英雄王《偽》の英雄譚   作:課金王

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1話

日本が第二次世界大戦に勝利してから十年以上たった元日の今日。

黒鉄の屋敷から離れた小さな民家には、三人の男達が集っていた。

 

「カッカッカ!いやー、お前さんの道具は本当に面白いな!!

全世界の要人たちが特殊部隊を作ってお前さんを追っているのに、誰も見つける事が出来ないんだからな!!」

 

日本酒の入ったお猪口をグイっと笑顔で煽る初老の男。

日本を勝利に導いた英雄《サムライ・リョーマ》こと、黒鉄(くろがね)龍馬(りょうま)

 

「それで当の本人は数年前から日本で堂々と商売を始め、ちょくちょく俺達の前に顔を出すんだから、(やっこ)さん達が哀れでしょうがないぜ。

正直、俺はお前さんの道具に感心するべきか、お前さんを見つける事が出来ず、毎日のように上司に怒られている奴らに同情すべきなのか分からないぞ」

 

龍馬同様に酒を煽りながら呆れるこの中年は南郷(なんごう) 寅次郎(とらじろう)

第二次世界大戦前に中国で行われた最高クラスの大会である闘神リーグで優勝した怪物である。

 

「俺の知った事か。」

 

躊躇なく一言で切り捨てた金髪の男は自前の黄金の杯で日本酒をチビチビと楽しむ。

そう、戦争が終わった数年後に姿を消した《王者》ギルガメッシュだ。

 

「あー、そういえばアンジェリカとか言う人形に販売させているiPS再生槽(アイピーエスカプセル)だったか?

目玉が飛び出るほどの金額だが、四肢の切断や臓器の損失程度であればたちどころに再生させることが出来るとんでもねぇ代物らしいな…。

騎士連盟の連中が性能に騒いでたぞ」

 

龍馬が顔を赤くしながら、思い出したかのように口にしたiPS再生槽。

それは、ギルガメッシュが立ち上げた会社が出している商品の一つだ。

ギルガメッシュの宝具《王の財宝(ゲートオブ・バビロン)》は長時間のプレイ時間と課金アイテムによって集められた事で世界ランカーにも負けないレベルに到達していた。

しかも、中には他作品とのイベントによって入手可能なコラボアイテムなどが入っており、現代の科学技術でも再現できそうなものが入っている。

 

 

その事を旅行中のふとした事で思い出したギルガメッシュは、すぐさまに日本に帰国。

彼の努力と財力の結晶である《王の財宝》の中にあった科学技術で再現できそうな物をピックアップし、夏の開拓イベントで集めたレアメタルを資金源に使い。

アンジェリカ・エインズワースという自動人形の名前で会社を設立。

そして有名な企業の研究員達を金に物を言わせた引き抜きによって集め、空想上の存在であったコラボアイテムは優秀な頭脳達によって再現され、宣伝と同時に飛ぶように売れた。

 

今では世界屈指の大企業へと成長し、人生を5回繰り返しても使いきれないであろう金がギルガメッシュの懐に入っている。

ちなみに自動人形のアンジェリカは人間だったら余裕で過労死するであろうレベルで働いているらしい。

 

「ったく、羨ましい奴だぜ。

家でぐうたらしているだけで世界中の国から金が湯水のごとく手に入るんだから……

俺だったらおっパブ嬢と酒飲んで、毎日イチャイチャしているぜ」

 

「たわけ、俺は貴様のように商売女なんぞに興味はない。」

 

欲望を酒の匂いと共に吐き出す寅次郎に対し、商売女は興味ないと断言するギルガメッシュ。

そう、彼はサラリーマン時代も現在も立派な童貞であり、好きになった女としか肉体関係は結ばないと決めている。

 

「カッカッカ!まあ、あれはあれでいいもんだぜ。

金を出さなけりゃあ、後腐れなく向こうからさっぱりと縁が切れる。

金の切れ目が縁の切れ目ってな。

若いころは寅次郎と夜の街で派手に遊んだもんだぜ。

まあ、俺は嫁さんに夢中だから、お前さんと一緒で興味の欠片もわかんがな。」

 

一方、元服した頃は大会の賞金などで風俗やキャバクラで遊びまくった黒鉄龍馬は自身の経験を元に笑顔でギルガメッシュに勧めだす。

 

英雄三人でなんとも下品な会話を繰り広げているが、酒の席で行われる中年の会話なんてこんなものであろう。

楽しい時間を過ごした三人は春に会う約束をして、それぞれの自宅へと帰って行った。

 

日本政府から報酬として渡された屋敷を売り払い。

自身の懐に入ってくる金を使って六本木の一等地に建てた西洋風の屋敷。

ここが今のギルガメッシュの自宅である。

 

認識阻害の宝具を身に着けたまま、自宅へと戻って来たギルガメッシュ。

 

大きな玄関扉を開くと二人の女性が出迎える。

 

「お帰りなさいませ。マスター。

優秀な自動人形である私の作った優雅で華麗な食事と、貧相な胸のポンコツ自動人形が洗ったお風呂の準備が出来ております」

 

金髪ドリルで巨乳のメイド服の女性。

ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの容姿と能力…そして声をコピーした自動人形である。

その姿はプリズマ☆イリヤでエインズワースでこき使われていた姿を彷彿とさせ、ギルガメッシュのプレイヤー仲間からは……。

『貴重なアイテムや宝具を燃えるゴミと一緒に捨てられそう』『フレンドリーファイアで殺されそうwwww』などの感想が寄せられている。

 

「それよりもマスター、アンジェリカから《解放軍(リベリオン)》なる組織の資料が届いております。

そこの金ドリ自動人形の作った不味いお食事の前に私が綺麗に仕上げたお風呂でお寛ぎながらご覧ください。

なんでしたら、お風呂に入っている間に不味いお食事を処理して新しい物を作りましょうか?」

 

ルヴィアを押しのけ、ギルガメッシュに資料を渡すもう一体の自動人形は赤い悪魔こと遠坂(とおさか) (りん)のコピー。

黒い髪のツインテールと貧乳がとても印象的だ。

 

「オホホ、品のないポンコツ駄メイドが何か仰っておりますね……。

マスター。明日の朝は丁度、燃えるゴミの日ですので使えない貧乳人形は廃棄処分致しましょうか?」

 

「あらあら、マスターがお疲れなのに無駄に乳のデカい下品な人形が、頭のおかしい事を言い出したみたいですね。

明日までに下品な体を解体して、燃えるゴミに出しておきましょうか?」

 

お互いにメンチを切り合う自動人形達。

彼女たち自動人形は、運営が販売する戦闘をサポートする課金アイテムであり、容姿と能力のカスタマイズが出来、自動人形の中でもランクの高い物ならフェイトシリーズのマスターキャラからコピーする事も可能。

高難易度のアバターを選択した初心者達の強い味方だ。

 

八極拳とプロレス技による近接戦闘と中距離と遠距離から放たれるガンドを含む宝石魔術の爆撃とエネミーに状態異常を与える呪い。

ゲームではコピー達に意思はなく、淡々と命令を実行に移すだけの人形で重宝していたのだが……。

 

「はぁああああああ!!」

 

「うりゃあああああ!!」

 

コピー元と作業効率の為、好感度を上げる為に宝石を貢ぎまくったせいだろうか?

今の様に彼女たちはお互いの手を組み合い、相手の手首をへし折ろうと力を籠める。

そして、彼女たちが力を入れるたびに床がミシミシと悲鳴をあげるのだ。

 

もし、彼女たちをセットではなく片方のみを起動させて居たら、ギルガメッシュは知的好奇心と欲望の赴くままに何処まで人間に近いかを体の隅々まで鑑賞し、弄り倒して居たに違いない。

そして、人間に近い物だと知ったら彼は間違いなく、自室で大人の運動会を開催していたであろう。

 

しかし、幸か不幸かそうはならなかった。

何故なら同時に起動し、ハウスメイドとして仕事を始めた彼女たちであったが……。

 

自分の優秀さを見せつける為にお互いを妨害。

 

掃除を頼んだ部屋がガンドによる銃撃戦によって穴だらけ。

 

料理を頼んだはずがキッチンが宝石魔術によって爆発。

 

終始、これでもかというくらいに醜い争いを続け、屋敷を半壊させたのだ。

 

これにより、ギルガメッシュは彼女たちを『女』ではなく殆ど『人形』として扱うようになったのだった。

ちなみに、破壊された屋敷は彼女たちの魔術により綺麗に修復され、ギルガメッシュの命令により二度と一緒に仕事をする事はない。

 

おかげで、嫌がらせや罵倒はするが、足を引っ張る事のなくなった二人は最高レベルで仕事を完遂し、見事にハウスメイドとしての役割をこなしている。

 

 

「やかましい」

 

何時までも醜い争いを繰り広げる人形達に呆れたギルガメッシュは彼女たちの周囲に門を展開し、黄金の鎖で二人同時にグルグル巻きにして縛りあげた。

お互いに腕が使えなくなり、ミノムシの様に床に転がる。

 

「ああっ!?これが噂のSMですのね!!私はこの後マスターの愛玩人形となり、哀れな貧乳メイドはマスターと私の幸福を祝う祝砲として焼却所に出荷されるのですね!!」

 

「黙りなさいよ、この変態メイド!!でも、マスターの命令ならしょうがないわね……。

マスターがどうしてもって言うなら、マスター専用の愛玩人形になってあげてもいいわよ?

で、でも、この淫乱メイドをキャンプファイヤーの薪にしなくちゃダメなんだからね!」

 

「滑稽ですわ!貴女みたいな取って付けたツンデレ貧乳をマスターが相手にすると思ってますの!?」

 

「黙りなさい!!あんたみたいに胸がだらしなくて頭の悪い女をマスターが相手にすると思っているの!?

マスターの好みは私のような美乳よ!!」

 

天の鎖という最上位にランクインする宝具によってグルグル巻きにされてもなお、醜い争いを止めない二人の人形を無視しながらキッチンに向かうギルガメッシュ。

彼は冷めきったご飯を電子レンジでチンして、資料を見ながら寂しく食べるのであった。

 

 


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