幼女がISに乗せられる事案   作:嫌いじゃない人

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 文字数が多い割に話が進展しないと、なにかやっちゃった気分になります。


8. 剥離剤

 兵器開発の試験要員としてストラヴェルケAIWに協力しているターニャだが、なにもISに搭乗し謎兵器の標的になるだけが仕事ではない。必要とあらばデスクワークにも従事する。

 

 今日も、たまたまそんな日だった。

 被験者の視点から評する対IS兵器について、これまで書き上げてきたレポートを本社に提出するための書式にまとめ、確認をする作業。足の着かないオフィスチェアに腰かけながらキーボードで文字を打ち込んでいく。

 世の中的にはモニター同様キーボードも投影型が主流だが、ターニャが使っているのはボタン式の実体のある古いタイプだった。やはり道具は使い慣れた形の方が良い。このタイプのキーボードは汚れやすく嵩張る代わりに『指の触覚で確認しやすい』というメリットがあるため愛用者も多く、現在でも生産されている。室内に並ぶ他の研究者のデスクにあるのもほとんどがこのタイプだ。

 

 しかし現在、机について仕事をしているのはターニャ一人だった。他の人は皆出張っている。

 ターニャも本来であればISを着用し開発実験に参加しているはずであった。しかしその予定が変わったため、締切がまだ先の書類仕事に手を着けることにしたのだ。

 

 

 

 他人の目が無いのを良いことに、ターニャは思い切り伸びをした。肌着のような白いシャツの袖から、両腕に巻かれた包帯が覗く。

 

 ターニャが実験の現場から離れ机仕事に就いていたのは、先日の実験による負傷が原因であった。怪我の程度自体は大したものではないが、操縦者の肉体が損傷していては正確なデータが得られないという理由から大事をとって療養している。

 ターニャとしては怪我をしたことや安全策が不十分だったことは誠に遺憾だが、しばらくは安全なデスクワークに逃げられるうえに労災が降りたので、結果としてはそう悲観すべきことでもないかもしれない。それでも、体調が整えば再び試験要員に舞い戻ることが分かっているので、喜べはしないが。

 

 

 

 

 ちなみにだが、その怪我の原因となったのは巨大な大砲でも特殊な弾頭でもなく《剥離剤(リムーバー)》という小さな道具。この剥離剤、見た目は直径30cmほどの金属製の円盤。『ISと操縦者を引き剥がし強制的に解除する』という特殊な機能を持ち、作動時には円盤の側面から六本の腕を伸ばしISに絡みつくという寸法だ。

 

 これまでにない変わり種の登場に、実験当時、ターニャは不安を抱いた。そしてその予感は的中する。

 まず、痛い。

 人とISの接続を断つために装置から特殊なエネルギーが放出され、その一部がシールドを透過し電撃のような激痛をもたらす。しかし肉体に直接ダメージを与える攻撃ではないため絶対防御は発動しない。耐えられなくはないが理不尽な痛みが体を襲う。

 そして放出されたエネルギーの余剰部分は通常の電流と近似的な挙動をとるのだが、これがマズかった。エネルギーの放出はISの解除と同時に停止するが、発動している間に剥離剤そのものが帯電状態となっていたのだ。そしてISの解除直後に装置内に蓄積されていた電流が、ターニャの身体を流れ周囲に放出される。防護服のおかげで直撃は免れるが、結果、皮膚に火傷を負ってしまったという次第だ。

 

 

 

(やれやれ。"ISを解除する道具"と聞いた時点でもう少し警戒をするべきだったか。この世界の医療が進んでいたことは幸いだったな)

 

 

 

 ターニャの身体の至る所に巻かれた包帯の下では、既に火傷した皮膚の治癒が始まっていた。

 巻かれた包帯の裏側にはターニャの遺伝子から培養した再生組織が塗布されている。包帯はターニャが生まれた研究所からの贈り物だ。純再生医療は汎用型ナノマシン治療より完治が速いぶん高く手間がかかるものだが、肉体を一から作り上げた彼らにとっては一組織の培養などおまけの様な作業である。メンテナンスのしやすさもデザインチャイルドの利点だというのは、ターニャにとって新たな発見だった。

 

 

 身体の治り具合を確かめながらターニャが一服つくためのコーヒーを淹れていると、内線が掛かった。あまり気は進まないが、一人の社会人として"放置する"選択肢は端から持ち合わせていない。

 習性として3コール以内に手に取る。

 

「はい。こ――」

 

『うん? デグレチャフ君かね。私の友人が君に会いたいと言っていてね。会議室で待たせているから早めに顔を出してくれ。私は所用があるので先に失礼するよ』

 

 ガチャ、ツーツーツー。

 

「…………」

 

 

 

 教訓。自分が常識的な応対をしたとしても、それを相手に求めて腹を立ててははいけない。

 "社会人の常識"とはよく言うが、社会とはいくつものコミュニティの集合体であり、常識という固定観念は所詮は各コミュニティごとに形成されているに過ぎない。大人になると生活に必要な情報以外の知識を取り入れる余裕がなくなってしまうため、自学を怠った結果"自分の所属するコミュニティ=社会"だと誤認してしまいがちになる。自分の意思で郷に入り郷に従えない者は論外だが、郷の外で郷の理屈を振りかざすのもまた人としての恥なのだ。

 それを踏まえたうえで、今の一方的な通話を振り返る。……明らかに非常識だ。

 

「くそドクトル!」

 

 ターニャは傷つかない程度に受話器を叩きつける。そして客人に失礼にならないよう上着を引っ掛けると会議室に向かった。

 あのシューゲルの友人だという時点で真面(まとも)な人物であるという望みは薄い。しかし万が一の可能性として非常識な彼女に巻き込まれた哀れな常識人という線もある。もしそうなら不必要に待たせるのも申し訳なく、なにより自分があのマッドと同類だと思われるのは耐えがたい苦痛だ。

 

 

 速足で向かったターニャはすぐに会議室の前に到着する。そして扉の前でもう一度居住いを正し、ノックをした。

 

「どうぞ」

 

 扉越しの返事は落ち着いた女性の声。少なくともアルベルタほどあからさまな狂人ではないようだ。

 ターニャは油断しないよう気を引き締めながら扉を開ける。

 

 

 会議室の椅子には一人の女性が腰掛けていた。扉越しに受けた印象通り、落ち着いた立ち振る舞いの、スーツ姿の女性だ。

 ターニャはその顔を知っていた。

 

「初めまして。ターニャ・デグレチャフ」

 

「これは…… マスマディス、様!」

 

 

 

 

 会議室でターニャを待っていたのは、ストラヴェルケの企業代表IS操縦者にして元国家代表操縦者『メルセデス・マスマディス』。一企業のみならずドイツのIS界の顔役として、知らぬ者はいない有名人である。

 ターニャにとっても先日、雑誌の紙面で目にしたばかりの人物だった。もちろん直接会うのは初めてだが、雑誌に掲載されていた通りのクールでストイック、精悍な社長秘書を前にしたような印象を受ける。肩口で切り揃えられた青み掛かった黒髪やスクエアフレームの眼鏡は、ファッションとして彼女の大人びたキャラクターをより強固なものにしていた。

 

 "あのドクトルの友人"ということで変人の可能性を高く見積もっていたターニャは、改めて意識を切り替える。目上の人に失礼が無いようにという、ある種のビジネスモードだ。

 メルセデスはIS操縦者としても企業への協力者としても、ターニャにとっての先達者であり尊敬すべき人物なのだ。少なくとも世間一般の常識ではそのようになっている。

 

 

 扉を開けてすぐさま直立不動の姿勢をとるターニャに、メルセデスは手慣れたように対応した。相手の緊張をほぐすような小さな笑みを浮かべ、対面に座るようスムーズに誘導してくれる。

 それだけの所作で、ターニャの彼女に対する好感度はググンと上がった。相手への配慮と形式の順守を両立させた、素晴らしい判断と腕前だ。

 

 向かい合った二人はまず挨拶を交わす。

 ターニャはこの時点でようやく、この世界に名刺交換の文化が無いことに気が付き、同時に少しの寂しさを感じた。名刺交換という風習は一見して無駄な動作が多く見えるが、あまり馬鹿にできるものではない。少なくともターニャの知る範囲内において、優秀な営業ほど名刺や名刺入れには意識を払っていたと記憶している。しかしデジタルがより一層浸透したこの世界では、アナログな名刺文化は淘汰されることを免れなかったのだろう。

 そう思うと、ターニャは自分が一気に年老いたような気がした。

 

 

 

「なるほど。アルベルタに聞いていた通りですね。子供とは思えません」

 

 メルセデスの言葉を受け、ターニャは自分の感傷を一度断ち切る。

 

「私自身、大人の方々と同じような行動を心がけていますから、そう評価していただけるなら幸いです」

 

「そうですか? ですがアルベルタは大人でも手を焼くような問題児。無理をして倒れられても困るのであまり無理はなさらぬよう。そんなことになれば、会社が児童虐待でしょっ引かれてしまいますからね」

 

「……確かに、楽な仕事ではありませんね」

 

 いつもなら、ターニャは上司や雇用主への批判は()()()()()()胸中に留めておく。しかしこの場に限っては、最初にメルセデス側から悪質な上司や社のグレーゾーンに関する話題に触れてくれたことで、一時的にターニャにもそれが許される空間が出来上がっていた。むしろ、ここまでお膳立てを受けておきながら世話にならないのは失礼にあたるだろう。

 大切なのはタブーが全面的に解禁されたのではなく、あくまでメルセデスの言葉がセーフティーラインだと見誤らないことだ。

 

「ドクトル・シューゲルが優秀な科学者、開発者であることは間違いないでしょう。しかしその産物を向けられる側からしてみれば、祖国の利益のためとはいえ素直には喜べません」

 

「そうですね。()()とはボクも学生の時分からの古い付き合いですが、安全への配慮が足りないのは昔からの悪癖です」

 

「そうなのですか! ご友人とは伺っておりましたが、私はてっきり操縦者と技術者としての関係だとばかりに……」

 

「ええ。ボクもアルベルタと同じ大学、教授のもとで工学を学んでいました。……初めてISに触れたのも技術者として、博士号を取ったばかりの頃でしたね」

 

「なるほど。そういったご関係でしたか。それはさぞ、苦労されたことでしょう」

 

 今でこそISを有する各国々は、IS操縦者を目指す少女たちに10代の頃から専門の訓練を施し、国家代表などになり得る才能ある選手をその中から選抜するための体制を構築している。

 だがISが登場した当初は当然そのような訓練課程を経た少女などおらず、優秀な操縦者を早急に求めた各国は、それらしい人物が紛れていそうなあらゆる分野からIS操縦者として適性のある人物を探し出そうとしたという。事実、世界初のISの国際大会には元軍人や格闘技の有段者だけではなく、プロゲーマーなどから抜擢された操縦者も出場していたのだから驚きだ。

 話から推測するに、メルセデスは技術者としてISに触れる中で偶然にその才覚を見出されたという独特の経歴の持ち主なのだろう。中々に波乱万丈の人生だが、ターニャはそれ以上にドクトルと昔馴染みであるということに同情していた。

 

「それはまあ、大変ですよやはり。ISを見たばかりのアルベルタは自分でISを改造しようとしていましたし、技術者として共に作業に当たっていたときには彼女が作るISに乗るだろう操縦者という職種の方には同情していました。しかし気が付けばボク自身が操縦者になっていて、アルベルタの魔の手に怯える羽目に。結果として彼女はISの開発には携わらず、ボクは今日まで大きな怪我もなく生き延びることが出来たのですが、そういった意味では、やはり貴女の方が苦労をしているでしょう」

 

「……理解してくださる方がいるだけで、大いに励みになります」

 

 初対面の二人が会話の糸口を探れば、話題は自ずと共通の知人の話になりやすい。その人物が一癖も二癖もある厄介者なら尚更のこと。

 その話題の中でターニャは、ある疑問に思い至り口にする。

 

「改めて考えてみれば、ドクトル・シューゲルのような研究者がISの開発に携わっていないのも、妙な話ですね」

 

「確かに彼女の頭脳は本物です。しかし知識欲、探求心が過ぎる。モラルを軽んじるわけではなく、しかし自分の欲求と天秤に掛ければ時として平然と後者をとる。そういった人物に貴重なISコアを任せられないという大人の判断でしょう」

 

「……なるほど。仰る通りです」

 

「ところで、その怪我は?」

 

 一度会話の流れを切りメルセデスが指さしたのは、ターニャの腕だった。包帯が見えないようにという配慮もあってターニャは上着を羽織ったのだが、彼女にはお見通しだったようだ。包帯は全身至る所に巻かれているが、彼女が指したのは腕の包帯。恐らく袖口から僅かに覗いたものを見逃さなかったのだろう。大した洞察力だ。

 

 ターニャは正直に白状する。

 

「これは先日、実験をした《剥離剤(リムーバー)》という道具によるものでして……。まあ大した怪我ではございません。この包帯もあくまで治療を1日でも早く終わらせるための物です」

 

「それは、そんなに危険な兵器なのですか?」

 

「……いえ。恐らくマスマディス様が想像しているような危険性ではないでしょう。この怪我は兵器の殺傷能力ではなく不幸な事故によるモノです。《剥離剤》そのものは、あくまで攻撃ではなく無力化を目的としたコンパクトなアイテムで……」

 

 ターニャは身振り手振りも含め、剥離剤について解説する。

 

「そうですね、変な言い方ですけど()()()()()()()()()まっとうな発明品という印象を受けます」

 

()()()()()……? ふむ。なるほど」

 

 ターニャから説明を聞いたメルセデスは、何かに納得するように頷いていた。そしてターニャがそれを訊ねるより早く、その納得の理由を解説する。

 

「実を言いますと、今日ボクが此処へ来たのはアルベルタから呼ばれたからです。……ああ、貴女に会いたいというのも、ボクの背を押した理由の一つですよ」

 

「ありがとうございます」

 

「そしてアルベルタの要件とは、"軍とストラヴェルケ本社に予算を増やすよう掛け合ってくれ"ということでした」

 

「"予算"ですか!?」

 

 メルセデスの話の中にターニャにとって思いがけない言葉が登場する。ストラヴェルケAIWの設立目的である対IS兵器開発は政府と軍からの要請であり、ストラヴェルケ本社からの資金に加え公金も投じられていた。万全な供給源があればこそ資金難とは無縁だと思い込んでいたが、まさかその供給元がこのタイミングで締められるとは。

 

「……しかし、抗議すべき先は企業代表操縦者ではなく本社の役員や経理部ではないですか?」

 

「いえ。ボクに話が来たときには既に役員にも軍の御偉方にも噛みついた後でした。それに業を煮やした結果、ボクが呼ばれたという訳です」

 

「それはそれで順序がおかしいような気も致しますが……。ドクトルらしいと言えばらしいですね」

 

「……それについてですが、ボクが考えるに、その"剥離剤"とやらは限られた予算内でアルベルタがなんとか結果を出そうと創り上げたものという可能性があるのではないですか? 実物を見たわけではないので、正確なところは分かりませんが……」

 

「いえ。非常に納得できるお話だと思います」

 

 ターニャにとっても、メルセデスの仮説は腑に落ちるものだった。剥離剤の異質さもそうだが、自身の火傷に覚えていた違和感にも説明が付く。

 これまでターニャはいくつも危険な兵器の攻撃をその身に受けてきたが、出血を伴うような大きな負傷は経験してこなかった。それというのも、兵器の開発者であるドクトルがその危険性や殺傷能力を正確に把握していたからだ。そういう意味でも今回の事故は完全な例外(イレギュラー)であり、それが予算不足と研究存続危機への焦りに起因するのであればいくらか納得できる。

 

「しかし、まさか予算削減の皺寄せが貴女に来てしまうとは……。出来ればISを動かしているところを見たかったのですが、残念です」

 

「そんな、私なんかを見たってしょうがありませんよ。私はしがない試験要員です」

 

「そうですか? 実のところ内心、ボクの後継となってくれる子かと期待していたのですが」

 

 またとんでもない話が出てきたと、ターニャは気を引き締める。普通に考えるならば他愛のない社交辞令として受け取るのが定石。しかしターニャの経験則に依れば、このような場面での不用意な発言は絶対的に禁物である。

 ターニャは慎重に言葉を選びながら答えた。欲を出さず無難に行くこと、そして多少訝しまれても気持ちは正直に伝えることが大切だ。

 

「過分な評価、身に余る光栄です。しかし正直に申し上げますと、あまり表舞台に立つのは得意ではないので……」

 

「もちろん、無理にとは言いませんよ。ボクも初めてISスーツを着てカメラの前に立った時など、逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。アレは水着です。水着は海やプールだからこそ許されるのであって、街中で着たら変質者です」

 

 メルセデスの言葉はきっと、ISがまだ人々の価値観の中に浸透していなかった頃の、今となっては貴重な意見なのだろう。

 ただターニャもある意味()()人間なので、その感覚はよく分かった。

 

「……少し分かります。私も正直、ISスーツというものが好きではないので」

 

「それは珍しい。今どきの子はあの服装を受け入れてるものだとばかり思っていましたが」

 

「中には男性の劣情を煽ろうとしているかのようなデザインもありますし、必要以上に肌を曝し過ぎているのではと、つい勘ぐってしまいます」

 

 メルセデスはターニャの言葉に同意するように、静かに頷く。

 

「そうですね。ボクも当時は専攻分野のことしか知らない初心な若者でしたから、()()ISスーツを着ろと言われたときにはひょっとして悪い大人たちに騙されているのではと疑心暗鬼になってしまったのを憶えています」

 

 ターニャはメルセデスの思い出話に、そうだろうと得心した。先達者たちが後進には理解できない苦労を重ねているのは、いつの時代も同じということだ。

 

 

 

 

 

 その後も、ターニャはメルセデスが本社に戻るまでの僅かな時間を世間話をして過ごした。有益な情報もない只の社交的なやりとり。

 

 それでもターニャは満足していた。久方ぶりに思える常識人との意思疎通が、無自覚の内にささくれていたターニャの心を癒やしてくれる。

 無論、ターニャの周りの人物全員が非常識ということではない。しかしデザインチャイルドの研究所や軍需企業など世間から隔絶した空間にいるせいか、無難な会話をしていても何処か拭えない違和感が残ってしまう。ターニャにとっては未来にあたる世界の中でのさらに突出して先進的な環境であるが故に、根本的な価値観にズレがあり、それが違和感の原因となっているのだろう。

 その点、メルセデスとの会話では揺るぎない共通認識が確立されていた。その理由は恐らく、彼女が様々な事を経験し多種多様な人々と出会ってきた大人だからだろう。

 閉鎖的であるが故に独自のルールや価値基準が構築され歪みとなるが、開放的な環境が確立されていれば歪みは解消され健全性がもたらされる。人も市場も同じこと。

 これは原理なのだ。

 原理であるからこそ、世界や時間軸が変われど在り続け、またその原理によりもたらされるものも在るべき形として君臨し続ける。

 

 

 

 それはとても、素晴らしいことだった。

 

 

 結局ターニャは名残惜しむような気持ちでメルセデスを見送り、不機嫌なドクトルが帰還し現実に引き戻されるまで、知性的な社会人としての余韻に浸り続けていた。





 《剥離剤》……リムーバー。アニメ二期の文化祭で登場した謎アイテム。ちなみに原作の描写とアニメでは何故か形状が違ったりする。理由は不明。今話で登場したのは試作型なので、その二つどちらとも見た目が異なります。

 『メルセデス・マスマディス』……常識人枠がいないことに気付いたので登場させたキャラクター。書き上げた当初はごく普通の社会人らしいチョイ役のキャラだったのですが、台詞がターニャと区別が付きにくいという100%メタな理由から急きょ一人称がボクになりました。作者的には萌えないボクっ子。キャラが立ったので再登場ワンチャン有ります。

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