愛しい瞳   作:シーマイル

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これにて最終話となります。
それでは、どうぞ



最終話 独白

あれからどれ程経っただろうか。

あれから様々な治療を施したが彼女の、こいしの瞳が再び開くことはなかった。

 

そしてそれは彼女の在り方を変えた。

 

それはもう、決定的に変わってしまった。

心を映す瞳が閉ざされた彼女には心を表す術が無くなってしまったのだ。

 

 

心を読むことでしか知らない彼女は心を感じれない。

自分のこころが解らない彼女は自分の感情を知れないのだと、

そんなこいしのこころを自分は読めないのだと、

 

それからのこいしとの関係は崩壊したといってもよいだろう。

彼女の心はまるで夜の帳が下りたかのように暗く見渡しても何もみえなかった。

こんな心を私は知っている。

人が死ぬとき、心が消えた時、

そこには何もなくただただ暗くそこが読めないのだ。

そんなこいしに私はかける言葉が見つからなかった。

 

何を言っても彼女に届かないような気がして。

 

実際届かなかったのだろう。

ペットである雅の気持ちはこいしに伝わらない。

あたりまえだ、私たちは動物の鳴き声を理解しているわけではなく心を読んでいるにすぎないのだから。

 

どうすればよかったのだろう?

途中まで順調だったはずだ。新しい住居を構え、新しい家族が出来、新しい居場所を見つけたはずだった。

それなのに、・・・どうして

 

どうしてこんなにも私たちは憎まれるのだろう?

分かってはいる、しかしそれを受け入れることは出来ない。

誰にも気づかれないようにひっそりと生きていけばよかったのだろうか?

長い妖怪の生でいつか限界が来るのはわかっている。

どうすればこいしがあんな目に合わずにすんだのだろうか?

地底に移り住む以外に選択肢はなかったのだろうか?

 

そんな考えがぐるぐる回りとりとめのない思考を続けている。

答えは出ない。

ないのかもしれない。

 

しかし悪いことばかりではなかった。

一人でいくつもの妖怪を倒すことのできた私は地底の有力者と認められた。

要するに権力を手に入れたといってもいい。

これで私に盾突こうとするものは居なくなっただろう。

・・・だからどうした、そんなもの今更手に入れたところで意味がないだろうに。

皮肉にも家族を守るための力はその家族を失ったことで手に入ったのだった。

 

本当に情けない、

本当に自分が情けない。

 

だが、まだ希望は残っていた。

こいしの瞳が再び開く希望が。

妖怪はその存在意義をなくせば消えてしまう。

幻想郷はそう言った外の世界から消えてしまいそうだった妖怪たちの避難所だ。

だからこいしの存在が消えないのはおかしいのだ。

心を読めない覚など存在しないのだから。

だからこそ彼女にはまだ希望があるのだ。

 

彼女が存在しているというは心があることに他ならない。

妖怪が精神的に患うというのは人間における致命傷や死に他ならない。

その精神が蝕まれるというのは存在意義に関わる。

 

こいしは心を読むことができずその存在意義を亡くしかけている。

しかし彼女は生きている。

つまりその存在意義を取り戻す可能性、瞳は再び開かれる可能性があるのだ。

 

だから私は見守ろう、

彼女が自分を取り戻すまで。

だから私は地霊殿の主で居続けよう、

家族の居場所を守るため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて最終回です、ここまで読み続けた読者の方々にお礼を申し上げます。
初めての中編小説でつたない部分やつながりのおかしな部分もあったでしょうが
それでも完結できたのはPV,UVを見たり、わずかながら評価や感想があったから他なりません。

これからも書いていきたいと思いますのでもし見かけたらよろしくお願いします。

それでは、ありがとうございました。

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