魔法科高校の救世主   作:ノット

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弁当

 翌日。

 

「達也くーん‼︎ シュウくーん‼︎」

 達也と深雪と登校していたら、後ろから七草会長が走ってやってきた。やけに馴れ馴れしい会長に軽く引きながら、達也と顔を見合わせた。俺は入試の点数でいじられて以来話していないし、達也も首を横に振っているので特に親しくなる事はしていないという事だろう。

 そんな会長を見て、俺は改めてはてなマークを頭に浮かべた。

 

「達也君、シュウ君おはよう。深雪さんもおはようございます」

 俺たちと深雪とのこの差は何なのだろうか。会長は男子が好きで媚を売っているのだろうか。

 

「シュウくーん、聞いていますか? 今日のお昼に生徒会室にきて欲しいんだけど」

「あ、はい、大丈夫ですよ」

 

 なんだか厄介ごとに巻き込まれたような気がした。

 

 ◇

 

 俺は教室のドアの前で一度、止まって深呼吸をした。昨日、言いくるめてしまった人たちにどんな対応をされるか心配だったからだ。

 深雪はそんな俺を見てクスクス笑っている。

「シュウ君でも、緊張とか不安を感じたりするんですね」

「そりゃ俺だって人間なんだから当たり前だろ?」

「いえ、だって叔母様の前でも緊張なんてまったくしていないじゃないですか」

 真夜は深雪や達也の前では厳格な姿勢でいつも話している。それは、真夜曰く当主はこういう固いイメージじゃなければいけないらしい。俺と二人きりのときは女子高生の様な話し方をするが…。

 なので、そんな真夜に対して緊張しないのは俺としては当たり前なのだが、深雪からしたら物凄い胆力を持っていると勘違いされている様だ。

 真夜のためにそんな勘違いを直そうとはしない俺も悪いが。

 

 教室に入った俺に一番はじめに近寄ってきたのは光井さんだった。

「おはようございます、シュウさん!」

「おはよう、二人とも」

 謎の弟子宣言をされた俺だが、なんとか言いくるめて普通に友達という間柄になった。

「おはよう」

 光井さんの後ろからのそっと姿を現したのは、北山 雫さん。光井さんの親友である。

 

 ズカズカと彼女たちの後ろから歩いてくる男子生徒がいた。昨日、俺が言いくるめた後、唯一謝った人物だ。

「自己紹介がまだだったな、僕の名前は森崎 駿。改めて、昨日は止めてくれてありがとう。客観的に見たら僕はかなり図々しい事をしていた。司波さん、昨日はすいませんでした」

 

 彼に何があったのだろうか。俺があまりにも痛々しい事を言ったせいで、我に帰ったという事だろうか。まぁ何はともあれ、初めにあったような嫌な感じではないので良かったのだが、何とも釈然としない感じである。

 

 他の一科生も俺に謝ってきたので、それを受け取り良い関係を築きあげる事ができた。

 友達なんて出来る気がしなかった初日には予想もしていない事の連続だった。

 そんな、昨日とは違う意味で対応に慌てている俺を見て、深雪は優しく微笑んでいた。

 

 ◇

 

 昼休み。達也と合流した俺達は生徒会室に向かった。

 嫌な予感しかしない俺は足取りがかなり重かった。

 

 

「失礼します」

 いつでも冷静な達也の声を皮切りに俺たちは生徒会室に入っていく。

 美しい礼とともに入っていく深雪とは違い、俺にはそんなスキルはないので俺なりに丁寧に頭を下げて入っていく。

 

「話を始める前に、ご飯にしましょうか」

 会長はそうきりだし、俺たちに配膳のメニューを聞いていく。俺は穂波さんに作ってもらったお弁当を持ってきていたのだが、会長達にはかなり驚かれた。

 いや、まぁ確かに俺はそれほど料理をしないが、人並みには出来るんですが…。

 俺に対する、周りのイメージがなんとなく分かり、俺はへこむ。

 

「入学式で紹介しましたが、念のため」

 会長はそう言って、生徒会室にいるメンバーを紹介していく。

 会計の市原先輩、風紀委員長の渡辺先輩、書記のあーちゃん先輩。

 俺がボソッと、

「あーちゃん」

 と声に出したら、頰を膨らませてこちらを見てきた。可愛かったのでこれからもあーちゃん呼びを固定していきたい。

 

「渡辺先輩、そのお弁当はご自分で作られたのですか?」

 空気を変えるためか、深雪がそう言った。

「そう、だが。意外か?」

 

「えぇ、意外です!」

 俺はつい、思った事を言ってしまう。言った後、すぐにその事に気づき、口に手をやる。

「ほぉー」

 目を細くしてこちらをジッと見てくる渡辺先輩。

「いや、あのですね。悪い意味とかではなくてですね、先輩のイメージ的にですね……」

 なんとか誤解を解こうとするが、どうやら失敗した様だ。達也はそんな俺を見て、やれやれといったような顔をしている。

 

「シュウ君もそのお弁当は手作りなの?」

 会長が困った俺に救いの手を差し伸べてくれる。

(男好きとか思ってすいませんでした)

「いえ、俺の弁当はうちの家政婦さんが作ってくれものですよ」

 そういった後、俺はお弁当に入っていた卵焼きを食べる。絶妙な味付けで卵焼きだけでお米を全て食べられそうだ。心の中で穂波さんに感謝をしながら弁当を食べ進めていく。

 

 そんな俺の幸せな雰囲気を察してなのか、渡辺先輩が悪い顔をして俺に質問をしてくる。

「灰村はその家政婦さんの事が好きなのか?」

「えぇ、好きですよ」

 穂波さんは俺の命の恩人であり、更にいつも俺のお世話もしてくれている。むしろこんな素敵な人を嫌いな人がいるなら見て見たい。

 

「え⁈」

 驚きの声が達也から漏れ、深雪は箸を地面にまで落とす始末だ。

 何故、そんなに驚くのかは俺には分からず首をかしげる。

 

 だが、会長達が頰を赤く染めているのを見て俺はようやく気づいた。

「あー、あれですよ。恋愛感情とかじゃないですからね」

 

 その言葉を聞いてようやく、みんな正気に戻ってくれたみたいだ。

 

 

 弁当を食べ終わって、ようやく今日集められた本題に入った。

 一つ目は、深雪を生徒会のメンバーに勧誘という事だった。

 深雪は自分が入るなら、達也も入れてくれないかと進言したが規則によりダメだったらしく渋々、深雪一人生徒会に入ることになった。

 

 そして、二つ目。これが俺が生徒会室に呼ばれた理由だった。

 

「俺が風紀委員会にですか?」

「えぇ。私たちが行く前に解決しちゃったみたいだけど、昨日騒ぎがあったのよね。それをシュウ君が解決したって聞いてね」

「それだけで、ですか?」

「まぁそれもあるけど、最大の理由は貴方が深雪さんをも凌いで実技一位だからかな」

 

 実技一位という言葉を聞いて、他の人達はかなり驚いている。俺としては、実技一位のくせにギリギリ一科生というのがかなり恥ずかしいことなのだが、周りはその事に気付いていないようだ。

 

「それで、どうでしょうか。生徒会推薦として、風紀委員に入ってもらえませんか?」

 

 断る理由もなければ、入る理由もない。俺としてはどっちでも良いんだが、どうしようか。悩んだ結果、俺は会長に返事をする。

「すいません。お断りさせて頂きます」

「どうしてですか?」

「会長もご存知の通り、俺は実技は出来ても一般教科と魔法理論に関しては素人に毛が生えたようなものです。実は、魔法科高校に入ると決めたのも、入学の一年ちょっと前でして。放課後は、魔法について理解を深めたいと考えていたので、その申し訳ありませんがお断りさせて頂きたいです」

 

 と、会長達には言ったが、これが最大の理由ではない。

 

 最大の理由は、早く家に帰りたいからだ。もっというと、家に帰って穂波さんと朗らかなひと時を過ごしたいというのが最大の理由である。

 そんな俺の内心を把握しているのか、達也はこめかみに指を当てている。

 しかし、会長達にはそんなことは分からなかったようで、俺の風紀委員会入りはなかったことになった。

 

「んー、じゃあ困ったな。あの時期までに風紀委員の補充が間に合うと思ってホッとしていたんだがな」

「確かにね。でも、シュウ君にもちゃんと理由があるから無理に入れさせるのは違うじゃない?」

「それは分かっているが……」

 

 会長と渡辺先輩が俺にはよくわからない内容の事で頭を唸らせている。

「あの、風紀委員に入ってくれる人のお話をしているんですか?」

 深雪が会長達に訊ねる。

「えぇ、そうなの。でも、これといった人がいなくて困っているのよ」

「それなら、お兄様に入ってもらうというのはどうでしょうか?」

 

 会長はその手があったかとばかりに手を叩いたが、渡辺先輩の方は何やら唸っている。

「司波、言いづらいんだがな、風紀委員は魔法の不正使用を取り締まる事もやっていてな。達也君にそれを止める力があるのか?」

「はい、お兄様なら大丈夫です。体術にも優れていますし、何より起動された魔法式を読み取ることができる技能を持っています!」

「な、なんだって! それは本当か、達也君!」

 

 しまったといったような顔を達也がするが、知られてしまったからにはもう遅い。

「……はい、俺は起動された魔法式を読み取ることができます。しかし、俺は二科生です。とても、風紀委員が務まるとは思えません」

 

 渡辺先輩がそれに対して、なにかを言おうとする前に休み時間が終わるチャイムが鳴り響いた。

 

「それじゃ、この続きは放課後ということで」

 七草会長のその台詞とともに、一旦解散となった。

 

 

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