜかゲームコントローラーを取り出し、無線機に繋ぐ。
「……コマンドなんだっけ?」
「はぁ? 覚えときなさいよそのくらい! 上上下下左右左右四角三角ですよ!」
「だからユニバー○ルだっつってんだろなんでコ○ミコマンドなんだよ!?」
『ナビゲートを開始します』
「しかも元ネタより進化してるぅぅぅぅぅぅう?!?」
無線機特有のノイズ混じりではなく、メッチャ流暢なゆっくりボイスが機械から流れて、案内が始まる。
えぇ……こんなんでいいの??
――ナビゲートに従い、森をバギーで突き進む。
にしても、何時ぞやの縞瑪瑙の城でも思ったけど、僕らの世界の宇宙技術は一体どうなってるのだろう。
機械のクセして、『3分前に通り過ぎた所を右です』て。 しかもフォークで脅すと修正版でナビを始めるし。 なんでそこまでフォークが効くんだよ。
『間も無く、目的地付近です。 ルートガイドを終了します』
すぐそこに、白字で『5』と書かれた、小さな摺鉢状の機械がビッシリ張り付いた、青い支柱がそびえ立っているのが見える。
日はもう陰り、暗くなり始めている。 リゾートエリアの惨状を考えれば、とっくの昔にラプトルを解き放つ準備は始まっているはず。 時間が、無い。
「急ぐぞ、ニャル子!」
「分かってます! フルスロットルゥ!!」