英雄王《偽》の英雄譚   作:課金王

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15話

エーデルワイスの言葉と、職員達の頑張りによって休日をもぎ取ったギルガメッシュ。

そんな彼に合わせて、予定を調整してくれた親友たち。

 

三人はいつもの通り、黒鉄家の離れにて世間話に興じていた。

 

――――。

 

酒を飲み、つまみを食い何気ない爺さん達の談笑。

ギルガメッシュはこのなんとも言えない空間に癒されていた。

 

「ところでお前さん…あの娘は連れてこないのか?」

 

「おお、そうだそうだ。

いつになったらお前の弟子を紹介してくれるんだ!!」

 

「ジジイばかりの空間にアイツを連れてこれるわけがないだろう。

あと、寅次郎はKOKで会っただろう」

 

思い出したかの様にエーデルワイスの事を話題に出す龍馬とそれに追従するようにテンション高く話し出す寅次郎。

そして、二人の言葉をバッサリと切り捨てるギルガメッシュ。

 

「まぁ、俺達三人の空間に連れてくるのはどうかと思うが……。

あれだけの美人なら気にならないわけがないだろう。

俺の弟子である孫は可愛げがないし…最近は日本支部の支部長になって暇なんだよ」

 

「俺の弟子は……最近、修行の合間に鬼気迫る表情で牛乳を飲んだり、小魚を食ってる姿が怖くてな……。

最近話も出来ないし、おちょくる事も出来なくてつまらんのだ。

刺激が欲しいぜ」

 

退屈そうな顔の二人。

どうやら刺激に飢えているようだ。

 

「……なら、龍馬ちょうどいい暇つぶしがあるではないか?」

 

チラリと部屋の窓の方に視線を動かすギルガメッシュ。

 

「ん?ああ、最近手合わせをねだっていたからな……。

でもよ、俺はもう年できついんだよ。

もう、かつてのように木刀や刀は振れねぇよ」

 

ギルガメッシュの言葉に反応し、気配に気づいた龍馬も窓の向こうに居る人物に向け、視線を動かす。

確かに龍馬の言う通り、枯れ枝のように腕が細くなってしまった今の状態では手合わせは不可能だろう。

 

「たしか……曾孫の長男坊だったか?

Aランクで黒鉄家と日本の期待の星らしいな。

何度か見た事があって気配は覚えているぞ」

 

寅次郎の言葉が窓の人物に聞こえたのだろう。

窓のすぐ下あたりからガサゴソと音が鳴る。

 

「ふ、曾爺の様子が気になっての行動か……。

随分可愛らしいではないか」

 

曾爺に構って欲しいが、寄ってくることの出来ない龍馬の曾孫を想像して頬が緩むギルガメッシュ。

しかし、曾孫の行動に嫌そうな顔をする龍馬と微妙な顔をする寅次郎。

 

「いやいや、お前さんは見た事がないからそんな事が言えるんだよ。

アレはそんな可愛い性格じゃない」

 

「ああ、あの坊主の目。

お前さんも見たら、そんな事は言えないな」

 

微妙な顔のまま、うんうんと頷く二人。

実に仲が良い。

 

「では……会ってみるか?」

 

龍馬の提案に乗る事にしたギルガメッシュは、()を突きながら歩く友人の後ろについて行く。

家の廊下を渡り、外に出る。

 

するとギルガメッシュ達の目の前に瞳をギラつかせた目つきの悪い着物姿の少年が木刀を構えて立っていた。

 

「俺と勝負しろ」

 

少年の立ち居振る舞いと瞳を見て納得した。

確かにこれは可愛げがない。

少年の瞳は年頃の物ではなく、かつて世界大戦で戦場を駆け回り、最強の名と力を求めた獣。

黒鉄龍馬の瞳を彷彿とさせる。

 

「なるほど…確かにお前の言う通りだったな」

 

「だろ?」

 

少年を見て納得したギルガメッシュに何故かドヤ顔の龍馬。

それにイラついたのだろうか?

少年はギルガメッシュ達に向かって速足で突き進み……。

 

「行くぞ、《英雄王》!!」

 

「ん?」

 

何故かギルガメッシュの鳩尾に向かって突きを放った。

まさか自分に向かってくるとは思っていなかったギルガメッシュだったが、戦場で鍛えられた条件反射で木刀を片手で引っ掴み、少年の顔面に蹴りを入れた。

 

「ぶっ!?」

 

「……あ」

 

手加減したとは言え、英雄の蹴り。

死にはしなかったが、少年は後方へと吹っ飛び一メートルほどゴロゴロと地面を転がった。

全身が土に汚れ、まるで爆死したヤム〇ャのようなポーズで止まった少年。

その姿は中々に痛々しい。

 

「……おいおい、子供相手にやり過ぎじゃね?」

 

「……」

 

龍馬の言葉に冷や汗を流すギルガメッシュ。

彼も、攻撃をされたとはいえ、ボロ雑巾のようになった少年にやり過ぎたと後悔が襲う。

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

地面に寝転がったままの少年に不安を覚えたギルガメッシュは恐る恐る少年(ヤ〇チャ)に近づく。

少年(〇ムチャ)に返事はない。

胸が規則正しく、上下に動いている様子から脳震盪で気絶しているようだ。

 

「龍馬…お前の曾孫は一体どういう教育を受けているんだ?」

 

「知らねぇよ……。家は何故か、俺を含めてこんなのばっかだ」

 

少年(ヤム〇ャ)はこの後、黒鉄の使用人たちによって病院へと運ばれる。

使用人たちに運ばれていく姿を見送ったギルガメッシュは、長生きできない一族だと心の底から思った。

 

そして、龍馬によく似た眼をする小さな求道者と出会いは、若い姿のギルガメッシュにとって時代の流れをつよく感じさせられる出来事だった。

 

 


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