魔法科高校の救世主   作:ノット

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模擬戦

 放課後。

 またまた、俺と達也と深雪は生徒会室に向かっていた。俺は正式に風紀委員会入りを断ったので、行く必要はなかったのだが達也の実力を知る者として会長達にぜひ力説をしてくれと深雪に頼まれたので断りきれなかった。

 俺はどうにも深雪に甘いところがある。それは、深雪が大切だからというわけではない。真夜の面影があるからだ。深雪を見ていると真夜と重なるところがあるので、どうしても断りきれないのだ。

 

 

「副会長の服部 刑部です。司波 深雪さん、生徒会へようこそ。そして、君は灰村 秋君だったかな。君の様な実力者が風紀委員に入ってもらえないことはとても残念だよ」

 俺と深雪には朗らかに話しかけてくる服部先輩。そう、俺と深雪にはだ。

 

 二科生である達也を軽視しているのか、華麗にスルーを決め込む服部先輩に俺は、内心ビクビクだった。

 達也については心配していない。この程度で目くじらをたてるほど、小さい男ではない。問題は深雪だ。

 深雪の背中から、今にも「ゴゴゴっ」という擬音が聞こえてきそうなくらい圧を感じる。俺の背中には冷や汗がダラダラだった。

 

「あーちゃん、深雪さんの事は任せるわね」

「はいー」

 あーちゃん頼む、深雪の気を引いといてくれよ。

 

 

「達也君、君には一度本当に魔法式を読み取ることが出来るか試させてもらおうか」

「本当に読み取れるかどうかを試すという事ですね。それは構いませんが、俺は風紀委員にはなりませんよ」

 

「渡辺先輩。その一年生を風紀委員に任命するのは反対です」

 

「過去、ウィードを風紀委員に任命した例はありません」

 

(は、服部ー‼︎ も、もうやめてくれ、それ以上深雪を追い詰めてくれないでくれ‼︎)

 俺は心底そう思っていた。今ならまだ間に合うとも。

 

「二科生をウィードと呼ぶのは禁止されている。私の前で言うとはいい度胸だな」

 

 もう、ダメかもしれない。俺は渡辺先輩達が話しているうちに少しずつ後ろへと下がって行く。もう少しでドアの前、逃げれると思ったところで深雪の限界がきた。

 

「待ってください! 兄は確かに魔法実技の成績は芳しくありませんが、それは評価方法が兄の力に適合していないだけの事なのです」

「実践ならば、兄は誰にも負けません! ねぇそうでしょ、シュウさん‼︎」

 

 ここで俺に振るのかい‼︎ 部屋の人達の視線が俺に集まる。

 息を一つ吐いてから、達也について話し始める。

 

「魔法、体術なんでもありなら達也は間違いなく強いですよ。魔法実技だけで達也の全てを把握したつもりならそれは甘いと言わざるを得ません」

 

「それはそうだが、例えいくら体術に優れていたとしても魔法には勝つことなんて出来ない。司波さん、灰村、いくら身内だからといって不可能を可能とは言ってはいけない」

 俺たちに向けて諭す様に話しかけてくる服部先輩。悪い先輩じゃなさそうなんだけど、少し頭が固そうだ。

 そして付け加えるなら、今その言葉は絶対に言ってはいけなかった。

 

「お言葉ですが、私達は事実を述べているにすぎません。お兄様の本当のお力をもってすれば」

 そこで深雪の言葉は止められた。深雪が敬愛している兄、達也の手によって。

 

 

「服部先輩、模擬戦をしませんか?」

 

 

 ◇

 

 

「悪かったなシュウ。わざわざ口添えしてもらったのにこんな事になってしまって」

 元から達也の技能を確かめるために予約していた演習室へ向かう途中で達也にそう言われた。

「いや、俺の口がもう少し上手かったらこんな事にもなってなかったと思うからな。こっちこそ悪かったな」

 

「いや、お前はわざと体術を強調してあの力の事を隠そうとしてくれたんだろう。だから、謝る必要はない」

 

 あらら、バレてる。達也の魔法については四葉の奥の手ともいっていいので、真夜から口止めされていた。まぁ口止めなんてされていなくても言っていなかっただろうが。

 

「達也には深雪の言葉だけで必要ないかもしれないと思うけど、言わせてくれ」

 

「勝ってこいよ」

 

「あぁ」

 

 

 ◇

 

「ねぇ、シュウ君」

 会長は模擬戦の準備を二人がしている時に小声で俺に話しかけてくる。

「この勝負、どっちが勝つと思う?」

「そうですね、俺が余計な事を言わなかったら達也が圧勝していたと思います」

「余計な事?」

「達也が体術に優れているだろう事を服部先輩に教えてしまった事です。それがなかったら、服部先輩は油断して一撃で終わってたかもしれませんが」

 そう、あの場では達也の事を説明するために魔法以外の事について話すしかなかったが、今それが仇となってしまった。達也には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

「じゃあ、シュウ君には勝負は分からないって事?」

「いえ、達也が勝ちます。絶対に」

「どうして、そう言い切れるの?」

 

「だって、妹の前では兄っていう存在は誰にも負けないものですから」

 

 前世、諸葉の事を兄様と慕ってくれていた彼女の前では絶対に負けなかった。だから、俺には分かる。この勝負、達也が勝つと。

 

 

「ルールを説明する。相手を死に至らしめる術式、ならびに回復不能な障害を与える術式は禁止する。直接攻撃は、相手に捻挫以上の負傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止、素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不可能と判断した場合に決する。ルール違反は私が力づくで処理するから覚悟しろ。以上だ」

 

 

 

 

「始め‼︎」

 

 開始とともに達也は服部先輩の背後へと移動する。服部先輩は見えていなかったらしいが、正面に達也がいない事わ見た瞬間横に転がった。

 達也のなんらかの魔法は誰もいない空間を通り過ぎるだけに終わる。

 

 服部先輩は魔法式を起動しながら達也の方へと振り返る。流石に一科生だけのことはある処理速度で、達也へと素早く構築した魔法を使う。使用したのは基礎単一系移動魔法だろう。

 しかし、移動系の魔法は座標を指定しそこにある物体を移動させるというもの。達也の目はそれをいち早く読み取り、理解したのだろう。

 達也は一歩分横にずれる事であっさりと魔法を避ける。

 

 こんなにあっさりと避けられるとは思っていなかった服部先輩は動揺し、CADを操作するために目線を達也から外した。

 その一瞬が先輩の命取りとなる。

 

 瞬時に好機と判断した達也は、服部先輩の背後へと移動する。

 そして、無防備な彼に魔法を放つ事で試合は終わった。

 

 達也は立ち、服部先輩は倒れている。

 誰がどう見ても達也の勝ちだった。

 

 ◇

 

「待て、あの移動速度。はじめから自己加速術式を使っていたのか?」

 

「いえ、あれは正真正銘、身体的な動きです」

 なんでもない風に達也は渡辺先輩へ答えた。

「兄は忍術使い、九重 八雲先生の指導を受けているんですよ」

 

 その忍術使いがどの程度有名な人物かを俺は知らなかったが、会長達の反応を見る限りそれなりに有名な人のようだ。

 

「それに、あの程度の動きならシュウならいとも容易く実行可能ですよ」

 達也はなぜか、俺を巻き込んで来た。

 視線がまた俺に集まるのを感じる。

「本当なのか、灰村」

 

「えぇ、まぁ出来ます」

 昨日、同級生の前で見せてしまっているし別に秘密にしたいわけではないので先輩の問いに肯定した。

 だが、なんだか疑い深そうに俺の事を見てきたのでちょっと実演することにした。

 

 昨日も使った光技の一つ、神速通。それを使いながら、渡辺先輩の回りで反復横跳びをする。

 

 渡辺先輩の目からは、あまりの速さで俺が分身しているように見えている事だろう。

 目を回している先輩を見るにちょっとした意趣返しは成功のようだ。

 

「相変わらず、お前はとんでもなく速いな」

「そうか? このくらいの速さなら、おじさんでも出来るぞ」

「いや、どんなおじさんだそれは」

 

 事実、前世で目が綺麗なおじさんと戦った記憶があるが、彼はあれよりも速く動く事が出来ていた。

 恐るべきおじさんだったな。

 

「い、今からでも遅くない。風紀委員に入らないか? 君になら次期風紀委員長を任せる事ができるんだが」

 ふらふらした足取りで俺にそんな事を言ってきた。

 

「穂波さ……いえ、勉強をしたいのでやめておきます」

 

 俺は良い笑顔でそれを断ったのだった。

 

 




服部先輩は原作より少し、長く立っていられました。

目の綺麗なおじさんを見たい方は聖剣使いの禁呪詠唱の一話をご覧ください。

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