「あの時は本当に国がダメになるかと思いました」
「苦労されたんですね。藤村さん…いえ、祭司様…?ん?」
「ああ、執政官イザベラですね」
「そうです。失礼しました」
「いえ」
ランスロットとノイシュは料理を作っている。ノイシュが先生でランスロットはひよっこの生徒だ。
「ああ、そうですね。そこの切り方はそれでもいいのですが、こうすると食べる時に楽ですよ」
「なるほど!やはり食べる時のことを考えるのが大事なんですね」
「そうですね。食べてもらえてこその料理ですから」
「ビィくぅん!!愛をこめて作るよ~!食べてね~ああ、食べる姿を想像するだけで…!」
「ランスロット殿、今何か聞こえたような…」
「私もです。いったいなんだったんでしょう?」
「まぁ、大丈夫でしょう。では、続きを」
「はい、ノイシュ先生!」
「せ、先生ですか…?」
「そうです。教えていただいているのですから、敬意をもってお呼びしたい」
「聞きましたか、姉上」
「ノイシュ先生ですか。悪くない響きです。ノイシュ先生」
「!?セルエル様にヘルエス様!いったいいつからそこに?」
「さぁ、いつでしょう」
「さっきセルエル様を最終上限開放してきましたが、盗み聞きされたことに関してさぞかしお怒りになられてましたよね?」
「さてノイシュ先生。準備のほどはいかがですか」
「…ランスロットさんはとても器用で呑み込みが早く、とてもよくできています。あとはこちらの食材とこれを使ってスープを作ります」
「なるほど。それは良かった」
「ノイシュ先生、実は先ほどジータから連絡がありました。ザンクティンゼルで迷子になっていたヴェインを見つけたから、シエテ様とスカーサハ様と合流してもうすぐ戻るとのことです」
「それはよかった…!ヴェインはいつの間に迷子になっていたのか分かりませんが、本当によかった!」
「ランスロットさんったら。今晩はジークフリートさんやパーシヴァルさんもご一緒なさるとのことでしたから、お料理頑張るのですよ」
「姉上。それは内緒にと」
「あら、そうだったかしら」
「全く。困ったものですね」
「困っているのはお互い様よ」
「(なんなんだこの高貴すぎて仲がいいのか悪いかもわからないこの姉弟は!なにより、どうしてこの状況でノイシュ先生は微笑んでいられる?)」
「ヘルエス様。お料理が足りなくなるところでしたから、教えていただき、ありがとうございます。セルエル様もランスロット様にサプライズをしたかったのでしょう、ご配慮心に痛みます。万全の状態で晩餐が行えるよう、尽力いたします」
「ほら、セルエル。ノイシュ先生に気を遣わせてどうするのですか」
「姉上の一言が発端です」
「僭越ながら申し上げますが、お二人のうち先に『ノイシュ先生』と口にしたのはヘルエス様です」
「(なんだなんだ、今度はノイシュ先生が攻撃モードなのか?なんなんだこのアイルスト!どこからどこまでがロイヤルジョークなんだ??なんなんだこのアウェー感!)」
「あら、そうでしたっけ?それがどうかしましたか」
「…とにかく、今はお料理中です。ランスロット様もいらっしゃいますし、また後程にしましょう」
「(アイルスト組の中で怒らせちゃいけないのはセルエル様だと思っていたけれど、ノイシュ先生なのかもしれない…!)」
「姉上、我々はさっさと退場しましょう」
「そうですね。では、何かあれば私たちも手伝いますから呼んでくださいね」
「ランスロット様も優秀ですし、その必要はないかと。自室でおくつろぎください」
「ふふ、では行きましょう、セルエル」
「はい、姉上」
2人が去った後でノイシュがランスロットにも聞こえないような声で「もう少しお互いに素直になれないものだろうか…」などとぶつぶつ言っていたのは別の話。
プロットなしで進めてきた作品ですが、本日無事完結しました。あと5話ほどになる予定です。
更新をお待ちください!