「あれ~。なんかやけに今日は静かだね~」
「そうか。人通りがないわけでもあるまい。そなたの気のせいではないか」
「そうだといいんだけどね~。この手の予感って言うのは外れたことがなくてさぁ。やれやれ」
魔物を蹴散らし、ジータの故郷の村にたどり着いたシエテとスカーサハ。村の様子を不審に思いながらもジータの生家を目指して歩を進めていた。
「スカーサハちゃん、気付いてる?」
「おぬしが我をいやらしい目つきで見ていることか」
「いや、俺普通に見てるだけなんだけど。そんなに不審者に見えるかなぁ」
「むしろ村人がそういう目で見ておるな」
「うわぁ…落ち込むなぁ。でもそうなんだよね、僕らのことをすごく警戒してみている」
「警戒されておるのは、お主だけじゃがな。まぁ、差し詰め前回何かやらかしたのだろう」
「そんなことないと思うんだけどね~。ちゃんとジータちゃんと仲良くしてるって伝えたし」
「感じたか、今村人たちの視線が鋭くなったぞ」
「嫉妬ってやつ?うそでしょそれこそ!」
「ふむ。自尊心が高いのも考え物だ。我はそこの丘でのんびりしておるから、お主は何が原因なのか突き止め、解決せよ。あまり待たせるでないぞ」
「うおおい!まじかーい!やれやれ~あんまりワガママだとお兄さんも困っちゃうよ~」
「ワガママか?合理的で理論的な判断だと思うが」
「はいはい、そうですねー。ま、このままじゃ居心地悪いしね。ちょっと行ってくるよ」
「さっさと行くがよい」
「あはは…」
こうしてシエテと別れ、スカーサハはなだらかな丘の上でひとり寝転ぶ。
空は青く、心地よい風が包む。
「お昼寝がしたくなる気分、というのはこういうことであるな」
目を閉じる。自然と今までの旅が脳裏を駆け巡る。
アイルストを出ようと言って。ノイシュとセルエルに止められて。しかたないからびっくりさせてみたりして――
そのまま夢の世界へと身をゆだねる。夢の中でもスカーサハはノイシュとの思い出に…
「と、なるとでも思ったか?そこにいるのは誰だ」
「わわわ、お兄ちゃん、気付かれちゃったよ!」
「おいバカ、声出すな!寝言だろ?くそう、くそう、まだ活路は――」
「活路なんてないぞ」
「うわあ、やっぱり気付かれてる!逃げよう!」
「まあ待て、お主らが危害を加えるつもりがないことは分かっている。安心せい。我も子どもに手をだすほど野蛮な龍ではない。こちらに来るがよい」
「か、体が勝手に…!」
「お兄ちゃん、こわいよ!危害加えてるよこれ絶対!」
「たわけ。そもそも勝手にのぞき見していたのはお主らの方であろう」
「…」
「何か言うことがあるだろう」
「すみませんでした」
「ごめんなさい!」
「ふむ。悪いと思っているのか。我はてっきり何か用があるのかと思っていたのだが…まあよい。名はなんと申す」
「俺の名前はパズウ!ジータちゃんに言われてここに来たんだ!」
「お兄ちゃん!?」
「え、どうかしたか?」
「なるほど、事情は分かった。あの小娘…なにか企んでおるな」
「あ…」
「もう、お兄ちゃんのバカ!」
「に、逃げよう…」
「逃げられるものなら逃げるがよい」
「無理でした!」
「もう、ほんとお兄ちゃんのバカ!アホ!ドジ!」
「ところでそちらの娘の名前を聞いていないが」
「あ、私はザンクティンゼルのキャスター。真名はまだ明かせないわ」
「ふふ、キャスターか。笑わせてくれるわ!魔術回路を所持しておらぬというのに…。まぁよい、幼さゆえの戯れ言であろう、許す。ではキャスター、お主はどうしてここへ来た?」
「お兄ちゃん…どうしよう」
「我はお主に聞いているのだ、ザンクティンゼルのキャスターよ。なぜ来た?」
「そ、それは山へ芝刈りに…」
「うそだ!!」
カラスが背後の木から一斉に飛び立つ。
「それはそれとして…さ、話すがよい。だいたいジータのことだ、想像はつくがな」
「実は私たち…」
タイトルのなんとなくさむ~い感じは狙ってやってます、大丈夫です。